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銀河戦国記ノヴァルナ 最終章:ゆめ幻の如くなり  作者: 潮崎 晶
第1話:銀河無双のポジトロンランス
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9/20

#04-01-05

 


「く!…先行のBSI部隊は囮か!」


 小惑星帯の内部へ立て続けに突入していく、タ・クェルダ軍『騎兵団』重装甲突撃艇を振り返り、防御第一陣を難なく突破されたベルナルスは奥歯を噛み締める。


 約百基の重装甲突撃艇から現れた、『シラヌイ』騎兵団仕様機の数はその三倍。外殻装甲板が大きく開くと、手にしていた伸縮式の両刃の鑓、ポジトロンデュアルランスの柄が勢い良く伸びる。さらに開いた突撃艇の装甲ハッチは、そのまま『シラヌイ』が掴み取り、全身を隠すほどの大型の盾となった。騎兵団仕様の『シラヌイ』は、BSIユニットには珍しく、大型の盾を装備している。これは重装甲突撃艇で、敵陣の中心部まで一気に突入する戦術に応じてのものだ。


「みんな、行くよ。生き延びて」


 自分の周囲にいる第二部隊の面子にそう言い、コクピット内に流していた、アイドルグループの唄を中断させたティガカーツは、スロットルを開いて自らの『カヅノーVC』も発進させた。その右手に握るホーンダート家の象徴、大型ポジトロンランス『ドラゴンスレイヤー』の穂先が、僅かばかりの恒星の光をキラリと反射する。



 しかし、この時すでに小惑星帯内部前方では、騎兵団仕様『シラヌイ』とティガカーツの第2BSI部隊の一部が早くも接触。戦闘状態に入っている。優勢なのは騎兵団仕様『シラヌイ』であった。

 『リュウビ』が撃ち掛けて来る超電磁ライフルの銃弾を、左手に持った大型の盾で弾くと、その内側のハードポイントに固定していた、短銃身超電磁ライフルを右手で掴み取って逆撃する。短銃身超電磁ライフルは威力こそ小さいが、接近戦での取り回しが容易であり、敵中に突入する『騎兵団』の装備としてはうってつけだ。


「うっ、うわぁッ!!」


 騎兵団仕様『シラヌイ』から、カウンターで銃弾を喰らった『リュウビ』が、胸部を大きく破壊されて、全ての機能を失う。

 さらに別の騎兵団仕様『シラヌイ』は、盾を前面にして『リュウビ』に体当たりを喰らわせた。激しい衝撃に体勢を崩される『リュウビ』。そこを騎兵団仕様『シラヌイ』が、これも盾の内側に固定していた、ポジトロンデュアルランスを掴み取り、腹部を正面からグサリと刺し貫く。コクピットにいたトクルガル家パイロットは、叫び声を上げる間も与えられず体を串刺しにされ、刃を包む陽電子フィールドによって、光の粒子と化した。


「おのれっ!」


 それに対し仲間の仇とばかりに、背後から超電磁ライフルを放つ二機の『リュウビ』。だが騎兵団仕様『シラヌイ』は回避することなく、素早く機体を翻して大盾で銃弾を防ぐ。

 

 大盾で機体を隠しながら、短銃身超電磁ライフルを連射する騎兵団仕様『シラヌイ』に、二機の『リュウビ』は爆散する。その脇をすり抜けて、トクルガル軍ASGUL『レイゼア』一個小隊十二機が、攻撃艇形態でビーム砲を撃ちながら、列を成して高速で突撃を仕掛けた。周囲を取り囲んで数で押し切る戦法だ。


 するとこれに対し、狙われた騎兵団仕様『シラヌイ』は、近くにいた二機の僚機と連携を取る。そして三機は背中向きにひとかたまりになると、外側全方向を大盾で覆い隠した。十二機のASGULはその周囲を回りながら、旋回式ビーム砲塔を向けて発砲するものの、全方向を盾で固めた敵の三機に、ダメージを与える事ができない。

 しかも盾と盾の間から差し出した、短銃身超電磁ライフルが反撃の銃弾を放ち、トクルガル側のASGULを次々に屠ってゆく。敵の只中に突入して戦う事に長けた、“タ・クェルダ家騎兵団”ならではの戦い方だ。埒が明かぬと判断したASGUL隊は、機体を攻撃艇形態から人型携帯に変型させ、ポジトロンランスを手に一斉突撃を仕掛ける。しかしそれはむしろ、タ・クェルダ側の思うつぼだった。防御力的に脆弱なASGULは騎兵団仕様『シラヌイ』に。ポジトロンデュアルランスの刺突だけでなく、重装甲の大盾で殴りつけられただけで大破し、全滅の憂き目に遭う。そしてこれに類する戦いが、小惑星帯のそこかしこで発生していた。


 このような優勢な状況を見て、タ・クェルダ家追撃部隊先鋒指揮官にして、歴戦の重臣バルバ=バルヴァは、トクルガル側殿軍BSI部隊の待ち伏せによる、対艦攻撃をほぼ排除したと判断。配下の部隊に加速して小惑星帯を突破し、イェルサス=トクルガルの本陣艦隊を追うよう命じる。


「宙雷戦隊四個を先頭に、小惑星帯の空隙部を最大戦速で突破。イェルサス殿の本陣艦隊に肉迫して、足止めを図れ!」


 これに「仰せのままに」と頭を下げるバルバの参謀長。彼等追撃部隊とイェルサスの本陣艦隊の間には、トクルガル家殿軍部隊としてダルケス=オークボランの、第8宇宙艦隊が居るが、バルバと参謀長の共通認識として、この艦隊は数で圧し潰すという事が言外にあった。

 程なく選定された四個宙雷戦隊を先頭に、追撃部隊は速度を上げ始める。ところが小惑星帯の空隙部に差し掛かった時、小惑星の密度の濃い方向から、大量の対艦誘導弾が突如として飛来し、タ・クェルダ家宙雷戦隊の軽巡航艦や駆逐艦に襲い掛かった。即座に反応した各艦は、ただちに迎撃誘導弾やCIWSの火箭を開くが、複数の艦に命中弾があり、艦列が大きく乱れる。






▶#06につづく

 

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