↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
186/201

疑問:お互いに少しずつ近づくのは理想?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「うー・・・・・・。」

「むー・・・・・・。」


翌朝。


日向と秀人はお茶漬けを口にしながら、唸り声を上げる。


「嫌なのは分かるけれど、こういう予想もあっただろう?」


狐さんの家から脱出した後、私達は宗一郎さんの家で、ようやく息を整えるように状況を整理していた。

その時、スズが相談所へ戻ったと聞いて、みんなで驚いた。


そうして急いで戻ってくると、お風呂から上がったばかりのスズが階段を降りて来た。

その姿に驚きながらも、安心した。


そして、この後何が起こるのか、少し予想もできてしまっていた。


だから朝、和さんの姿がなくても、驚きはそこまでなかった。

――ただ、胸の奥に残る寂しさだけは、どうにもならなかった。


「嫌だ・・・。」

「和ぅぅ・・・。」

「キュウ・・・」「キー・・・」「キュ・・・」


「そうは言っても、二人の問題だからね。あんた達が首突っ込めることじゃないよ。

カイルもスズも一度頭を冷やした方が良いだろうし、しばらく様子を見るしかない。」


アンジェラさんの言葉は正しいよねぇ。

でも、日向と秀人二人の気持ちには同意しかない。


「戻ってこなかったらぁ・・・。」

「向こうで良い人とか見つけたらぁ・・・。」


「あーどっちもそれは分からないけれど、あんまりそんなイメージはないけどね。」


戻ってくるかなぁ。

時間をおくにしても、不安は残るよね。

スズはスズで、何事もなかったみたいに出社していったし。


「とにかく、時間が必要なんだ。あたしも最近の相談所の運用なんて知らないんだから、この後ちゃんと説明してもらうよ。」


「「・・・・・はーい。」」


あれ?

そういえば、土日あけてた分のスズのスケジュールどうなってるっけ?

かなりドタキャンしてるよね。

急いでメール確認と連絡しなきゃ。


和さんがいないからって、戻ってきた時に仕事まで滅茶苦茶になってたら嫌だ。

ちゃんとやれることはやっておかなきゃ。

・・・それでも、数日で済めばいいなぁ。


朝食と片付けを済ませて、日向達と二階へ降りた。

私はまずパソコンを開いて、メールチェック。

日向達もアンジェラさんに説明しながら、和さんのここ数日の状況を見直している。


沢山のメールを一つ一つ確認しながらも、時々無意識に溜息が漏れた。


「いつまで凹んでんのよ。」


イザベルが足元から声を上げる。


「だって・・・そりゃあ・・・ねぇ。」


しょうがないじゃん?


妖怪の世界で起こったことを思い出す。

フィフさんも、和さんや私がいることに反対してた。

そしてフィフさんの予想通り、きっと昨日の夜スズも和さんに反対したのだと思う。


でも今回は、どうしても和さんを責めきれない。

きっと私も同じことをしてしまうから。

それは本質的には、私が妖怪の危険性をちゃんと理解できていないからかもしれない。


だからといって――しょうがないってことにはやっぱりできない。

スズが、一度いなくなったことを知っている。

たしかに状況は違うけれど、いなくなるってことは私や和さんからしたらきっと同じ。


そういう感覚そのものが、スズやフィフさんとは違うんだと思う。


「アリスも言ってたじゃない。」

「ん?」


「完全な理解じゃなくても、そのままでも良いんじゃないかって。」


そのまま。

今の状況のままじゃ、ダメなのかどうか。


「うーん。そうなんだけど。でもきっと今回みたいな場合は、私や和さんはきっと同じことしちゃう。」


足元の影が揺れた。

そういえば妖怪の世界では、ルーナさんは一度も出てこなかった。


影が形を作り、ルーナさんが隣の椅子に腰掛ける。


「どうして?」


どうしてか。


「それこそやっぱり死ぬことに対する、考え方の差かなぁ。」


スズは地下で、私や和さんが精霊に連れていかれた時。

きっと焦って余裕もなかった。


でも、それをそのまま私達がスズに当てはめるのは違う。

それがスズやフィフさんの言っていることなのは分かってる。


私の基準を相手にそのまま押し付けるのは、確かに違う。


「その差がどうにもならないのなら、和がした通りここを出て行くのは正しいと思う。」


「むー・・・・。」


日向達みたいな唸り声が出てしまった。


どうにもならないのかな?

