答え:見兎放犬となるなら
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
いつも和に言われていることを、最近いろいろ気にしてくれているアリスにまで言われてしまった。
「どうした?」
エルフの世界でアーシャを待っている間、昨日のことを思い出しているとバースが声をかけて来た。
「いや。少し昨日のことを思い出してただけだよ。」
「お前にしては珍しく変な顔になってたぞ。」
「変な顔ね。」
死というものに対して、悲しみや寂しさといった喪失の感覚を、理解できないわけじゃない。
現に、もう二度と会えない魂があることに気が付いた時。
私は確かに、喪失感を感じていたと思う。
そして、記憶の引継ぎが無い生き物は、例え魂として再び会ったとしても、気づきようがないし、全く違う生き物として考えてる。
だからこそ、そういった生き物を唯一無二の存在として見てきた。
けれど、それに対して自分を当てはめることは難しい。
私は私の死に対しては、なんとも思わない。
死んだと思えば、目を覚ますように次の人生が始まり、そしてまた死ぬ。
いつまでも、どこまでも。
何度でも。
そして深層では多分、いつ終わるのだろうか?と、そんな疑問を抱きながら見ている。
いつか終わるなら…
どこかで、唯一無二の生き物達を、羨ましいとすら感じている。
なぜ私達だけが、永遠に取り残されるのだろう。
「待たせたわね。」
玄関からアーシャが入ってきた。
「会議の前に話がしたいってことだったけれど、エルフ側の状況について?」
「そうそう。怪異側についてはともかく、上位のエルフは怪異に対してかなり強い意見が上がりそうで。」
前回巨人の世界からエルフの世界へ連れてきたエルフ達の様子からも、同族意識が高いことは明白だった。
その意見が大きくなり、上位のエルフも混ざり感情的な集団心理に近い動きになってきていることはアーシャから事前に聞いていた。
アーシャもリビングの椅子に座る。
「とはいえ、私がそれを聞いたところで、あまり口を出せるとは思えない。」
「分かってる。今回の会議自体では、スズにどうこうできる話ではないわよね。」
妖怪もエルフも、どちらの世界にも属さない基本世界の私の意見など、聞く耳をまず持たないだろう。
「まずは、スズに内容を把握してもらえればと思ってるわ。」
「それで?」
それはつまり、会議後の話だろう。
「最終的に着地しない可能性が高いとはいえ、急にエルフが怪異の世界に乗り込むことは向こうも避けたいはず。」
「そうだろうね。」
怪異側からすれば、迷惑でしかない。
「だから、どうにか損得勘定の面でも、倫理的な面でも理由はなんでも良いから、戦争を起こすことにメリットがないことを伝えたい。」
「現時点でも、それは明白なはず。当初のエルフの遺体回収が目的なら、それは怪異側に調査依頼をする等の交渉の範囲だろう。
どうして、戦いに繋がる可能性が高いと考えてる?」
本来の目的がぼやけ、話が大きくなりすぎている。
「元々は、やっぱり時々事故や偶然でも怪異の世界へ迷い込んだエルフが、現地の怪異に襲われることが多いからでしょうね。」
天狗の怪異も言っていたな。
エルフは目立つと、そして強い妖力を持った存在に見えてしまう為に、襲うのだと。
「それもあくまで交渉の問題だろう。戦争を起こし、更に関係性を悪化させたところで改善する問題じゃない。」
とはいえ、そういうトラブルで襲われたエルフ達の怨恨が、長く積もったということなのだろう。
「ひとまず話は分かった。
今回怪異側がどういう提案をしてくるかにもよるだろうけれど、例えば魔法世界のようにそういったトラブルの場面に個々に交渉に入るエルフを用意する等が、長期的にはトラブル減少には繋がる可能性はある。」
魔法世界も基本世界を始め、隣接した他世界へのトラブルが重なり、大きな問題となり始めたために、今の交渉人という立場を作った。
