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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
179/201

答え:一瞬先が闇か花かは

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

後ろで縛られていると思われる腕は、全く動かない。

腕の方は今どうしようもないけれど、足が縛られていないのが助かった。


壁を背に立ち上がると、葛籠の奥にも、いくつもの箱が重なって見える。

隙間に体を押し込みながら内側の方へ進んでいく。

埃と湿った黴の匂いが、喉の奥にへばりつくように漂っている。


室内の全体が見えないので、手探りで進めそうな隙間へ体を滑り込ませていると、僅かに光が漏れている扉が葛籠の隙間から目に入った。


古い木戸だ。

全力で蹴れば、壊せないこともない気がした。

だが、周囲の状況が分からない。

もし近くに誰かいたら、大きな音に気が付かれてしまうかもしれない。


扉の前にはなんとか来られたけれど、やはり扉は外から押さえられているようで開かない。

足先で戸板を揺らし、何度か小さく蹴ってみるが、外の気配は読めない。


これはもう、蹴破って急いで逃げる方が良いのだろうか。

それなら、先に動かない腕をどうにかしておきたい。


積まれた葛籠の中身が見えないので、手前の葛籠を倒して中身を見る。

洋服。

ガラクタ。

こっちは・・・重いな。

書物とかの可能性が高いし、止めておこう。


崩した葛籠が足元を埋め、逃げ場まで潰していく。


–カラガラ


こっちの葛籠は軽い音。

これは良さげな気がする。

膝を引っかけて開くと、女性物の小物が綺麗にしまってあった。

その中に、櫛や鏡などと一緒に鋏が見えた。


その葛籠を背に、動かしづらい手先で中を探り、どうにか鋏を掴む。


「…はぁ。」


狭すぎて動きづらい。

鋏を落とさないように、手首の方にあると思われる紐を削る。

感覚が無いので、間違って手首や腕を切らないよう、縄の繊維が擦り切れる音だけを頼りに、刃を少しずつ動かした。


相談所にバースと戻った頃には、すでに日付が変わっていた。

とはいえ、すぐにこの世界へ移動したと思われるので、移動時間はほぼ無いはず。

気絶していた時間次第ではあるけれど、もしも1~2時間経過していたとして、夜中の2~3時といったところだろうか?


背中からブツブツと少しずつ聞こえる音から、縄が切れていることを確認しながら、状況を整理していく。


颯太は会った時、祖父に呼ばれていると言っていた。

山本宗一郎が、仲間を呼び寄せられるのなら。

私まで巻き込まれて妖怪の世界へ来たとしても、不思議ではない。


がしゃ髑髏のことも、見間違えようがない。

今いる場所は妖怪の世界と考えて、行動しておくべきだろう。

となれば、気絶した私を生きたまま物置小屋にしまうのは、後から生気を奪うのか、何か別の目的があるのか、何にせよここにいても良いことはない。


–ブツ


音と共に、腕がようやく動いた。


外の様子が少し聞こえる?


何やら騒がしくなってきている気がする。

私に関係ないことなら、これを機会に扉を蹴破ってしまうか。


–ダン!!!!!!