だって、スズってすっごく合理的だけど、結局優しい。

全然合理的じゃない時だって、最終的には話を聞いて、ちゃんと考えてくれる。


あれ?

でもそれって。


もしかして、私はスズが寄ってきてくれるのを待ってるだけ?


崑癒さんと話した時みたいに、絶対にそれを譲れない時もある。


–諦めますか?


ふと、ガルシアさんの言葉が出てきた。


死神とのやりとりの時。

ガルシアさんは、確かこう言ってた。


「あなたなら、彼らをどうやって説得しますか?」


会議に参加する死神の人を相手に、何をどう説得すればいいのか分からなかった。

だから”諦める”という言葉が、どこかには浮かんでいた。


崑癒さんとの話が、もしあのまま続いていたらどうなっていたんだろう?

どうしてもスズを返さないと言われたら、私は諦めるの・・・?

スズがもし諦めていたら、私はここにいなかったかもしれない。


どうすればいいだろう?

スズはやっぱりどこか遠い。


でも――

待ってるだけじゃ、きっと変わらない。


全部を同じように理解できるなんて、最初から思ってない。

それでも、少しでも近づけるなら。


こっちから近づく為に。

もう一度スズと話した方がいい。


「まずは、やれることやってみようかな。」

「は?」


パソコンのキーボードを叩く音が、いつもより少しだけ強く響いた。


「アリスー・・・・・どうしたの?何か、変な顔してるよ?」


後ろから日向の声が聞こえたので振り返ると、変な顔と言われてしまった。


「え?そうかな?いつも通りだよ?」

「まだ予定が決まってないらしいんだけど、今度そっちの机を使ってるグェンが今度帰ってくるんだって。」


日向の差した机に視線を向けると、アンジェラさんと尚弥さんの間に挟まれた机。

誰が使っていたのか知らなかったけれど、グェンさんって人なんだ。


「そうなんだ?私は初めましての方だよね。」

「そうそう。帰ってきたら紹介するね!

んでね、もし良かったら空いてる時に、簡単に片づけをお願いしてもいい?」


机の片付け?


「そのままにしておくと、グェンが更に資料とか道具とかを積み重ねると思うから、帰ってくる前にちょっとでも一度片付けておいた方が良いと思うんだよね。」

「私が勝手に触っちゃっても大丈夫?」


「大丈夫だよ。分かる範囲で良いから、適当にやってくれると助かるよ。あいつ雑だから。」


アンジェラさんも、日向の後ろから笑って言った。


「分かりました。特に午後予定もないので、やっちゃいますね。」


グェンさんかぁ。

どんな人なんだろう?

日向達も知ってるってことは魔法使いなのかな?


でも。

アンジェラさんやまだ会ってないけれどグェンさんが嫌いな訳じゃない。

それでも、こうやって新しい人の話が増えるたびに、和さんが本当に戻ってこないみたいで嫌だなぁ。


お昼ご飯も和さんが作り置きしてくれているパスタを食べて、再び二階へ降りた。


グェンさんの机の下にある引き出しの上段を開くと、重い動きと共に資料や写真などがとにかく詰められていた。


「こ、これは・・・。」


本当に無造作に詰め込まれていて、順番も内容も滅茶苦茶だった。

日本語もあれば別の言語もあり、分類も何もされていない。

とりあえず机の上に広げていく。


「イザベラ。ちょっとでも内容が、分かりそうなやつがあったら教えてくれない?」


日本語の資料なら多少は分けられそうだけど、それ以外は英語以外もあって写真くらいでしか判断ができなさそう。


「雑ってレベルじゃないわね。でも遺跡や古い文化についてだってことは何となく分かるわね。」


確かに、古代遺跡や昔の食生活や文化の経歴とかの言葉が多い気がする。

そういうのを調べてる人なのかな?


ひとまず同じ言語毎に分けてみる。


そういえば、妖怪の世界で会った宗一郎さんのこと、まだスズに言ってない。

もともと火車って妖怪についてスズが調べていたんだから、ちゃんと伝えなきゃ。

私達もちゃんと話す暇もなかったけれど、スズのこと探すのを手伝ってくださって、全然悪い人って感じはしなかった。


バタバタしちゃったけれど、最後お別れの時も私の頭を撫でてまるで孫を見るような目をしてた。

私は山本梓さんじゃないけれど、やっぱり他人でもない。


「これは妖怪の世界についての資料みたいね。」


「・・・あ。本当だ。」


イザベルに言われて、手元の資料を見ると妖怪のことについて書かれていた。


–怪異世界


 妖怪は、元々同居人による恐怖や過去の失敗を伝承する形から生まれた可能性が高い。

そういった教訓から関連した妖怪に名前が生まれ、今の妖怪という形が出来上がったのだとした場合、今も人間の記憶や継承に深く関連してその存在が成立しているのかもしれない。