「そういうアイディアも聞きたいけれど、まずは目の前で好戦的になっているエルフを止めることからよ。」
戦を起こしたいと考え始めた者にとって、きっかけなんてなんでもいい。
感情が先に走れば、後から理屈で止めるのは難しい。
つまり、一度始まってしまえば、どんなに合理的でなかろうが簡単には止まらない。
「当事者以外で、不満を並べているエルフに関しては、個別に話していった方が良い。
今回会議に参加する中で、気になるエルフは?」
「主には今回攫われた町の領地主を始めに、その付近の統治者が参加予定だけれど、話を聞いた上層のメンバーも何名か参加するみたい。私では、細かいメンバーまでは分からない。」
アーシャは精霊との相性が良く、機転の利いた交渉力があることからも、一定の評価がある。
ある意味、交渉人に近い動きをしているけれど、立ち位置自体は普通のエルフ。
「分かった。ひとまずは会議を見てから、改めて考えようか。」
「そうね。少し早いけど移動しましょうか。」
アーシャが魔法を発動し、バースと一緒に違う場所へ移動した。
移動した先は、昔のヨーロッパ風の三角屋根の建物の前。
その建物の中へ入り、正面を進むと教会にあるような長椅子が左右に並べられ、そこが会議
の場になるようだ。
「妖怪をこっちへ呼ぶの?」
「そう。すぐ近くに繋がる場所があるから、そこから入ってくる予定。」
室内には既に何名かエルフの姿があるけれど、妖怪はこれからのようだ。
こういった場合に出てくる妖怪は、通路を管理している役所の者だろうけれど、それ以外は巨人の世界に行ったエルフが言った場所のエリアだと、天狗が出てくるのだろうか。
いくつか人数がまとまっているエルフ達の話が聞こえる。
「これを機に、しっかりと問題提起をしなくては。」
「好き勝手されては困る。」
「こちらに協力する意思がないなら・・・。」
アーシャと目が合う。
さっき話でも言った通り、エルフ側はかなりピリピリした状態。
これで怪異側も挑発に乗れば、もはや喜んで喧嘩を売ることになりそうだ。
他世界同士の争いがいままでなかった訳ではない。
とはいえ、結果的に得られるものはほとんどない。
領地として奪う考えもあったけれど、他世界に住むことはその世界の生き物にとって環境的に厳しい。
エルフの場合は、妖精との共存環境として出来上がっているこの世界だからこそ、溢れる魔力の暴発が自然と起きない環境になっている。
金銭や資材、奴隷といった面でも、生き物としての違いが大きすぎて上手くいった事例はほとんど無い。
結局最終的には、お互いにトラブルを避けることに徹することが、一番楽だという答えにいきつく。
けれど、それを説明したところで、上手く伝わったためしはあまりない。
「アーシャ。彼らは呼んでいる?」
「えぇ。一応少し離れた場所で待機してもらってるけれど、流石に中へは入れないわよ?」
まぁもしもの場合や、話の流れでお願いする可能性はあるだろう。
「分かった。バース、話してきてもらえる?内容はさっき伝えた通りで。」
「ぬ?お前から離れていいのか?」
「ここは危険な場所じゃない。少しくらいなら問題ない。」
「そうか。分かった。すぐに行って戻ってくる。」
バースが部屋を出て行くのをアーシャと一緒に見送った。
「フェンリルってもっとガサツなイメージだったわ。」
「その認識は合ってるよ。基本は犬や狼と同じだから。」
「でも、彼はあなたのことをかなり丁寧に扱ってる感じがするわよ?」
「バースの場合も雑な所は雑だよ。
私がほとんど防衛手段を持たない人間だから、多少気を遣ってはいるのかもしれない。」
「そんなもんかしらねぇ。」
徐々にエルフが増えていき、右側の長椅子に座っていく。
「私達はこの辺に座ってましょ。」
左側に並んでる一番後ろの長椅子の端に、アーシャと座った。
以前巨人の世界で会った男のエルフも入ってきた。
男は一瞬私に驚いたように気が付いたが、すぐに目を反らし一番前の席に座った。
