後悔先に立たず
前回の巨人マリコ
キノコ食べて大きくなる。毒キノコ食べて戻る。
キノコ毒の痺れもとれ、今度は、キノコ抜きの昼食をとる。食後にハーブティーを頂く。まったりタイムである。
「さっきは本当にごめんねー。まさか大きくなるとは思わなかったよ」
「ほんとびっくりしたよー。我が家崩壊の危機だったよー」
ほっぺたを膨らませて、怒った素振りを見せるカノンちゃん。
しかし、色々やらかしたのは確かなので、カノンちゃんに説明することにする。でも、ゲームとか分からなそうなので、その辺は適当に……。
「実は、神様のお婆ちゃんに物語の主人公みたいな力が欲しいって言ったんだけど、私の想像してた物語とは別の主人公の力を貰っちゃったみたいで。その主人公キノコで大きくなるんだよ……」
「おぉー、巨人になって世界を救う勇者……。ちょっとカッコイイかも……」
「それはちょっと違うかも。でも、別の物語があって光の国から来た時間制限有りの英雄が強大なモンスと戦うお話もーってそうじゃなくって! 私、乙女! なので大きくなるとか恥ずかしいからこの力はもう封印!」
腕をクロスさせてばってんのジェスチャーをする。
「マリコちゃんグレイトマッシュ素手で倒してたし、まぁ大きくならなくても平気だよねー」
「私的には、モンスを素手で倒すのも乙女としてはちょっと……」
私は、椅子から立ち上がり綺麗にお辞儀をする。お願いする時はちゃんと畏まる。
「カノンさん! 私に武器の使い方を教えてください!」
「マリコちゃん頭なんて下げなくていいよ! それにわたし強くないよー。来る途中でも話たけどゴブリン5匹いたら逃げるくらいだもん」
「それでもカノンさんに教えて頂きたいです!」
「もー、マリコちゃんわかったからー。頭あーげーてー」
「よろしくお願いいたします!」
カノンちゃん、自分で弱いとは言っているけど、冒険者やってたらしいし魔法とかも使えそう。エルフだし。
「とりあえずマリコちゃんって武器は何を使うのー?」
「うぅーん、ちょっと考えます」
武器……武器……。巫女の武器っていうと、お払い棒とか神楽鈴なんだろうか? お払い棒は、ダディに「作ってー」って軽く言われて作ったこともある。
紙のわっさわっさしてる部分なんかは、色んな流派の作り方も知ってるけど、あれ紙だし……モンスに叩き付けたら破れること必至。
神楽鈴は、持ち手はナイフみたいになってるけど、家に有ったのは刃の代わりに鈴が付いてるだけだし、叩き付けたら鈴とれること必至。攻撃力皆無……。
攻撃力のあるそれっぽい武器……。錫杖? でもあれお坊さんのやつだよね? そもそも武器なのかも私には分からない……っま、いいか適当で!
「私、錫杖とか使ってみたいです」
「シャクジョウ? ってどんな武器?」
「なんか槍っぽくて先端にじゃらじゃらするのが付いてたと思います」
「うーん、わたし槍は持ってないやー。そもそも自給自足で貧乏だし、そこにあるウンバボスティック位しか貸して上げられる武器ってないやー」
カノンちゃんが「それー」っと言いながら壁に立てかけてあるそれを指差す。
「これバットじゃん!」
私が巨大化した時に、試しにぶっ叩いてもらったバットそのもだった。
「いやいや、これウンバボスティックって言ってウンバボ族の主力武器だよー。お金のない駆け出し冒険者も愛用する由緒ある武器だよー」
「ウンバボ族……」
日本のネタ公衆無線LANが、そんな名前だった気がした……。
「マリコちゃんウンバボ族ってすごいんだよ! 古代のウンバボ大帝は、こことは別の北大陸のすべてを制覇! すべての国家を共通言語にした覇者で、その子孫も他の大陸に進攻してすべての言語を統一した、古代から続く最強の民族なんだよ! そのウンバボ族の首都グンマで大量生産されているこのウンバボスティック! その信頼性は折り紙つき!」
異世界にグンマキター! ファンタジー感が台無しじゃない! きっとそのウンバボ大帝とやら日本人だよ! 群馬人だよ! 世界共通言語ってそれ異世界に来たのに日本語押し付けたんだよ多分!
