疑問:違いを探すより、同じを探す方が簡単?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
暖かい部屋の中。
重たい沈黙だけが流れた。
「あの――」
–カタ
ふと思ったことを口にしようとして、窓から小さな音が聞こえた。
赤い・・・鳥かな?
少し前にカルさんが抜けていった窓から、今度は赤い小鳥が滑り込んできた。
それはまるで、火そのものが鳥の形を取ったようだった。
入ってきたその小鳥は、宗一郎さんの元へまっすぐ向かい腕に降りた。
「先ほど問い合わせていた、管理者の狐から返答ですね。人間を森で見つけ、回収したとのことです。」
スズを狐が連れていったってこと?
和さんやイザベル達と一緒に、少し安堵の溜息が漏れた。
「夜明けも近いということで、明日の夜に話を伺いに参ります。」
「スズを引き渡してもらうことは可能なのか?」
フィフさんが変わらない表情で、投げかける。
「簡単ではないでしょう。こちらも相応の礼を用意しておきます。」
「爺ちゃん?」
宗一郎さんが椅子から立ち上がった。
「部屋を用意させます。昼はあまり動けないので、よければ皆さんも少しでもお休みください。」
「今すぐ迎えに行くのは難しいのか。和。」
「・・・ここのルールは分かりません。宗一郎さんに任せてどうかも、今ここで俺では判断できません。」
全てを鵜吞みにする訳にもいけない。
だからといって管理者の狐の方へ、恐らくは順序を追って対応してくれている宗一郎さんの対応と別に、勝手に動いてもトラブルになる可能性はある。
「完全な信用を得ることは、難しいことは分かっております。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この人はアリスを傷つけない。」
ここまで静かだった圭さんが口を開いた。
「圭。それはどう判断した?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリスが梓の時に流れていた霊力。・・・・・・同じ匂いがする。」
霊力?
確かにかなり前だけど、山本梓の時の体には魔力と霊力が流れていたって言っていた気がする。
その時の霊力が・・・宗一郎さんのもの?
「それはつまり体の維持に関与していたって事実で、信用する理由にはならないだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・霊力が無かったら、魂が体から離れる可能性もあった。・・・・悪意には・・・・見えない。」
「私もアリスにつくよ。」
イェさんが入り、少し悩んだ表情を見せた和さんが、フィフさんの方に視線を戻す。
フィフさんは、肩をすくめた。
「圭がそう言うんだし、イェちゃんがアリスちゃんと一緒にいるなら、まぁ大丈夫じゃない?
妖怪のことは妖怪にしか分からないだろう?」
和さんはまだ少し眉を寄せているけれど、立ち上がって宗一郎さんに向かって頭を下げた。
「・・・わかりました。すみません。お世話になります。」
「こちらこそ、改めて申し訳ございませんでした。」
宗一郎さんも和さんに頭を下げた。
「颯太。食事と部屋のを準備してくるから、皆さんをお風呂へ案内して、お前も入っておいで。」
「・・・はぁい。」
颯太君が部屋の扉を開いてくれたので、そのまま廊下へ出た。
木の匂いが微かにした。
ホテルのように横長に続く廊下を、颯太君の後について歩いた。
「こっちがお風呂。着替えはこれかな。」
「待て待て、共用か。アリスさん達先に入ってください。」
廊下の突き当りにあった暖簾をくぐった途端。
すぐに広い脱衣所に入ったと思ったけど、たしかに男女分かれてない。
「す!すみません。すぐに入っちゃいますね。」
和さんは颯太君をつれて、圭さんと急いで出て行った。
廊下もお風呂もかなり広く、掃除の手も行き届いていた。
暖炉で体は暖まっていたはずなのに、湯船へ肩まで沈むと、張りつめていたものがゆっくり溶けていくのが分かった。
「颯太のこともあったから、予想内とはいえ宗一郎に会う事になるとはね。」
「うーん。確かに颯太君を探すってなれば会う可能性はあったよね。」
イザベルの言葉に、納得はした。
とはいえ、やっぱり驚いた。
ちょっと厳しそうな雰囲気はあるけれど、見た目だけなら普通の男性だった。
颯太君はお爺ちゃんと言っているけれど、年もせいぜい四十代くらいにしか見えなかった。
スズを勝手に連れてきてしまったことを謝ってくれたし、ちゃんと探してくれてる感じだし、今は手を貸してくれたり。
そしてさっき圭さんに言おうと思って止めちゃったけど、宗一郎さんの魂の姿は凄く大きい。
魂の輪郭は、部屋に収まりきらないほど巨大だった。
青黒い壁が、部屋の向こう側までそびえているみたいに見えた。
火車の妖怪ってことだもんね。
「ちょっと早いけど、出ようか。」
「早いわねぇ。まぁ良いわよ。」
「温まった?」
「はい!大丈夫ですよ。イェさんも大丈夫ですか?」
イェさんが少しだけ心配そうに聞いてたので、笑顔で返した。
このままだと、いつも通りについついゆっくり入ってしまいそうな気がした。
お風呂を上がり、まとまって置かれている浴衣のような服の中から、丁度良いサイズを探し出した。
町の妖怪もそうだったけど、妖怪の世界では和服が基本なのかな?
