深夜の来訪者
完全に熟睡していた私達は、深夜突然鳴った轟音に飛び起きることになった。
ドゴーン! ドゴーン!
「うわ! カノンちゃん! これなんか壁叩かれてない!?」
「っわ、わっかんないよ! でも揺れてるしきっとそうだよ! とにかく外見てみよう!」
そう言って弓矢と鉈を持って、カノンちゃんが飛び出した。
私もバットを持って外に出る。外に出た私は、壁に手を打ち付けていたそれを見て絶句する。
「マリコちゃん今すぐ逃げて、わたしがなんとか時間を稼ぐから……。デモニアクベア……なんでこんなところに……」
月明かりに照らされたそれは、体長4メートルを超える凶悪な顔の熊。地球の熊との大きな違いは、肘から下の毛が生えておらず硬そうな革で覆われていて、背中から黒いオーラの様なものが迸っていること。風格が完全にボスキャラだ。
私達に気づいたデモニアクベアは、前足を掲げ歓喜するように月に向けて咆哮する。
グゴゴゴゴアアァァア! グウァァアーー!!
体の芯にまで響く轟音に体が萎縮する。デモニアクベアが前足を下ろし、私達の方を向き、突進してくる! 私は、雄たけびを上げ、震える体を無理やり動かす! 殺らなきゃ殺られる!!
「うわぁあぁぁあ!!」
ダッシュで加速して、ジャンプ! 全力で顔面にバットを叩き込む! 一瞬デモニアクベアが怯む! いける! 何度かやれば追い払う位できそうだ。
でも、私が地面に足を着ける前に、デモニアクベアの爪が私を叩き付けた。カノンちゃんの悲鳴が響く。
何回転したか分からない……。きりもみ回転して地面に落ちて、更に転がる。
体中が痛い……。貰ったばかりの服もボロボロになってる。痛みで涙がポロポロ零れ落ちる。
「っよ、よくもマリコちゃんをぉぉぉお!!」
涙で滲むその先には、ガクガク震えながらも、弓を引き矢を射るカノンちゃんの姿、デモニアクベアの膝に矢が刺さっていた。でも致命傷を与えるのは難しい。
「このままじゃカノンちゃんが……。そんなの絶対に嫌だ!!」
その時、自分が叩き飛ばされた場所が。キノコの納屋前であることに気づく……。きっとそういう運命だったんだ……。
「食べればいいんでしょ! 食べれば! 友達のためだったらいくらでも食べてやるわよ!!」
私は、突然襲われた理不尽と体中の痛みに、苛立ちながら這いずる。納屋に入りキノコを貪る様に食べる。
ひとつ食べると痛みがなり……ふたつ食べると体が大きくなるのが分かった……。出れなくなる前に建物から出る。
私は、腕を納屋に突っ込んでキノコを大量に手に取る。
大きくなった私は、それを一口で食べる。当然口も大きくなっいる。さらに大きくなる私。
「うわぁぁぁ!!」
再び叫びデモニアクベアに飛び掛る私、デモニアクベアよりも頭ひとつ大きくなっている。
両手を押さえ込むように掴む。取っ組み合いだ! カノンちゃんも、私に当たらないように配慮しながら、矢で支援してくれている。
更に力一杯握り締める! デモニアクベアの手に私の指がめり込む!
グウァァア! ッガガァ!!
デモニアクベアが苦痛で咆えるが、そのまま押さえつけ上から力を入れると、デモニアクベアの背中から迸っていたオーラが、鋭い爪の生えた腕の形に変わる。奥の手ってヤツか……。
「させない!!」
言い切ると同時に、私は歯を食いしばり、デモニアクベアの鼻っ柱に頭突きをする。
ゴグ! っと鈍い音が鳴りデモニアクベアが崩れ落る。
私は、仰向けに倒れ唸っているデモニアクベアの足を持ち両脇に抱える。
さっき殴られて、きりもみ回転させられたお返しをしてやる!
「うっしゃぁぁぁーー!!」
デモニアクベアの足を持ち上げくるくるっと回す。ジャイアントスイング!
