↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河戦国記ノヴァルナ 最終章:ゆめ幻の如くなり  作者: 潮崎 晶
第1話:銀河無双のポジトロンランス
PR
12/20

#04-01-08

 

「逃げないんなら、もう知らないよ」


 のんびりとした口調の中にも、氷のような冷たい響きを交えて告げたティガカーツは、騎兵団仕様『シラヌイ』の一機の眼前に、瞬時に間合いを詰めて来る。両手で『ドラゴンスレイヤー』を握って構える、『カヅノーVC』の姿。


「!!??」


 これは回避し切れないと咄嗟に悟った、『シラヌイ』のパイロットは即座に大盾を突き出す。刹那の反応としては見事だ。

 ところがここで驚くべき事が起きる。『カヅノーVC』が突き出した『ドラゴンスレイヤー』が、超電磁ライフルの銃弾をも弾き返す大盾を刺し貫いて、『シラヌイ』の機体まで深く抉ったのだ。コクピットまで達した穂先を覆う陽電子フィールドが、左胸を切り裂いたパイロットの体を消滅させてゆく。


「そっ、そんな馬鹿なぁあああっ!!!!」


 自分の命が消滅する事よりも、無敵を信じていた大盾が貫かれた事に、驚きを込めた断末魔。『ドラゴンスレイヤー』を引き抜くと同時に爆発する機体。鑓を右肩に担いだ『カヅノーVC』は、残った騎兵団仕様『シラヌイ』四機に振り返る。


「コイツ! 俺達の盾を貫通させただと!?」


「くっ! ティガカーツ=ホーンダート!」


 警戒心を露わにする『シラヌイ』のパイロット達。「だから言ったのに…」と言い捨てるティガカーツ。


「このホーンダート家伝家の鑓、『ドラゴンスレイヤー』の陽電子出力を最大にすれば、戦艦だって刺し貫く事が出来る。遊びは終わりだよ」




 ポジトロンデュアルランス『ドラゴンスレイヤー』の歴史は、およそ百年前に起きた“オーニン・ノーラ戦役”の頃まで遡る。


 当時は皇国の植民星系総督として、ヘキサ・カイ星系を治めていたホーンダート家は、隣接するミノネリラ宙域の領主、トキ家の度重なる侵攻を受けて滅亡の危機にあった。そこで当時のホーンダート家当主は近隣の有力独立管領であった、ミズンノッド家を通じて、ミ・ガーワ宙域最大勢力の独立管領であり、今のトクルガル家の前身であったマットディール家に、従属と引き換えの大規模支援を求める。


 これに対しマットディール家当主はホーンダート家当主に、古今無双の忠誠の証たるものを示せと条件を出した。そこでホーンダート家が技術と財力の全てを注ぎ込んで造り出したのが、この大型ポジトロンランス『ドラゴンスレイヤー』だったのである。そして今後百年、二百年経っても主家を守護する、古今無双の鑓とする事で、ホーンダート家はマットディール家譜代の地位を得たのであった。

 

 以来ホーンダート家当主は、『ドラゴンスレイヤー』と共に常に最前線にあり、戦場の華として輝いて来た。そしてティガカーツの父ダグも約十年前、ウォーダ家との戦いでBSHO『ヨイヅキSV』を操り、『ドラゴンスレイヤー』を手に僅かな手勢で立ち向かって行った。その時の『ドラゴンスレイヤー』は、生き残った味方機が回収し『カヅノーVC』の手へと受け継がれている。


「ええい! 増援を呼べ!」


 さすがにBSHO相手に四機、しかも大盾が通用しないとなると、分が悪過ぎると考えて、増援を呼ぶ『シラヌイ』のパイロット。これに呼応して支援に向かおうとする、『騎兵団』の面々。しかしそれを今度はティガカーツを支援する、トクルガル軍のBSI『リュウビ』が阻止行動に出る。


 こうした一連の動きが結果として、他のトクルガル軍のBSI部隊にタ・クェルダ軍追撃部隊への、対艦攻撃の機会を与えていたのだ。




「先陣の宙雷戦隊に、被害が続出している模様!」


 トクルガル軍本陣追撃部隊を指揮する、バルバ=バルヴァの旗艦でオペレーターが報告する。タ・クェルダ軍宙雷戦隊四個は、トクルガル軍BSI部隊を迎撃しながら突破。だが小惑星帯の出口付近に差し掛かったところで、待ち受けていたトクルガル軍武将、ダルケス=オークボランの第8艦隊と交戦状態になり、少なくない損害を出し始めていた。


「む…これは宜しくないな」


 バルバはトレードマークの黒い顎髭を撫でる指先に力を込めながら、眼前の戦術状況ホログラムを見詰めて眉間に皺を寄せた。参謀長がこれに同意する。


「上洛戦はまだ始まったばかりでございますれば…」


 参謀長の言葉通り、この戦いはキヨウ上洛を大義名分とした、タ・クェルダ家の大遠征において、まだ緒戦の内であった。それならばここであまり戦力を消耗するのは避けたいところである。特に万能性の高い軽巡航艦や駆逐艦で構成された、宙雷戦隊の緒戦での消耗は、長期戦ではボクシングのボディブローのように、あとから効いて来る。

 するとそれを察したかのように、後方に続く本陣艦隊の総旗艦『リョウガイ』から連絡が入った。当主のシーゲン・ハローヴ=タ・クェルダからだ。


「バルヴァ様。御屋形様より、“無理はせずともよい”とのお達しです」


 通信参謀がそう告げると、主君と考えが同じであった事に、バルバは納得の頷きと共に新たな命令を出す。


「追撃部隊主隊は全艦停止し、宙雷戦隊を呼び戻せ。代わりにBSI部隊は予備を含めて全て出撃。敵将ティガカーツ=ホーンダートを討ち取って、大功とする」






▶#09につづく

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。