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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
180/201

疑問:近づきたい、でも譲れないこと?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「なるほどな。トラブルとはいえ、一人で何の対策もなしに妖怪の世界に入ったとなれば、自分たちの安全を優先した方が良い。」


「・・・は?」


圭さんが戻ってきた後、次の町でフィフさんと無事合流できた。

ちょうど雨も降ってきたので、空いていた家に入り込み、囲炉裏で火を焚いた。

圭さんとカルさん達が辺りを見て回ってくれているので、落ち着いた状況で少し整理することになった。


そして和さんが、颯太君とスズが妖怪の世界へ移動した経緯を説明し終えたところで、フィフさんがそう返した。


「妖怪にとって、無力な人間はただの餌同然。

多少は、交渉できる相手だったとしても、なんのメリットもなく手元に来た餌を逃す理由はないだろう?」

「つまり、諦めろって言ってます・・・?」


餌同然。

フィフさんは、それを当然のことみたいに言った。


「仮に生き残る手段が見つかったなら、あいつの方でどうにかするしかない。

ここで探し歩くことは、お前らも同じリスクを持っているだけの状況だ。

せめて、探すとしても圭とカルちゃん達だけに任せた方がいい。」


言っていることは、たぶん正しいと思う。

スズも同じ状況なら、同じことを言っている気がする。


「なら、ここでアリスさん達には戻って貰って――」

「お前もだよ。魔法使いだから、多少対応方法があることは分かるけどな、上位の妖怪相手になれば、そんな簡単な相手じゃない。言葉を選ばずにハッキリ言ってやるよ。」


フィフさんが、和さんの襟を掴む。


「諦めて帰れ。どうせ俺達は生まれ変わる。あいつも同じことを言うと思うぞ。」

「っ・・・!」


和さんとフィフさんがにらみ合う。

誰も何も口にしない。


囲炉裏の薪が爆ぜる音だけが、やけに耳についた。


「・・・・お前達のそういう。」


和さんが小さく漏らす。


「そういうあんた達の基準に合わせてたら、意味がないんだ。

そこに引っ張られてたら、いつまで経ってもあいつは変わらない。

それを許容してたら・・・いつか・・・その内。」

「……。」


和さんは、フィフさんの襟を掴んだまま、しばらく言葉を飲み込むように黙っていた。


「しょうがないって、あいつの死を受け入れる人間になる気がする・・・。」


それは――怖い。


しょうがなかったね・・・って、スズやフィフさんはどうせ生まれ変わるからって、妥協できるようになる自分は、あまりに怖すぎる。


でも、それがありえないとは言いきれない感じがして、胸が冷えていく。


「お前は良い奴だよ。だけどな、それがどの世界でも通用する常識じゃない。

ここで既に死んでいるかもしれないあいつを探して、死ぬ直前になって後悔してももう遅い。」


分かりたくないわけじゃない。

フィフさん達の考え方にも、きっと理由はある。

それでも――譲れないことがある。


「なら、せめて・・・死んだかどうかだけでも・・・。もしも、生きてたら・・・後悔する。絶対に。」


「……はぁぁ。」


フィフさんが、和さんの襟から手を放した。

それを見て、和さんも襟から手を放す。


「頑固だな。電話では状況が分からないから、止めようもなかったけど、あの時もう少し話を聞いておけばよかった。」


外は雨が強くなっているようで、徐々に雨音が強くなっていく。

冷えた空気が窓から流れ込む。

家の中心にある囲炉裏の火のおかげで、そこまで寒くは無いけれど、この先どうなるんだろう。


「アリスちゃんも悪いね。圭や猫ちゃんだけじゃ、妖怪の判別ができないから、提案したけど。間違えたよ。」


立っていたフィフさんが、囲炉裏の脇に座った。


「いえ、できることはやりたいです・・・。それにフィフさんが言ってくれていることが、正しいことだって・・・分かってます。