積まれた葛籠に背を預け、両足で扉を蹴り飛ばした。

扉は外側に向けて倒れ、薄暗い景色と土煙が立つ。


周りの様子を確認しないまま、外に出て走ってその場を離れた。


小屋の外側と思われる方向へ駆ける。

外周には杭によって立てられた、約2メートルの高さの囲いがある。

それを飛び越えようとして、手をかけようとした――


囲いに手をかけた瞬間、右腕が不自然に外側へ折れた。

着地の時の違和感はこれか。

やっぱり折れていたか。


左腕を確かめて、改めて手をかけ囲いの外に出た。

囲いの中にある中央の建物の角から、人の声と明かりが過る。


その姿や正体を確認する必要はない。

どんな妖怪でも人間である私にとっては、そのほとんどに一度距離を詰められてしまえば、ほぼ逃げられない。


後ろを気にせず駆け抜けていくと、正面に森が広がっていく。


目の前の平地を走り抜けて、見える森の方へ向かう。

背後の声が言葉として聞き取れる前に、肺が焼けるほど全力で走った。


顔に何かが当たり、視界が滲む。


雨が降ってきた。

助かる。

体が冷えるのは困るけれど、これで匂いは多少ごまかせるだろう。


物置小屋の埃臭さとは違う、湿った草木の匂いに紛れながら、森の中に入り込む。


森の中にも妖怪がいる可能性はある。

木々を盾にしながら奥へ進み、雨宿りできそうな場所を探した。


森の奥から流水の音が聞こえる。

近くに川があるのかもしれない。


ひとまず、雨があまり下に降ってこない大きめの木の影に腰を下ろした。


「……はぁ。」


疲れた。

森の中は暗すぎて、人の目で慎重に進むとなると、長くは持たない。


ひとまず体の状態から確認して、あとはポケットに――


スマホがない。


「…はぁ。」


落ちてきた時に、どこかで落としてしまったのかもしれない。

こうなっては、仮に誰かが怪異の世界にいたとしても、連絡手段がない。


持ち物もろくに無い。

現在地も分からない。

となれば、唯一できそうなこととして、知っている妖怪を探すしかないけれど。

それをするにも、ここがどこだか分からない以上は、かなり難しい。


雨の音が、少しずつ大きくなっていく。

雨水で服が肌に張り付き、動きづらい。


日が昇るまでは、しばらく休むしかないか。


瞼を閉じた。


雨音はどんどん大きくなっていく。

時々大きな水の塊になって頭に落ちてくる。


あたりには雨の音だけが響く。

濡れた土と草木の匂い。


そういった部分は、どの世界も同じなのに。

生きる者達はそれぞれで全く違う。


妖怪といえば、元は夜の暗闇からの恐怖心から生まれた者達も多い。

夜と恐怖を棲み処にしてきた者達。


認知が形になる点では、神や悪魔とも似ている。

それなのに、何故こうも違うのか。


–ポツ


一瞬意識が途切れたと思った時に、水滴が目に落ち、反射で目を開いた。


目が合った。


暗闇で、姿は見えない。

それでも、確かに目が合った。


助かるか、終わるか。


「……。」


暗闇の中。

近づく様子もない。

ただ見ているだけ。


「おやおや。何かを見つけたと言うからちょっと寄ってみたが、人間の子か。」


女性の声が木の上から降ってきた。


空気が変わった。

雨の音が消える。

張り詰めていた森の気配が、一瞬で押し黙った。


目の前に、急に白い毛が広がる。


これは尻尾?


