キノコの王様
前回の魔改造巫女エルフの後ろをついて歩くマリコちゃん
友達の好きな花を食う。お使いクエストがんばる。
王城に着くと遠目で見た印象と違い建物の大きさが良くわかる。二十メートル級になった私よりデカイ。
見た目はヨーロッパのお城って感じでなんか素敵。綺麗なお姫様とかいそう。
立派な彫刻のされた城門にたどり着くと案の定麻袋姿のカイさんが近衛兵に止められる。城内に入るのは私達だけなのでさほど問題にもならなかった。
待合室に案内されお茶を頂きながら待ってるとカノンちゃんが高価と思われるインテリアを触り、壊しそうなので注意する。
逆にカタリナちゃんは既に緊張マックスなのかプルプルしていて私もなんだか緊張してくる。気持ちを落ち着けねば。
メル姉さんはいつもと変わらない感じだし気をまぎらわせたいしちょっと話そう。
「メル姉さんは緊張しないんですか? 私今から王様に会うんだと思うと緊張しちゃって」
「あー、私はキノ王祭で褒賞もらった時に会ってるからな。王様っといってもまだ若いからマリコもそれほど緊張しないと思うぞ」
ベリンダさんが補足して言う。
「先王が早世して十歳の若さで即位されたからな。今年十四歳になられる。だが若いといって無礼な態度はとるなよ。私の仕える王なのだからな」
「はい勿論です。カノンちゃん王様の前では礼儀正しくしてね」
「わかってるよー。大丈夫ー」
しばらくすると王様の準備ができたらしく謁見の間に案内される。
謁見の間には王様以外にも側近っぽい人や近衛兵も二十人くらい並んで立っていた。
そして鎮座する若くてイケメンの王様とご対面。
しかしイケメンでもこれはない、マッシュルームカットだ!
その髪型私の国では公然ワイセツカットって言うんですよって言ってやりたい。
そんな事を考えていると突然王様の隣にいたキノコカットの側近っぽいおっさんが叫ぶ。
「キノ国王マッシュ・キノ陛下の、おなーりいぃー! キーノッコ!」
「「「キーノッコ!!」」」
側近のおっさんが叫ぶと続いて近衛兵達も声を上げる。行き成り叫ばないでよ思わずビックっとしちゃったよ。
側近のおっさんがドヤ顔をさせるとベリンダさんが一歩前に出て挨拶をする。
「お久しぶりです陛下。シモン・ダラ公爵の娘、ベリンダ・ダラ登城いたしました」
「久しぶりベリンダ、よく来てくれた。ダラの町の防衛お疲れ様。後ろにいるのは前回の王祭で一位だったウンバボ族の者だな。ウンバボ族の活躍は私の耳にも入っているよ。礼を言う」
「気にするな、戦いの先駆けはいつの時代もウンバボ族。大切なものを守るためならいくらでも力を貸すさ。それに防衛できたのは町の皆の力あってだ、私一人の力じゃないしな」
キノコの王様は、私が想像していたよりもフレンドリーな王様っぽいなー。メル姉さんはタメ口で話してるし。
取り合えず様子を伺っていたら王様が私に話しかけてきた。
「活躍といえば自ら巨大化して巨大な魔物を倒したマリコと言う者がいるそうだな? ここに来ているのか?」
「はい、私でございます。マリコ・セキと申します」
「ハハハ! 巨人を素手で倒したと聞いていたのでどんな怪物かと思ったが普通なんだな。どうやって巨大化したんだ?」
笑いながら質問する王様。やっぱりデカクなること聞かれたかー。
神の加護とか言うと騒ぎになりそうなので適当に誤魔化そう。
「はい、お答えします。特殊な体質によりキノコを食すことで身体が大きくなります。原因は不明です」
「特殊体質か……聞いたこともないな。この場で巨大化してもらうことは可能か?」
「できないことはございませんが巨大化することで建物から出れなくなったり破壊してしまう可能性がありますので控えさせて頂きたく……」
「ならば訓練所で行おう! バルダ! 彼女達を訓練所へ!」
王様の側に居たキノコカットの老戦士っぽいバルダさんが「キーノッコ!」っと掛け声を上げてから「訓練所までご案内いたします」っと言うので着いていく。
王様は着いてこないで別のところへ行く様子。っえ? 見に来ないの?
