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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
183/201

答え:下駄も阿弥陀も同じ木の切れ

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「私は別の客の相手があるのでな。管簾とスズは、昨日言っていた相手と先に話していてくれ。」


翌晩。

再び同じ部屋へ案内されると、すでに崑癒と管簾が話していた。

その横で何名かの狐の女性がパタパタと忙しなく動き、準備は着々と進んでいるようだった。


「そうか。じゃあ崑癒はあとから参加してくれ。部屋は東の棟を使うぞ。」


ブルースとの調整は早々についたようで、もうすぐ来るとのこと。

崑癒は別の客の相手をしてから、後から合流するらしい。


「酒とつまみは用意しているから、お前は酒注ぎに俺の傍にいればいい。」

「分かった。」


管簾が、私の頭に触れると同時に、白い煙が全身を覆った。

その煙は静かに空気中に消えていく。

自分では姿が見えないけれど、手足の形を見ても、体型ごと別人に見えるなら問題ないだろう。

そして、他の使いの狐達同様に耳と尻尾がついている。


「ふむ。まぁこんなもんだろう。早々気がつかれる事もあるまい。」


それが終わると同時に、傍に立っていた使いの狐に、運ぶ物を渡された。

進んでいく管簾と共に、それについていく数名の使いの狐達の後ろについて部屋を出た。


話にもあった通り、この建物は棟がいくつかに分かれているようだ。

今こうして大きく移動しても、棟がいくつあるのか建物の全体像が掴めない。

私が昨日居た場所だった、風呂場から個室までが一つの棟でまとまっているなら、個室の窓から見えていた庭は外に繋がっていない可能性もある。

領域から出るとするなら最初に入った玄関から出るのが、結局は最短距離になるのだろうか。


そして言葉に出ていた東の棟という名から察すれば、さっきまでの棟が中央棟だとした場合。

中央棟を起点に、東以外にも二つ、あるいは三つほど棟が伸びているのかもしれない。


棟同士を繋ぐ庭に挟まれた廊下を進み、移動した先の部屋も客間ということもあり、かなりの広さがある。

基本客間は和室なのか、全て畳が敷いてあるけれど、中央に大きなローテーブル。

奥の壁に三つ並んで大きな丸い窓が開かれ、さっきまで居た中央棟が見える。

もし庭園を駆けて逃げるとなれば、月明かりを遮るものが少なく、どこを走っても姿が浮きそうだった。


他の狐の動きに合わせながら、料理や酒を運び入れテーブルに並べていき、最後に横並びに客間の脇に座った。


しばらくすると、一人の狐が部屋に入ってきて管簾に何かを伝える。


「来たか。ここへ通してくれ。」


その返答を受け狐が部屋を出て、再びしばらく待っていると、窓から中央棟の方も少し騒がしくなっている様子が耳に入る。

あっちも崑癒の客が来る準備をしているのだろう。

そういえば、昨晩管簾が来た時に、崑癒は何かを言いかけてたな。


考えていると再び襖が開いた。


まずはやっぱり知っている顔だったブルース・フォーラス。

そしてその後ろからブライアンとヴェラ。

そこまでが見知った顔だろうと思っていたけれど、更に後ろからリュースも入ってきた。

その他に知らない顔が3名。


想定より、遥かに人数が多い。

せいぜいついてくるとしても、ブライアンとヴェラくらいだと思っていたけれど、これは完全に悪い予感しかしない。


「これはこれは大勢で来たな。」

「申し訳ないけれど、この度は妖怪との場なので許していただけると嬉しい。」


「いや気にはしないぞ。その辺りに適当に座るといい。」


他の狐達が動き出したので、彼女達に合わせて一緒に動き、酒を注ぎに管簾の傍についた。

静かに昨日話した知り合いであることと一人悪魔がいることを伝える。


ある意味トラブルを歓迎している今、最低限伝えておけばいいだろう。


「さてある程度事情は聞いているが、改めて聞かせてもらおうか。」

「分かった。」


互いに酒がいきわたったのを見て、ブルースが話し始めた。


「まずは、他世界に狐の妖怪が迷い込んでいるのを見かけ、話を聞いたところ戻れないと困っている様子だったので、この世界へ連れてきた。

迷い込んだ狐の元々の所在が、このあたりだと本人達は言っている。」


他世界で狐を拾ったという話は、昨日聞いていたけれど、今連れてきている様子はない。


「同族達は?」

「そのまま連れてきていいのであれば、すぐここへ呼ぼう。」


「所在がこのあたりといっても、それなりに広いんでな。本人からも話を聞きたい。」

「リュース。」


呼ばれたリュースはすぐに立ち上がると、近くの狐に声をかけ一緒に後ろの襖へ下がっていった。


一度領域を出て連れてくる?

