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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
194/201

疑問:優しいのに、どうして怖いの?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

和さんが出て行ってもうすぐ一週間かぁ。

メールチェックをしながら、カレンダーを確認しているとふと意識してしまう。


和さんは今の仕事が落ち着いたら考えるって言ってたけど、帰るとは言ってないんだよね。

スズとの問題である以上、アンジェラさんが言う通り、私達がとやかく言ってもダメなんだろうけど、せめてスズと和さんが話す機会くらいは――


それを作るかどうかは、スズ次第でもある。

スケジュールは相変わらずいっぱいいっぱいだけど、その中でも妖怪の世界へ赴いたり、別件で移動したりと忙しそう。


でも、今日は金曜日。

帰ってきたら、土日の予定をやんわりとでも聞いてみようかな?

右腕のこともあるから、週末くらいはゆっくりして欲しいし。


それに、和さんのこととは別に聞きたいこともある。

魔法の世界の帰りに、ちょっとだけミランダさんと会って話した時に言われたこと。


「将来的に、ここで暮らす時にフォーラス家のままだと、色々と大変な面もあることを考えて、少し前にスズと少しだけ話した程度なのだけど、あなたが良ければ、私の家へ迎えることもできるわよ。」


アリス・フォーラスのままだと、裏の仕事をしてきた家系としてかなり厳しい見られ方をすることは、あの時の周りの視線からも十分分かった。

だから、ミランダさんの家に入るかどうか・・・かぁ。

本当に気が付けばスズは、色々なところにまで手をかけてくれてる。


将来的に魔法世界で暮らす。


そんなことほとんど考えてなかった。

そりゃあ、魔法使いである以上、分かってはいることだけど。

なんとなく、このままここにいたいと思ってしまっていた。


でもスズからしたら、私のことも、最後までちゃんと面倒を見ようとしてくれてるんだと思う。


「アリス。午後はどうするの?」

「んー勉強かなぁ?」


グェンさんの机も片付けたし、今他に私がやれることといえばそれぐらい。

焦っちゃ駄目だって分かっていても、どうしても自分の力不足を感じてしまう。


私にできることは限られてる。

だからこそ、和さんがいない間だけでもスズのスケジュールはちゃんと管理したいし、生活より仕事を優先するスズの少しでもサポートになれると良い。


「・・・はぁ。」

「何よ?なんかまた焦ってんの?」

「うーん。」


そうなんだけど、言ったらきっとまたイザベルは呆れるだろうなぁ。


「どうしたの?」

「!?」


テーブルに顔を伏せていた私の上から、降ってきた声に驚いた。


「え?どうしたの!?」


まだ時間は午後に入ったばかりなのに目の前には、スズがいた。

スーツ姿でリュックを背負ったまま、今帰ってきたばかりの状態。


「今日は午前中で切り上げてきた。」

「そ、そうなんだ。」


日中の仕事に関してはスズの自由だもんね。


「じゃあ。これからお出掛け?」

「そうしようかと思ってるけど、その前に少し話そうか。」


リュックを床に置いて、私の隣の和さんの机の椅子にスズは座った。


「?」

「アリス。先に謝っておく。ちょっと混乱するかもしれないけれど、後から説明する。」


「ん?」

「私を見て。」


スズは小柄な方だから、座ると私との目線はあまり変わらない。

どうしたんだろう?


「シャロン・フォーラスの居場所が知りたい?」


–どくん


シャロンと名前を聞いた瞬間。

血管の奥へ熱湯を流し込まれたみたいに、全身が一気に熱くなった。


「っは・・・はっ・・・スズ・・・。」

「我慢しようとしなくていい、素直に答えて良い。」


視界がぼやける。

手が震える。


「あ・・・・ああ・・・・あああああ。ば、しょ・・・・。」

「アリス。シャロンの居場所を知って、どうするの?」


「あ、ああああああっ・・・ああああああ・・・・はっはっ。」


座っている感覚すら曖昧になる中、倒れそうになった私を、少し冷たいスズの体温が支えた。


–シャロンの居場所を聞け


スズ?


スズ・・・・三番目・・・・


–3番目に聞いた方が早いだろう


「さ・・・3番目・・・場所・・・・・・・・・場所を・・・・聞かなきゃ・・・・・。」


–壊してもいい。


ダメ。


–絶対にだ。


嫌。


「!!っつああああああああああああああああああああ!!!!いや!!ああああ!」


自分の体なのに、知らない誰かに操られているみたいに動き出す。


なんで?


