第6話 大きな池から現れた恐怖の大グモ(1)
柿五郎と座敷童子は、魔の山へ向かうために上っていた坂道から池へ寄ることにしました。2人が立ち寄ったところは、薄暗い森の中に囲まれた中にポツンとたたずむ大きな池です。
「えへへ、これから池の中へ入って、うんちで汚れたところを洗ってくるよ!」
柿五郎は、座敷童子に黄色いうんちでたっぷり汚れた自分のお尻を自慢げに見せました。それは、トウセン坊にとどめを刺した立派な証拠といえるものです。しかし、うんちで汚れたお尻をそのままにしておくわけにはいきません。
柿五郎は、大きな池の中に太もものところまで踏み入れると、すぐに汚れたお尻を池の水できれいにしています。それを見守る座敷童子は、池の中に入った柿五郎に注意を促そうと口を開きました。
「柿五郎くん、これ以上進んだら深みに入るから気をつけてね」
柿五郎は、いつも近くの川で水汲みをしていますが、まだ5歳児なのでまだ泳ぐことができません。このまま池の深みにはまったら、柿五郎は泳げずにおぼれて命を落とす可能性が十分にあり得ます。しかし、注意しなければならないのはそれだけではありません。
「カァ~! カァ~! カァ~!」「バサバサバサバサバサッ!」
「わわわっ、まだお化けや幽霊がいるんじゃ……」
森の中でカラスの鳴き声や羽音が聞こえるたびに、池の中にいる柿五郎は再び身震いし始めました。いくらトウセン坊をやっつけたからといっても、柿五郎が相変わらず妖怪や幽霊を極度に恐がることに変わりありません。
柿五郎は、妖怪たちに出会う前に池から出ようとしました。しかし、そのときのことです。
「ぐふふふふ! 誰も入ることのないこの池にくるとは、いい度胸をしているなあ」
「う、うわわっ! 池の中から、大きなクモが出たああっ!」
池の中から不気味な笑い声が聞こえると、大きな水グモが柿五郎の目の前に姿を現しました。これを見た途端、柿五郎は池の縁で思わず尻餅をつくと、あまりの恐ろしさに動くことができません。




