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銀河戦国記ノヴァルナ 最終章:ゆめ幻の如くなり  作者: 潮崎 晶
第1話:銀河無双のポジトロンランス
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10/20

#04-01-06

 

 攻撃を受けた宙雷戦隊が混乱し始めると、小惑星の密度の高い箇所から、トクルガル軍BSI『リュウビ』と、ASGUL『レイゼア』の混成部隊が出現した。これに意外な思いを抱くバルバ=バルヴァ。報告では、トクルガル軍の対艦装備待ち伏せBSI部隊は、こちらの『騎兵団』の突撃によって、動きを封じられているはずであったからだ。


「機動戦参謀。どうなっている!?」


 バルバは少々語気を強めて、艦載機運用を担当する機動戦参謀に問い質す。その機動戦参謀はすでに通信参謀と共に、艦橋の通信オペレーターエリアに走って行っており、『騎兵団』の各指揮官達と連絡を取って状況把握に努めていた。

 両参謀は複数のオペレーターと幾つかの言葉を交わしたあと、知り得た情報を困惑の表情でバルバに告げる。


「バルヴァ様。どうやら小惑星帯の中の敵に、『騎兵団』を単機で引き付けている者がおり、そのせいで敵BSI部隊に対艦攻撃の機会を与えているようです」


「なに!?…単機でだと?」


 たった一機で、強者(つわもの)揃いの『騎兵団』を引き付けるなど、相手は常識では考えられない、技量の持ち主に違いない。ただ詳細を聞くと、全くの単機というわけではなく、幾つかの親衛隊仕様BSIユニットの小隊が、その一機を周囲でフォローし、追い込みや追い討ちを仕掛けているようである。

 しかし実情が知れても、戦闘の中心となっている敵の一機の技量が、異常に高い事に変わりはない。艦隊司令官ではなく武人としての感覚が、バルバに敵への興味を抱かせる。


「その“単騎駆け”を行っている者…誰か分かるか?」


 バルバの問いに、通信参謀はオペレーターを通して、現場の指揮官と問答を行った。結果を聞いた機動戦参謀が、少々表情を硬くして報告する。


「“単騎駆け”しているのは、トクルガル軍BSHO『カヅノーVC』…。あの(・・)ティガカーツ=ホーンダートだそうです」


 ティガカーツの名を聞いて「ほう…」と双眸を輝かせ、たっぷりの黒い顎髭に右手を遣るバルバ。


「“アネス・カンヴァー星雲会戦”で、あの(・・)マガランと互角の勝負を演じたという若武者か」


 機動戦参謀やバルバの言葉にあるあの(・・)には、畏敬の念を込めた感嘆的意味合いがあった。マガランとは、かつてアザン・グラン家で無双を誇った、モルンゴール星人武将ネオターク・ジュロス=マガランであり、その男の乗る専用BSHO『キョウマ』と一騎打ちを演じて、機体に傷一つ負う事無く引き分けた話が広まった事で、ティガカーツの名の前にあの(・・)が付くようになったのだ。

 

 そしてあの(・・)ティガカーツ=ホーンダートの技量はやはり、その辺の(・・・・)一線級のBSIパイロットとは違うレベルにいた。

 その身を預けるBSHO『カヅノーVC』は、小惑星帯の中を縦横無尽に飛び回り、騎兵団仕様『シラヌイ』を次々と屠っていく。その主たる武器は当然の如く、手にした大型ポジトロンランス、『ドラゴンスレイヤー』である。


 前述の通り全身を隠すことが出来るほどの大盾を、攻防において駆使するのが、タ・クェルダ家の騎兵団仕様『シラヌイ』の特徴だ。彼等は大盾を左手、短銃身超電磁ライフルまたはポジトロンデュアルランスを右手に、三機一体で『カヅノーVC』に仕掛けていた。

 騎兵団仕様『シラヌイ』が三機×三組の九機連携で包囲状態を作り、『カヅノーVC』を仕留めようとする。そしてその包囲陣の外側では、ティガカーツの味方機と包囲陣に参加していない『シラヌイ』が、『カヅノーVC』を孤立させるため、激しく攻防戦を演じている。

 ただ、『騎兵団』の意図を遥かに上回るのが、ティガカーツの操縦技術だ。すでに“トランサー”を発動させていたティガカーツは、機体のセンサーと感覚を一体化させた精神世界の中、今の状況がむしろ戦術目的にとって、好ましいと判断していた。その戦術目的とは無論、タ・クェルダ家の追撃部隊の前進を阻止し、主君イェルサスの撤退を成功させる事である。


「いいよ…いい動きだ」


 自分を取り囲む九機の『シラヌイ』の、行動の全てを“トランサー”で把握しながら、ティガカーツは『カヅノーVC』を操る。常識外れのティガカーツにとり、敵機に包囲されるのはむしろ、歓迎すべき状況であった。

 九機の騎兵団仕様『シラヌイ』が『カヅノーVC』を中心に置いて、正確な等間隔で渦を巻きながら距離を詰めて来る。流石はタ・クェルダ家『騎兵団』、見事な連携だ。しかしそれは逆に、ティガカーツにつけ入る隙を与えた。ポジトロンランス『ドラゴンスレイヤー』を右手に握った『カヅノーVC』は、弾倉に八発装填された超電磁ライフルを一発ずつ、八機の騎兵団仕様『シラヌイ』に向けて。素早く牽制射撃すると、残る一機に向けて猛然と加速した。


 狙われた一機は大盾を構えて防御態勢を取る。その間に牽制射撃を回避した八機は、やや遅れながらも一斉に『カヅノーVC』のあとを追う。タ・クェルダ側の思惑からすれば、ティガカーツの動きは想定の範囲内だ。ここまでは―――






▶#07につづく

 

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