そう感じられる妖怪の特徴として、同種類の妖怪同士が死ぬ際、その個体の記憶の継承が妖力や生気をもって同種族の個体に引き継がれる。

これは同居人や魔法世界の生き物にはない、妖怪独自の特徴といえるだろう。

個体という明確な存在を持ちながらも、妖精や精霊にも似た記憶の共有や継承という特徴は、生死という概念を大きく変える要素とも言える。


それならば、もしも同居人からそういった伝承が途絶えてしまった場合、怪異世界にどのような影響を及ぼすのだろうか。

同居人の世界とは完全に確立している、別の世界という存在でありながら、何か繋いでいるものがもしも存在し、それが妖怪という存在を作り上げているというなら、それはどのようなモノなのだろうか。


「記憶の継承・・・。」


もしも、この書いてある通りに妖怪は同じ種族同士で、記憶を継承してるのなら、確かに個人という見方も生死という概念も大きく違ってくる気がする。

それに颯太君が言っていた通り、生きていること以上に死ぬ時に、それを誰に継承するかはとても大事なことになる。


それに同居人は基本世界の人のこと。

つまり、基本世界の人間からの噂や伝承が妖怪の人達に深く関与しているのなら、確かに基本世界の人がそれを忘れてしまった時、妖怪の存在はどうなってしまうんだろう?


「確かに書いてあることは面白いけれど、ひとまず手は進めないと終わらないわよ。」

「そ、そうだね。」


気になってしまい、気付けば手が止まっていた。

確かにまだ引き出しの一つも整理できてないんだから、まずは片付けてしまわなきゃ。


そんなこんなで時々手を止めてしまいながら、引き出しの中を片付けていくと気が付けば夕方になっていた。

ふと時計を見上げて、昼にいじったスケジュールのことを思い出した。


「あ。そろそろ帰ってくる・・・。」


続きの片づけは、明日やろうかな。


「何よ?サーズは今日、定時に帰ってくるの?」


「・・・じゃないと、ミーティングがギリギリになっちゃうからね。」


スズはミーティングの30分前には地下にいる。

だから今日は、ほぼ定時に帰ってくるはず。


「カイルみたいなことしたのね。予定を勝手に詰めて相手を逃がさないやつ。」

「ふふん。スケジュールを管理する人の特権だからね。」


そもそも土日にドタキャンした分の再調整もあって、かなり詰めて入れざるを得なかったんだけども。


一階へ階段を下りていくと、庭から声が聞こえてきた。

やっぱりスズは時間ぴったりだ。

でも、声がするって事は誰かと喋ってる?


玄関が開くと同時に、スズかと思っていたら尚弥さんが入ってきた。


「アリスさん。こんばんは。」

「こ、んばんは。」


「ただいま。」

「おかえり、スズ・・・。」

「スズ。応接室で。」


珍しく尚弥さんが、ちょっと怒ってる感じがする。

きっと、和さんのことだよね・・・


少し大きい足音を立てながら、尚弥さんが応接室の方に歩いて行った。


「…アリスも、多分話したいことがあるんだよね。」


後から玄関をくぐってきたスズ。


「後で・・・できれば・・・?」


流石にここで尚弥さんを無視して、話すわけにもいかないけれど、ちょっと言い出しづらい。


「ごめん。明日でも良ければ、もう一度時間調整してくれる?

できればミーティングはもう少し後ろ倒しにして貰えれば、明日も早めに帰ってくるから。」


やっぱり私がスケジュール調整して、時間を確保したの分かってるよね。


「うん・・・ありがとう。分かった。」

「スズ!」

「今行くよ。」


尚弥さんのちょっと怒った声が、応接室から響いた。

それに反応して、スズも急いで向かって行ってしまった。


これは・・・確かに今日落ち着いて話すのは無理そう。


尚弥さん、きっとかなり怒ってるんだろうな・・・


みんなそれぞれ言ってることが間違ってるとは思えない。


つまり、中間点を探すっていうのは、思っていたよりずっと難しいことなのかもしれない。

少しずつ歩み寄るなんて――そんな都合のいいことが、本当にできるんだろうか。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。