疑問?:どちらも選んだって良いだろう。
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「カイルさん。良かったら今日ご一緒にお昼如何ですか?」
リュースの件や多少知識があることもあり、最近は、怪異の世界を担当している交渉の仕事を手伝っていた。
その今日手伝っている担当者が、午前中の仕事がそろそろ落ち着いてきた頃に声をかけてきた。
多少は仕事間のコミュニケーション上、こういった交流も必要なことは分かっている。
それに、午後もこの担当者を含めて、ミーティングがあるのであまり気まずい状態にはしたくない。
「そうですね。近場で良い場所ありますか?」
ここに来てから近くで仕事をしているメンバーからの、珍しさからか好奇の視線があちこちから刺さる。
「はい!近くのおススメのお店があるので、案内しますよ。」
明るく弾む声だった。
あいつからは、ほとんど聞いたことのない種類の声だ。
「じゃあ行きましょうか。」
広げていた資料を片付けて、パソコンの画面をロック画面に切り替える。
先日アンジェラ達と行ったラーメン屋も美味しかったな。
あんまり作ったことがなかったけれど、たまには時間をかけてああいうのを作ってみてもいいかもしれない。
「カイルさんは、怪異側の担当もすぐ慣れそうですし、是非このままいて欲しいです。」
エレベーターに乗ると、小さめの声でそう言った。
彼女は怪異の担当になってから、期間が短いという話を聞いている。
なので、まだ他の交渉人とも組みながら、トラブルや話し合いに参加しているとのこと。
「多少、行く機会があったから詳しい程度ですよ。なので、そこまでは考えてないですね。」
「以前は基本世界で、walkerの方とご一緒に仕事してたんですよね?」
過去形の言葉が、少しだけ気になった。
「まぁ・・・そうですね。」
「その時に怪異の世界以外にも、行かれたことがあるんですか?」
「いえいえ、他世界は積極的に行くべきではありませんので、そこまでですよ。」
死神の世界やフィフさんの時はさておき、それ以外はトラブルや最低限。
あいつも避けてるし、むしろ嫌がっているくらいだからな。
エレベーターを降り、彼女の案内について行った。
「そうなんですね。でも私はもっと知らないことが多いと思うので、良ければ色々教えてください。」
「はい。僕が分かる範囲でしたら、お答えしますよ。」
「やった!カイルさんは魔法学会でもとても有名ですし、交渉のお仕事以外も色々お話したいです。」
人懐っこいのに、どこか落ち着いている。
日向がもう少し年を重ねれば、こんな雰囲気になるのだろうか。
いや、日向も秀人ももうそれなりに大人なはずなんだが。
「よかったら明後日でも、どこかでお食事しながらお話しませんか?」
明日の土曜日は、彼女ともう一人の交渉人と一緒に怪異の世界に行く予定もあり、明後日の日曜日を指定したいのだろう。
とはいえ、こういう誘いは正直苦手だ。
「ちょっと用事があるので、またの機会に。」
と、いつもと同じく無難な返事で断った。
人との会話が苦手な方ではないとは思うけれど、やっぱり常に気を配ることになり疲れる。
あいつと話す時は、違う意味で疲れることはあるけど、やっぱり楽だな。
喫茶店のような店に入り、できるだけボリュームがありそうなパスタを頼んだ。
彼女は、サンドイッチセットを頼んだ。
「カイルさん・・・あのぉ。ちょっとあれなこと聞いちゃうんですが・・・。」
「何でしょうか?」
「カイルさんって、お付き合いやご結婚の相手がいないって本当ですか?」
やっぱりそういう話に行くのか。
仕事以外の話で、結局こういう話題に行き着くことが多い。
「そうですね。今はまだ仕事に集中したいので。」
「そ、そうなんですね・・・。あの、良ければ友達という感じからでも、私とか・・・どうでしょうか?お仕事の邪魔とかは絶対しません。」
だから、女性と二人きりという空間は本当は避けたかったのだけど。
だいたい、最近はほとんど魔法世界にいない俺のことなんて、何も知らないだろう。
「すみません。また元のところに戻ろうかとも考え中で、正直こっちに居るのは一時的なつもりなんです。」
「・・・噂で聞いた程度なんですが、その・・・walkerさんのところが良いんですか?
