主人公の力
前回の色々やらかしたマリコさん
エルフとお友達になる。
案内してもらい茂みを抜けると、ふたり通るのがやっとの獣道。なんか冒険してる感がでてきた。
カノンちゃんとは、すっかり打ち解け、お互いをちゃんづけで呼び合う中。
少し歩くと、ハンドシグナルで止まれの合図。足を止め、音を立てない様に注意する…。
カノンちゃんが矢を添えて弓を構える……。
ッヒュ!
「よし! 不意打ち成功ー」
カノンちゃんと一緒に、倒した獲物に歩み寄る。
なんか腰みのを着た、緑色のちっちゃいおっさん……。
頭に矢が刺さっていた。矢は、再利用するらしく引っこ抜く……。おぉ……グロイ……。
「私、初めてみるんだけど、これゴブリンってヤツですか?」
なんか左耳をつまんで、鉈で耳を削いでる狩人モードのカノンちゃんに聞いてみる。
「うんうんこれゴブリン。食べれるところないんだけど討伐すると小銭貰えるから一応ゲット。証拠にこれもってくんだよー」
削いだ耳を私に見せ付けてくる。生々しい。新鮮抜群だ。
「うへー、気持ち悪いから近づけないでよー」
しかめっ面する私を見て、ケタケタ笑いながらさらに近づけてくる。割といたずらっ子らしい。モンスを処理して、歩きながらついでに聞いてみる。
「この辺には、ほかにもゴブリンみたいなモンスいるんですか?」
「モンス? 魔物だったら森の深いところ行かないかぎり、危険なのは出てこないよー。ゴブリン以外だと、グレイトマッシュっていうキノコの大きいのくらいだよー。そもそも、わたし強くないから、危ないのいたら食べられちゃうし。ゴブリンだって五匹いたら走って逃げるよー」
「ん? キノコの大きいの? それ、ただの食材じゃないですか?」
「いや魔物だからもちろん動くよー。手足もあるし顔も渋い。あと食べても渋い、下処理しないと毒もあるので注意すべし」
渋い表情で話すカノンちゃん。モンス食べたんかい。
そんなやりを取りしながら歩いているとお出ましです。キノコお出ましです。
ガッサガッサと獣道の横から2匹? 2本? 自分の身長よりちょっと大きいキノコがでてくる。
「あれがグレイトマッシュってヤツですか?」
「マリコちゃん気をつけて! ああ見えてアイツら――」
カノンちゃんが言い切る前にキノコがダッシュしてくる! なんかめっちゃ足が速い!
見た目ドンくさそうなのに、渋い顔で短い足を高速で繰り出してる!
カノンちゃんが鉈で威嚇して一匹止める。でも、もう1匹が体当たりしてボフ! っと音を立て紫色の胞子をだす。いかにも毒って感じだ!
「助太刀します!」
太刀なんて持ってないけど言ってみた。前から一度言ってみたかった!
私も前に飛び出すと同時に、ワンツーパンチを浴びせる!
「幻の右!」
所撃を左手で軽く打ち、二撃目の右ストレートを渾身の力で打ち抜く! 某チャンピオンの必殺技をお見舞いだ!