それでも、和さんの言う通り、じゃあ諦めますって言えるほど・・・簡単に整理できることじゃなくて・・・。」


フィフさんは苦笑いをした。


「でもお前らが死んだら、元も子もないだろう?」

「そ、それは・・・その通りなんですけど・・・。本当に見つける方法はないのでしょうか?」


和さんの言う通り、何か手がかりだけでも、せめてスズが生きているかどうかだけでも。


「もしも――」


–カタ


小さい影が、中へ走り込んできた。


「和!」


圭さんが扉を開いたと思ったら、まさかの声が聞こえた。


「颯太君!?え!?何で?」


颯太君が圭さんの脇から走って、和さんに抱き着いた。


「お前・・・なんでここが?」

「爺ちゃんとスズちゃんを探してたら、吸血鬼の兄ちゃんが空にいたのを見つけたんだ!」


和さんも驚いた表情で、颯太君を受け止めた。


「は?待て。スズと一緒じゃないのか!?」

「そうなんだよ!爺ちゃんが急に引っ張るから!」


颯太君が入ってきた入口の方を振り返ると、圭さんの隣に男の人が立っていた。


え・・・


もしかして・・・


話の流れから、思いつく人物は一人だった。


入口の暗闇から、一歩前に進んできた男の人の顔が少しずつ見えてきた。


40~50代ほどの男性。

厳格そうな顔でこちらを見る。


「初めまして。颯太が、お世話になっているそうですね。」

「初めまして。・・・あなたは。」


男の人は再び足を一歩進める。


「私は山本宗一郎と申します。」


息をのんだ。

和装に馴染む姿は、一見すれば昭和のおじさんという印象。


この方が――山本宗一郎さん。


「初めまして。俺はフィフという。ゆっくり話す前に先に一つ先に良いかな?」


フィフさんが立ち上がる。


「なんでしょうか?」


宗一郎さんは、表情を変えずにフィフさんと向き合う。


「あんたが、フォーラス側の関係者なのかなんなのか。それをハッキリさせておきたい。」


そうだよね。

山本梓さんのことが意図的である以上、何かしらフォーラスとは関与していることになる。

もしも、あっち側だったとしたら――


「……。」


少し間をおいて、宗一郎さんが口を開く。


「まさか、ここでその名前を聞くことになるとは…。」


ため息を吐くように口にする。


「宜しければ、孫が世話になったお礼と合わせて…あなた方のお話もお伺いしたい。」

「その前に、どちらかが問題だ。」


フィフさんの目が細くなる。


「…なるほど。そのご様子だと、あなた方はフォーラス家の方々ではないようですね。」


宗一郎さんの雰囲気が、少し重くなった気がした。


「過去に手を貸した事実は消えません。ですが、今の私はあやつらを快く思っておりません。」


すこし目を細めて続ける。


「次に姿を現そうものなら、地獄の業火に放り込んでやりたいところです。」

「それは賛同するけれど。つまり、現在は関係者ではないと考えて良いのかな?」


フィフさんが慎重に確認する。


「左様です。未だに我が孫を殺した男の仲間と思われていたとは……腸が煮えくり返りそうなことです。」


笑うように言っているけれど、目はまったく笑っていない。

そしてその言葉も、明らかに真逆。


「ふーん…まぁ今は一旦その言葉に乗っておこう。こちらのことも分からずにここに来たみたいだしね。

そもそもそこの孫が引っ張られるのに巻き込まれた、こちらの仲間はどうなった?」


言葉ではそう言いつつも、フィフさんは明らかにまだ警戒している。


「伺っております。この度はご迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございません。

その状況も含めて、一度ご説明させて頂きますので、宜しければ我が家にていかがでしょうか?」


「…こっちは急いでいるんだけど?」

「分かっております。ですが、このような寒い場所では、そちらのお嬢さん方の体にもよくありません。

お時間は頂きません。すぐにお連れしますので、ご了承いただけないでしょうか?」


フィフさんの言葉を、宗一郎さんは丁寧に返す。