お城の庭っぽい所を抜け訓練所に着くとそこは学校の体育館位の広さの場所で木剣や槍や盾が立てかけてあるいかにも訓練しますって感じの場所だった。
バルダさんが「陛下ご到着までしばらくお待ちください」っと言うので日陰でぼーっとする。
しばらくすると「陛下ご到着致しました」と言われ訓練所を囲ってる城壁をみると上の方に貴賓席っぽい場所から陛下が手を振りながら「マリコーやってくれー」って言ってる。なんか威厳がない。王様って感じしないけど接し易くていいや。
私はカノンちゃんに「キノコ二本ちょーだい」っとお願いしてキノコを受け取り一本づつもぐもぐ頂く。
一本食べると三メートル強くらいになって二本目食べると六メートルを超える大きさになった。
王様は「おーデカイなー」っと喜び近衛の人達は「なんと……」「デカイ!」っとざわめく。乙女にデカイとは失礼な。
私はデカイとなんか落ち着かない、早く元の大きさに戻りたいので王様に言う。
「陛下お気に召しましたでしょうか? 元の大きさに戻っても構いませんか?」
「っちょ! ちょっと待ってくれ! 近くで見てみたい!」
王様はテンション高くそう言うと走って部屋を出る。慌てて側近達も王様を追いかける。
多分万が一にも王様に危険が及ばないように貴賓室から見てたのに近くで見たいとか王様が言い出したので側近は気が気でないのかな?
王様はダッシュで私の足元まで来て「はぁはぁ」っと息を切らしながらと上を見上げる。そしてあからさまにガッカリした顔を見せる。
こいつ……今絶対パンツ見ようとしただろ……。残念でしたね陛下、今日はホットパンツでガードしてますわ。
そして王様が悔しそうボソっと言う「二つ名の戦場の白いパンチラってのは嘘だったのか……」多分誰にも聞こえてない小さな声だが神様からの加護のおかげかマリコイヤーは地獄耳。
王様をぶっ飛ばす訳には流石にいかないのでダラの町に帰ったら私に変な二つ名付けたヤツをぶっ飛ばそうと心に誓う。
そんなことをしていると側近の人達が来て「陛下! 護衛の者もおりますので突然動かれては困ります」っと王様を諌める。
王様は「すまん、すまん」っと気軽に謝り次はカノンちゃんに話しかける。
「そこのエルフが荷物持ちのカノンだな。例の巨人今ここで出せるか?」
「はいなーかしこまりましたへーか。大きいし上手く出せるか分からないよーみんな下がってー」
少し青い顔したカノンちゃんが皆を城壁付近まで下がらせると「だすよー」っと言い黒い巨人を取り出す。きっとトラウマの性で大きい巨人出すのが怖いんだと思う。
何もない空間からッシュっと巨人が出て私達が居る所とは違う城壁に倒れそうになる。っちょ! このままでは壁とか壊しちゃう!
私は慌てて巨人の後ろに回り支える。しかし今の私は六メートル級マリコなので倒れてくる二十メートル級の巨人を支えるのはキツイ。
「ヒンニャァ!! ぅおぉおんどりゃぁぁぁぁ!!!」
気合を入れるつもりが変な奇声をあげてしまう。小っ恥ずかしい。
でも私の羞恥心と引き換えに巨人をうまいこと訓練所に寝かせることに成功。
カノンちゃんが泣き出して私のスネに抱きつき「マリコちゃん、ごめんねごめんね」っと何度も謝る。
私は体を元の大きさに戻してカノンちゃんをハグして「大丈夫だよー」頭を撫でる。
王様が呆然としている。私の奇声なのかそれとも巨人が倒れそうになったことなのかどっちに驚いたかは分からないけど。
側近の人達は巨人の大きさに驚いてるらしく「こんな化け物が町を襲ったのか!?」「我々は同じ境遇でこれを撃退できるのか!?」っとざわざわしている。
カノンちゃんも泣きやみ正気に戻った王様が私達に言う。
「これほどの大きさの魔物が町に迫っていたとは正直驚いたよ。そしてその魔物を倒したマリコの力も垣間見れ、キノ城戦力の強化基準の良い参考になった。ありがとう」
お礼を言う王様にベリンダさんがビッシっとした姿勢で返事をする。
「陛下のご期待にそう事ができ光栄です」
「ああ、これからもキノ国のため尽力を頼むよ。尚、各自褒賞を授与する。だが今は謁見の間に戻る時間が惜しい。後ほどダラ邸に持って行かせるよう手配しよう」
「っは! 陛下、謹んで頂戴いたします」
そして王様が左手を軽く上げると側近のキノコカットのおっさんが「これにて謁見、おひらきぃぃー! キーノッコ!!」っと叫びまたドヤ顔をする。ここでドヤ顔は必須らしい。
王様はそのまま巨人の周りでバルダとか言ってた老戦士の人とかを集めて軍議を始めた。
そして執事っぽいおじさんに案内されお城の外に出る。ふーやっと終わった。偉い人が居るとやっぱり居心地は良くないね。