「カノンちゃんってウンバボ族に関しては、なんかすっごく熱いね……」
「わたしも駆け出しの時、ダンジョンでウンバボスティック振り回してたからねー。ダンジョンでは、ウンバボ族のボルボンボさんに何度助けてもらったことか……。わたし、ただの荷物持ちだったけどそこで戦う技術を身につけたんだよー。まぁ弱いけど」
ボルボンボさん……異世界人の名前なんかヤバイ。
っじゃない! もっと興味のあることが! 私の目がらんらんとする。
「ダンジョン! ダンジョンがあるんですね! どんな所なんですか!?」
「うーん、わたしも駆け出し冒険者だしなんとも言えないよー。浅い階層ほど弱い魔物が出て、地下に行くほど魔物が強くなるよー。各階層の最も深い所にボスがいて、倒すと次の階層に行ける転移魔方陣が出てくる感じ、一回行った階層なら入り口の魔方陣から選んで飛べるから、好きな階層から探索ができるよ」
「おー、なんか冒険者! って感じですねー。どんなモンスがでるんですか!?」
「私の行ったダンジョンは、1階層スライムだったよー。っあ! そうそう! ダンジョンの魔物は倒すと消えちゃうんだよー。でも、ドロップアイテムが食べれるよ! 他にも魔石を落とすんだけど、これがお金と交換してもらえるんだー。大きいのは高値で売れるらしいよ!」
なんと! ダンジョンのモンスは、魔石残して消えるのか! 素材の解体とかグロイことしなくていいとか最高です!
「私! ダンジョンで稼ぐ冒険者になってみたいです!」
「うーん? マリコちゃんなら大丈夫かなー?」
「話それちゃったけどダンジョン行きたいし、私やっぱり強くなる必要があります! カノンちゃんご指導よろしくお願いいたします」
「了解! んじゃ、外で少し素振りしたり打ち込みの練習しよーよ」
「カノン先生! よろしくお願いいたします!」
カノンちゃんからバットを受け取り庭に出る。私、バットで冒険者になる!
***
「はーい。そこまでー」
カノンちゃんにバットの振り方をこ小一時間教えてもらった。意外と勉強になったというか、最初は親指をぎゅっと握ってたんだけど、親指を立てる様に教えてもらっただけで、手首の稼動範囲が広がったり、当たる瞬間にっぎゅ! っと力を入れるだけでも、攻撃力が段違いになってるっぽい。
「んじゃ次は、実戦だね! わたしが打ち込むからマリコちゃんは受け止めてねー。実戦では当てるよりも、当てられないのが大事だからねー。目が慣れればなんとかなるよー」
カノンちゃんがバットを構える! 「エイ!」っと私にバットを振り下ろす! 私は力いっぱいバットを握りそれに耐える!
「あいたー!!」
カランコロン! カノンちゃんがバットを手放す。
「マリコちゃん硬ったー! 手首痛めちゃったよー」
「ごっめーん! 力加減とか分からなくって」
捻った左手首にフーフー息を吹きかける。冷やしてから右手を添える。
「光の精霊よー、わたしの痛いの痛いの飛んで行けー痛いの治してー」
そう唱えるとカノンちゃんの右手がぼんやりと光る! これ回復魔法ってやつなのだろうか! しかし、突っ込むところはしっかり突っ込むべきである。
「カノンちゃん! 魔法の詠唱適当過ぎじゃない!?」
「わたし魔法詳しくないしー詠唱なんて分からないよー。無詠唱でもなんとかなるんだけど魔法は、叫べば威力が二倍! とか、魔力の節約! って聞いたから一応唱えてるんだよ」
「そんな適当でいいの!? わたしも簡単に魔法使えちゃったりするのかな!?」
「どーだろー。わたしは回復と生活にちょっと役立つくらいの魔法しか使えないしー。それに覚えるまでは、結構練習したんだよー」
「っちょ! っちょとやってみる!」
既に治ってるっぽいカノンちゃんの左手首に手を添えて、適当に魔法を詠唱する。
「光の精霊よ……。畏み畏み申す、傷つきたり我が友を癒し給へ……」
ノリノリで詠唱する。適当に。
次第に手が輝きだす。なんかできたっぽい、カノンちゃんがやった時よりは小さな光りだけど。
「マリコちゃんすごい……。初めてやったんだよね? これきっと神様の加護パワーだよー!」
「私、魔法もヤヴァイの?」
「マリコちゃんヤヴァイって異世界の言葉? どう意味なのー?」
「ヤヴァイは、凄いの最上級の言葉だよ」
「それじゃマリコちゃんは、最高にヤヴァイだねー」
ニコニコしながらヤヴァイを言うカノンちゃんを見て、私は、生前神社に来た外国人観光客を思い出していた。
若い日本人の観光客が、ヤバイヤバイ言いまくっていて、それを聞いた外国人観光客が私に「ヤヴァーイはナンデスカ?」っと質問してきたのだ……。
それに私は適当に答えた「ヤヴァイ イズ ジャパニーズ アメイジングーです」っと、その外国人観光客はヤヴァイが大層気に入ったらしく、写真を撮影しては「ヤヴァーイ」お守りを買っては「ヤヴァーイ」っと、最終的には一緒に来た他の外国人観光客の皆も「ヤヴァーイ」を連呼していた。
その日の夜、耳から「ヤヴァーイ」の幻聴が離れなかった。やってもうたと後悔の念に駆られた。
そして今、目の前でヤヴァイを連呼するカノンちゃん……。既視感を覚える。
異世界でもヤヴァイが流行らないよね? っと適当なことを言ってしまったことを後悔した。




