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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
185/201

答え:所変われば品変わる

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

庭の奥へ進んでいると、急に狐の領域が割れたのが分かった。

さっきまで張り詰めていた空気が、ふっと消える。


それと同時に管簾の変化も消えたようで、狐に変えていた姿も消え元の姿へ戻った。

目の前で、その妖怪も領域が割れたことに一瞬驚いたように動きを止めたが、「好都合だな。」とつぶやきそのまま進み続けた。


進んでいけば、徐々に木の数が増えていき、森の中へと繋がっていくようだ。

夜の森の中へ黙ってついていけば、どんどん深く暗くなっていき、奥は見えなくなっていった。


「もう領域は抜けているだろう。どこまで行くつもり?」


「・・・もう少し先だ。」


目の妖怪はそれ以上何も言わずに、進んでいく。

しばらく進んでいくと、風が頬を撫でる。


洞窟?


暗すぎてすでに見えないが、より暗い空気と通り抜けるような風の音が耳に入る。

足元も草木から、砂利道、そして固い石の上へと変わっていっている。


この妖怪は、道楽で人間を食すことがおかしいと言っていたが、それが私を連れ出す為だけの口実にすぎないのか、本心なのかどうかは分からない。

だが、徒歩で移動している様子を見る限り、この妖怪は領域を持つほどの上位の存在ではない。


草木の匂いはいつの間にか消え、湿った石の匂いが肺の奥へ沈んでいった。

完全に洞窟に入ったのか、静かな足音と水滴が落ちる音が響いて聞こえる。


妖怪の世界へ来た日から数えれば、今日はもう日曜の夜だ。

明日の朝には帰らないと、会社へは無断欠勤になってしまいそうだな。

それに、もし圭達が探してくれているのであれば、早く連絡しないと和どころかアンジェラにも怒られてしまいそうだ。


風の空気が変わった?


