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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
191/201

答え:楽観は時に力にもなる

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

暖炉から静かにパキパキと燃える音が響く。


和やアリスが妖怪の世界に来た際に出会った山本宗一郎に、改めて時間を調整して会いに来た。

アリスのことは少し話したそうだが、細かいことまでは伝えていないらしい。

だから、ほとんど一から聞くことになるだろう。


しばらく案内された部屋で待っていると、宗一郎と颯太が入ってきた。


「スズー!」


颯太が勢いよく抱き着き、その後ろを宗一郎がゆっくり歩いてきた。

その姿は、以前オンラインで顔を合わせた時と同じだった。

山本宗一郎。


「こんにちは。」

「こんにちは。久しぶりだね。無事でよかったよ。」


向こうも私のことを覚えているようだ。


暖炉前の一人掛けソファに宗一郎は腰を下ろし、私の方に顔を向ける。

颯太が私と圭との間に座り込み、圭が少し困った表情をしているのが目に入った。


「あなたの孫である山本梓に関して、フォーラス家と関わった経緯を聞きたい。」


「・・・そうだね。あれから時間も経ってしまったけれど、少し思い出しながら説明をしよう。」


静かに話し始めた宗一郎の足元から、青い火が広がり始める。

その火は部屋全体へ広がり、その中央にぼんやりとした光景が浮かび上がった。


「娘の亜季子が梓を生んだ時。一つ問題があることに気が付いた。」


病院のベッドで亜季子と梓が眠っているところに、宗一郎が入ってきた。

宗一郎には、梓の身体から白い糸のようなものが伸びて見えていた。


「これは火車である私にしか見えないものだけど、梓の魂は不完全だった。

アリス・フォーラスさんから生気が繋がり、それによって生きているのだと分かった。」


分割された魂として、梓は不完全な状態で生まれてしまったということか。


「この時の私は非常にショックを受けていて、無我夢中に繋がっている先の魂を探したよ。」


そして、その繋がりを辿ってアリス・フォーラスを見つけた。


「同時に生まれた、アリス・フォーラスという少女を見つけたけれど、どうすればいいか分からなかった。」


フォーラス家で、生まれたばかりのアリス・フォーラス。


「そこから少し経った頃だろうか、そんな私にケーリー・フォーラスが声をかけてきた。」


ケーリー・フォーラス。

当時の当主。

ブルースとブライアン、そしてシャロンとアリスの父親。


「私は妖怪とは名乗らずに、アリス・フォーラスについて話を聞いた。」


ケーリーから、生まれたばかりのアリスに興味を持つ宗一郎がどう見えていたのか。


「アリスさんの話を聞くだけなら良かったのかもしれない。

それでも、話していく中で同時に生まれた、孫についても話してしまった・・・。」


この時にフォーラス側も、山本梓の存在について知った。


「今思っても、梓が生まれたことの喜びや不安定な状態に対しての不安も混ざり、私も不安定だった。

それに気が付き、私はそのアリスさんに会いに行くのを止めた。」


けれど、フォーラス家は動き始めたのか。


「梓は流れ込む生気に支えられながら、少しずつ成長し、どちらも無事に生きて良ければそれで問題ないのだと・・・。」


宗一郎から見た幼少期の梓の映像が流れ始めた。


「そこから数年経ったところ。亜季子からアリスの名前が出た時には驚いたよ。」


火車の血を持つ亜季子は、火車としての完全な能力ではないけれど、梓が繋がっているアリスの夢に繋がったのだろうか。


「そして、それがアリス・フォーラスさんの死が近いことにも気が付いた。」


死に近づく者を感じ取る。

それが火車の性質なのかもしれない。

颯太が私に会いに来たように、死に近い者に関与する能力。


「私には、どうすることもできなかった。」


宗一郎は、飲み込めない後悔を抱えたまま続けた。


「東京へ出た梓が死んだと聞いた時。私はその魂を探しに行った。」


空をかけ、青森から東京へ飛んでいく光景が広がる。


「その時に、いつか会った男を見つけた。・・・ケーリー・フォーラス。そしてその横には死神。」


空から見つけたケーリー・フォーラスとその横には死神の姿。

遠くて見えないが、そのスーツは赤い。


回収部ではなく…上層部?


