巨人襲来!!
前回のマリコちゃん
キノコをボコる。
モンスとの初バトルを無事に終え、カノンちゃんとの絆も深まった。
お腹も空いてきたので、カノンちゃんの家へ再び向かうことにする。
「っあ! 忘れてた! グレイトマッシュ回収するねー」
カノンちゃんが倒したキノコの頭に触れる。右手にこじゃれた模様が光りながら浮き出る。ッヒュっとキノコが消える。
「おぉー これって魔法ってやつですか?」
「えっへへ、これは、いいとこのエルフちゃんにしかできない無限収納魔法だよー。すっごいレアなんだよー」
キノコを回収して先に進む。このキノコは、毒も有るので食べるのには適さないけど、薬とかの材料になるらしい。
それにしても収納魔法はすっごい便利だ。カノンちゃん曰く便利なんだけど冒険者してる時に、他の人に知られると引っ張りだこにされるらしい。
倒したモンス運ぶのって大変そうそうだし、そりゃレアなら勧誘の嵐になりそう、紛争とか人が沢山集まる場合なんかも、食料運ぶだけでも重宝されるにきまってる。
私もやり方教えて欲しいくらいなのだけど、物心が付く前に施された、手の刻印を使うエルフの秘術だそうでカノンちゃんは、刻印の刻み方とか分からないそうだ。
「我が家見えてきたよー」
「おーなんかこじゃれてますねー」
カノンちゃんの家は、ログハウスっぽい感じの建物で、納屋っぽいのも隣接されている。近くに湧き水があり池もある。そこから水が流れてる。多分何処かの川と繋がってると思う。
「いい所でしょー野草も一杯生えてるから食べ放題だよー」
「鮮度抜群ですね」
「お昼にも使うのでちょっと採ってこー」
「山菜料理ですかー楽しみです」
一緒に、池に生えてる空芯菜っぽい野草の新芽を摘む。カノンちゃんが「新芽の方が美味しいんだよー」っと自慢げにレクチャーしてくれる。
その次は、家隣の納屋に入る。そこは、一定の長さに切られた丸太が、部屋一杯にあってキノコわっさわさ、キノコ採り放題である。
「これ前の住人の人が栽培してたんだってー」
「私キノコ好きなんでちょっとテンション上がります」
カノンちゃんの指示のもと、キノコも摘み摘みする。さっき倒したキノコのモンスは食べたくないけど、こっちのキノコは大歓迎だ。焼いて良し! 煮て良し!
「では我が家にご案内ー」
「おじゃましまーす。って入ったそばから肉肉肉ですね……」
「すごいでしょー! ここに引っ越してから狩りまくっちゃったよー。エルフの里の鹿は強いんだけどこっちの鹿ほんっとちょろいから、もー採れすぎで笑いが止らなかったよー」
強い鹿って……。それにしても、めっちゃ肉が吊るしてある。狩人って知らなかったら、悪魔とか召還する儀式でもしているのかと勘ぐってしまう位の量。
リビングと思われる部屋の壁一面がお肉だ。いつも肉として売ってる物を買っていた私、異世界との文化の違いを感じる……。
「んじゃ昼食作るのでその辺座ってくつろいでてー」
ダイニングテーブルの椅子に座り、料理ができるのを待つ。落ち着かない。一面肉では落ち着かない……。
でも、肉以外は実家が和式の家だった私にとっては、なんともこじゃれて見える。木製でできた雑貨なんか全て可愛く見える。
ぼーっとしつつ、そんな事を考えてると調理場からいい香りがしてくる……。
「できたよー本日のメニュー! 謎の草と謎キノコのバター炒め! こっちは、謎野菜と鹿肉の塩コショウスープ! パンは、一人一個しかないけど他はいくらでもあるのでお代わりするなら言ってねー」
「食材に謎多くない!?」
「野草の名前なんて知りませーん」
「まぁそうだよね。とにかく美味しそー! 頂きます!」
食材も採り放題なので、遠慮することなくもぐもぐ食べる。
「おいしい! 採れたて最高! バター味旨!」
調理場からしていた、食欲を誘う良い香りはバターだったのか! 異世界でもバターがあるのは嬉しいな。
まぁ、翌々考えてみると、過去の転生者が色々と文化を伝えていても変ではない、町とか行ったらクリームとかの甘味とかも普通にありそうな気がしてきた。
「え……」
突然カノンちゃんがお箸を落とす。エルフにお箸似合わない。
「カノンちゃんどうしたの?」
落としたお箸を拾うことなく、なんか目をゴシゴシとしている。
「なんかマリコちゃん……。デカくなってない?」
「っひゃ!」
お箸を持っている自分の手を見ると……。
「なんか! お箸ちっちゃ!!」
「いやいや! マリコちゃんがデカイんだって!」
「マジか……」
確かにさっきよりも天井が近くに感じる、でも服とかはきつくない……。服も大きくなってるのか? 天井は確か高めで3メートル位あったはず……。
あれ? 立ったら余裕で頭着きそうなんだけど。座ってた椅子も、端っこにちょこんと座ってる感じになってる。あれ? さらにデカくなった?
