巫女神楽
前回の王様の前で巨大化して奇声を上げたマリコちゃん
お城で巨人化。博物館で山田さんの銅像を見る。
メル姉さんこと山田さんの銅像をみていると海パンに蝶ネクタイ姿の紳士なおじさんがメル姉さんに話しかけてくる。ふむ女神教の方ですね。日本だったら事案だよ。
「メルメナメヌナ様お久しぶりでございます。館長のゲイリーでございます」
「やぁ館長。久しぶりだな、今日は王城に行った帰りで仲間達がここを観光したいといってな」
「左様で御座いましたか。それでは私が皆様をご案内いたしましょう。メルメナメヌナ様はキノッシオの英雄で御座いますので」
「そうか助かるよ。皆! 館長が案内してくれるそうだ!」
そして海パン館長について順路を廻る。
最初は海パン館長の案内はちょっとーっと思ったけど詳しく教えてくれるので意外といい。私この大陸の文字読めないし。勉強しなきゃ。
そして百体位の歴代の優勝者の銅像を見終わると次は博物館に寄贈された武器防具や手形とかが飾られている部屋に案内される。
そこで見知った人を発見してベリンダさんが声を掛ける。
「ボニーじゃないか! 奇遇だな!」
「御機嫌ようベリンダ様。奇遇ですわね」
ダラの町の防衛戦でマスター達と一緒にいたドールマスターの人だ!
今日もゴスロリな格好で可愛いキャリーバックを引いている。この世界にこんな可愛いバックがあるなんて! 私も欲しい!
バックの上には赤と黄色の二体の人形がちょこんと座ってて可愛い。
私がそんな事を考える間もふたりの会話は続く。
「私達は先日の襲撃の報告に王城へ行ってきたところだ。ボニーはどうしたんだ? 観光か?」
「違いますわ。先日の襲撃の時にメリアが破損してしまいまして……」
バックを開けると中には右腕の付け根がばらばらになった緑の人形が入っている。ボニーさんは優しく緑の人形を抱きかかえながら頭を撫でながら言う。
「この子の修理を依頼しようと思ったのだけどドールの作成技術に優れたアルムの行方が分からなくてこの町に探しにきたのよ。もしかしたら北大陸に帰ってしまったのかもしれないわ」
困り顔のボニーさんに無言モードだったカタリナちゃんがおずおずと話しかける。
「すみません……。アルムは私の父です。劇団が盗賊に襲われた時に大怪我をしてしまい、先日まで女神教の診療所におりましたので。今はギルドで働いていると思います」
「よかった……。安心しましたわ。ダラに戻ったらお伺いするわ」
ボニーさんはホッとした表情で緑の人形を仕舞いアンネさんが「よかったな!」っと言い頭を撫でる。「お止めになって!」っとボニーさんが手を振り払う。このふたりは仲良しっぽい。
ボニーさんは私よりも身長低いから百五十センチ位かな? アンネさんは百七十有るか無いか位なので頭も撫で易い身長差。
そしてボニーさんも一緒になって博物館を廻る。疑問になったところは館長さんに聞けば色々教えてくれるし異世界博物館って結構楽しい。
一通り廻り終わって入り口に戻ってくる。
館長さんが「何か他にご希望ございますか?」っと言うとカノンちゃんが元気良く手を上げる。
「はい! 館長さん! キノッシオって魔王城の跡地に立てられたって本で読んだけど魔王の部屋とか見れるー?」
「流石エルフ様博識でいらっしゃる。残念ながら魔王城自体は数百年前に取り潰しされてしまいましたので魔王の部屋はございません」
「そうなんだー残念ー」
「しかしながら地下にある魔王の祭壇は現存しており今は舞台として使われております。舞台として使用するにあたり修繕はされておりますが当時の面影は十分感じられますよ」
それを聞いたメル姉さんが館長さんにお願いする。
「そうか館長! そこを案内してくれないか?」
