ヘチマ
前回の魔王の祭壇で神様にメタルを奉納したマリコさん
博物館を観光。演奏会をライブジャック。
ライブの熱冷めないままベリンダさんちに着いた私達はメイドさん達が用意してくれていた夕食を口いっぱいに頬張る。貴族さんちの料理は美味しい。
お酒の好きなベリンダさんアンネさんも最初からお酒飲んでるしお祭り騒ぎ。
御者の二人は馬車の見張りがあるので交代でご飯を食べるそうで先にトカゲ族のダンさんが飲みまくってる。いや見張り交代するなら飲んじゃダメだろっと野暮なことは言わない。
今日は別行動だったベリンダさんのお付のコゼットさんとドリスさんも楽しそうにお酒のんでる。この世界の人達はお酒が好きな人多いなー。
そしてお腹も一杯になった私、お風呂に入りたい。ライブで汗かいたし。
しかしここで問題発生。帰りが少し遅くなってしまったのでひとりづつ交代でお風呂に入ると最後に入る人が深夜になってしまう。ちょっと考えて私は言う。
「うーんベリンダさんちのお風呂って結構大きいから四人位なら一緒に入れるかな?」
「おーマリコちゃんと一緒にお風呂! いいねー」
「私もお供します」
「わーたぁしぃも一緒に入れるろぉー」
しまった! アンネさんの存在を忘れていた! この人と一緒に入ったら何されるか分からない! 回避しないと。
「四人だとちょっと狭いから小柄だしボニーさん一緒に入りましょう! 是非!」
「構いませんわ。私もせっかくお呼ばれしたのに迷惑をかけたくないわ」
「ボニーさんありがとうございます! あとベリンダさんアンネさん暴走しないように見ててくださいね!?」
「くぁwせdrftgyふじこ?」
謎返事だったベリンダさんを見るとでろんでろんな状態で右手に蒸留酒を持ってる。もしかしてこれ一気飲みしたの? 蒸留酒ってアルコール度数高いんですよね? メイドさん達止めてあげてよお宅のお嬢様壊れてますよ!?
そしてメル姉さんはちびちび蒸留酒を飲んでいて平気そうだったのでアンネさんのお酒のお供をしてもらい私達はお風呂に向かう。
脱衣所に着くとカノンちゃんが瞬時に着ていた服を格納して軽く掛け湯をしてから湯船に飛び込む。
収納魔法ってホント便利だなーっとか思ってたらカタリナちゃんが先に脱ぎ終わりカノンちゃん同様掛け湯してからゆっくり湯船に入る。少しプルプルしてる。熱いの苦手らしい。
私は湯船に入る前に体をガッツリ洗う派なのでカノンちゃんに石鹸とスポンジ状のヘチマを出してもらう。
雑貨屋で買ったヘチマのスポンジ。この世界では切って食器を洗うのに使うらしく体はタオルで拭くのが主流らしい。
しかし日本でも愛用していたヘチマーな私のマストアイテム。
私がヘチマに石鹸を擦りつけ泡立ててると遅れてきたボニーさんが入ってくる。
その姿に私は驚く! ロリっ娘体系! いやそっちじゃない! ボニーさん黒い猫耳と尻尾ついてるー!
「ボニーさんって獣人族の方だったんですか!?」
「えぇ……私の父と母は人族ですが祖父が獣人族ですから祖父に似たんですわ。耳以外は髪も瞳も背丈も全て母とそっくりなのですが。あとできればこれは秘密にしておいて貰えると助かるわ」
なんか気軽に聞いちゃダメな内容だったっぽい。深く突っ込まないでこのままスルーしようとヘチマを更に泡立てているとカノンちゃんが湯船でまったりしながら解説モードになる。
「マリコちゃーんボニーさんは北大陸のボー国の偉い人なんだよー。ボー国は、エルフの里のお隣で北大陸で帝都のアビオンに次ぐ規模で歴史有る大都市だよー。聖女ヴィナス様の生まれもボー国だし、建国の母と言われるランツァ・ボーはエンシェントドラゴンの加護を得た歴代でもっとも凄いとされる大魔法使いなんだよー。その子孫も皆すごいらしいよー。あと貴族紋章が孔雀でカッコイイー!」
「荷物持ちさんそれは少し違いますわ。ボー一族は代々長女が家督を相続しますが私は相続を放棄して兄様に譲りましたからもう貴族ではありませんわ」
そう言うとボニーさんは私をジーっと見つめてくる。
すっぽんぽんの状態なので見つめられると流石に恥ずかしいとか思っていたらボニーさんが「それ……」っと指差す。私のヘチマがめっちゃ泡立ってた。話に夢中になって泡立てすぎた。
私は「これヘチマなんですがよかったら使います? 癖になる気持ちよさですよ」っと差し出しボニーさんは受け取った泡だったヘチマで体を洗う。気持ちよさそうな顔してるしこの世界に新たにヘチマー文化が誕生だ。
私がカノンちゃんに追加のヘチマをお願いしてだしてもらう。また泡立てなきゃ。
ボニーさんは体を洗いながら話を続ける。
