答え:相手は変われど、私は変われず
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
目の前の狐の女性は、崑癒という。
話の流れから、管簾の妻らしいことも分かった。
同種族同士でも、上手くいかない部分があると言いながら、崑癒は自由気ままに話し始めていた。
それを黙って聞いていれば、親族とのトラブルから婚約までの苦労話、はたまた途中途中で女性絡みの愚痴まで挟まる。
更には管簾への長い惚気話まで混ざり、気が付けば、それなりに時間が経っていた。
「そうして、管簾はな。あやつの母親から勘当を受けても、私を選んでくれたのだ。」
「…良かったですね。」
徳利を片手に、楽しそうに話す崑癒の機嫌が良いのはいいのだけど、あまり情報はなさそうだ。
そしてその彼女を見ていると、似た雰囲気を持つ人物を思い出す。
「崑癒様。」
私の後ろから、狐の姿をした女性が二人入ってきた。
「ん?どうした?」
「管簾様が帰宅しましたが、こちらへご案内いたしますか?」
やっと帰ってきたか。
「お。そうだな。知り合いらしいし、呼んでくれ。」
さて、ここからどうなるだろうか。
一人が部屋を出て行き、もう一人はそのまま残った。
「それと、町の妖怪から問い合わせが入っております。
崑癒様にお話を伺いたいとおっしゃっておりますが、どうされますか?」
「ん?なんじゃ?」
もう一人が崑癒の傍に近づき、耳元に口を寄せる。
その言葉は、こちらまで聞こえない。
「ふむ・・・無視する訳にもいかないか。もうやがて朝がくるからのう。ひとまず質問だけ答えておけ、明日細かいことは聞くと。」
「分かりました。」
そう返事をして、その狐も部屋を出て行った。
「どうやら、お前の――」
「ただいまー!」
入れ替わりに男の声が部屋に響いた。
「おお。おかえり。」
「人間の娘をわざわざ迎えたと聞いたが、珍しいな。」
振り返ると、見覚えがある顔が襖から顔を出した。
「お前の知り合いらしいぞ。」
「この体では初めて会うことになるけれど、昔何度か会ったスズだ。」
「ほう?」
黒い髪とやや肌も焼けた色をしている。
活発そうな印象の強い狐の男。
「覚えてるぞ!普通の人間のくせに、色々知っている娘だな!久しぶりだな。お前だったか。」
「久しぶり。先日連絡もしたけど、覚えている?」
管簾は崑癒の隣にドンと座ると、徳利を手に取りそのまま口をつけた。
「はっはは!そうだったそうだった!ついでに、俺もお前に相談したいことがあるんだ。」
さっきまで惚気ていた崑癒は、今度は「いい男だろう?」と言いたげに、自慢げな視線を向けてくる。
「魔法使いらしい男がな、他の世界に迷い込んだ狐を見つけたと言ってきているらしくてな。」
「…魔法使いね。もう会ったのか?」
「いや。俺はまだ会っていないが、母上が一度会って話を聞けと投げてきている。」
魔法使い。
他の世界に迷い込んだ狐。
「その魔法使いの名前は、伺っているだろうか?」
「おう!ブルースと言うらしい。」
「……。」
クラーレンと分かれてから、フォーラスが自由に動き出すことは予想できること。
シャロンの件といい、色々と手探りに動いている部分もあるが、かなり好き勝手に動いているようだ。
「どうするんだ?」
崑癒が、管簾に向けて質問をした。
「仲間を返してくれるらしいからな、あまり無下にするのも良くないだろう。早めに対応はしようかと思う。」
「そうだな。だが、魔法使いか・・・。」
崑癒には、さっき私が魔法使いや別の種族を攫う魔法使いについて話した。
「スズ。」
「そうだな。恐らくは、知り合いである可能性がある。
知り合いだった場合は、その魔法使いが本当に偶然他世界で狐を見つけたのか、もしくは正体をばらさずに攫った狐を返還して、恩を売っている可能性もある。
…いずれにしても、慎重に対応した方が良い。」
「なんだ?お前知り合いなのか。ならお前も話を聞く席に同席するか?」
話が予想外の方向に進みそうだ。
「流石に、そのまま会ってもあっちも警戒するだけかと。いつ会う予定?」
「返事を早めにくれと言って来てるからな、それなら明日の夜にでもどうだ?
