答え:二兎を追うなら、備えも同様に
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
反対側の席から向けられる視線が気になる。
会議の時間になり、妖怪が次々と部屋へ入ってくる中で、明らかに知っている顔を見つけた。
そして、怪異側の面々も席につき、そいつが反対側の奥の席に腰を下ろした瞬間、こちらに気付いたようだった。
その後、会議が始まった。
エルフ側はまず、怪異の世界で亡くなったエルフの遺体回収について話し始める。
その間も、和は時々こちらに視線を向けた。
確かに怪異となれば、怪異世界を担当している魔法使いの交渉人が、妖怪の相談によって混ざってくる可能性もあったか。
いや、さすがにそこまでは予想していなかった。
しかも、本来怪異の担当者ではない和が、来ることなんて。
手伝いの流れで生じた偶然なのだろう。
けれど、こんな巡り合わせまで読めるはずがなかった。
エルフと同様に、怪異側にも高い緊張感が流れている。
けれど、エルフの遺体回収については、分かっている範囲の場所の調査をすることと、見つけ次第還す話が着々と進んでいる。
ひとまずは怪異側は、丁寧に言葉を選びトラブルを避けようとする姿勢がみられる。
エルフ側は時折きつい言葉を選んでいるようだけど、怪異側も、角を立てないよう慎重に受け流している。
このままいけば、この話は無事終わりそうだ。
「まず、怪異側にあるエルフの遺体については、ご協力いただけるとの事ですので、そちらにて宜しくお願いします。」
いくつかの話が交わされ、最後に会議を取り仕切っているエルフがまとめた。
「次にですが、そもそもエルフがそちらの世界に誤って入った時に、襲われることについて。」
問題はここからか。
和も少し固い表情を見せた。
「お、お話は一部伺っております。・・・ですが、こちらも各種族ごとに管轄範囲が異なっており、全てに関与できるわけではございません。
また、こちらでもエルフから襲われるという被害も出ておりますので、それぞれにトラブル回避を促す形で、対応を進められればと考えております。」
「私達が襲うのは、そちらが襲ってくるからと聞いております。
ですので、そもそもそちらが襲ってこなければ、こちらはむやみに暴力的な行動は致しません。」
とはいえ、一つ一つのトラブルをエルフがヒアリングなどをして、詳細把握や管理してはいない。
「分かりました。こちらから襲うことについては、私達もできる限り避けるように周知させて頂きます。」
「できる限りでは、今まで襲われた私達の仲間に申し訳が立たない。今後一切ないようにするべきだ。」
「そもそも、今まで襲ってきたことに対して、れっきとした詫びの一つもないのでしょうか?」
これはしばらく揉めそうな状況だろう。
想定内とはいえ、どうしようもないことはお互いにある。
どこかで双方が折り合いをつけるしかないのだろう。
和は、隣の席の女性と話している様子。
そちらが本来の担当の交渉人だろうか。
怪異としても上位関係があるものの、その全てをまとめる上層の存在があるわけじゃない。
エリアごとに管理方法やルールは異なるし、その中ですら全てを管理できていない以上、今後一切トラブルをなくすというのは、かなり厳しい話だろう。
交わされる言葉は、少しずつ熱を帯び始め、だんだんと荒れた雰囲気になっていく。
もともときつい言葉を選んでいたエルフから、所々で野次のような文句も出始める。
それを受けて、怪異側もエリアの管理者だろうか、天狗のような男達からも、喧嘩腰の声が飛び始めた。
和は何度か周囲を見渡し、隣の交渉人と小声で言葉を交わしていた。
そして、意を決めたように手を上げる。
「あの・・・。」
「どうされましたか?」
「はい。これは一つの意見なのですが、すでにいくつかエルフと怪異の世界を繋ぐ場所は把握されているかと思われますので、そういった拠点に別に管理やトラブルの仲裁に入る担当者をお互いに配置されてはいかがでしょうか?