確認をしてから連れてくることは、流れとしては変ではない。

それでも事前に準備はしているだろう。

それをリュースが行くとなると、前と同じく妖怪の世界のどこかと魔法で繋いでいる扉の可能性が高い。


「ところで同族達は、どの世界に迷い込んでいたんだ?」

「妖怪の世界とは隣接していない、離れた世界ですよ。」


「ふむ。お前達は、他の世界を移動できるのか?」

「私達の魔法で、難易度やリスクは非常に高いですが、方法を見つけたので。」


ブルースの左側に座るブライアンとヴェラは、ブルース同様に管簾の方を見ている。

だが、他の三人は、それぞれ別の場所へ視線を向けている。


奥の一人の視線は、中央棟の方に向いている。

何かを待っている?

リュース?


「魔法でできるのか。面白いな。やってみせてくれんか?」

「残念ながら簡単ではないので、この場ではご容赦ください。」


「そうか残念だ。ひとまず同族が来るまでの時間もある。この度わざわざ話がしたいとなると、他にも何か用があると見えるが?」

「あぁそうだな。では、是非こちらの本題を伺わせて頂こうか。」


ブルースが一息つき、言葉遣いを変えた。

管簾は少し目を顰める。


「本当なら、このエリア全体の管理者である、あなたの母と話がしたかったところだが。」

「母上は忙しいからな、内容によっては伝えよう。」


このあたりは現在、大きく3つのエリアに分かれている。

そのうちの1つの管理主が本来の目的か。


とはいえブルースは、当人ではないにしても、その親族である管簾への丁寧な態度をやめた。


「先ほどお話した他世界への移動方法において、非常にやっかいな条件が必要となる。」

「それで?」


ブルースの声のトーンが下がっていく。


「その条件の代用が魔力だけではなく、妖力でも可能だと分かった。」

「・・・。」


管簾が一瞬だけ、私の方に視線を向けた。

その視線は確認ではなく、“もう結論は決まった”と告げているようだった。


「テストも兼ねて妖怪の方々に、是非ご協力いただければと思っていてね。」

「お前。私達の同族をどうした?」


管簾の声も低くなる。


「妖怪とは不思議な生き物だ。私達と種類は違えど力を持っているというのに、種族による特徴があまりに強い。

それ故に、同族としての継承として引き継ぐことがほとんどで、魔法のように新たな能力を作り出すのも難しい。」


「質問に答えろ。同族をどうした?」


ブルースの後ろにいる恐らく魔法使いと思われる三人は、一歩引きながら立ち上がった。


「まるで魔法にも届かない模倣品だな。」

「貴様ぁ!」


その言葉を起点に、管簾の全身から炎が噴き上がった。

脇で座っていた女の狐達も同時に立ち上がり、何名かは急いで部屋を出ていった。


「最初から、交渉するつもりはないな。要件を言え。ガキ。」


ブルースとブライアンそしてヴェラは、相変わらず座ったまま管簾を気にした様子もなく話し続ける。


「おやおや。まだ分からないかな?妖怪の力を借りようと思っていてね。このあたりの妖怪にひとまず協力して頂こうかなと。」


その言葉に合わせて、後ろにいた奥の一人が片手を上げる。


–ドゴォォォォォォォォォン!!