イェさんは浴衣がよく似合っていた。
廊下に出て、ひとまず正面の廊下を進むと十字路になった。
「どっちだろう?」
「こっちね。」
迷いなく、イザベルが右へ曲がった。
「分かるの?」
「颯太のうるさい声が聞こえるわ。」
耳を澄ませても聞こえない。
やっぱり猫の感覚は違うんだろうか。
そういえば、この家の人って宗一郎さんと颯太君以外にいないのかな?
「和の飯の方が美味しいかもしれない。」
イザベルについていくと、両開きの扉の中から確かに颯太君の声が聞こえた。
「それは嬉しい言葉だけど、これも凄く美味しいよ。」
「へへへーあ!アリスちゃん。おかえりー。」
部屋に入ってきた私に、颯太君が気が付いた。
先にご飯を食べてたみたい。
「アリスさん、急がせてしまってすみません。」
「いえいえ。ちゃんとゆっくり入りましたよ!」
「すぐに出たわよ。」
イザベルがすぐに口を挟み、思わず苦笑いする。
「アリスちゃんの分もあるよ。こっち座って一緒に食べよー。」
部屋の中は食堂のような、横長のテーブルと椅子。
颯太君の隣に座り、私の隣にイザベルが椅子に上がってきた。
テーブルの上には、普通の料理が並んでいる。
ご飯にお味噌汁。
焼き魚とお浸し。
いたって普通の和食だった。
「あ。イザベルさんはこっちを、ほぐしておいたので。」
「あら。ありがとう。」
和さんが颯太君の隣から、焼き魚をほぐしたお皿を手渡してくれたので、受け取りイザベルの前に置いた。
さすが和さん。
反対側では、圭さんの隣でイェさんも普通に食べ始めた。
カルさんは、いつ頃戻ってくるのかな?
「あれ。そういえばフィフさんは?」
「あぁ。居てもやれる事はなさそうだからって、帰りましたね。」
そりゃあ、フィフさんは普通の人間だ。
でも急に連絡してこうして来てくれた。
食事を進めていると、窓の外が少しずつ明るくなっていることに気が付く。
もうすぐ朝だ。
スズは大丈夫かな?
ここまで話の中では、なんとなく場所や状況を聞いているけど、実際のところどういう状況なのかは分からない。
ここに来てから、もう三、四時間は経っているはず。
空から落ちて、妖怪に拾われて。
聞いただけでも大変そうだった。
怪我とかしてないと良いけど・・・
食事の後は先に部屋へ案内してもらったので、イザベルとイェさんと一緒に寝支度を済ませて、それぞれの布団の中へ潜りこんだ。
部屋は静かだけれど、カーテンの向こうは明るくなっていく。
「・・・アリスは凄いね。」
イェさんがつぶやいた。
「?」
「知らない世界に来るの怖くない?」
知らない世界は怖い。
何が起こるか分からないし、帰れるかも分からない。
「もちろん、怖いですよ?でも・・・」
最初にブライアンに、魔法の世界に連れていかれた時のことを思うと。
「今は、和さんや圭さんもカルさんとイェさん達もいるので、そこまで怖くない感じはします。」
それに人間が生きるには難しい場所なのかもしれないけれど、圭さんやカルさん達の世界。
町の人達は、姿かたちは違っても、私の知っている生活をしていた。
思っていたより、普通と変わらない部分も多かった。
でも、スズに言われたことも分かってる。
ちゃんと距離感は大事にした方が良いってこと。
「そっか。・・・・じゃあ、ちゃんとみんなで帰ろう。」
そう言って、イェさんは私の反対側へ寝返った。
イェさんってあんまり喋らないけれど、いつも目が合うと心配そうに見てくれていたり、気にしてくれていることが多い気がする。
「そうですね。おやすみなさい・・・。」
その背中に返した。
スズと一緒に、みんなで帰りたい。
いつもと違う匂いに包まれながら、意識は沈んでいった。
そういえば最近の夢は、なんだか白い雲の中にいるような感じがする。
白くて。
どこか暖かい感じ。
これってどこかで見た気が――
「ん。」
ふと目が覚めた。
隣の布団を見るとまだイェさんが寝ていて、その横にカルさんが潜り込んできていた。
戻ってきたんだ。良かった。
枕元にはイザベルが眠ってる。
多分まだそんなに時間が経ってないのかも。
でも、何となくもう一度すぐに寝られる感じがしない。
皆を起こさないように寝室を抜け、静かな廊下を食堂へ向かった。
何か飲み物あったりするかな?