十回転くらい回したら自分の目が回ってきたので、池を目掛けてデモニアクベアをぶん投げる。
池に落ちると物凄い量の水しぶきを立てて、デモニアクベアが頭から突っ込む。
千鳥足でなんとか池まで歩く、私はまだ少し動いてるデモニアクベアの頭を持って力任せに沈める。
なかなかしぶとい。呼吸をしようともがくので、後頭部にグーパンチをお見舞いする。ゴグ! って音がしてデモニアクベアの勢いが弱まる。
私の腕力だと手だけで沈めるのは無理っぽい。
デモニアクベアの上に跨り、両足を持つ! 逆エビ固めだ!
「これでどうだぁぁ!」
抵抗する素振りがあったものの、しばらくするとデモニアクベアの力が抜ける。
「熊、獲ったどーー!!」
勝鬨を上げる私の様子を見て「マリコちゃーん!」っと呼びながらカノンちゃんが駆け寄ってくる。
「カノンちゃんもう大丈夫だよ!」
私が大きくなった手で、カノンちゃんを撫でると、手に抱きついてきた。
「無茶し過ぎだよ……飛ばされちゃった時、マリコちゃん死んじゃうって! 凄く心配したよ!」
「ごめん! 無我夢中だったんだよ……」
そして私は、手に抱きつき泣きじゃくるカノンちゃんに、シリアスになってる空気も関係なしにこう告げる。
「すみません……。元の大きさに戻りたいので、毒キノコ出してもらえますか?」
膨れっ面になりながら、無言で毒キノコを差し出してくれたのでペロッと食べる。体が縮む。体が痺れてパタっと倒れる。
カノンちゃんが、また私をお姫様だっこして家に運んでくれた。
リビングで私を一旦降ろし、動けない私の服を脱がせる。
動けない私に何する気!? っと一瞬驚く。でも自分の姿を改めて見て理由が直に分かる。
熊の初撃を食らった時に、服がボロボロのドロドロに汚されちゃったので、このままではベットが汚れちゃうのか。エッチな意味でなくて良かった。
キノコのおかげで怪我は全て治っているにも関わらず、カノンちゃんは壊れ物を扱うかのように、丁寧に体を拭いてくれてた。大切な宝物を拭くように。
私に替えの服を着せてベットに優しく寝かせる。
少しの沈黙を経て、私の手に手を乗せ、カノンちゃんが優しく語り掛ける。
「ねぇ、マリコちゃん……。マリコちゃん痺れて話せないだろうから一方的に話すね。エルフってとっても長生きなんだー。だから、王様や勇者の従者になって、その人の伝記や英雄譚を書いたり、歌にしたりするんだ……。その人が亡くなるまで、ずっとずっと……側にいて。まだ出合ったばかりだけど、わたし、マリコちゃんのずっと側にいたい……。 これから始まる、マリコちゃんの英雄譚を、私は書きたい! わたしをマリコちゃんの従者にしてください!」
乗せられていた手が少し震えていた……。
勇気を振り絞ってくれたのかな? 私なんかよりカノンちゃんの方が、よっぽど勇気有る者だよ。
異世界に来てなんにも分からない私に、色々してくれた陽気で優しくて涙もろいエルフが、一緒に居たいって言ってくれるんだ、断る理由なんてないよ。
「こちらこそどうぞコフッヒ!」
盛大に噛んだ! いい雰囲気だったのにチクショー。
「まだ麻痺してるんだから無理しなくていいよマリコちゃん!」
慌てるカノンちゃんに、痺れてる顔で無理やりスマイルすると、笑顔でうなずいてくれた。
その後、カノンちゃんは、私の頭を撫でてくれた。さっきの戦いが夢だったように感じられるくらい、心がリラックスするのが分かる。
心地よい睡魔に私は身をゆだねる。そういえばまだ深夜だった……。
***
すっかり日も出て自然と目が覚める。私の寝ているベットに、寄りかかるように寝ているカノンちゃん。
私が指でおでこを突くと、ゆっくりと目を開けた。私は挨拶をする。
「おはよう私の従者さん」
ニコニコするカノンちゃん。そして、二人でゆっくりと伸びをして立ち上がる。さあ冒険の始まりだ!
前回の白ビキニに抵抗があるマリコちゃん
友達のパンツもらう。宗教に勧誘される。風呂に入って寝る。




