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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
187/201

答え:絵の餅から本当に餅になるか

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

怪異の世界で腕を痛め、骨折の可能性があった。

その為午前中は病院へ寄り、ナオはいない様子だったので他の医者に診てもらった。


そして午後、出社しているとナオから大量のチャットと電話がきた。


「和が出て行ったって本当?」

「和と連絡がとれないんだけど。」

「腕折れてるのに、出社してるの?」

「他にも診断した方が良いって言われたのを断ったんだって?」

「ちょっと診察も含めて、話をしよう。」

「何時に帰宅するの?」


休憩中にメッセージを確認し、帰宅時間だけ簡潔に返事を返した。

今日のミーティングが入っている時間から見ても、そこにアリスの意図があることが予想できる。


最近、ほとんど話す時間がとれていない。

妖怪の世界でブルースと何を話したのかも、今回アリス達が私を追って来た時の詳細も、まだ聞けていない。

いつもなら話す時間がなくても、ある程度内容をまとめて、和がメールを送ってきていた。


和に頼り過ぎていたことを、こういう時ほど思い知らされる。


そういえば、巨人のトレーから「次はいつ来るのか」という連絡も、まだ返事ができていない。

今日は恐らく難しいだろうから、明日か明後日あたりにでも行く調整を入れておいた方がいいだろう。


定時に仕事を終え、時間通りの電車に乗り込んだ。


崑癒と管簾にも今朝一応連絡は入れた。

けれどフォーラスとの一件がどうなったか、改めて手土産でも用意して確認しに行こうか。

フォーラスの目的は、通路を維持する為の燃料のように妖怪を攫うことだったらしい。

その為に広いエリアの管理者を襲うというのも辻褄は合う。


ということは、現状攫った魔法使いや別の生き物はもうあまり多くないのだろうか。

それは、使用した結果によるものなのかもしれない。

本当なら攫う前に止められるなら、それが一番良い。


できれば早めにブラッドに確認して、ある程度決まった拠点を掴んでおきたい。


電車を降り、駅を出たところでナオが立っていた。


「お疲れ。」

「お疲れ様。」


声をかけると、ナオは短く返事だけ返し、そのまま有無を言わさず私の手を掴んで歩き出した。

途中何かを言う様子もなく、黙々と相談所の庭を横切り、玄関をくぐるとやっぱりアリスが待っていた。

アリスも何か言いたそうな表情ではいたものの、ナオが明らかに怒っている様子だったので、今はナオを優先するしかなかった。


応接室へ入れば、ナオはいつものように鞄から包帯や薬などを黙ってテーブルに並べていた。

ナオは口を開く様子もなく、黙々と道具を並べ続ける。

その向かいのソファ脇にリュックを置き、私は洋服を脱ぎ始めた。


「・・・本当に右腕しか見せなかったの。」


午前中の診察で右腕は固定してある。

が、確かにそれ以外の診察は断った。


「ひとまず右腕はちゃんとした治療が必要だった。」

「それを判断するのはスズじゃないでしょ。なんで他の場所も診せなかったの?」


全部治療し始めると、それなりに時間がかかることが分かっていた。

けれど、流石にそれをそのまま口にするわけにもいかない。


「相手がナオじゃなかったから、事情を詳しく説明するわけにもいかなかった。」

「それはそうだけど・・・はぁぁ。」


かなりの高さからの落下ということもあり、骨折以外にも痣やすり傷は数えられない。

いちいち気にしている暇がなかったと言えば、またこれも怒られるのだろうけれど。


「で?和は何で出て行くことになったの?」


ナオはいつもよりも手荒に進めていきながら、呆れた目を私に向ける。


「妖怪の世界に行った私を助けに和やアリス達が来たことについて、危険性を考えれば来るべきじゃないと伝えた。今回は中間点が取れる内容じゃなかった。」


「そりゃあ助けに行って、助けに来るべきじゃないって言われたら怒るだろうね。」

「分かってる。」


この結果はアンジェラにも言った通り、高い確率で起きると予想ができていた。


「スズの言い分も分かるよ。」

「これで良かったと思ってる。」


「和が出て行って?」

「そう。」


ナオが顔を上げた。


「本当に?」

「助けられたことも多い、今もいなくなって困っている。

それでも、このまま和が私に合わせ続けていたら、いつかは――」


「和が死ぬかもしれないって?」

「可能性は高い。」


山本梓の魂を回収しに行った時も、精霊の世界へ行った時も、そして今回も和は偶然無事に帰ってこれているだけ。

本当なら、もっと関与させないようにするべきだった。

それを色々な事情が重なり、後回しにしてしまっていた。


私の気持ちに「傍にいて欲しい」というものが混ざっていることは、何となく分かってる。

だけど、そんな感情の為に、和を失ったら――きっと私は後悔し続ける。


「そこはスズの判断の方がきっと正しいんだと思うよ。

