#04-01-07
『騎兵団』パイロット達の思惑は、ティガカーツに狙われた一機が回避運動を行わずに、大盾の高い防御力で攻撃を受け止める。そしてその間に周りから追い付いた八機が、ポジトロンデュアルランスで襲い掛かるというものだった。
ところが加速したティガカーツの『カヅノーVC』は、残る一機の『シラヌイ』に攻撃を仕掛ける事無く、その脇をすり抜けて行く。
「なに! 逃げるのか!?」
驚いて後ろを振り返るパイロット。するとその視界の真っ直ぐ先には、一つの小惑星が浮かんでいた。『カヅノーVC』は機体を急速に半回転し、黄色い反転重力子の光のリングを放出。その小惑星に両足をつくと、まるで競泳のターンのように向きを変え、逆方向から『シラヌイ』へ再度吶喊する。
「チィイッ!!」
慌てて大盾を向けようとする『シラヌイ』のパイロット。しかしその間に『カヅノーVC』は、ライフルの弾倉交換を終えていた。BSIユニットのバックパックには弾倉の交換機が組み込まれており、そこへライフルの弾倉部を押し当てると、自動で交換される。
左手に大型ポジトロンランス『ドラゴンスレイヤー』を握ったまま、『カヅノーVC』はライフルを放った。その銃弾は大盾が隠すより早く、『シラヌイ』の頭部を撃ち抜く。そして動きが止まった一瞬、突き出された『ドラゴンスレイヤー』の鋭い穂先が、『シラヌイ』の機体を右脇腹から刺し貫いた。撃破されたその『シラヌイ』の機体を迂回して、残り八機の『シラヌイ』が『カヅノーVC』との間合いを詰めて来る。ただ急な迂回行動で八機の接近タイミングには、僅かなズレが生じていた。ティガカーツはそれを見逃さない。
「いくよっ!」
撃破した『シラヌイ』から引き抜いた『ドラゴンスレイヤー』を、大きくひと振りさせるティガカーツ。その戦端が、一機の『シラヌイ』が構えた大盾の表面を、強打する。停止して身を護る『シラヌイ』。ティガカーツは大盾を打った反動を利用して、今度は背後に向けて『ドラゴンスレイヤー』を振り抜いた。そこには今まさに右背後から、ポジトロンデュアルランスで斬り掛かろうとしていた、別の『シラヌイ』の姿がある。攻撃態勢に入っていたため、左手の大盾は防護の位置にはなく、上から振って来た『ドラゴンスレイヤー』の刃身に、頭頂から胸部までをザクリと断ち割られた。そしてティガカーツは、即座に『カヅノーVC』を後退させながら、超電磁ライフルを一連射。その銃弾を大盾で弾いた新たな『シラヌイ』二機が、『カヅノーVC』が一瞬前までいた位置を、ポジトロンデュアルランスで薙ぎ払う。
さらに三機目、四機目と『カヅノーVC』に殺到して来る、騎兵団仕様『シラヌイ』。次々に振るわれるポジトロンデュアルランスの切っ先が光る。しかしその悉くを、ティガカーツの機体操作が紙一重で回避していく。
「くそっ。ちょこまかと!」
「だがもう少しだ。このまま追い込め!」
苛立ちながらも攻撃を続ける『シラヌイ』のパイロット達。状況は『カヅノーVC』が防戦一方で、七対一の優勢を保っているように思われた。だがそこで突如として、『カヅノーVC』の動きが変化する。まるで瞬間移動のような急加速を見せると、一機の『シラヌイ』の背後に回り込み、『ドラゴンスレイヤー』の刺突で機体を貫いた。「ギャッ!」というパイロットの悲鳴と共に、バックパックの対消滅反応炉を破壊されたその『シラヌイ』は、閃光を発して爆散する。
「なにっ!? そ、速度が―――」
桁違いになったぞ、と続けかけたもう一機の『シラヌイ』も、瞬時に間合いを詰めて来た『カヅノーVC』から、神速で突き出された『ドラゴンスレイヤー』に貫かれて撃破された。
「クソッ! 散開しろ!」
事態の急変に残った五機の『シラヌイ』は、『カヅノーVC』と距離を取って状況の立て直しを図ろうとする。そこへ全周波数帯通信で呼び掛けて来るティガカーツ。その口調はいつものように、どこか気だるげだった。
「やぁ。僕はトクルガル家のティガカーツ=ホーンダート。みんな、悪い事は言わないから無駄な事はやめて、帰った方がいいよ」
不躾なティガカーツの物言いに、タ・クェルダ側のパイロットが、神経を逆撫でされる。無論これはティガカーツの性格的な問題であって、当人には悪気は全くないのだが。
「何を、馬鹿にしおって!」
「まだ我等の方が、数的に優位だとわからんのか!」
通信回線を開いて言い返すタ・クェルダ側パイロット達の言葉に、ティガカーツはヘルメットの上から頭を指先で掻き、「うーん。わかってないなぁ…」と困ったように続けた。
「きみ達のBSIユニットの性能、今までの戦いで全部分かっちゃったんだよね。だからこれからは全部、僕のターンになるって事だよ」
つまりはそういう事である。ティガカーツにとって、タ・クェルダ軍の騎兵団仕様『シラヌイ』は、初めて見るBSIユニットであった。そこで軽く手合わせをして、機体性能を全て見極めていたのだ。もっともこれは、ティガカーツだからこそ、可能な事であったのだが。
▶#08につづく




