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銀河戦国記ノヴァルナ 最終章:ゆめ幻の如くなり  作者: 潮崎 晶
第1話:銀河無双のポジトロンランス
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#04-01-01

 


 同時刻、ミノネリラ宙域―――


 ミノネリラ星系第三惑星バサラナルム。かつて銀河皇国の名門貴族であったトキ家の主導のもと、人類の植民惑星となった緑豊かなこの星は、その後サイドゥ家に簒奪され、さらにイースキー家…そして現在は、ウォーダ家の支配下にある。


 惑星バサラナルムの最大の特徴は、南北両極方向の衛星軌道を周回する、細いリングである。大小の氷塊が集まって出来たそれは、宇宙空間の中で主恒星ミノミリアの光を受け、視界の端から端まで緩やかな銀色の弧を描いている。


 その天を跨ぐ銀色の弧を軸にして、周りを舞うように回る小さな光があった。拡大してみると、時たまキラリと輝くその光は、人型機動兵器であるのが分かる。



「むぅ、速い!」


 眼下に広がるバサラナルムの緑の地表。自分の専用機『テンライGT』が持つ、ライフルのトリガーを引こうとしたトゥ・シェイ=マーディンは、一瞬で照準モニターから姿を消した相手に臍をかんだ。同時に咄嗟に操縦桿を倒して、角度の深いダイブに入る。気を抜くには危険な相手だからだ。


 案の定、一瞬後にロックオン警報。マーディンは機体に捻り込みをかけて、左側至近に見えている氷のリングに、『テンライGT』向かわせる。目前に迫るリングの氷塊、『テンライGT』より二回りは大きい。ロックオン警報に合わせ、衝突警告音までがヘルメット内に響き始めた。

 構わず氷塊に突っ込み、左腕を表面にあてて機体を滑らせたマーディンは、氷塊の裏側へ入って相手の射角を遮ると、そのまま反対側へ出て逆撃の銃弾を放つ。しかしその銃口の先に、すでに相手の機体の姿は無い。するとそこへ回避行動済みの相手―――ノヴァルナから、通信が入って来た。


「てめ、ずるいぞマーディン。むやみに氷に触ったら、俺んトコに星系環境省から文句が来るだろが!」


 文句を言いながらも笑いを含んだ主君の口調に、マーディンも口元を緩めながら応じる。


「氷の軌道が変わるような、触り方はしておりませんのでご安心を」


「なんか、やらしいぞ。その言い方」


「そうでございますか?」


 軽口を交わしながらも、マーディンはノヴァルナの機体―――『センクウ・カイFX』ではなく、試作新型BSHOの位置を見逃さない。ただ根が生真面目なマーディンの弱味の突き方は、ノヴァルナも心得たものだ。


「新婚の嫁を触るように…ってか? おめーも、エロくなったもんだ!」


「!?」


「スキありっ!!」


 ふざけた口調ながらも、的確にペイント弾を放つノヴァルナ。

 

「ったく!」


 苦笑いながらも『テンライGT』に、瞬時に回避運動を取らせるマーディン。ノヴァルナが冷やかしたように、マーディンは今年のはじめに、才女の誉れ高い従妹のマテュアと結婚していた。マーディンは三十一歳、マテュアは十九歳の年の差婚である。


「ノヴァルナ様こそ、もう少しお気をつけ下さい」


 そう言って機体を翻し自分の背後を指し示す、マーディンの『テンライGT』が指摘したその先には、ノヴァルナの試作機が今しがた放ったペイント弾が、氷塊の一つを真っ青に染め上げていた。


「こまけー事は気にすんな」


 と自分勝手を言いながらもノヴァルナは、ホワイトグレー一色の試作機を急加速させる。『センクウ・カイFX』からさらに一段階進んだ印象の加速力だ。バックパックのハードポイントから、ポジトロンランスを手にする。これまではポジトロンパイク(矛)を得物にしていたノヴァルナだったが、今回の新型機からはポジトロンランス(鑓)を使うつもりだ。


「ほう」


 ポジトロンランスの使い手というなら、カーナル・サンザー=フォレスタ亡き今のウォーダ家では、マーディンがその頂点にあると言っていい。自信もある。自らもポジトロンランスを手に取り、距離を詰める『テンライGT』。すると鑓の間合いに入った瞬間にマーディンの視界から、ノヴァルナの試作機の姿が消えた。


「!!??」


 直後、意識とサイバーリンクした機体が、真下に移動したノヴァルナの試作機を警告する。反射的に機体をローリングさせるマーディン。試作機が突きあげたポジトロンランスの穂先が、右のショルダーアーマーを僅かに掠め、小さく火花を散らした。さらに二つ三つと刺突を繰り出して来る試作機。


“流石に機動性を重視した新型!”


 突き出される鑓を全て、紙一重で回避しながら、ノヴァルナの試作機の性能に唸るマーディン。これも皇都惑星キヨウに本社を置く、ミッド・ビスタ航宙工業から供与された、前星帥皇テルーザ陛下の専用機『ライオウXX』が搭載していた、重力子スラスター技術の効果だろうか…と思う。


「まだまだだぜぇッ!!」


 さらに間合いを詰めたノヴァルナは、自分の鑓でマーディンの鑓を打ち払うと、右手で素早くクアンタムブレードを鞘から抜き、神速の斬撃を放つ。だがマーディンも只者ではない。即座に持ち替えたポジトロンランスの柄が、斬り掛かって来たノヴァルナの試作機の、ブレードを持つ手首を押し留めた。





▶#02につづく

 

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