洞窟から、どこかへ抜けたのだろうか。


「ここは?」


「・・・地下に出る。」


真っ暗だった奥に、ポツンと松明の火が見えてきた。

その光の向こうに、広い空間がぼんやりと浮かび上がる。


さらに進むと、遠くからざわめきのような声が響いてきた。


「…地下街みたいだな。」


通路は土や石で塗り固められ、その奥には広い空間が広がっていた。

まるで地下に作られたコロシアムの、外壁通路に立っているようだった。

その一番下には生活をしている沢山の妖怪達の姿が目に映る。


でもその姿は、最近見た天狗の町や狐達とはまったく違う。

どの妖怪も痩せ、明らかに貧しい状態だった。


円形の外壁沿いに作られた通路では、ところどころで妖怪が行き交っている。

おそらく地上へ繋がる道が、いくつかあるのだろう。

目の妖怪は迷うことなく、外壁の通路を奥へと進んでいく。


「こっちだ。」

「どこへ向かってるんだ?」


ようやく、妖怪の足が止まった。


「最初は、ただこの奥にある地上への出口の先にある、人間のいる世界へ送り届けるだけのつもりだった。」


目の妖怪が、振り向きながら布をめくり顔を見せる。

通路は二手に分かれ、一つは下へ降りる階段。

そして妖怪の男が指したもう一つが、おそらくは地上の出口への通路。


「今は?」

「少し話を聞きたい。お前は、何者なんだ?」


「ちゃんと説明すると少し長いけれど、端的に言えば何度も記憶を引き継いでいるただの人間だよ。」

「ただの人間・・・か。」


つぶやく男は、表情をあまり変えずこちらを見た。


貧困街の存在は、たまに耳にしたことがあった。

けれど、こうして目にするのは初めて。

大抵は来る前に用が終わって帰るか、あるいは食われてしまうだろう。


「他の世界から見て、この世界の上下関係はどう見えるんだ?」

「ここも他世界もほとんど関連のない別の世界。時には時間の流れも違う場合もある。

生き物としての基準が違う以上、そういった評価には意味はない。

場所が変われば、価値も変わる。」


「・・・俺には歪に見えてしまうんだ。同じ場所、世界で生きているのに、なぜこんなに差が生まれてしまうのか。」


男は地下の方に視線を向けながら、怒りや悔しさにも似た表情を浮かべる。

目を多く持つからこそ、見えることも多いのかもしれない。


「もしお前が、その差を埋めようとするならどうする?」

「俺?」


こんな感じの話を少し前にもしたような気がする。

どこでだっただろうか。


「・・・能力の差は、やっぱり埋められないものがある。それはどうしようもない。

それでも、生きていくには、それだけでは足りないことも多いと思う。」


評価の基準を能力だけに寄せないのだとしたら。


「そういう見方や考え方が、どこまで通じるかはやってみればいい。」

「上の奴らは、俺を道具程度に見てるだけで、耳もかさないさ。」


少しかすれた笑い声で、男は返事を返した。


「話を聞かない相手に、直接交渉するのは時間も手間もかかるだろうな。

でも、中にはお前の話を聞いてくれる相手もいるだろう?」


考え方はしっかりしている様子だし、人間への見方も偏っている印象は薄い。


「どうだかな。」


けれど、結局動くかどうかは当人次第。

外部から言える範囲は限られる。


「どちらの立ち位置ももう一度見てみればいい、狐のところで扉を壊したのもお前だ。

そのせいで、私を逃がしたとでも言っておけばいい。」


これ以上話せることもないだろう。


「変な人間だな。・・・だが、嫌いじゃない。」

「また会うこともあるだろう。その時にはまた話でも聞かせてくれ。今回は手を貸してくれて助かったよ。」


男が指差していた通路への道に足を進めた。

声をかけられることも、引き留められることもなかった。

そのまま歩いていくと、木造の入口とともに階段が現れた。

その階段を上がっていけば、頭上に地上の空が見えてきた。


昨日に続き、雲の多い空では月明かりは望めなさそうだ。

目の妖怪は、出口の先に人間の世界があるような言い方をしていたけれど、すぐに見つかるだろうか。


階段を上がり、地上へ出た。


足元は、土とやや小石が入り混じった平地のようだ。

少し離れた場所に川があり、その上流の方には町の明かりも見える。

移動そのものは徒歩でしかないから、最初にいた場所や狐の場所とそこまで離れてはいないと思うけれど。


川に沿って町の方へ向かっていくと、橋が見えてくると同時に、その下がぼんやりと光っている。

あの下が基本世界と繋がっているということなのだろうか。

以前、妖怪の世界で条件の合う扉を見つけた時と同じ。

そういった空間は同じように見えるのかもしれない。


町にもまだ距離がある。

妖怪の姿も見えない。

なら、今のうちに確認してしまおう。


橋にたどり着き、そのまま橋の下をくぐる。

同じ風が流れているが、奥へ進むにつれて徐々に明るさが増していく。

橋の下から抜ければ、コンクリートでできている普通の住宅街が目の前に広がった。


基本世界に戻ったか。


振り返るとさっき通った状態とは異なり、建物と建物の間になっているようで、野良猫くらいしか通れないような道になっていた。

とはいえ、子供くらいなら通ってしまう可能性もあるだろうから、このあたりの管理側には連絡は入れておいた方がいいだろう。


とにかく今は、相談所に急いで戻ろう。


辺りの住宅街を少し探すと、条件に合う扉はすぐ見つかった。

扉をくぐり、相談所へ急ぎ足で向かった。


「え?ええ!?スズ?」

「お、おおお、おかえり?」

「キュウ!?」「キーキ!」「キュキュ?!」


三階へ上がるとウーノ達と一緒に、ヒナとヒデとアンジェラがいた。

和やアリスの姿が見えない。


「自力で帰ってきたみたいだね。日向、秀人連絡してあげな。」

「あ!うん!すぐに。」

「スマホ、スマホ!」


「どういう状況?」


地下の方に圭達も見当たらなかった。


「あんたを探しに、アリスと和もついて圭達と妖怪の世界に行ってるんだよ。」


「…なんで?」


私が妖怪の世界にいたのは、おおよそ24時間弱。

圭達が来る可能性は想定していた。

けれど、和達まで向かった?