それが合図だったのか、同時に爆発音が響いた。

方向は中央棟の方から。


「!これ以上聞く必要はないな!」


その爆発音に反応して、管簾が立ち上がる。

管簾が纏っている炎は、一気にその範囲を広げる。


爆ぜる熱気に呑まれる前に、体を動かした。


他の狐の中にはサポートに入る者もいるようだが、それを無視して部屋を出た。

廊下に出ると、さっきまで一緒に部屋にいた女性の狐達も含めて、バタバタと動き出している。

騒々しいこのタイミングでは、私のことなど気にしないだろう。


廊下へも流れ出てきた熱風を背後に走り出し、中央棟への廊下に向かう。

来る時に見かけた。

棟の間の廊下にある庭園へ降りる階段へ。


–パシッ


急に左手を掴まれる。

振り返れば、使いの狐の女。


「あなたはこっちに。」


使いとはいえ、妖怪は妖怪。

しかも上位の妖怪なので、身体的には敵わないだろう。

女狐に腕を掴まれ、そのまま半ば引きずられるように中央棟へ向かわされた。


「こんなことしてる場合じゃないだろう。」

「あなたを逃がしては、崑癒様が悲しみますので。」


–ゴォォォォォン!


更に中央棟の通路脇から火が上がった。


「!」


それと同時に進もうとした通路の奥から、大きな影が襖を割いて首を出した。


「何?!」


「・・・アンデッドか。これは全員避難した方が良い。」


黒煙をまとい、腐肉と襤褸布をぶら下げた骸骨が、軋む音を立てながら現れた。

妖怪が人格を失い、腐った存在になったもの。

このあたりにいる妖怪じゃない。

恐らくはリュースが、扉で遠く離れた場所から引っ張ってきたんだろう。


だが、同じ妖怪とはいえ妖怪を食う妖怪。


「ぼさっとするな!早く全員に避難を伝えて!」

「!・・・わ!分かった!」


引っ張ってきた狐が、驚きと恐怖で固まっていたので、肩を叩いた。


そうしている間に、アンデッドは一匹二匹と次々に襖を割いて廊下や庭園へ進み出す。


その時。


再び大きな火柱が、中央棟の真ん中に立った。


なんだ?

リュースと崑癒が戦っているのか?


いや、今は気にしている場合じゃない。

廊下や部屋から次々に走り出してくる狐達。

爆発音と悲鳴があちこちで響く。


襲ってくるアンデッドの数も増えているように見える。

狐達の方でも、なんとか炎を使える者が応戦しているが、アンデッドを入れている扉を見つけないと状況は悪くなる一方だろう。


さっき私を引っ張っていた狐も、近くの狐に声をかけながら指示を出し始めている。


「東の棟から出てきた魔法使いの男を案内した奴はいるか?」


声をかけようにも、騒がしすぎるか。

アンデッドが来た方向に向かった方が早いか。


「待て!どこへっ!」


再び、さっきの狐に引っ張られる。


「アンデッドは、恐らく魔法使いが設置した扉から入って来ている。その扉を探す。

お前はそのまま避難を促して。」

「は!?待て!お前を逃がすわけにはいかない!」

「私よりも仲間の方が大事だろう。」


それはほとんどの生き物に通用する優先順位。


「・・・っ!」


狐の女は、一瞬辛そうな顔をしたが、諦めて私から手を離した。

そしてすぐに仲間たちへの指示に戻った。


それを見て、踵を返す。

倒れかけた襖を盾代わりにしながら、アンデッドの視線を切って進む。

アンデッドが来る方向は、私がいた部屋の方だろうか。


ふと。


混乱する中、個室に向かう通路に向かおうとした時。

左奥の通路から、こちらを見てくる狐と目が合った。


視線が合った瞬間、何かが引っかかった。


服装が、崑癒の使いの狐達と違う。

崑癒の方に来ていた客だろうか。


とにかく、今は放っておくしかない。

視線を外し、今朝も通った通路を進むと、急に真横の襖が倒れた。

そこから、アンデッドが飛び出す。


避け――


–ゴォォォォォォォォォン!!!!


大きな轟音と共に突風を吹く。


アンデッドの巨体が風圧で揺らいだ隙を縫い、その脇を一気に駆け抜けた。


「―――!?」


誰かの大声が後ろから聞こえたけれど、引き続き響く轟音と混ざり、何を言っているかまでは聞き取れなかった。


部屋があった辺りは、かなり火が上がっている。

これなら、扉も既に焼けている可能性もあるか?