「本日はこれから演奏会がありますが他ならぬメルメナメヌナ様がお望みとあれば勿論ご案内させていただきます。ご都合よろしければ演奏会もご覧になりますか?」
「私は構わないか皆も大丈夫か? ボニーも来るか?」
「演奏会とは久しぶりです。ご一緒させて頂きますわ」
他のみんなもOKっということで館長さんに案内されて地下の舞台に行く。途中にチケットを渡す場所があったけど私達は顔パス。ちょっとしたVIP気分。
舞台席に入ると中央部分が立ち見でその周りを囲むように椅子が設置されていた。
私達は案内されたところに二列に並んで座る。
舞台は魔王の祭壇って言うだけあって重厚な石造りで歴史を感じる。おどろおどろしい感じは無い。
周りは火が灯されたキャンドルで照らされてるのでここに沢山人が入ったら酸欠になるんじゃないかと心配になる。
館長に聞いたら「最新の魔道具で換気しておりますので大丈夫ですよ」っと言われる。異世界意外としっかりしてる。
その後館長はメル姉さんと小話してから席を立ちどっかにいってしまう。
十分程経つと観客も増えてくる。メル姉さんに握手を求める人とかが周りにいたけどそろそろ始めるらしいので戻ってもらう。
舞台袖から三人の美男美女が現れる。リュートっぽい楽器と笛とピアノの三人で演奏するらしい。
そして館長がマイクを持って挨拶をする。ってマイクあるの!?
「本日はエリアン楽団の演奏会にお越し頂きありがとうございます。お越しになられたお客様の中には、闘技場で熱狂された方もいらっしゃるのでは無いのでしょうか? そんな方々もエリアン楽団の美しい演奏で疲れた心を癒して頂ければ幸いです」
館長の前説が終わり頭を下げ拍手が響く。館長が舞台袖に入り演奏が始まる。
美しい演奏が流れ皆が耳を傾け演奏を聴く。
私には正直物足りないっていうか楽団なのに三人かい! 日本でオーケストラとか聞いた事の有る現代人にはちょっと物足りない。
でも舞台は趣あるし演奏も美しいのでの雰囲気を楽しむ。
三曲が終わり一旦休憩。また館長が舞台中央に出てくるが様子かおかしい。
マイクを手でトントンやってる。なんか音がでないっぽい。トラブル発生だ。
こっちの世界でも地球と同じようなトラブルあるんだーとか思ってたら不意に頭の中から声が聞こえるマリーシュさんの声だ!
『我は神……今ここに神の使いが居る……その者よ舞台に上がるのだ……』
観客達がどよめき「何が起きてるんだ!? 声が直接頭に聞こえてくるぞ!」と言ってる。この声皆に聞こえてるっぽい。
『よーマリリンおひさー。ちなみにこれはマリリンだけにしか聞こえてないよー。神の祭壇ってのは神様へ捧げものを奉納する場所だぜーこんなゆるい音楽じゃつまんないっつーの、マリリンよ! ライブジャックだ! 一発かましてやれ!』
「っちょ! 何言ってるんですか! 私、舞台出ても何もできませんよ!?」
『ダイジョブダイジョブー、マリリンのために芸能の神に色々聞いてきたから加護の送り方変えて音楽チートに切り替えるからー。やり方も頭に直接伝わるからへーきへーき』
マリーシュさん行き成りすぎるよ! っと思っていたらなんか私や仲間達が青白い光に包まれる。観客にガン見されてるよ。
その時マイクが直ったようで館長が「神のお使いの方々舞台の上にお願いいたします……」っと言う。
私達はおずおずと舞台の上に上がる……。青白い光に包まれた時に今から私が何をやるのかが分かった……。マジでやるのかこれ。
私が舞台中央に立ち少し後ろの左右にカノンちゃんとカタリナちゃんの巫女服もどきがふたり。
更に後ろボニーさん、ベリンダさん、アンネさんが並びその後ろにメル姉さんが居る。
皆もこれから何が起こるんだって感じでオロオロしている。私もオロオロする。
『さーマリリン! 魔法の言葉を唱えるのだー』
もーやけくそだー! 私は右手を掲げ叫ぶ!