いくつもの尻尾を背にした女の姿が現れた。


狐か。


この距離では簡単には逃げられないだろう。


「……。」

「どれ。」


女の手が、こちらに伸びてきた。

その手が顔に触れる。


「…お前、御手付きか。」


まるで、誰かの所有物を見るような声音だった。


何かを見たのか、感じたのか。

触れていた手を急に引いた。


どうしたものか。


「ここは狐の領域なのか。」

「まぁそうなるな。そこに紛れてきたお前をどうするのか。私の勝手だな。」


女は少し悩むように、体を引いた。

狐の女以外は辺りは真っ暗で何も見えないまま。

闇の中に、白い姿だけが浮かび上がって見える。


「邪魔をするつもりはない、出られるならすぐにでも帰る。」

「ふむ。それもつまらんな。折角の拾い物じゃし。一応拾っておくか。」


女が身をずらすと、尻尾の奥から頭から全身にボロ布を被った人のような何かが姿を現した。


「家に持っていけ。」


その声を受けて、私に近づき腕を伸ばしてくる。

そのボロ布から出た腕には、いくつもの目が並んで見えた。

その腕は、米俵でも担ぐみたいに、私を片肩へ軽々と抱え上げた。


狐といえば、確か以前カルを見つけた時に、知り合いの狐に声をかけた。


「管簾(かんれん)。という狐を知っているだろうか?」


「・・・何故、お前が知っている?」


背を向けようとしていた女の狐が、振り向きこちらに視線を向けてきた。


「少し前に、狐が落とした鈴が割れた……だっただろうか。」


大したことじゃなかったから、出会った時の細かいことはあまり覚えてないけれど、修理を手伝わされた挙句に食われたことは覚えてる。


「その後、何度か話をして、少し前にも連絡を――」

「知っておるも何も・・・お前・・・何者だ?」


狐は驚いた顔でこちらに顔を近づけてきた。

良い意味での、知り合いのようで良かった。


「・・・面白い。ひとまずは、こう湿っぽい場所ではなく、帰るぞ。」


女は暗闇に紛れ進み、最後に残った尾が、白い扇のように夜へ広がった。


辺りの木がまるで生きているかのように右へ左へと女を避け、その奥から姿を現した門に向かって、布の生き物も足を進めた。


暗闇の中で最初に見た目と目が合った気がした。

こいつの目だったのだろうか。


門へ一歩踏み入れると同時に、暗闇が晴れた。

赤い提灯の光が両脇に並び、その真ん中を狐の女が歩き進んでいくのを引き続きついていく。


後から逃げるとしても、この領域から出られるだろうか。

相変わらず居場所も分からない状況では、何とも言えない。


玄関を入ると、すぐにボロ布の怪異に抱えられたまま、廊下へ降ろされた。


そこからは、狐の女達に荷物みたいに引き回され、服を脱がされ湯船に投げられ、動く間もなく、頭や体を洗われた。

雨で冷えた体のままよりは助かるのだけど、まるで宴の前に獲物を清めているみたいだった。

だけど、折れた腕も大まかな固定をされ、一時的にでも助かった。


風呂から上がれば、着物と浴衣の間のような服を着せられ、髪には櫛で整えられていく光景をただ黙って眺めた。


整えられた後に連れてこられた場所は、広い和室。

その奥の間には、さっきの狐の女が座っていた。

女は少し満足そうに全身を見てくる。


「ふむ。少しは綺麗になったか。」

「どうも。」


女の背後の棚に、見覚えのある鈴が目に映る。

さっき思い出したばかりの、やや深い緑を含んだ丸い鈴は赤いクッションの上に、大事そうに置かれていた。


「そうそう。この鈴。当時な、私が落として割ってしまったのだ。」


女は私の視線に気が付き、後ろに置いてある小さな鈴に目を向けた。


「とてもショックでな。かなり泣いて、部屋に引きこもってしまっていた。」


一人語りのように、静かに話し続ける。


「ところが数日経った頃に、この鈴は直った状態で、枕元に置かれていた。」


まぁ変な縁があったということだろう。


「管簾が直してくれていたんじゃな・・・。」


鈴を、優しく撫でるように触れた。


「お前は人間に見えるが、違うのか?」

「人間ですが、少し違う部分があります。」


女は顔を上げ、こちらに向き直る。


「なぜ、管簾やこの鈴のことを知っている?」


最近、何度も繰り返している説明を再び口にする。


ここで、狐との数少ない関わりが、良い方向に行けばいい。

とはいえ、最終的に私を逃がす選択肢を持たせる理由がどうみてもない。

以前の天狗のような交渉もあるが、もう渡せるものもほとんどない。


内心で溜息をつく。


最初から交渉は諦めて、逃げる方法を考えた方が良いだろう。


家はかなり広い。

逃げ出せても、領域の外へ出られるかは別問題だ。


そういえば狐の領域といえば北部の方だったか。

まだ数少ない情報もできれば拾っていければいいけれど。


そんなことを優先していたら、また和に怒られるだろうな。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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