***
私達は、お城の跳ね橋の前で既に待っていたギルドの幌馬車に乗り込み、特に用事もないのでベリンダさんの別邸に向かう。
幌馬車に揺られていると見知った後ろ姿を偶然発見。アンネさんだ。
ベリンダさんが声を掛けるとアンネさんがこちらに近づいて来る。
「おー! 丁度良かった乗っけてくれー」
「アンネお前いったい何持ってるんだ?」
アンネさんは重たそうな木箱を大事そうに両手で抱えて言う。
「蒸留酒! 分けるから運んでくれ……」
「まったくお前というヤツは……言ってくれれば家の者に買いに行かせたものを。さあ馬車に乗せ……あーカノン収納たのめるか?」
「はいなー」
カノンちゃんが元気良く返事をしてお酒を収納しアンネさんもついでと言い合流して馬車に乗り込み私の隣に座り話しかけてくる。
「マリコー今から何処行くんだー?」
「特に用事も無いのでこのままベリンダさんのお屋敷に向かうところですよ」
「まだ時間あるしどっかいこーよー。マリコ観光したいとか言ってたよな?」
私は「うーん」っと言いながら考える確かにまだ体感で午後三時位かな? 異世界観光結構楽しそうだなーっとか考えてるとカノンちゃんが言う。
「はいはい! わたしキノッシオ行ってみたーい! 円形闘技場の催し物も気になるけど隣接する博物館も行きたい!」
「博物館私も興味あるよ、行こっか? ベリンダさん今からキノッシオ行ってもいいですか?」
「あぁ勿論だ。カイ! 行き先の変更だ! キノッシオまで頼む!」
運転するカイさんが「畏まりました」と言うと私の前に座っていたメル姉さんがちょっとはにかんだ顔で「ちょっと恥ずかしいな」っとボソっと言う。
メル姉さん去年のなんか大きい大会で優勝したらしいしきっと凄い人気なんだろうなー。
「メル姉さん何かあったんですか?」
「いや……まぁ行けば分かるさ」
意味深な発言をするメル姉さんを問いただすけど「お楽しみだ」「見ればわかるさ」っとしか言わない。
無理に問いただすのもアレなので雑談に切り替えしばし馬車に揺られるとキノッシオに到着。建物をは石造りで中々重厚で古びたところもあり歴史を感じる。
馬車は、カイさんとダンさんに任せて降りた私達はキノッシオの中に入り入場料三百円を払う。
闘技場の観客席に入ると魔物と戦う剣闘士達の雄たけびと観客達の歓声で熱狂の嵐。
メル姉さんの解説によると今日は捕まえた魔物を倒すまでの時間で賭けが行われていて魔物は捕まえる専門の冒険者の人が現地で檻に入れて運んでくるらしい。
そして私達も備え付けの椅子に座り観戦。
うん! グロイ! ダンジョンの魔物と違って消滅して魔石になる訳じゃないので正直あまり良い気分にはなれない。
心なしか観客も男性が多いし女性にはあまり人気ないのかもっと思ってたらカノンちゃんとアンネさんは大盛り上がりで「いけー」「掻っ切れー!」っと声援を送っる。
でも盛り上がってるのは二人だけなので一試合見て早々に闘技場を後にする。
普段魔物と戦うことの無い人達が見たり賭けしたりすれば熱狂するかもしれないけど何度も魔物を倒してる私達にはさほど面白いものでもないよね。
闘技場の次は併設される博物館に入る。
そして入り口のど真ん中に見知った人の躍動の感溢れる銅像が……。
「これってボルボンボさんとメル姉さん……」
「あー、ちょっと恥ずかしいな……。キノ王祭の歴代の優勝者は銅像にされるんだ」
「メル姉の銅像! カッコイイー! 他にもあるの!?」
「いや、これだけだ。一度優勝すると次回から参加できなくなるからな。そういえばこれ、メリッサが作ったんだぞ」
カノンちゃんが「へーそうなんだー」っと駆け寄り銅像をペタペタと触る。
しかしこの銅像凄い。めっちゃ躍動感ある。
ボルボンボさんの雄たけびが今にも聞こえてきそうだしメル姉さんの構えるバットもこのまま振り下ろしてくるんじゃないかって思える完成度。やや背中合わせで置かれるこの銅像、いったい何と戦ってるんだ? って感じである。
銅像の足元のプレートが有り読めないけど文字が書いてあるのでカノンちゃんに読んでもらうと……。
「百十一回キノ王祭優勝者メルメナメヌナ・ヤマダって書いてあるよー」
不意を突かれて噴出しそうになる! ウンバボ族、苗字山田なのか!!
「こんにちは山田さん……」
「そういえばマリコには私の家名は教えて居なかったか? まーヤマダ家はグンマでも歴史ある家系ではあるが呼び名は今まで通りで構わないぞ」
まさか異世界で山田さんに会うとは、ウンバボ族はマジヤヴァイ!
ブックマーク登録・評価いただけると励みになります!