宗一郎は近づこうとはせずに、空から見つめ続けている。


「詳しい経緯は分からない。この時、知りたくもなかった。

そう思い・・・その場を離れようとした時、その死神がアリスさんの魂を持ち、何かの肉体にそれを付与しようとしているのだと気が付いた。」


アリスの魂を、受肉させようとする場面を見ていたのか。

だが、宗一郎の視線はどうしてもケーリーへ引かれ、死神の姿は霞んで見えた。

火は静かに宗一郎の方へ向かって集まっていき、広がっていた光景も消えていった。


「…そこからアリス・フォーラスを追っていたと?」

「トラブルに関与することは避けたかった。

この時期、亜季子の老化がほとんど見られないことが目立ちはじめて、そろそろ怪異の世界へ移動することも考えていた。

だけど、アリスさんのことが私には心残りだった。」


自分のせいで死んだのかもしれないと、そしてその結果孫も死んでしまったのではないかと。


「状況は分かった。」

「アリスさんも・・・あなたにお願いしたけれど、乖離をさせないために繋げていた霊力が途切れたことに気づき、亡くなってしまったのかと思っていたよ。」


「あの肉体のままでは、生きていけない可能性もあった。

それにアリス・フォーラスの肉体は残っていたから、彼女は一時期山本梓としての人生もあったけれど、今はアリス・フォーラスとして生きているよ。」


宗一郎は、遠くを見るような目をして、小さく溜息をついた。


「梓を・・・梓が生きる方法はあったのだろうか・・・?」


山本梓が宗一郎の視線で、魂として不完全だったことが確かなのであれば…


「分からない。

だが、今度こそアリス・フォーラスとの魂の繋がりも断たれ、新たに生まれ変わると思う。」


それが宗一郎にとって救いになるのかは分からないけれど。


「・・・梓もやっと回帰の流れに戻れたのなら、それでいい。」

「亜季子と颯太はどうするつもり?」

「なになにー?」


颯太が私の方に寄りかかってきた。


「亜季子をこちらに連れてきた時に、その中に颯太がいることは亜季子も気が付いてなかった。」

「怪異の世界で生まれたとはいえ、颯太はほとんど人間だろう。」


怪異の世界に移り生まれた颯太は、亜季子と同じく老化が遅いのだろう。

アリスが亡くなった年から数えれば、精神年齢は十八歳くらいになるはず。

だが、まともに人間が育てられる環境ではない怪異の世界で育ち、精神的な成長が追いつかないまま、今に至ったのかもしれない。


「弘和君や圭吾がいなくなってから、戻ることも考えようかとは思っているけれど、まだしばらくは山本家へ戻れない。」


亜季子の夫、山本弘和とその息子の圭吾。

たしかにその二人は、亜季子とも宗一郎とも面識がある。


「戻るつもりなのか。」

「もうこんな老いぼれには、山本家を守ることが・・・唯一の生きがいなのでね。」


遠い昔に山本家の先祖にでも、そういう関わりがあったのかもしれない。


「…そう。」


それは宗一郎の中では、既に決まっていることがあるように見える。

それなら、あまり口を出さない方がいいのかもしれない。


「分かった。こっちの連絡先もすでに知っているなら、私から聞きたいことは以上。」

「えぇー帰っちゃう?」


立ち上がろうとすると、颯太が掴んできた。


「まさか颯太が出会った相手が、あなただとは思ってもいませんでした。

梓のことやアリスさんのことといい、颯太のことも色々ご迷惑をかけましたね。申し訳ない。」

「そういえば、なんで私のことは知っている?」

「死神達がよく話しているからね。」


なるほど。

それはとても納得がいく。


「それに、かなり昔だけれど、あなたは時々私にも乗ってきていたよ。」

「移動しやすかったから。」


昔はあの白い通路を通ることを避けて、他世界への移動に電車ばかり乗っていた時期があった。

ソファから立ち上がる為に、颯太を引きはがした。


言われてみれば、あの白い通路を避けていたのに、気が付けば気にせず使っている。

最近では急いで移動する機会も増えて、そんな昔のトラウマが気にならなくなってきているのかもしれない。


宗一郎と颯太と玄関まで歩いていると、妖怪の世界で気になっていることを宗一郎に質問した。


「地下に住んでいる妖怪達を知っている?」


「・・・もちろん。上下が厳しいこの世界では、そういった妖怪達にとって生きにくいことは分かっているよ。」


「そういった貧困層だけをエリアでまとめる等、何か方法はありそうだろうか?」

「エリアでまとめたとしても、上位種族に襲われることに変わりはないだろう。

それを守ってもらうとしても、その守る上位種族に出せる報酬はほとんどない。」


つまり、仮に地上に出られたとしても、危険性は今と変わらないか高くなるだけ。


「あなたには、私よりも色々なものが見えているでしょう。

そして、そんなあなたに、救いを求める者も多いのでしょうね。」

「とはいえ、できることには限界がある。何か手伝える方法があるなら考えるけど。」


現状では私がどうこうしたところで、地下街の妖怪の環境を急に変えることはできる状況じゃない。


「そんなあなただから、私もあなたへ相談したんです。

もし私が手伝えることがあるようでしたら、声をかけてください。」

「ありがとう。」


その後カルとイェは、先日の崑癒のこともあり、知り合いの狐に話を聞きに行くと言って、途中で分かれた。

私と圭は相談所へ戻り、スマホに届いているメールを確認すると、エルフのアーシャからだった。


先日巨人の世界から連れて帰ったエルフ達に関して、彼らが口にしていた妖怪の世界に対する意見が街中で広がり、それが一部上位のエルフも同意し始めたと。

元々は亡くなってしまった仲間を回収したいという希望だったはずなのに、徐々に妖怪への憎悪を口にする声が増え、このまま反乱を起こさせるわけにもいかないと、怪異側の担当者と話し合いの場を設けることになったという。

そこに私も一緒に参加して欲しいと。


となれば、またバースをつれて行くしかないか。


三階へ上がると、日付が変わってしばらく経過しているので、流石にアリスの姿はなかった。

けれど、台所のカウンターの上には、温めるだけの状態でおにぎりと味噌汁が用意されていた。

それぞれ温め、静かにカウンターで食事をしながら、昨日アリスに伝えた和への伝言のことを思い出した。


馬でもいい、灯でもいい。


それはここ最近、ずっと私が出せない答えをそのまままとめた内容。

アリスに何か伝えるかと聞かれて、あまり考えずにスッと口から出た。

和が出て行った後にナオやアリスと話し、見えてないふりをしている部分を自覚して、それでもまだ答えにすることを避けてる。


昔なら、こんなことで立ち止まる時間すら無駄だと思っていたのに。

それは今安全な環境だからこそ、余裕があり生まれた疑問なのかもしれない。


そう言う意味では、この環境を楽観的に考えれば良いのか、緊張感が少なくなっていると悲観的に考えれば良いのか。


きっとバースには、もっと単純に考えれば良いと言われ、

ナオには今のスズの気持ちが大事なんじゃない?、とでも言われそう。

アリスには、たまには楽観的に見ても良いと思うよ。という感じに言われる気がする。

そして、和なら…


そして和なら——それがお前の出した答えなら、俺はそれを信じる。とでも言いそう。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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