疑問:それは、見える?見えない?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
魔法世界に入ってすぐに、和さんが魔法を発動した。
足元が光り、その光が消えると周りの景色は、街の中から洞窟の入口の前に切り替わった。
なんか、ここ・・・
霧が濃い?
空気の中に魔力が滲んで見える。
人酔いした時みたいに、少し気持ち悪い。
「・・・ここは?」
「魔力が・・・多いわね。」
「魔法世界にある妖怪の世界の入口です。魔力が多くて気分が悪いですよね。
すぐ入るので、すみません。少しの間だけ我慢してください。」
和さんが、洞窟に向かって一歩踏み出した。
「もしもし。」
「もしもし。」
間を置きながら、和さんは繰り返し洞窟の中へ向かってつぶやいた。
「もしもし。」
「お入んなさい。」
三回目の和さんの言葉に、静かな男性の声で返事がきた。
と同時に、真っ暗な洞窟の暗闇が魔法の霧と一緒に晴れていく。
急に室内の人工的な明るさに目が痛くなる。
そして、生き物の気配。
「ええ・・・?」
「なんだか、役所みたいな場所ね・・・。」
イザベルの言う通り、昔の区役所か郵便局の建物の中にいるみたいな光景。
その一つの窓口の前に、和さんと圭さんと私の三人で立っていた。
インクと紙の匂いが空気に混ざり、妙に役所らしい安心感があった。
「おやぁ?誰かと思ったら、そこの吸血鬼君は少し前に会ったね。今日はスズと一緒じゃないのかい?」
窓口の対面に立っている受付の人が、まるで友人のような雰囲気で気軽に話しかけてくる。
けど、その顔には表情がない。
・・・違う。
比喩じゃない。顔そのものが存在しない。
今まで会ってきた妖怪は、吸血鬼の圭さん。
狐のカルさん達、そしてイザベルだった。
みんな普通の人間の姿をしているから、そのイメージが強すぎて、目の前の、いかにも妖怪らしい姿に、つい凝視してしまう。
「あの・・・お知り合いでしょうか?その、僕たちはスズを探しに来たのですが。」
和さんが、おずおずと返事をした。
「ん?スズはもう入ってきてるのかい?全く、しょうがない人だね。
できるだけ、申請を通すように言っておいてくれると助かるよ。」
言葉は軽いけれど、表情は分からない。
口が無いのに、一体どうやって声が出てるんだろう・・・?
「いえ、ちょっと妖怪とのトラブルで、恐らくはこの世界に来てしまっていると思っているのですが・・・。探すとすれば、何か手立てはありますか?」
「おや。トラブルかぁ。君とそこのお嬢ちゃんは、魔法使いかな?」
のっぺらぼうさんが、顔のないままこちらを向いた気がした。
「・・・はい。」
「そうか。探すとなれば、動き回るだろうし、まずは忠告からするよ。
僕たちの世界では、外部から人間が入ってきても、基本的な判断は個々の自由になってしまうんだ。
ひとまず、この子をつけてあげるけれど、もし怪我をしたり最悪死んでしまったとしても、僕達にはどうしようもないということは、分かっておいてね。」
すると急に、天井から小さい梟のような鳥が、和さんの肩にとまった。
その瞬間、鳥は煙にほどけるみたいに消えた。
最後にぼんやりとした白い煙だけが、和さんの肩に残った。
「緊急時に、その子は勝手に飛び立ち、ここへ知らせに戻ってくれる。
僕たちはそれを確認して、助けに向かうけれど、間に合わないこともあるね。」
助けには来てくれるかもしれないけれど、間に合わない時はしょうがない。
つまりそういうことだよね・・・?
声の軽い空気に飲まれそうだけど、言ってる条件はかなり厳しく聞こえる。
「あとは、スズを探す方法かぁ・・・ガガラ!ガガラー!」
のっぺらぼうさんが後ろに振り向き、誰かを探すように呼びかけ始めた。
後ろの方に目を向けると、そこにはのっぺらぼうさん以外にも色々な妖怪の姿がある。
赤い肌をした人。
ネズミのような人。
浮いている黒い・・・何か?
「あ。ちょっと良いかな。」
目的の人が見つかったようで、のっぺらぼうさんが手招きをする。
それに反応して、奥からマスクをした女の人が近づいて来た。
マスクをした女性・・・?