「マリコマジック!! 神器召還!!」
魔方陣が現れ私の衣服が光輝くエフェクト付きで早替わりしてイヤホンマイクが装着され足元からマイクが浮き上がる。しかもマイクが神楽鈴の先端についてるとか変に凝ってるし! イヤホンマイク装着してるしマイク二つも要らないでしょ!
せめてものも救いは羽織ってる衣装が改造千早だけど露出が少ないことくらいか……。
私が「どこの魔法少女だよ!」っとひとり突っ込みをする最中もマリコマジックは進行中。
カノンちゃんとカタリナちゃんもイヤホンマイクが装備され「マリコちゃんすごいよー。頭の中に音楽と振り付けが流れてきたよ!」「なんという神のみわざ……素晴らしい……」っとわくわくさせている。
ボニーさんの足元からはベースが現れベリンダさんアンネさんはギターを手にしている。
ベリンダさんだけは「何故楽器を触っただけで演奏の仕方が分かるんだ!?」っと動揺している。あたりまえだ!
一番後ろのメル姉さんはドラムに座って既にスティックをにぎにぎして叩きたくて仕方がない様子だ。なんか超似合ってる。
楽器が行き渡ると部屋を照らしていたキャンドルが一斉に消え、私の持ってた神楽鈴マイクから光の玉が何個も飛び出す。
私にはこれが何か分かる。照明とスピーカーだ。
そしてふと思出だす。ちっちゃい時から従妹の巫女さんと一緒にがんばって練習して、ふたりで巫女神楽を祈願奉納した時のこと。
緊張する中で神楽鈴のシャン、シャンっと鳴る厳かな雰囲気が私は大好きだったことを……。
そんなことを考えているとメル姉さんが我慢できなかったらしくドラムをズガガガガガガガ――っと高速で叩きだす。
私は祭事は大好きだけどなんで! なんで! よりにもよってヘヴィメタルなんだよぉぉぉ!! 皆も待ってる! やるしかない! 私は絶叫にも似た甲高い叫びを上げる!
「あああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
一斉に他の皆も楽器を演奏する。物凄い轟音、物凄い早弾き。
楽器を持った瞬間に演奏できるチートがヤヴァイ。努力を重ねた元居た世界のミュージシャン達に謝れと言いたくなるレベルだ!
カノンちゃん、カタリナちゃんは音楽にあわせ中腰状態で腕をキレッキレでブンブン振り回してユニゾンダンスしてる。
激しいリズムだけど私も一緒にブンブン腕を振る。ヤヴァイ楽しくなってきた! そんな時またマリーシュさんの声が聞こえる!
『マリリンマジでやりやがった! 最高!! このまま観客を盛りげろー! 巫女神楽の奉納だー!』
「オッケー! マイゴッド!」
ノリノリになった私は、メル姉さんの高速ドラムのリズムに合わせて腕を振り上げ「ハイ! ハイ! ハイ! ――」っと連呼する。指は中指と薬指を折り曲げる。なんだったけ? メロイックサイン? の形にする。
私に続いてカノンちゃん、カタリナちゃんも「ハイ! ハイ! ハイ! ――」っと連呼し次第に立見席に居る観客達もノリノリで「「「ハイ! ハイ! ハイ! ――」」」と返してくれるようになり座席の観客達も中央の立見席に集まりだした。ちょっとしたアイドル気分になる。
そこで私はまた叫びそして歌いだす。一度も歌ったこと無い曲なのに不思議に歌詞が頭に浮かび気持ちよく歌える。ヤヴァイ。
ギターソロにはいるとスポットライトの当たるベリンダさんが早弾きを披露。
途中でアンネさんが背中合わせで立ち引き継いで早弾きをする。
ソロ部分が終わると待ってましたと言わんばかりにメル姉さんの激しいドラムが復活する。
私は激しいリズムの中、腕を掲げ声を出しピョンピョン跳ねる。観客達もジャンプして答えてくれる。これがライブか! こんな一体感初めてだ!