それだけでも、これまでよりはそういったトラブルの減少に繋がるかと思われます。」
それは、魔法世界の交渉人に近いことだろう。
会議前にアーシャにした提案ではあるけれど、長期的にも短期的にもその方法は現実的に減少が期待できるということには私も同感だ。
「それは良い提案だと思われます。如何でしょうか?」
「そんなのやりたがる奴がいるわけがない。そもそもエルフは平和的な生き方を望んでいる。そっちが襲ってこなければいいだけの話だろう。」
「だから、そっちから襲ってきたこともあるんだよ。下手に出てりゃあ、いちいちこっちのせいにしやがって。」
「は。そういった汚い言葉を選ぶ所からも、明らかに暴力的なのはそちらでしょう。」
数名のエルフが顔を見合わせ、怪異側でも小さく頷く者がいた。
一瞬だけ、場の空気が変わりかける。
しかし――
「彼って前、あなたと一緒に来た魔法使いよね?」
アーシャが、小さく話しかけてきた。
「そうだよ。さっき話した魔法世界の交渉人をしているから、今回偶然参加することになったんだろう。」
「なるほどね。面白いわよね。エルフと怪異の会議の場なのに、基本世界のあなたや魔法使いも混ざってるのね。」
確かに珍しい光景ではあるけれど、結局はエルフがどこで折れるか、怪異がどこまで管理を見直せるかということだろう。
だけど、こうもお互いに喧嘩腰になってきている以上、どちらも簡単には引かないだろう。
「少し話が長くなりましたので、一度休憩にしましょう。」
仕切っているエルフが少し大きな声で、30分の休憩を伝えた。
それと同時に、荒々しく部屋を出て行く者達とそのまま席で隣同士話始めた者達。
「スズはどうする?このまま座ってるなら、ちょっと飲み物でもとってこようか?」
「お願いしてもいい?少し、話をすることになりそう。」
「あら。分かったわ。」
和が席を立ち、こちらに近づいて来た。
「何してんだ。」
「…それはお互い様じゃないかな。」
和の少し離れた後ろから、和の隣の席に座っていた女性が顔をのぞかせる。
「それはそうだけど、フォーラスが攫った奴らを探してたんじゃないのか?」
「攫われて怪異の世界にいたエルフ達が、今回の会議の起点。」
「はぁぁぁぁ・・・・さすがにほっとけよ。首突っ込みすぎだろ。」
「会議の中に入り込む気はないよ。アーシャに頼まれて状況を見に来ただけ。」
私から好きで参加しに来ているわけじゃない。
「これ、着地しないだろ。」
「そうだろうね。とはいえ、暴動を起こさせるわけにもいかない。」
「無難な着地なんてないぞ。」
「二つ考えてる。」
和が眉を寄せる。
そのうち一つは、アーシャとバースにお願いしている方法だけれど、かなり雑な方法なのでできればもう一つで収まれば良いとは思う。
「それ、根本的な解決じゃないんだよな。」
「そう。あくまで休戦方法。
この問題はすぐに解決する話じゃない、何度も話し合っていってもらうしかない。」
「あぁそうだな。なら最悪の時は頼む。」
「分かった。」
お互い、仕事の話はそこで切り上げた。
会話が途切れ、少しの沈黙が流れる。
さて――
「和。」
「スズ。」
同時に名前が出た。
「何?」
「いや・・・・お前が先に。」
和は、気まずそうな表情でこちらに促した。
「…アリスから私の伝言を聞いたと思うけれど、あれは気にしなくて良い。」
「どういう意味だよ。」
「…アリスに聞かれた時、思ったより無意識に言葉を選んでいた。だから、改めてちゃんと話させて欲しい。」
「無意識って・・・お前、それ無意識で言ったのか?」
「半ば無意識だったと思う。」
少し気が抜けた表情を見せ、和は腕を組んで考える姿勢に変えた。
「・・・無意識で、そこまで言ったのか。」
「和は?何か言いたかったんじゃないの。」
「あー・・・いや、俺も少し話したい。この後は?」
「アーシャに送ってもらって、相談所に帰るよ。多分あまり遅くなると、アリスに怒られる。」
今日の予定を伝えると、「遅くなりそうなら、ちゃんと連絡してね。」と念を押された。
「アリスさんには、迷惑かけすぎてるな。」
「そうだね。気を付ける。」
「いや、俺もだよ。
・・・まぁ、とにかく明日休みだから、一緒に帰っていいか?俺も少し話したい。」
「分かった。」
アーシャが部屋に入ってきた。
近づいていいのかしら?という表情でこっちの様子を伺ってきたので、手招きをした。