お前は変化でもさせれば良いんだろう?」
変化して同席するのは、ブルース・フォーラスの目的を確認する上では悪い話ではない。
だが、ここから逃げるタイミングが遠くなる。
しかし同時に、それまでの間は食われる可能性も低いことになる。
逃げるタイミングは後で考えるとして、了承しておいて問題はないだろう。
「分かった。さっき崑癒にはしたけれど、恐らくは知り合いと思うその魔法使いについての事前の説明をしておく。」
「おう。聞こう。」
フォーラスについて、もう一度最初から話し始めた。
明日の夜、ブルースと何か起これば、運良く逃げるタイミングもあるかもしれない。
「狐を攫った情報は聞いていないけれど、この世界を移動の為に出入りしていることやエルフを攫っていることは、概ね確認できている。」
「ほう、それはろくでもない奴だな。」
昔の私なら、逃げることより情報を取っていた。
「そんな彼らが、今は狐あるいは他の妖怪にも声をかけているのかもしれないが、何を目的に交渉してくるのかは、慎重に確認しておいた方が良い。」
「なるほど。それはその通りだな。」
話している感覚では、管簾は単純明快なところがバースに少し近い。
ただ、同じではない。
「…ひとまず、明日に向けて準備をしておく。管簾は返事を忘れるな。」
「そうだそうだ。返事してくる。」
管簾は席を立ち、部屋を出て行った。
「さて、そろそろ日が昇るな。用意させた部屋へ案内させよう。」
「私がいることに、あまりメリットはないと思うが、なぜここまで手をかける?」
ここまで、気まぐれにしても対応が丁寧すぎる。
崑癒が目を細める。
その目は、やっぱりどこか彼女と重なって見える。
「気まぐれと言えば気まぐれだな。
だが、この鈴のことや管簾との話を聞いて、ただの餌として終わらせるには惜しいと思った。」
「結果は、そうかもしれない。」
後ろから、さっき伝言を言いに来た狐の女が再び入ってきた。
「一人でこの領域を管理して、普段は管簾くらいしかまともに話せる相手がいないからな。
今夜は楽しかったぞ。ゆっくり休め。」
気まぐれ…か。
表情からは読み切れない。
崑癒に見送られ、入ってきた狐の案内に従って部屋を出た。
案内された部屋は、どこか中華風の造りだった。
さっきの部屋の半分くらいの広さがあり、奥に布団が用意された綺麗な寝室。
私がその部屋の中へ入ると同時に、案内していた狐は廊下へ下がり、扉を閉めていった。
「……。」
寝る用の着替えまで用意されている。
入ってきた扉に手をかける。
さすがに鍵がかかっているか。
布団の奥にある窓へ近づく。
窓から庭の景色が広がっているが、窓にも鍵が掛かっているようでびくともしない。
「逃げられないようにはするか。」
部屋を見渡し、一通り確認をしていく。
上には通気口がある。
だが、隣室に繋がっているだけのようだ。
この部屋から逃げるとなれば、扉か窓を壊して出て行くくらいしか思いつかない。
けれど、外の様子は窓から見える景色までしか確認できない。
そこには見張りが居る様子はないけれど、流石に窓ガラスを割れば誰か来るかもしれない。
空を見上げれば、天狗の時と同じように歪んだ夜空が、少しだけ明るくなってきている。
狐の領域に入っているとなると、普通には出られない。
権限がある狐の許可が基本は必要。
それ以外だと、強い妖力や魔力で壊すといった方法になる。
「…寝るか。」
布団の上に転がり、窓から見える空を眺めた。
颯太に飛ばされる直前、玄関にはバースもいた。
バースが和達に状況を説明しているなら、圭達が探しに来ているのかもしれない。
だけど、今日私が巨人の世界に行く前に、カルとイェを怪異の世界に送った。
圭だけでは妖怪の世界に入れないとなれば、来るとしても朝だろうか。
もしも圭達が颯太と合流できたなら、私がいる場所の目星くらいは付くかもしれないけれど、ここから出ないことには合流は難しい。
もしもここを出る為に、何か交渉するとすれば、何を出す?