「あんたが急に颯太に連れていかれたって、聞いたからに決まってるだろう?」

「そういえば、バースは大丈夫?」


「あぁ。あのフェンリルは庭にいるよ。日向達が食事とかはだいたい分かってたから、特に問題はないけど・・・あっちで、誰にも会わなかったんだね。」


圭達は分かる。

そこに和達も向かう理由が…


「アンジェラ。」

「あー・・・良い予感はしないけど、なんだい?」


「高い確率で予想通りのことは起こるから、しばらくはここを拠点にして欲しい。」


「・・・おすすめはしないよ。」

「分かってる。風呂にいってくる。」


思わずため息が漏れた。


もう少し丁寧に考えれば、その可能性があることは分かる。

交渉人でもある和なら、魔法の世界側から妖怪の世界へ行く場所も知っている。


階段を上がる足が重い。


申請も、ミランダがいるのだから問題なく可能だろう。

ダメだ。

今ここで考えても、良い答えが出るとは思えない。


風呂を済ませて下の階へ戻ると、三階のテーブルの前に和達がいた。


「おま!・・・・戻ってこれて良かったよ。」

「スズ!?大丈夫?怪我はない?」


和とアリス、そしてアリスの足元にイザベル。

それぞれ疲れた顔をしながらも、こちらに驚いた表情を向ける。


「アリス達の怪我は…なさそうだね。色々心配をかけた。」

「私は大丈夫だけど・・・。えと。」


アリスが気まずそうな表情で、和の方に目を向ける。


「うん。ひとまず、アリス達もお風呂入っておいで。」


「・・・・わ、分かった。」


すでに時間も遅く、ちょうど日付が変わった。


「アンジェラ達も遅くまで悪かったよ。」

「あー・・・・ほどほどに頼むよ。」

「「・・・。」」


アンジェラに、日向、秀人、そしてウーノ達。

それぞれが、和と私に視線を向けながら気まずそうに階段を上がっていった。


みんなの階段を上がる音を聞きながら、沈黙が流れる。


「庭に出て話そう。」


和は強張った表情のまま頷き、再び階段を下りていくので、それに続いた。


「それで?」

「聞きたいことは二つある。何故来た?そして、何故アリスまで連れて来た?」


玄関を出た途端、和は口を開く。

こちらに振り向くことなく、その足はそのまま奥へと進んでいく。


「・・・・はぁぁぁぁぁ。行くに決まってるだろ・・・・。」


声を上げるのを抑えるように、一度溜息をついて返事が返ってきた。


「アリスさんは、俺もどうかと思ったけど。・・・行く時は圭しかいなかったから、そういう提案もあって、ゆっくり考えてる時間がなかった。」

「何故、少しでも時間を取らなかった?」


「なっ!何故って・・・お前・・・。」


庭の中央まで出た当たりで、和がこちらに顔を向けた。

この距離が、今は和なりの落ち着く為の距離なのだろう。


「もちろん回答の予想はつく。だけど、和。」

「・・・・。」


「お前達が行くことのリスクが大きすぎる。最近はその自覚が薄い気がしている。」

「俺達が行くことにリスクがあることは分かってる。

だからといって、お前が急に妖怪の世界に引っ張られたと聞いて、待ってるのも無理な話だろ。

圭もつれていくし、できる限り安全面は考えながら進んだつもりだ。」


無理な話か。


「何故無理な話にする。本当に?私は最悪が起こっても、どうなるか分かってるだろう?」


「っ!!ふざけんな!!」

「ふざけてない。助けに来るべきじゃない。」


「!!」


和は足を踏み出し、こちらへ近づく。


「お前・・・・本気で言ってんの?」

「当たり前。お前達が危険を冒してまで、私を助ける必要はない。」


「てめぇ、それを本気で俺やアリスさんに・・・アリスさんにそれを言えんのか!!?」


今回の状況を予想する限りでは、きっとアリスも恐らくは心配と言いながら、ついて来たのだろう。


「気持ちを否定するつもりはないし、もしも私ではなく日向や秀人達が行った場合は、考え方が違う部分があることも分かる。」


条件が違う。


「だけど、今回トラブルにあったのはあくまで私。」

「だからなんだ!!」


「生まれ変わると分かっている私を、お前達が危険を冒してまで助けに来る必要があるのか?」

「そんなの関係ねぇだろ!!

じゃあお前が死んで、それでしょうがなかったって思えって言ってんのか!?なぁ!?」


一瞬だけ視線を落としてから、私は答えた。


「そうだよ。」

「!」


和が更に踏み出し、その表情は怒りも悲しみも含まれているのが分かる。


「お前達の考え方を否定するつもりはない、そしてそういった優しさが美徳だとも評価してる。だけど、それとこれとは話が違う。」


「俺は嫌なんだよ!!そんな風にお前を割り切るのが!!」


和の声は怒鳴り声というより、押し殺していたものが裂けた音に近かった。

言葉がつまった気がした。


「…割り切れないなら、もう私はお前に何も伝えられないし、連れて行けない。」

「!!」


一瞬時間が止まるように、芝生のかすれる音が耳に入る。


「・・・無理だ。無理なんだよ。」

「分かった。」


その言葉は、今この状況ではもはや答えだった。


「・・・無理だ。」


「……。」


「今ここにいたら・・・。」


少しためらいながら、和は続けた。


「きっと、お前にもっと酷いこと言う。」


和の握っていた拳の力が抜けた。


「だから出る。」


私の脇を抜けて、玄関へ戻って行った。


「頭を冷やす。」


それを最後に。

翌朝。相談所の空気だけが妙に静かで、和の姿はどこにもなかった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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