「こんにちは。魔法使い君。」
「こんにちは、お久しぶりです。」
「一応、君とその後ろの子の分も持ってきたけど、紅茶飲むかしら?」
「ありがとうございます。頂きます。」
和が後ろで様子を伺っていた女性へ、アーシャから受け取ったコップを渡した。
「ありがとうございます!」
「いえいえー。」
女性は、アーシャに向かってお礼を告げながら、和の隣に並んだ。
「それでー?スズとしては、もうすぐ仲介を入れる感じ?」
「いや。もうしばらくは様子を見るつもり。ある程度はお互いに言いたい事言っておいた方が、後々の議題も進めやすいだろうし。」
「え?もうかなり、喧嘩しそうな雰囲気ですが、大丈夫なんでしょうか・・・?」
女性は驚いた表情で、会話に入ってきた。
「怪異側は基本はそれを回避する目的で、会議に参加しているようだし、それなら流れ次第では、一旦持ち帰りの方向で収めることも考えてるんじゃない?」
「んー。通路の管理者はそうなんだけど、エリアの管理をしてる天狗側が、ちょっと短絡的というかな・・・。」
天狗は鬼にも特徴が近い、話し合いより拳で決めたがる部分はあるだろう。
それは今のエルフの状況からすれば、かなり悪手になる。
「分かった。状況は見ながら判断する。」
「頼んだ。必要なら声をかけていいから。」
「…分かった。」
最後に和と目が合う。
そしてすぐに和達は、席へ戻って行った。
「変な二人ね。」
「短い期間で和がサポートに入っているだろうから、彼女はまだ少し和と距離感が掴めてないのかもしれない。」
「違うわよ。あんた達よ。」
「…何か変だった?」
アーシャが隣に座り、こちらを覗き見た。
「お互いに情報はかなり分かり合って見えるのに、どこか言いづらそうにしてる感じがするのよね。」
「そんなに分かりやすい?」
「うーん。分かりやすくはないと思うわ。現にあの後ろの子は、そこまで気が付いてないんじゃないかしら。」
徐々に人が戻って来て、再び会議が始まった。
一度時間をおいたことで多少落ち着いた空気で始まったが、議題自体はエルフ側が妥協しないかぎり話が進まない。
それは、仕切っているエルフも分かっているようで、そういった提案も織り交ぜて進めているが、頑なな意見が多くなかなか進む様子はなさそうだ。
「そうはおっしゃられても、完全に通路を管理することは難しいのです。
先ほど、こちらの方がおっしゃったように、個々に人員を配置して対策してく方向を、一度こちらでも検討致します。」
怪異側としては、かなり譲歩した形だろう。
「ありがとうございます。ひとまずはそう言った形で進捗を追いながら、こちらでも方策を検討するのは如何でしょうか?」
仕切りのエルフも、締めに入ろうとしている。
「・・・それは、分かりました。ですが、これまでの被害について、何も詫びをしないつもりでしょうか?」
「それはこっちにも被害があるんだから、お互い様だって言ってんだろ。」
「ですから、エルフは元々平和主義で――」
再び、水掛け論が始まる。
どちらも確かな情報がない以上、今話してもしょうがないことだとは思うけれど、それを言ったところで納得しないだろう。
「アーシャ。」
「・・・頃合いかしらね。」
やり取りの中、アーシャが仕切りのエルフの元に向かい、個別に話しかける。
周りの声がうるさすぎて、その内容は聞こえないけれど、仕切りのエルフも頷きながら納得している様子。
–パンパン
アーシャとの話が終わると同時に、仕切りのエルフは手を叩き、全員の視線を集める。
「落ち着いてください。被害者、加害者については、お互いに全て把握できていないことでもあります。
ですので、私達エルフと共生関係にある精霊や妖精の協力を仰ぎ、一度その情報を調査しましょう。
その上で、改めて話し合いをしませんか?」
「彼らの情報は、曖昧なことが多いです。それに、そのまま鵜呑みにするわけにもいきません。」
「ですが、過去のことを知っているのは当事者と彼らくらいです。
両方の当事者の情報がかみ合わない場合、第三者の情報も確認しないことには詳細は判断できません。」
「だいたい妖精や精霊の報酬はどうするつもりだ?調査で報酬にだす魔力を、どこから補填するというんだ?」
「それは、まずは私の方で用意します。今回はエリアも明白ですし、まずは1度テストしてその内容を見て、今後はどうするかも決めましょう。」