待って・・・


「シャロ・・・ンお姉様・・・・・の・・・・はぁ・・・はっ・・・場所を・・・・。」


スズの首に、私の手が伸びる。


「ちょ、サーズ。」

「大丈夫。アリス。場所を知った後はどうするの?」


イザベルの声。

首に伸びた手。


まるで・・・

これって・・・


暗い部屋の中。

ベッドの上で、呼吸を確かめるみたいに首へ置かれた手――


「はっ・・・知った・・・・あ・・・と?・・・・はっ・・・はっ。」

「そう。場所をブライアンにどうやって伝えるの?」


手に力を入れるつもりはないのに、スズの掴んでいる首元が徐々に皴を寄せ始めた。


嫌。


「ああああ。す・・・スズ・・・っ・・・あ。あああ。いやぁ・・・・」

「大丈夫。大丈夫だよ。」


顔が熱い。

目から涙がこぼれる。

視界はほとんど見えない。


「大丈夫。」


スズの声が耳に響く。


大丈夫。

大丈夫。


その言葉に、ざわつく音が少しだけ遠くなった気がする。


「はぁはぁ・・・あああ。お家の・・・・ま、魔法・・・世界にあるお家の、秘密の・・番号に・・・・。」


そうだ。

昔、小さい頃お父様が・・・


–誰もいなかった時の連絡方法を覚えてきなさい――


「めい、れいは・・・・いつも・・・・の番号、に・・・。はぁ・・・はぁ。」

「番号は覚えてるの?」


番号は、おぼえてる・・・・


思い出そうとしなくても出てきた言葉を、そのまま口にした。


ぼんやりとした視界いっぱいにスズが埋まっている。


「ス・・・ず・・・・。」

「大丈夫。お疲れ様、アリス。大丈夫。教えるよ。

シャロン・フォーラスの居場所を教えるよ。」


シャロンお姉様の・・・場所・・・・


「や・・・・あああ・・・・はっ。」


それは聞いちゃ駄目なんだと感じてる。


スズ。

ダメだよ・・・


「ダ・・・やぁ・・・。」


それでもスズは、魔法世界のどこかの住所を口にし始めた。


「――にシャロンはいるよ。」


その場所を聞き、スズが最後にそう言った途端。


耳鳴りも、

手の震えも、

全身を焼いていた熱も、

そしてスズの手の力も抜けていった。


全てが収まったのが分かった。


「はぁはぁはぁはぁ・・・はぁ・・・。」

「ごめん。無理させた。」


「はぁはぁはぁ・・・。」


なかなか、息が整わない。

力が入らずスズに寄りかかった。


「アンジェラ。」

「分かってるよ。これでひとまずは落ち着くかい?」


「恐らくは、本来の命令はここまでだと思う。

私からシャロン・フォーラスの居場所を聞くこと。

アリスの言葉からは確認のことや他のことまで言ってなかったようだし、そこまで細かい命令をする時間が無かったのなら、ひとまず命令は達成したことにはなるはず。」


命令・・・?