二曲目に入る。この曲はカノンちゃん、カタリナちゃんが私と一緒に歌うツインボーカルのパートが多い曲。
チートのおかげでキレッキレのダンスをしながら綺麗で荒々しいメタルが歌える。
ベースソロではボニーさんが二体の人形を操りベースを弾かせる。一番の見せ場なのに自分で弾かないとか有る意味クールだ!
有頂天な私は、ソロパートが終わるとメル姉さんの激しいドラムに合わせてヘッドバンギングで髪を振り回す。受け取れマイゴッドー!!
カノンちゃん、カタリナちゃんもブンブン髪を振り乱し私が観客席を見ると何人かの観客がヘドバンしてるじゃないですか! 異世界にヘッドバンガーが誕生した!
三曲目! 今歌えるのはこの三曲だけだ! 全力だすぞ! 最初から全力だけど!
私がシャウトして演奏がはじまる。メル姉さんの激しいドラムは衰えることを知らないこの人マジ体力凄い。照明も本気出してますって感じでめっちゃ点滅してる。
私が歌いカノンちゃん、カタリナちゃんが「ハイ! ハイ!」っと観客を盛り上げる。
そしてこの曲の最大の見せ場ドラムソロ! メル姉さんが人外と言わざるを得ない高速ドラムを披露する。ソロパートが終わると観客席からから歓声と拍手が起こり、私達も思わず拍手してしまう。
そして最後のサビを歌いながらカノンちゃん、カタリナちゃんの手を繋ぎ曲の最後に同時にジャンプした。物凄い充実感だ……。
観客の歓声の中、私が余韻に浸っているとまた頭の中に声が聞こえてくる。
『神への祈念の舞確かに受け取った! この世界の全ての者に幸多からんことを!』
マリーシュさんの声が頭に響くと照明が消え元の明かりに戻る。
館長が舞台袖から現れて静まり返った舞台で語る。
「私も長年館長をしておりますが神託を受けたのは初めてのことで驚いております……。そしてこのような荒々しくも美しい演奏を聴いたのも初めてです。皆がひとつになる一体感、言葉では表せない体験でした。そう皆様は伝説が生まれる瞬間に立ち会われたのです。この貴重な体験をさせてくれた神の使いの方々に拍手を!!」
館長が言い切ると同時に再度歓声が起きる。私は全力で「ありがとー!」っと挨拶をして皆と舞台袖に入った。
舞台袖に入るとメル姉さんが拳を突き出してくるので皆で拳ををコツンっとぶつけ合う。大音量の性で耳が可笑しくなってるけど皆笑顔だ。
ボニーさんとはほとんど話したことも無かった。でも今は完全に仲間って感じがする。目が合って思わずハグしてしまった。
観客が退場した後はカノンちゃんに召還した楽器をしまってもらう。これ演奏が終わっても残るパターンらしい。
そして皆で幌馬車に乗りベリンダさんちに向かう。ボニーさんも一緒。
お腹も減ってるしライブの後は勿論打ち上げでしょ。
まったく私の神様は無茶振りをなさる。でも本当に楽しかったデス!
テラフォーマーズリベンジの聖飢魔IIが歌うOPを聞いててなんとなく書きたくなって書いたのに内容がBABYMETALっぽくなってて不思議。
尚、メタルのライブは危険です。ブリーフ一枚亀甲縛りのお兄さんがいた事もあります。
良い子も悪い子も初心者の場合は、お友達と一緒に会場に行きましょう。
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