エルフ側の視線が、仕切りのエルフの横に立つアーシャに集まった。
ひとまずは、過去の情報収集くらいなら、菓子や甘味物を大量に用意する程度で済むだろう。
これで、話が落ち着けば良いけれど。
和と目があった。
これが一つ目の収拾案であることは伝わっただろう。
「・・・分かりました。それについてはアーシャ・リ・レンクール、あなたが管理してくれるということで宜しいのですか?」
「まぁこの状況では、そうするしかないでしょうからね。」
アーシャは、面倒くさそうに肩をすくめて了承した。
そこから、エルフ側も了承する反応が出てきたので、どうにかこのまま一度終わりそうだ。
その後も何度か、両方から野次は上がったが、それでも、これ以上続けても話が進まないと、双方から制止の声が上がり始めた。
そんな流れを見て、最後に仕切りのエルフが声を上げた。
「それでは、一度時間をおいて遺体の調査と、お互いのトラブルについての進捗を後日確認致しましょう。
今回の会議は、以上としましょう。」
その言葉を聞いて、すぐに出て行くエルフ達を後目に、妖怪達も帰る準備を始めた。
その中、天狗の妖怪に向かって、数名のエルフが近づいて行く。
「アーシャ。」
「げ。」
アーシャがそのエルフ達に、足を向ける。
和達も気が付いたようで、同じく席を立ち近づいた。
「何か言いたいことがあるみたいだな。」
「・・・調べた結果、こちらの意見が正しかった場合には、それなりに用意はしておいてくださいね。」
「はっ!トラブルってる時点で、片方だけが悪いなんてあるわけねぇだろ。」
「やめなさい。会議は終わりよ。」
「そうです。通路まで行きましょう。」
天狗とエルフの間に、アーシャと和と隣にいた女性の魔法使いが入る。
「アーシャ。あなたの方法で調べるんですから、ちゃんとエルフ達の意見を尊重してくださいよ。」
「それは、平等に見るわよ。」
「調査って言っても、エルフ側に意見を尊重するんだったら意味ねぇしな。」
「妖怪の意見なんて、自分都合に言うのが目に見えますから。」
「あぁ!?」
ため息が出た。
とはいえ仕方ない。
急ぎ足で建物の外へ向かった。
「バース!」
「ん?終わったか?」
大声で呼ぶと、上空からバースが降りてきた。
「喧嘩になりそうだ。どうだった?」
「こっちは問題ないぞ。お前への借りもあるからと、しばらく付き合ってくれるそうだ。」
「良かった。なら、頼む。」
バースを引き連れて中へ戻ると、空気は火花一つで爆ぜそうなほど張り詰めていた。
天狗の妖力が風を巻き上げ、エルフ達の魔法が炎の矢と水の刃を空中へ浮かび上がらせる。
「バース!」
–バシィィィィィィィィ
「「!?」」
その両方が急に霧散した。
どちらもそれに驚き、その間に入ったバースに視線が集まる。
「たまには儂も相手したいが、仕方ない。」
「何だお前!?」
「・・・フェンリル?!」
「そうだ。こんな街中で儂が暴れてもいいのか?」
一瞬、天狗とエルフは視線を合わせ沈黙した。
「あ、あなたに、暴れられては困ります。」
「神獣か。流石に無理だな。」
両者が構えを解いた途端、荒れ狂っていた室内の空気がゆっくり沈静していった。
「それと今後しばらくは、こう言った時にドラゴンが入ってくるからな。」
「は?どういうことですか?!」
「上空を回るように伝えておる。今のような妖力と魔力が同時に発動したことくらいなら、あいつらも感知できるからな。」
「・・・・。」
「はぁ。とにかくそっちは帰ってもらえる?あなた達も分かったでしょ。帰りなさい。」
溜息と一緒にアーシャは和に視線を送り、エルフの方にも帰るよう促す。
帰り際まで、互いに飲み込み切れない感情だけを視線に残していた。
それを無視し、ようやく落ち着いた会議室に、再びアーシャの深いため息が響く。
「お疲れ様。助かったわ。」
「元々今回はどちらも喧嘩腰だったからね。ドラゴンには、報酬は私の方で考えとくよ。」
「・・・私で用意できるものなら、手伝うわよ。」
「アーシャは、妖精達の方を頼むよ。」
そうしてようやく、張り詰め続けていた時間が終わりを迎えた。
妖怪達の見送りは彼女に任せたらしく、和だけが戻って来て、どうにかあまり遅くならずに、相談所に戻ることができそうだ。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