「和。どうする?もともと話を聞いておきたい相手だとは、思うけれど。俺は半々。」


和さんは一瞬戸惑ったけれど、すぐに顔を上げた。


「先に一つ。・・・スズは、ここに連れてこられた人間は・・・・生きていますか?」


「迎えに行った時には、もう入れ違いだったんだよ・・・。」


和さんの傍で、颯太君が返事をした。


「入れ違い?」

「細かい内容は、後からご説明いたしますが…率直にお伝えすると、居場所を突き止めすぐに迎えにその場所へお伺いしたのですが、捕らえられた場所には既におらず。

個人で逃走し、恐らく今は狐の元かと考えております。」


逃げた。

それってつまり・・・生きてる。

何より今欲しかった情報だった。


「それを、爺ちゃんと探してたんだ・・・。ごめんなさい。」


颯太君は申し訳なさそうに、顔を下げた。


「分かった。すぐに移動できるなら、お願いします。細かい話を伺いたいです。

近くに狐の仲間もいるので・・・圭。すぐに。」

「はいよー。」

「いるよ。」


玄関先に立っている圭さんの奥から、カルさんとイェさんが顔を出した。


「それでは、近くにある私の家へお連れさせて頂きます。」


宗一郎さんの足元が青く光った。

同時に青い火が丸い円になって薄く広がる。


魔法とは違う・・・?


その火は家を焼かず、足元に広がってきてもそこから熱は感じなかった。

一瞬で円は広がり、その範囲に全員が入った。


その時。


「!」


景色が塗り潰された絵の具みたいに横へ引き延ばされ、世界が一本の線になった。


–ぼふん


柔らかいクッションのような感触と共に、私の上にイザベルが乗った。


「あら。ごめん。」


湿った雨の匂いが消え、代わりに古い紙と暖炉の火が混ざった、古書店みたいな匂いが肺に入ってきた。

冷たい風の気配も消え、目の前の暖炉から流れる暖かい空気が、部屋中を満たしている。


「ここが、宗一郎さんの・・・?」


辺りを見渡せば、ちゃんと全員いる。

それぞれ横長のソファや一人掛けのソファの上で、周りを確認していた。


「あなたは、領域を持ってるんだね。」


フィフさんは、警戒した視線のまま宗一郎さんを見ている。


「ただ長く生きているだけですよ。颯太。飲み物の用意を頼んできて欲しい。」


「・・・分かった。すぐに用意してくるから、またスズを探すの手伝ってよ。」


颯太君は、部屋を出て行った。

本棚が壁一面に天井まで伸びていて、書斎のような部屋。

その奥で、暖炉が優しい光を灯している。


「お時間もないですので、まずは颯太の話からあなた方に会うまでの経緯をお話致します。」


暖炉の横にある一人掛けソファに、宗一郎さんが腰を下ろした。


さっきの説明を、改めて丁寧に話してくれた。


「空に投げ出された・・・?」

「はい。火車としての移動能力を持った颯太に対して、私が空に引っ張り上げたので、そこについてきたスズさんも、空に移動しました。」


その後、空へ投げ出されたスズを、がしゃ髑髏――巨大な骨の妖怪が拾っていくところまでを、颯太君は見ていたらしい。


「その為、すぐに颯太を連れてその屋敷へ伺ったところ、狐の差し出し用に物置小屋にしまったと。

引き渡しについて拒否されてしまい、どうにか無理を通して物置小屋を探し回っていたところで、屋敷の奥にある離れに扉が壊れた小屋が見つかりました。

ですが、その中には人の匂いは残っておりましたが、姿はありませんでした。」


和さんとフィフさんの溜息が聞こえた。


「しばらく辺りを探し回ったのですが、雨もあり匂いでは追えず、近くにある森の方へ逃げたとすれば、管理の者に聞いた方が早いと思いまして、あたりを管理している狐に現在問い合わせております。」


「狐がこの辺りを管理してるなら、カル達の方でも居場所を辿れないかな?」


和さんが、カルさんとイェさんの方を向いた。

部屋の扉から、颯太君がお盆を持って入ってきたけれど、ちょっと重そうだったので席を立って近づく。


「ここら辺の狐って誰だろう。姉さんに聞いた方が早いかな?」


「・・・崑癒(こんゆ)。管簾(かんれん)ところの嫁。」


こんゆさん?