「あともうひとつ間違いがありますわ。ボー一族で強い魔力を持つのは孔雀青の瞳で生まれた者だけ……。兄様は金髪碧眼だったのでいつも嫉妬されてましたわ」
「その嫉妬から御家騒動が起きて南大陸に亡命されたのですか? ボニー様が争いで負ける姿は想像できないのですが」
無言モードだったカタリナちゃんが直球で確信にせまる。この子こういう時は遠慮ない。
「あながち間違いではありませんわ。建国の母と同じ翡翠色の髪に孔雀青の瞳で生まれた私は最大の当主候補でしたが私にはこの耳と尻尾がありますから……両親が早世し獣人族だった祖父が亡くなってからは家中には人族しかおらず味方は少なかったわ。それに兄様と争いなんて私にはできない……」
ボニーさんなんかしょんぼりしてしまった。カタリナちゃんは後でお仕置きしよう。
しかし終わってるみたいだけど家族の問題は根が深そう。私も実家の相続は弟くんが大学で神主の勉強してから引き継いでもらう予定だったんだよなー。巫女って退職早いし。
でももし私が継ぐんだーってなったら少なからず揉めたはず。それの凄い版がボニーさん。超めんどくさそうだ。
よし! 元気出してもらう! お姉さんが背中流してやる。
「まーまーボニーさん元気だしてくださいって。背中流してあげますよー」
「っえ、っあ? ありがとう」
ボニーさんのちっちゃな背中をヘチマで優しく洗う。
ヘチマは強く擦ると痛いけど訓練されたヘチマーである私は絶妙な力加減が可能なのだ。あぁー弟くん洗ってあげてたの思い出す。
絶妙な力加減が気持ちよかったらしくボニーさんも「あぁ……マリコさん。っきっ気持ちいぃ……」っとちょっと意味深な事を言ってる。
背中の下の方を洗っていると水を吸ってボリュームの縮んだ猫尻尾がある。
ここは手洗いで洗うべきなのだろうか? ヘチマに毛が絡みそうだし。
ヘチマで作ったあわあわを手に盛り尻尾の先からもみもみして洗う。
尻尾と体の付け根をもみもみしてるとボニーさんがめっちゃ艶かしい声をだす。これはアウトや! 私はッパっと手を離す。
「っなっなんかごめんなさい!」
「ごめんなさい私もつい気持ちよくって……」
「いいなー。マリコちゃん私も背中流してー」
そしてボニーさんが泡を洗い流し湯船に入り交代でカノンちゃんが湯船から出てきて私に背中を向けるのでヘチマで泡立てて洗ってあげる。
「マリコちゃんヘチマ気持ちーねー。これからは我が家でもこれ使うよー」
「っふっふっふ。ヘチマは使い慣れるまで難しいけどなれると最高だよ」
背中が洗い終わったので泡だったヘチマをカノンちゃんに渡しさっきボニーさんに渡したヘチマを再度泡立てる。私もそろそろ体洗いたい。
「マリコさん……。私も……。」
今度はお前かー! 湯船に首まで漬かったカタリナちゃんがほほをちょっと朱に染めて私を潤んだ眼差しで見つめる。やめて! 貴方の眼力は半端ないの! って前もこんな事あったよ。服オーダーした時か。
しかしカタリナちゃんはさっきボニーさん凹ませてたしここはスルーでも……。っあ、ついでだしお仕置きしよう。
カタリナちゃんに「いいよー」っと言ってこっちに来て座ってもらう。
でも地獄への直行では可愛そうなのでまずは天国を味わってもらおう。
「カタリナちゃんにはヘチマのスペシャルテクニックを見せてあげるよ」
「っえ? いいんですか? 何か凄そうですね?」
十分に水分を含んだヘチマに石鹸をカシャカシャっと大量に擦りつけもみもみする。
次は泡が垂れないように維持しながら少しずつお湯を足すのを何回か繰り返して大量のきめ細かい泡を作る。
その泡をヘチマの上から搾る様にして桶に移して更に手で擦る。ホイップクリームみたいにきめ細かい泡が完成。この泡洗顔にも使える優れ物である。
そして背中をピンっとして待ってるカタリナちゃん。姿勢いいなー。
カタリナちゃんの左右の肩と背中の三箇所にゆっくり泡をかける。垂れない泡なのでこんもり乗っかってる。
「あ……あ暖かい泡が……。こんな感触初めてです。マリコさん」
「っふっふっふ。ここからが本当の天国でっせお嬢ちゃん」
なんか悪乗りしてセクハラするおっさんっぽいことを言ってしまった。
桶に残っていた泡を両手に盛ってカタリナちゃんの背中を皮膚には触れず泡で撫でる様にして洗う。
次に両腕も同様に泡で洗ってあげる。そのままおっぱいにも泡を盛ってあげる。流石に洗いはしない。セクハラ過ぎるので。
後ろから両腕で抱えてる体勢だったのでついでに耳元で「さっきボニーさん凹ませてたからここからはお仕置きだよー」っとボソっと言い手に取ったヘチマで背中をゴシゴシっと強めに擦る。
「あっ痛! マリコさんっちょっちょっとー! 痛いですー」