黒い煙に注意しながら、奥の様子をみていると、燃えている通路の中からもアンデッドが進んで来る姿が見える。


――まだ、向こうと繋がっているのか。


けれど流石に燃えている建物を、そのまま進むわけにもいかない。

近くの部屋に入り込み、奥にある外通路側に出た。

目の前には庭園が広がっているので、そのまま通路を飛び降りた。


「おい。」


飛び降りると同時に、声をかけられる。


「ん。あぁお前か。」

「逃げるなら今だろう。行くぞ。」


昨日、逃げる話を持ちかけてきた“目の妖怪”だった。

腕を掴まれ、進もうとするので、力を入れて踏みとどまる。


「いや、アンデッドが入ってくる扉だけは、できれば壊しておいた方が良い。」

「狐だけでもどうにかできる。」


その可能性はあるだろう。


「だが、この混乱の中では被害が大きくなるのは、目に見える。

ひとまず入口があるのなら、壊すだけでもしておいた方が良い。」


「・・・お前。・・・・分かった。場所は分かるのか?」


納得はしてくれたようで、腕を引っ張るのを止めてくれた。

しかもそっちは折れている右腕なので、あまり強く引っ張らないで欲しい。


「この先にある引き戸ではなく、開き扉が続く個室の方だとは思う。

今もアンデッドが出てくるから、まだ扉は焼けていないかもしれない。」


扉を魔法で防護しているのかもしれない。


「少し待て、見る。」


男は目を閉じ、集中するように動きを止めた。


「・・・これか。もう少し先だ。」


すぐに目を開き、進みだした。


能力によるものだろう。

目的の場所が見つかったのは助かる。


「アンデッドが出てくる扉だけ、燃えないように何か細工されているように見える。」

「恐らくは、魔法使いの扉だろう。直接壊せなくても、外壁が壊せれば壊れるはず。」


「・・・お前は、魔法使いなのか?」


男の後ろについて進む。


「違う。ただの人間。」


「・・・。」


目の妖怪は一瞬振り返り、何か言いたそうにしたが、すぐに前に向き直した。


「・・・お前の・・・。」


–ゴォォォォォン


常に大きな音が響いている中、一段と低い振動と共に、中央の方から大きな爆発音が響いた。


「この奥にあるな。」


爆発音が落ち着くと同時に、男が止まった。


先を見れば、最初の出火場所だったのだろうか。

ほとんど燃え切って炭になっている。

火はあまり残っていないので、窓だったあたりを崩し足をかける。

足元の床も崩れかけている。


その奥に、全く燃えていない開いた扉とアンデッドがまた出てきた。


「おい!気をつけろ。」


足を踏み外しそうになったところで、男が私の手を取った。


「ありがとう。奥のあの木がそのまま崩れれば、全体が下敷きになりそうだ。」


扉の部屋の奥に見える反対側の庭。

まだ僅かに火が残りつつも、形を保っている大きな木が立っているのが見えた。


「あれなら崩せるだろう。お前はここから進むな。」


男は私から手を放し、再び目を閉じた。


すると倒したい木の表面に、複数の目が一瞬現れすぐに消えた。


腕を前に出し、男は何かを引くようなしぐさで腕を引いた。

それに合わせて、まるで引っ張られるように、木は男が引いた方向へ倒れ始めた。


低い振動を響かせながら倒れてきた木を見て、元いた庭園まで下がった。

すでにほとんどが燃えていることもあり、木の重さに耐え切れず建物全体が崩れ始めた。

最後まで残っていた扉も、崩落に呑まれて消えた。


「大丈夫そうだな。ありがとう。」

「流石にもう良いだろ。」


男の布の間から、呆れた表情が見えた。


「あぁ。手を貸してくれてありがとう。」

「こっちだ。」


中央棟の方は、まだ慌ただしい状態が続いている様子。

まぁ狐は上位妖怪だから、そう簡単にやられることはないだろう。

食われるわけにもいかないけれど、世話になった手前、やれることはやったとは思う。

とはいえ、逃げた事を許してもらえるとは思えない。


そしてついて行くしかないとはいえ、この目の妖怪の思惑も分からない。

だが、こうして手を貸してくれる辺り、崑癒も管簾もこの妖怪も基準は違えど、人と同じように“切り捨てられないもの”がある。


だからこういう場面では、どうしても切り捨てきれない。

それは私の悪い部分なのだろう。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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