イェさんが名前を口にしたけれど、知り合いなのかな?


「あー・・・管簾って、姉さんところから勘当されてなかったっけ?」

「たまに戻って来て、喧嘩してるって聞いた。」


知り合いというほどには近くない?


「連絡は難しいか?」

「私達が世話になっている姉さんの子供に、管簾ってのがいるんだけど・・・。

その嫁が管理してるなら、ひとまず姉さんに聞いてくるよ。イェはここにいて、何かあればすぐに連絡するから。」

「分かった。」


姉さんはその呼び方の通りじゃなく、カルさん達の知り合いってことだよね。

その人の子供のお嫁さんってなると。

ちょっと遠くて頼みづらそうな感じもする。


「よろしく頼む。」

「あいよ。」


カルさんが書斎の窓を少しだけ開いて、外に飛び出していった。


「だけど、既に生気を奪われているか、食われてる可能性はある。」


フィフさんが、念を押すように口にした。

和さんは、何か言いたげだけど、言葉がでてこないのか押し黙ってしまった。


「まぁとはいえ、ここまで居そうな場所は分かったんだから、ひとまず探すしかないか。」


軽く肩をすくめ、フィフさんが諦めるように続けた。


「私のせいで、今回基本世界の方を連れてきてしまっているので、できるかぎりご協力はいたします。…ですが。」


宗一郎さんが、全員を見渡す。


「ここ最近颯太が、基本世界にいることは知っていましたが、そちらは魔法使いのようですし、あなたは・・・人間のようですね。

そしてそこの吸血鬼と猫といい、不思議な集まりのご様子。」


確かにこんなに種族がバラバラでは、なんの集まりなのかよく分からないですよね。


「それは・・・。」


説明しようにも、さっき移動前に確認はしたけれど、まだ宗一郎さんがどういう立ち位置なのか少し不安が残る。


山本宗一郎さん。

梓さんの祖父で、私と梓が同時に亡くなった当時は、フォーラスとたぶん関係してるってことになる。


「そこの娘に見覚えはない?」


フィフさんが、私を指す。

宗一郎さんが、私の方をじっと見つめる。


「・・・お名前を伺っても宜しいでしょうか?」


少し緊張した空気が流れる。


「はい。私は・・・アリス。アリス・フォーラスと申します。」

「!」


動きは無かったけれど、宗一郎さんは驚いた目をして私と目を合わせた。


「アリス・・・フォーラス。それは・・・いやでも、確かにその姿は・・・一体どういうことでしょうか?」

「爺ちゃん?」


驚いている宗一郎さんの傍に、颯太君が近づいていく。


「分かっているんだな。こちらの説明をする前に、そっちの話が聞きたいが、その前にはスズの回収が優先。」


フィフさんは真顔で続ける。

その隣で、和さんも顔を上げた。


スズを探してそれなりに時間が経ってしまってるけど、逃げた後どうなったのか・・・


カルさんが出て行った後の窓の外に目がいく。

今はもう雨は止んでいる。

でも、あの土砂降りの中を、一人で逃げていたんだ。


最後に話したのは、地下で和さんと一緒にいたあの時。

和さんとも喧嘩していて、スズがもしもフィフさんの言う通り、もしも諦めてしまっていたら・・・


私のことは諦めずに、みんなが反対しても通路の橋を渡るスズ。

だけど自分のことになると、諦めずにいてくれるか分からない。

正直かなり不安。


たとえそれがスズ達の基準や価値観だとしても、和さんの言う通りそれだけは譲りたくない。


たとえそれが数少ないスズの希望だったとしても・・・

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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