あれ?
「和さん。」
食堂に入ると和さんが座っていた。
「アリスさんも目が覚めちゃいましたか?」
「そうなんです。和さんもですか?」
昼に寝ることはあんまりないから、目が覚めちゃうのかも。
「さっき台所をお借りした残りですが、お茶飲みます?」
「是非。ちょっと飲み物を伺おうかと思ってました。」
和さんが奥の方へ一度入って、コップを持って来てくれた。
広い屋敷なのに、不思議なくらい人の気配がない。
今はみんな寝ているとしても、料理を作ってくれた人の姿とかも見た覚えはないし、廊下で誰ともすれ違ってない。
凄く広い家だと思うから、他にも人がいそうなのに。
「そういえば、ちょっとお礼を言いたかったんです。」
「お礼?ですか?」
和さんがポットを傾け、湯気の立つお茶を注いでくれた。
「ちょっと色々あって間が空いてしまっていたんですが、地下でスズと喧嘩になった時。」
地下で、精霊の世界から戻ってきた後のことかな。
和さんとスズが、ちょっと言い合いになってしまっていた時。
「アンジェラにも言われて、後から気が付いたんですが・・・俺かなり余裕がなかったので、あの時アリスさんが止めてくれて良かったです。ありがとうございます。」
最後の和さんの言葉に、私が止めに入った。
「いえ。私も勢いで止めに入っただけなので・・・。」
「アリスさんが止めてくれなかったら、俺もっとまくし立ててたと思います。」
確かに、あの時の和さんはかなり怒鳴ってた。
「それなら・・・止めて良かったです。」
そして、スズは――
「なんだか、泣きそうに見えてしまったので・・・。」
「・・・スズが、ですか?」
和さんは、少しだけ変な顔をしている。
「表情は・・・いつも通りなんですけど。私にはそんな感じに見えて・・・止めなきゃって、つい思いました。」
「・・・そう、なんですね。」
今思い出しても、スズの表情はいつも通りだった。
「そういう風に見えてたんですね。ありがとうございます。」
でも、あの時のスズは妙に人間らしく見えた。
普通っていうのは、いつも通りっていう意味じゃなくて、凄く普通の女の子に見えた。
「違う部分が多いことも、その違いが大きいことも分かってるんですけど。」
「アリスさん?」
違う部分を探せば、きっとどんな相手にもいくらでも見つかる。
でも。
「同じ部分もきっと同じくらい、もしくはもっとあると思うんです。」
だって、私のことを凄く心配してくれたり。
私が答えを探すのを、手伝ってくれたり。
気が付けば近くに居てくれたり。
「だから、悩むこともあれば、凹むこともあって。」
「・・・そうですね。」
何でもできるわけじゃない。
何でも知ってるわけじゃない。
「私より、和さんの方がずっとスズのこと知ってると思うので・・・あんまり偉そうには言えないんですけど。」
「ありがとうございます・・・。」
そんな話をしていると、眠そうな顔のイザベルが不機嫌そうに食堂を覗いた。
「起きたなら、一人で動くんじゃないわよ・・・。」
そう言って、再びイザベルと寝室へ戻っていった。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