既に片方しかない目は、難しい。
手足を差し出せば、逃げられなくなる可能性が高い。
結局そのまま食われるだけだ。
そうなれば、残るは生気くらい。
けれど――また生気を渡した場合、既に死が近い可能性のあるこの体はもつのだろうか。
「……。」
やっぱりこの体で帰る為には、交渉は無理そうだ。
ブルースにでも交渉を持ちかける?
正直リスクは、あまり狐と変わらない気がする。
空が徐々に明るくなっていく。
夜が崩れ、朝が薄青く空を削っていく。
この景色を何度見てきたんだろうか。
永遠。
それを願う者は多い。
けれど、永遠も、積もれば埃みたいに感覚が薄れていく。
当たり前のようにそこにあるだけ。
いつまでもどこまでも。
檻の中の実験動物みたいに扱われたこともあれば、祭壇の上の神みたいに崇められたこともあった。
フィフは、もしかしたら回数に限界があるかもしれないと、何度も自殺を繰り返してた。
フィーは、何度も繰り返す人間関係に疲れて何世代も引きこもっていた。
こんな終わりのないものに、付いてくるべきじゃない。
こんな呪いみたいな時間に、誰かを巻き込むべきじゃない。
–カタ
何か音が。
テーブルがある方へ視線を向けた。
扉が開いている。
体を起こすと、そこにはさっきここまで運んできた布の姿をした者が立っている。
「何か用?」
「ここから逃がしてやる。」
男の声。
「何の理由で?」
「このままここにいれば、いずれ食われるぞ。」
「そうだな。」
だけど、恐らくは仲間である妖怪が、私を逃がす理由が分からない。
「食われたくないなら、ついて来い。」
「今はお前の方が不審。理由が分からない。」
「俺は人間は食わない。」
布から頭を出した。
普通の男の顔をした妖怪。
ただし、運んでいた時に見た目からすると、百目や百々目鬼といった目の妖怪なのだろう。
「お前は狐の仲間だろう?」
「・・・・食わなくても生きていけるのに、道楽で食う意味が分からない。」
確かに妖怪は人間を食わなくても、生存の為の食事はある程度代用できるものがある。
圭のように一定量の血液が必要な場合もあるけれど、通常の食事ができる場合も多い。
「ここで私を逃がせば、お前は裏切者だろう。」
「勝手に逃げたという。」
「お前が見張っているのに?」
恐らくはその目によって、私の監視をしている。
「俺のミスだ。」
「最悪殺されるな。」
「・・・。」
単純に獲物を横取りしたいだけの可能性もあるけれど、ここへ出られるなら考えてもいい。
「この領域から狐に気が付かれずに出る方法が?」
「俺が通る穴がある。」
一部の狐以外が通る為に、穴があるのだろうか。
「なるほど。タイミングは明日の夜でも可能だろうか?」
「長居は、止めておいた方が良い。」
内容そのものに違和感は少ない。
別の妖怪へ引き渡すのが目的という可能性もある。
「明日の夜。客間に人が来る。そのどこかのタイミングで騒動に乗った方が安全だろう。」
「俺が動けるか分からない。」
「今すぐ逃げたいのは、お前の都合?」
「朝の方が逃げやすい。」
当たり前の回答か。
「明日の客に用がある。できれば逃げるならその後が良い。」
「・・・また声をかける。」
男は部屋を出て行った。
危険だと分かっていても、結局私は情報を選んでいる。
乗っかるのも悪い話ではなかった。
けれど、管簾に借りを作れる可能性もあるし、何よりブルース・フォーラスのことは確認しておきたい。
後は、今の男の目的が分からない。
結局別の妖怪の元に運ばれては意味がない。
魔法使いにイザベル、死神にルーナがいるように。
妖怪にも、自分達の常識に疑問を持つ者はいるのかもしれないけれど、それが異端か変化かどういった形で受け入れられるのかは分からない。
同じ行動でも、受け取る側が違えば意味は変わる。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