「私、成長期すぎやしませんか……?」
「成長期ってレベルじゃないよ!!」
ボケキャラっぽいカノンちゃんが突っ込んでいる! 非常事態だ!
「どうしよう……」
「どうしようもなにも、デカすぎで我が家から出る事もできないよー」
「「………………」」
「なんでこんな事に…………」
必死で原因を考える……。私、異世界に来てモンス退治……カノンちゃんと食材調達……昼食……。分からない。印象に残っていることを思い出そう。
モンス退治……踏み潰したらモンスぺったんこになってドン引きした……そういえば、あの時鳴った軽快な音……キノコ……キノコ……。
「あぁぁぁぁぁぁ!! あいつかぁぁぁ!!」
巨人になった私が咆哮したため、カノンちゃんがビビリ「うひぃぃ」と言いながらうずくまってガクブルしだす。
「ごめん! カノンちゃん! 取り乱しました!」
こっちをチラッチラッっとみるカノンちゃん……。トラウマとかになってないといいけど……。
「あと、なんとなくだけどデカくなった理由も分かったかも!」
絶対あれだ! 横スクロールアクションゲーム! あの主人公、キノコで体大きくなるし、敵を踏みつけてぺったんこにするし!
どうやったら小さくなる……。いや元の大きさに戻るか考える……。
「カノンちゃん……私をぶん殴ってください」
「わたしマリコちゃんを討伐なんてできないよ……」
「いやいや! 叩くだけで大丈夫だから!」
「うっうん……」
カノンちゃんが私の脛の辺りをバシン! っとパンチする。痛くも痒くもない。きっと手加減してくれたのだろう。
「カノンちゃんもっと思いっきり! 多分ダメージ与えないと戻らないから! なんなら棒みたいので叩いていいから!」
「っわ わかったよ!」
ゴソゴソと寝室を物色したカノンちゃんが戻ってくる。バットを持っている! 異世界にバットがあるとは……。
「いくよ! マリコちゃん!」
「ばっちこーい!」
ドバシン! 結構いい音がする!
「ノーダメージでございます……」
全然痛くない、スーパーなマリコになった私、どうやら相当硬いらしい。どうしよう……。元にもどれない。思い出せ私……どうすれば小さくなるか……。崖から落ちる? いや駄目だ! 死んでしまいます。 モンスにぶつかる? いや家から出れない……。いっそのこと壁ぶち破ってしまおうか……友達の家を?
「っあ! 良い方法思いついた! カノンちゃんあのキノコのモンス出して!」
「モンス? グレイトマッシュのことだね!」
カノンちゃんが直にキノコのモンスを取り出してくれる。見覚えのあるくたんとした状態の、渋い顔をした手足のあるキノコ……。
「カノンちゃんこいつ食べた時の毒って強い?」
「体が痺れるだけだと思うけど……マリコちゃん食べるの……?」
私は、無言でうなずいて、モンスキノコを頭から丸齧りする。食感はキノコだ……味は渋い、私の表情も渋くなる……。
デウデウ! 鈍い効果音が頭に響く!
「っあ! マリコちゃん小さくなってくよ!」
「…………」
痺れて崩れるように倒れる私。カノンちゃんが涙目で私を抱きかかえてくれた。このキノコモンスの毒、即効性か……。
「良かったね……元に戻れて……」
「っし……しび……しびび……」
痺れてろれつが回らない。痺れて動けない私を、カノンちゃんがお姫様抱っこしてベットに寝かせてくれた。
このキノコ使いようによっては、犯罪に使われそうだ。
「この葉っぱ噛むと少し楽になるよー。でも痺れが抜けるまで少しかかるから横になっててー」
ミントっぽい味の葉っぱを、噛み噛みすると十五分程で痺れが抜けた。
心配そうにベットの横に寄り添っていてくれた、カノンちゃんにお礼を言う。
しっかしお婆ちゃん……私の欲しかったゲームの主人公の力は、ワラワラ群がるモンスを、魔法や必殺技で蹴散らすアクションゲームのヤツ。
あぁ、あの主人公もアクションゲームでしたね、横スクロールだけど。
一般世間で欲しいゲームを婆ちゃんにおねだりすると、ゲームを間違えて買ってくるなんてあるあるなんだろうけど、まさか異世界チートでそれをされるなんて……。
乙女としてデカくなるとかアウトだし、元に戻るのにモンスなキノコ食べるとか嫌すぎる。あの渋い顔……夢にでそうだ。
「この力は、封印しよう……」
私は、一人静かに呟いた。