自分の体なのに、何があったのか状況が掴めない。


「はぁ・・・・スズ・・・?」

「ちょっと疲れさせたね。ちゃんと達成されたかの確認は、時間をおいてからにしよう。」


「首は・・・?」

「大丈夫だよ。普通に首を締めようとしても、ちゃんと急所を押さえなきゃ、簡単には落ちないよ。」


頬を伝っていた涙を、スズが静かにハンカチで拭ってくれた。


「とはいえ、アリスからしたら急すぎるわよ。」

「ごめん。落ち着いている様だったから、良いタイミングだと思った。」


「急に帰って来て、命令の解除をするなんて言い出すからね。」

「ミランダから、朝確認の連絡がとれたから、こういうことは早い方が良い。」


息も落ち着いてきたので、スズの胸元から顔を上げた。


「スズ・・・。」

「うん。」

「今日一緒に寝る。」

「分かった。」


今なら、それくらいのわがままは許される気がした。


「でも出かけるの?」

「連れて行く必要があれば、魔法世界に行こうかと思ってた。」


「じゃあ行かない?」

「そうだね。行かなくても大丈夫そうだけど……。」

「お昼ご飯は?」


「…アリスはもう食べた?」

「食べたけど、一緒に行く。」


「んじゃ、アリスはスズと一緒にいな。あたしがちょっと行ってくるよ。」


アンジェラさんが、私の頭を撫でた。


「頼んだ。」

「はいはい。」


アンジェラさんが階段を下りていくのを見送った。

スズも一度着替えてくるって降りたので、先に三階へ上がった。


「イザベルは知ってた・・・?」

「まぁ・・・そうね。ずっと傍にいるもの。」


そっか。

さっきのことイザベルは知ってて当たり前のことなんだ。


なんだっけ・・・

たしか、シャ・・・ロンお姉様のことだった。


ちょっと名前を思い出すのはまだ怖い。

でも、さっき頭が痛かった時は、そんな余裕もなかった。


ブライアンや・・・お父様の声が頭に響いてきていて、何かしなきゃいけないって口や体が借り物の体みたいに勝手に動いてた。


「キュウ!」「キーキ?」「キュキュ」


スズが上がってきたみたい。


「スズ帰ってくるのが早イ?」

「怪我カ?」

「病気?」


ウーノ達が普段より早く帰ってきたスズに心配の声を上げる。

確かに珍しいことだもんね。


「違うよ。ちょっと仕事のタイミングも良かったし、用があったから半休とったんだよ。」


「もうちょっと待ってね。」

「何か手伝う?」

「いやいや、座ってて。」


台所へ入ろうとしたスズを追い出した。

なんで腕が折れてるのに、何かしようとするのかな。


おかずは作り置きの、煮込みハンバーグを温めて、ご飯とお味噌汁を準備した。


「そういえばヒナとヒデは?」

「上の階で、掃除と洗濯してると思うよ。」

「そウそウ。」


「二人とも落ち着いてきてるみたいで良かった。」


「・・・戻ってきて欲しいって、ずっと言ってるけどね。」


「…分かってる。」


スズのことを心配して待ってる和さんみたいに、二人とも何かしてないと落ち着かないみたいで、最近はウーノ達がやっていた家事も先にやってしまう。


ハンバーグとご飯をカウンターに並べ、スズが反対側から受け取ったのを見て、最後にコーヒー用のお湯を沸かした。


「落ち着いてきているみたいだから、ちゃんと説明するけれど――」


食べながら、スズがさっきのことを説明し始めた。


以前この三階へ入ってきた人にブライアンが干渉して、ブライアンが私にしたこと。

そして、真名について。


ここへ山本梓として最初に来た時。

名前を知られたら良くない場合の為にって、偽名を伝えられたことを思い出した。

”アリス・フォーラス”という名前とは別に、魂に刻まれた名前があること。

そして魔法使いの場合は、”アリス”のように真名とは違う名前を、普段は名乗っていることが多いこと。


「基本世界の山本梓は真名なの?」

「あの時は、アリスのことがよく分かってなかったから、安全の為に別に用意しただけだよ。実際は知らない。」


なるほど。

そしてお父様やお兄様達は、私の真名を知ってる。


「古い名前として、継がれない場合もあるけれど、フォーラスの場合は死神にでも確認したのかもしれない。」

「その・・・ブライアンの命令は、もう大丈夫なの?」


「明確には分からない。今、シャロンの居場所を知っている状態で、魔法世界に行けばそのフォーラス家が使っていた専用の回線に連絡しようと、体が勝手に反応する可能性もある。」


明確には分からない。

またスズの首に手をかけるのは嫌。


さっきの感触を思い出す。

スズの首を絞めていたのは、私の手だった。


「大丈夫だよ。」


「・・・・・・・うん。

・・・でも、やっぱり私はスズがこういう時に、スズ自身のことを軽く見積もってるところが怖い。」


たとえスズが言った通り、簡単に死なないと分かっていたとしても、首を絞められることを前提に行動するスズは怖い。


どうしてもスズとずれてしまう部分。


「……そうかもしれない。」


スズは少しだけ困ったように笑った。


「他にすぐできそうな方法が思いつかなかった。」


やっぱり、こういうところ。


梓さんの魂を取りに行く時は、もう時間もない仕方ない状況だから選んだ選択なのかもしれない。

でもそうじゃない、結局スズにとってそれが選びやすい選択。

和さんがいつも怒る理由は、分かっているつもりだったけれど、改めて実感した気がした。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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