でも、それが嫌だと感じてる僕やきっとアリスさん達も、もっと他に方法がないかを探りたいんだよ。」

「なぜ?」


そんなリスクが分かっていながら、別の方法を探す理由が思いつかない。


「分からないかなぁ。」


またナオは呆れた表情を浮かべた。


「僕にとって、和もスズも大切な友人なんだよ。」


「…私にとってもそれは変わらない。」


大切な相手だからこそ。


「そんな二人に幸せになって欲しい。ってただそれだけだよ。」


それも分かる。

だからこそ、私はこれが正しいと思ってる。


「和だけじゃない。スズにもだよ?・・・どっちかじゃダメなんだよ。」


私の幸せということなら、どうなんだろう。


「和にとって、平和に生きることが本当に幸せなのかな?」


和の幸せに対しての考え方が違う?


「スズは、和が傍にいないことは本当に良いの?」


「……。」


「少なくとも僕にはそう見えないから、つい口を出しちゃうんだよね。」


他に方法があるかどうか。


「私と和では、生きる時間の長さが違う。これからも何度も和を悲しませるし、喧嘩にもなることは分かってる。」

「それでいいじゃん?喧嘩したって、悲しんだって、一緒にいる理由にはなるでしょ?」


少し前にアリスにも、責任の範囲が違うと言われたな。


それでも、また同じことをしているのは――責任というより、


「…そういう予想が分かっていることに対して、私が嫌なんだと思う。」

「まぁ悲しむとか怒るとかって分かってることをするのは嫌だよね。

でもさ、その方が良いって本人は思ってるかもしれないよ?」


確かにそこは相手次第だろう。


「……。」

「まぁ和も時間が必要だろうから、少し間をおいてからでもいいけど、もう一度ちゃんと話して欲しいかな。」


和がここを出て行った以上、もう二度と会わない可能性もある。

ここに来るのは、いつも和の方だったのだから。


「あとこれも、お節介だけどさ・・・。」


湿布の匂いが部屋に広がったころ、ナオは最近は最後にチェックしてくる私の右目を覗いてきた。


「あくまで個人的に和は考えてるんだから、スズも苦手だろうけど、ちゃんと考えてみても良いと思うよ。」

「個人的…に考えてない?」


「無意識だと思うけどね。はい、終わり。お風呂は明日の朝とかにしてね。」

「分かった。ありがとう。」


数分後に始まるミーティングの為、急いで地下へ降りた。


その後のミーティング中。

さっき話したナオの言葉が妙に頭に残った。


「個人的に考える」

その指摘はつまり――私は個人として考えていない、ということだろうか。


–バサッ


脇に寄せておいた資料の山を崩してしまった。

ヘッドホンで話を聞きながら、床に落ちた資料を左手で拾っていく。


『私の個人的な意見では――』


流れる言葉が、耳に入る。

個人的な…意見は、あくまで一個人の意見。

大事な判断や慎重な決断が必要な時には、遠ざけてしまうことは多い。


いや、違う。

そういう話じゃない。

ナオが言いたいのは、そんな幅が広い話じゃない。


『スズさん。あなたの意見も聞かせて頂けないでしょうか?』


ヘッドホン越しに声がした。

私の意見…


「はい。ここまでの内容からすると――」


これは私の意見だろうか?


いや、少し違う。

これは今までの内容や状況からの可能性や過去の実績の参考になる場面を説明しているだけ。

つまり、私の意見ではない。

でもこの場面で、彼が必要としているのは私の意見じゃない。


でも和が求めているのは、私の意見なんだとしたら。

私の意見は、やっぱりナオにも伝えた通りの内容のはず。


有限ある生き物なら、死のリスクの高い環境で生きるよりも、そうではない環境ではない方が良いことは明確なはず。

これが、誰が見ても明確な答え。


なら何故こんなに何度も考えてしまうのだろう。


–人を好きになるのって凄く幸せなのに、同時にどうしてこんなに辛いんだろう?


遠い昔、誰かがそんなことを言っていた気がする。

誰かに固執した時、その視野や見え方は変わる。

相手の影響もあるだろうし、固執した者に意識が向きがちになる。


自覚はある。

固執していると思う。

だからこそ、前提条件に含んでしまったんだと。

その存在がある環境にどこか依存していた。


それを今までの私は、それを良しとは考えない。


–もっと他に方法がないかを探りたいんだよ。


他の方法。


いくつかのミーティングを終えて、気が付けば日付が変わっていた。

風呂は明日の朝入るから、それならこのまま寝てしまって良いか。


–カタン


物音の方へ目を向ければ、圭と目が合った。

そしてその奥に、カルとイェ。


三人共、階段の下から顔を出していた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん。」

「聞くよ。」


「風がカーテンを揺らし、穏やかな時間が流れている中。唐突な声が遠くまで響いた。

その声は緊張感を持ち、焦った様子からも内容を聞けば、誰もが驚きを隠せなかった。

どれを選んでも正解には思えない選択肢ばかり。時間もない。方法も少ない。

それでも行かないといけないんだ!今すぐにでも!こんなことしてる場合じゃないんだ!