「おしぃおきぃだべー」
もう一度湯船に入ってヒリヒリするがいい。さてカノンちゃん既に湯船に戻ってるし私もちゃっちゃっと体洗って湯船に入ろう。
体を洗ってから髪の毛も少し石鹸で泡立てて綺麗に洗い流す。
私は湯船に浸かってぼーっとしながら髪の毛の傷んだらは回復魔法で治るのかな? 体の一部だし治る気がするなーっとか考えてるとボニーさんが「お先に……」っと湯船から上がる。
ヘチマのダメージで背中の痛いカタリナちゃんも先に上がりそのあと少ししてから私とカノンちゃんもお風呂を出る。
ダイニングに戻ると屍累々。騎士さん三人が床に転がってる。返事が無いただの屍のようだ。
アンネさんはお腹抱えながら「っひゃっひゃっひゃ」っと笑いながらゴロゴロ床に転がってるし。服汚れちゃうよ。
あとダンさんと入れ替わりで食事していたカイさんも私達が入浴中に帰ってきたエラさんに「なんで私より先に酒飲んでんだ!」っとローキック連打されてるし。この二人はある意味平常運転だけどカオスだ。
正気っぽいメル姉さんに事情を聞く。
「メル姉さん何があったんですか? ベリンダさんとか大丈夫ですか?」
「あの三人は酔いつぶれてるだけだ。まー平気だろ」
「アンネさん転がってますけど……」
「あーあれはカノンのギルドカードの職業欄が家出少女だって教えたらツボに入ったみたいだ」
「そういえばボニーさんも確か家出少女でしたよー」
カイさんを蹴り飽きたっぽいエラさんがさらっとバラし顔を真っ赤にしたボニーさんが「今はちゃんとドールマスターですわ!!」っと慌てながらキャリーバックからギルドカードを引っ張り出して見せる。
「確かにドールマスターになってますねー。残念ですー」
すまし顔で毒を吐くエラさん。相手が元貴族でも容赦ない。
そしてこんな話をするとうちの家出少女も黙っていない。
カノンちゃんがギルドカードを収納から取り出し掲げる。
「よし! わたしもギルドカード更新する!」
カノンちゃんがギルドカードを両手で挟んで「こいーこいー狩人ー」っと言いながらカードを暖める。これだけでカードの更新できるのか。
そして恐る恐るカード見る。
カノン・ハイド (魔改造巫女):18
「カノンちゃんなんか変な職業になってるし年齢18!?」
「18はギルドランクだよ! でも巫女って確かマリコちゃんと同じやつ? やったー。ランクも10も上がってるよー」
エラさんも「魔改造巫女ですかー? 私も聞いたことない職業ですよー。改造されたんですか?」っと若干呆れぎみだ。
「マリコさん! 私も職業が気になります。そのうちギルドに登録しに行ってもいいですか?」
「そういえばカタリナちゃんまだギルド登録してなかったねダラに戻ったら登録しよっか?」
そう言うとエラさんが「無地のギルドカードの予備ありますよーこれ使ってくださーい」っとポシェットから無地のギルドカードを出して手渡す。
カタリナちゃんが早速手に挟んで「神の従者……神の従者……」っとブツブツいってから手を開きカードを見る。
カタリナ (コスプレイヤー):20
「コスプレイヤー? どんな職業なんでしょうか?」
そんなこと言われても回答に困るよ! 流石にこの世界にコスプレ文化はないでしょう! しかもカノンちゃんよりランク高いし! 訓練されたコスプレイヤーか!
エラさんも「聞いたことないですねー。ドラゴンスレイヤーって武器ありませんでした? 前衛職っぽいですねー」っと凄く適当な回答してるし。
適当にスルーしようと決めたところでカノンちゃんがとんでもないことを言い出す。
「カタリナちゃんすごーい。わたしが密かに下書きを始めたマリコちゃんの英雄譚の従者カタリナの部分に職業はコスプレイヤーって追記するよー」
出合ってばかりの頃に英雄譚書きたいって言ってたけどもう下書きはじめてたのか! もし私が本当に凄いことやったら英雄の仲間コスプレイヤーで歴史に残っちゃうよ!
そんな事を私が考えてるとカノンちゃんがマイペースに私に言う。
「マリコちゃんもちゃんと調べたいからカード更新してよー」
「うーんなんか怖いけどやってみるよ……」
気は進まないけど断る理由が見つからないので更新することに。せいぜいライブでメタル歌ったからメタル巫女とかヘドバン巫女とかくらいだよね。
私はドキドキしながら更新したギルドカード見る。
マリコ・セキ (ヘチマー):28
「のーーおぉぉ!! 巫女じゃなくなったー!!」
どうやらお風呂でやらかしすぎたらしい。何気にランク高い……。
私、訓練されたヘチマーです。
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