その場所は、カイルさんが自分からご希望されたって聞いて。」
どういう噂だろうか。
まぁアンジェラが適当に答えた内容によっては、変に広がった噂もありそうだ。
「そうですね。色々と勉強にもなってますし、まだまだできることもあると思うので。」
本当にそうだろうか。
家事や子供達の世話なら、別に俺じゃなくても回る。
最初は半ば無理やり、自分の居場所をねじ込んだだけだった。
それでも今も傍にいる理由を、俺自身まだ整理しきれていない。
「でも、カイルさんは魔法使いなのですから、最終的に魔法使いの方と生涯を考えていくんですよね・・・?」
生涯。
それは俺だけの生涯か。
「どうでしょう。魔法もやっぱり考えれば考えるほど色々な視点があるので、それだけで生涯終わってしまうかもしれないですね。」
「そんな・・・そんなのもったいないです。
それなら、戻ってきた時だけでもいいので、私を選んでもらいたいです。」
予想よりも、ハッキリとした言葉と真剣な表情に、少しだけ言葉が止まった。
「それは・・・あの、申し訳ないのですが――」
「どうして、その方を選ぶんですか?」
どうして、選んだか。
当初、交渉人になろうとした時にも、色々な人に言われた記憶がある。
何故わざわざそこまでして彼女を選ぶのか。
その時に俺が返してた返事はいつも同じだった。
「大嫌いだったこの世界が、少しだけ好きになれたのは、彼女のおかげです。
彼女にとってはそれが些細なことでも、それが僕の世界を変えてくれました。
そんな彼女はたった一人で進んで行ってしまうので、少しでも手助けになりたいです。」
何度も答え過ぎて一字一句全て覚えている。
「僕は、最初はそういった質問に、綺麗ごとを並べていました。」
「・・・。」
「その時の内心では、自分の場所があまりに窮屈に感じるのに、自由に動く彼女に憧れていたんだと思います。」
同居人のくせに魔法使いを相手に、なんで彼女はあんなに自由に動けるんだろうか。
何のメリットもないくせに、戦を止めることがさも当然と思えるんだろうか。
彼女が見ている景色を、少しでも同じ高さで見てみたかった。
彼女のことをもっと知りたい。
そんな風に思っていた。
・・・けれど今は、どうだろうか。
「でもしばらく彼女の傍にいて、彼女自身も窮屈さを抱えていると分かって、それでも進み続けようとする理由が、更に気になったんです。」
ふと、前を歩くスズの小さな背中が脳裏に浮かぶ。
「これも結局、彼女に昔言われたことなんですが、窮屈だから進めないって僕が自分で決めつけてただけだったんだと気が付きました。
彼女はただただ、考えることを止めず、地道に進もうとしていただけだったんだと・・・。」
特別な近道があるわけじゃない。
ただただ、諦めずにやれるだけのことをやっているだけ。
「・・・カイルさんのお話でも、とても素敵な・・・方だとよく分かります。・・・でも、walkerと私達では、カイルさんが幸せになれないのではないでしょうか?」
会話の切れ目に合わせるように、店員がパスタとサンドイッチを静かに並べていった。
「確かに時間の違いは、とても大きいとは思います。」
スズとの時間については、前に精霊にもそしてフィフにも言われた。
そしてスズにも。
–でも、お前との記憶は持っていたい。それだけは許して欲しい。
記憶を持っていたいなんて、そんな許可取る必要ないことを申し訳なさそうに言っていた。
そんなことで満足しようとしてくれんな。
もっと欲しがればいいのに・・・
「僕もまだ、それについてはどうすればいいのか答えはないのですが――」
アリスさんからの、あいつの伝言を思い出す。
馬でもいい、灯でもいい。
その意味はしごく簡単に言えば、
”馬”という”自由”を選んでもいい、でも同時に”灯”として傍にもいて欲しい。
と、そんな願い事だった。
恐らくは、あいつなりに使いやすい言葉を選んだ結果、少し古い言葉になったのだろう。
そのほとんどを基本世界の日本人として生きているあいつならではの、間接的過ぎる分かりづらい言葉ではあるけれど。
アンジェラの言う通り、シンプルだと思った。
「遠い未来ばかり見て、今目の前にいる彼女から目を逸らすのは、違う気がするんです。」
–なんだか、泣きそうに見えてしまったので・・・
あの時はアリスさんの方が、スズのことをちゃんと見ていたんだろうな。
それは、ちょっと悔しいな。
「すみません。話していて、少し僕も整理できてきました。」
「・・・・やっぱり、彼女が良いんですね。」
「はい。僕がそれを選びたいんです。」
彼女の瞳から、さっきまでの光が少しだけ静かに引いていった。
けれど、それが答えだった。
「おや、お邪魔だったかい?」
職場のビルに戻って歩いていくと、入口にアンジェラが立っていた。
「どうした?」
彼女を先にビルの中へ見送って、アンジェラと入口の脇に寄った。
「アリスの件で、ちょっと立ち寄っただけだよ。」
「アリスさんが何か?」
「真名の命令さ。覚えてるだろう?」
それは覚えている。
俺が相談所を空けてしまった間に、ブライアンに侵入されアリスさんが命令を受けたこと。
アンジェラは、その解除の経緯を話してくれた。
「んで、シャロンの居場所をひとまずスズがアリスに伝える指定の住所に置いた後に、すぐに移動させたところだよ。
あとは、アリスが言っていた番号についても調べ依頼中。」
「また、無茶なことを・・・。」
確かに命令の対象として、スズが指名されていたことからも、一番早い方法なのは分かる。
が、できればもう少し安全な方法を選びたかった。
いや、今の俺が言う資格はないか・・・
「そうだね。けど、あんたなら予想できてたんじゃないかい?」
「・・・あぁ。」
スズなら、アリスさんのこと最優先に一番早い解決方法を選ぶ。
つまり放っておいていた以上、こうなることは予想できてた。
「あたしから言える事はそのくらいだね。んじゃ。」
「・・・・・。」
言うだけ言って去っていくアンジェラの背中を見送りながら、深く息を吐いた。
以前フィフに言われたことを思い出す。
「あいつは、基本的には合理的にシンプルな方法を選ぶんだけど、時々変なこだわりがあって、変な方法を選ぶんだ。」
「変な方法?」
「イヴの時もそうだった。もっと合理的な方法はいくらでもあったのに、あいつはわざわざ自分の手で終わらせる方法を選んだ。」
「・・・・。」
「それが贖罪のつもりなのか何なのか知らないけど、あいつは時々そういう選択をする。
あいつの生き方もそうだ、その辺の人間なんて時代や状況でいくらでも変化するんだから放っておけばいいのに、あいつは放っておかない。」
「・・・そうだな。」
「だから心配な時もある。だけど、しばらくはお前が傍にいるからな、俺も気が楽だ。
頼んだぞ。ははっ。」
頼まれたからには、スズ達にとっては一瞬みたいな時間なのかもしれないが、それでもこのままじゃ駄目だ。
ひとまず明日の仕事を終えたら、日曜日にでも話に行くか。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