バースの最後の目も、和やアリスが心配する時のような目をしていた。
とはいえ、エルフと怪異の会議の場で、私へ急に危害が向く可能性は低い。
私からすれば心配しすぎだと感じてしまうけれど、そうではないのだろう。
こういった部分は、どうすればいいのだろう。
「…アーシャ。」
「なぁに?」
「アーシャはどうして、私の話を聞こうと思ったの?」
アーシャに出会ったのは、圭と2度目の再会をした頃。
日本はたしか下関戦争後でバタついていた時期だった。
そんな時期だったこともあり、私は子供として動けるようになった時には行方不明として、しばらく別の世界に行ったりすることも多かった。
けれどただの人間の子供という状態では、自由に歩き回るわけにもいかないので、良さそうな場所を見つけては適当に空き家を見つけては、本を読みながら隠れ暮らしていた。
魔法世界やエルフは少なくとも、人間を餌として見ない世界だったから、比較的平和に住める場所として選んでいた。
エルフの世界の今のアーシャが住んでいる場所は、今は森の端になってしまっているけれど、元はもっと森の奥にあった。
そんな森の奥に、アーシャがやってきた。
「森の奥に住んでいる子供の女の子って時点で、まず害がないでしょ?」
「そうだね。とはいえ、警戒心が無さすぎにも程があった気がするけど。」
こちらが子供の人間だと気付いた途端。
色々と話しかけてきて、更には日付を変えても、頻繁に顔を出していた。
そして来る時には、必ず何か果物や洋服等も持ってきて、まるで孫の世話をしているようだった。
「最初は興味本位だよね。私も暇だったし。でも、スズの話が凄く面白かった。」
基本世界の話、それ以外の世界の話。
そして、時には基本世界にあるエルフの物語。
当時は耳が長い妖精や精霊に近い人間の形をしたエルフのイメージ以外にも、色々なイメージがあった。
「それくらい軽く受け入れてくれるなら、楽なんだろう。」
アーシャが好奇心旺盛なのは当時も変わらない。
色々なことを一日中質問攻めに聞いてきていた。
「あとはきっと、スズだったからだと思うよ。」
「他のwalkerの話だったら聞かなかったかもしれない?」
アーシャが顔を少し傾げた仕草を見せる。
「昔のことだから、分かんないけどね。でも、スズって私のことも自然に受け入れてくれたし、話していて、結構話しやすかった気がする。」
「それでも多少は、違和感を感じる基準や同調しづらい部分はあったと思うけれど。」
全く違う世界、環境で生きている者同士では、同種族と比べれば違いは多くある。
「それはそうだけど、それも含めて面白いっていう感じ?
友達や家族とは全然違う視点って、驚きがあって私からも違う発想が生まれる起点になることもあるじゃん?」
確かに受け入れ方の問題なのだろう。
ルーナもそうであるように、話を聞く前から敵対して聞く者とフラットに話を聞く者とでは、受け入れ方がそもそも違うのは当たり前。
私はアリスや和を最初から自分とは違う存在として見ているから、その言葉も自分に当てはめるものではないと、決めつけすぎているのかもしれない。
自分を軽く見過ぎているということについても、過去の私がしてきた私自身の扱いを当然としている。
けれど、和やアリスからすればそんなことは関係ない。
「私ももう少し、自分の感覚を当然だと思い過ぎない方がいいのかもしれない。」
「ん?分かんないけど、スズはどっちかというと周りの感覚を受け入れすぎじゃない?」
「…部外者同士の仲介的な意味では、そういう面もあるかもしれないけれど。
自分自身のことについては、考え方が固まり過ぎているのかもしれないと…最近は思い始めてる。」
「なるほどね。それは長く生きていれば当然と言えば当然だし、仕方ない気もするけどね。・・・あ。来たみたい。」
会議室の外がざわつき始めた。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