その声は、どこまでも心に響き、揺さぶった。それが最もシンプルな理由だったと思う。

ここに手があり、足があり、やれることがあるのなら少女の言う通り、できる限りのことをやりたかった。再び静かな時間を戻すにはそれしかないと思った。」


必死な和やアリスに、圭も同意して手伝ったということだろう。

やれることがあるのなら、できる限りのことをやりたかった、か。

それはアリスも言いそうだし、圭も妖怪の世界に対して心苦しくしている様子からも、力になりたかったという感じなのだろう。


「圭達の気持ちを否定したいわけじゃない。」

「分かってるよ。それでも、連れて行くべきじゃなかった、っていうあんたの意見が正しいと私も思うよ。」

「ごめんなさい。」


カルとイェも落ち込んでいるのか、沈んだ声をしている。


「最近では、圭は和と動くことも多いから、力になりたいって気持ちも分かる。」

「私には、どちらも正しい場面がそこにあったんだと思う。」


カルが階段を上がってきた。


「そうかもしれない。」

「私達が仲間を探したい気持ちと同じだと思った。」

「危ないことも分かってる。」


危ないと分かっていても、動いてしまうことはある。


「そんなことを繰り返せば、いつか本当に取り返しがつかなくなる。」


「・・・あぁそうだね。」

「ごめんなさい。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その為に、なんでもする。」

「圭?」


圭が珍しく、強めに反応を返した。


「深い深い暗闇を上り、手をかけ手をついた先には、ただ美しい光景が広がる。

それは何も無いことと同じだと、旅人は息をついた。力が抜けた。進むのを止めた。

止めた筈なのに、ある日一つの光が指してきた。それが長い年月を経て二つ三つと増えていく。

男は困惑しつつも、再び進み始め、気が付けば光は色々な所で見つかった。

その光を追いかけ、気が付けば大切なモノを手にしていた。それを――」


「…圭もここを大切に思ってくれていることは、分かってる。分かってるよ。」


最後まで聞けずに止めてしまった。

圭もそれ以上続けようとはしなかった。


基本的に直接的な危険がなければ、相談所の様子を見ているだけに徹している圭が、和に手を貸して動いた。

それは圭の意思だろう。


「圭やヒナ達の意思が見えてないわけじゃない。それと反対のことをしてるのも分かってる。」

「ごめん。私達があんまり口を出す事じゃないことも分かってるよ。」

「ごめん・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カル。宗一郎・・・。」


宗一郎?


「あぁ大事なことだったから早めに伝えたかったんだけど、タイミングがなかったから遅くなった。」


カルが、トーンを変えて話し始めた。


「私達が途中から圭達に合流した時に、あんたが探している山本宗一郎と名乗る火車に出会ったんだ。」

「会ったのか。」


そこから、カルが宗一郎と出会ってからの話を続けて行った。


「一応連絡先は確認してるから、もう一度話を聞きに行きたいとは伝えてある。」


「…そうか。それは話を聞きに行こうか。調整をお願いしたい。」


颯太との合流と一緒に宗一郎が出てきていたのか。

確かに颯太がその話をしていたのだから、その可能性は十分にあっただろう。


「分かったよ。まぁ・・・私達も色々空回りしたとは反省してるけど、さっきの尚弥って人間の意見に賛成なんだ。」

「私達は、スズに助けられたから、幸せだと嬉しい。」


「…ありがとう。もう少し考えてみるよ。」


三人が階段を降りていくのを見送った。

妖怪という括りでも、色々な考え方や生き方はある。


圭は特に私との時間も長いし、ここでは和との時間も続いている。

喧嘩もするけれど、仲が良いと思う。

妖怪の世界から離れていることもあるだろうけれど、魔法使いや私への考え方が妖怪の世界の妖怪達とはかなり違う。


というか、もう一つ気になる言葉が続く。


私は幸せじゃないのだろうか?

そんな風に見えるほど空っぽなんだろうか。

いたって普通に過ごし、それなりに好きにやっているつもりだったけれど、周りから見ると不幸せに見えるということなのだろうか。


パソコンを落とし、すぐ後ろのソファへ腰を下ろした。


彼らから見れば、和が傍にいない私は不幸せに見えるということなのだろうか。


そしてその逆も…?


それは理想と現実の差にもみえる。

どちらかを選ぶとなれば、私はほとんど現実を選んできたと思う。

理想をかなえる為にも、結局必要なのは現実だと思ってきた。


その評価に幸や不幸があったとしても、それは絵にかいた餅と同じだと…


重くなる意識の中、いつかの暖かさはやっぱり思い出せなかった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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