キノコが三メートルほど吹っ飛ぶ。さすがチャンプの必殺技、モンスも吹っ飛びますわ。思いのほかいいパンチに「よし!」っとガッツポーズする。
カノンちゃんも、「おぉ……」っと私の動きに驚きながらも、もう1匹の眉間に「えい!」っと鉈を何度も叩きつける。
叩きつけられたキノコは、くたんっと横に倒れる。私のパンチしたキノコもくたんとしてる。どうやらやっつけたらしい……。
「マリコちゃん! まだ後ろに!」
後ろを振り向くと、十五メートル位離れたところにキノコがいる。
まだこちらに走ってくる様子もない。レッツ奇襲! ダッシュしてモンスに突っ込む。
「エイサー!」
ドロップキックをキノコの傘部分に食らわせる! 調子に乗ってPCメーカーっぽい掛け声が出る。
ペコ! っと軽快な音とともに、キノコがぺちゃんこにつぶれる。
「「っはぁ!?」」
私とカノンちゃんの声がハモる。キノコぺちゃんこになっとる!? 紙みたいにペッタンコである。ドンびき。
「すっご……マリコちゃんは、やっぱり勇者……」
カノンちゃんが呟いてる……。これはひくよね、私も勝利の余韻に浸るどころか、目の前で起こったトンデモ現象にびっくりだ。
私の体重何キロなのさ……想像するのも恐ろしい。乙女なのに……。
「っとっとりあえず、初勝利ぃーーー!」
微妙な空気をなんとかしたいので、勝ち鬨を上げ、両手でガッツポースをとり某チャンプに祈りを捧げる。倒したのは唯の雑魚モンスだけど……。
「やったねマリコちゃん! 今使った幻の右とエイサーっていうのはなに? 古代魔法?」
っう! キラキラした瞳でカノンちゃんが尋ねてくる。
「私魔法が無い世界から来たので魔法ではありません。幻の右は、私の居た世界で伝説の戦士が使っていた必殺技の見様見真似……。エイサーは、その、唯の掛け声……です。」
やってる時はノリノリなのだけど、後になって思い出すと小っ恥ずかしい。
自分が面白いと思って言った冗談を「それなにそれー? 説明してよー」って言われるのと同じくらい恥ずかしい。
ボケたら突っ込みが欲しい……学校では、私がボケると誰かしら突っ込んでくれることが多かった。時折「っえ キモ!」「それつまらないよ」っとバッサリ切るケイコちゃん……あれは、突っ込みではなく一刺しって友達では言ってたなぁ。まぁ刺してすぐに「じょーだんですぅー」っとフォローしてくれるまでが一連の行動なのでいい子なんだけど──
「マリコちゃん! なんか遠い目をしてたけど大丈夫!?」
「ごめん! ごめん! ちょっと元居た世界の友達のこと思い出しちゃって」
おっと、心配されてしまった。危険な顔をしていたっぽい。乙女なので気をつけねば。カノンちゃん心配顔だし。
「マリコちゃん、元の世界には帰らないの?」
「うん。多分帰りたくても帰れないと思うよ」
私元の世界で死んでるし……。
「じゃぁ元居た所のお友達には、もう会えないんだね……」
改めて言われて言葉を失う……。
そうだ、私、もう、友達にもダディ、弟くんにも会えない……。お別れとかちゃんとできなかったな……。自然と涙が溢れてくる。下唇を噛んでなんとか堪える。
「マリコちゃん……」
同じく涙目になったカノンちゃんが、私をギュっと抱きしめる。
「…………」
ちょっと堪えてみた。でもやっぱこのタイミングでハグされると、涙が零れ落ちてしまう。
我慢したぶん、出てくると止まらない。涙を流す私の背中を、カノンちゃんがやさしく摩ってくれる。
「私……大丈夫だよ……。向こうの友達には、もう会えないけどこの世界でもきっと素敵な友達と出会えるから。それにもう……カノンちゃんと友達になれたし」
ギュッとカノンちゃんを抱きしめ返す。カノンちゃんとの絆が深まった気がした。
ハグしていた手を離すと、カノンちゃんの顔に涙の後がガッツリ残ってる。もらい泣きしたみたい。
そして、ゴシゴシっと手で目を拭き、笑顔で私に言う。
「うん! それでよろしーい! では! もうお昼だし、わたしの家いこー!」
「うん! ありがとー。私もお腹減っちゃったよ」
悲しい時には、優しく手を伸ばしてくれる。そんな優く陽気なエルフに、私はお礼を言う。
さて、異世界人のお宅訪問、いったいどんな家なんだろう。武器とか壁に飾ってあったりすのかな?
始めての異世界文化交流に、私は胸を躍らせた。