それってつまり――
「なんですかぁ?」
「彼らはスズの知り合いなんだって、何か聞いてるかい?」
スズの名前を聞いた途端。
最初の軽い雰囲気を見せた女性の空気は、一段下がった気がした。
そして低いトーンで、周りに聞こえないように顔を寄せ、小声で話し始めた。
「はぁ?あ・・・。あんた見覚えあるね。」
「スズが、こっちに迷い込んでいるらしいよ。」
のっぺらぼうさんは、肩をすくめる。
「はぁぁぁ!?・・・何してんだ。何も聞いちゃいないよ。んで、あんた達は探しに来たということ?」
どこか口調は、アンジェラさんにも似てる気がする。
「はい。何か知りませんか?」
「・・・あー。少し前に、火車について調べて欲しいって連絡があった。」
「火車?」
マスクの女性が、胸ポケットから一枚の紙を取り出した。
「集まってる拠点を、リストアップして欲しいって言ってたから、それをまとめてある。」
和さんが受け取ろうと手を出したけど、女性が紙を渡さずに止まる。
「・・・あんた達、礼はあるのかい?」
和さんが、言いよどむ。
「・・・ないです。」
「ガガラ。ツケでもいいだろう?いつもちゃんと受け取ってるんだろうし。」
のっぺらぼうさんがフォローに入ってくれたけど、マスクをした女性は渋い雰囲気。
ここまで急いで来たせいで、何の用意もしていない。
そんな気まずい雰囲気に、女の人が深いため息をついた。
「はぁぁぁぁ・・・・・絶対に返しに来いって言っておいてよ。」
そう言って、しぶしぶ紙を差し出してくれた。
「すみません。用意します。普段受け取っているお礼はどういったお品ですか?」
「・・・・・・飴。とにかく色んな種類を沢山持ってきな。」
飴がお礼の品?
飴が礼になるんだ・・・・。
「絶対に、忘れんじゃないよ!」
「さて、それでは、私達ができることはここまででしょう。
ひとまず吸血鬼君もいるから、多少は大丈夫だと思いますが、夜も遅い時間ですからとにかくお気をつけて。」
のっぺらぼうさんは、最後に機嫌の良さそうな声色で手を振って、見送ってくれた。
そうして、建物の出口っぽい場所から全員で外へ出た。
「あいつ定期的に、かなりの量の菓子を要求してくるけど、妖精といい妖怪といい、結構そういう要求してくる奴が多いんだな・・・。」
「言われてみれば、そうかもしれないわね。基本世界の甘味やお酒や食べ物は、高いことが多いわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とにかく、情報が合って良かった。」
確かに、ここからスズを探すとなると、どこへ行けばいいかの目星もない状態よりも、少しでも情報が聞けたのは良かった。
元々スズが頼んでいた調査だから、話が早い。
こういう時、スズの繋がりの広さを思い知る。
「火車っていうと、あの前に乗った電車のことかしら?」
そっか、聞いたことあるとおもったけれど、確か前に乗った死者を乗せる電車は、火車っていう妖怪だって言ってた。
死者を運ぶ妖怪。
「そうですね。それを調べてたとなると、颯太関連でしょう。
ひとまず颯太を見つけられれば、スズも見つかると思いますし、候補地に行ってみましょうか。」
和さんがガガラさんから、頂いた紙を広げた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリス。・・・・・・見た目の姿と違う妖怪がいたら教えて欲しい。」
「そうですよね!・・・すみません。分かりました。」
そうだった。
私が来た理由。
さっきは妖怪の姿をしていても、凄く事務的で普通の空気すぎた。
それに流されていたけれど、ここからはちゃんと気をつけなきゃ。
カルさん達みたいに化けていても、魂は本来の姿で見えるはず。
それをすぐに確認できるように、目に集中した。
道に沿って歩いて行くと少し離れた場所に、平屋が並んだ少し昔の日本のような町が見えてきた。
山や川も昔の日本のような光景だけど、夜ということもあり全体的に不気味な雰囲気。
「こっちが近そうだな。少し草むらに入って、移動しようか。」
和さんについて道から外れ、茂った林に入った。
林の奥は外からの光が入ってこず、数メートル先も見えない。
ギリギリ見える和さんの背中を目の前にしながら少し進んだ先で、和さんが魔法を発動した。
次に移動した先も、木が覆い茂った場所だった。
移動自体はかなりスムーズに来てると思うけれど、それでも魔法世界を経由してそれなりに時間が経っている。
スズや颯太君は大丈夫かな・・・
風はそこまで冷たくないけれど、空は基本世界と同じく今にも雨が降り出しそう。
「この先の町で、何件か火車の妖怪が住んでいるみたいですね。圭、様子を見て来てくれるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった。ちょっと待っていて。」
圭さんは返事と同時に、風みたいな速さで、草木の奥へ消えていった。
やっぱり早すぎる。
先日の魔法もそうだったけど、魔法が見えるとか以前に、早すぎてそもそも目では追えない。
「そういえば、圭ってなんで種族から追い出されてるわけ?
自分の世界に一人では入れないって、正直かなり無理がある話だと思うのだけど。」
イザベルが、和さんに投げかけた。
それは確かに気になることだけど、聞いていいことなのかな・・・?
「・・・まぁちゃんと一から説明すると、圭は鬼とのハーフらしいんです。」
「珍しい話じゃないわよね。」
そうなんだ。
確かにイザベルからすれば、イザベルも猫の妖怪と魔法使いのハーフだもんね。
「それ自体はそうなんですが、それで生まれた圭は飛行以外の能力がありません。」
するとイザベルが、急に納得した顔をした。
え?
能力がないって、珍しいことなの?
「なるほどね。能力至上主義の吸血鬼からすれば、用なしが生まれたということかしら?」
「そう聞いてます。その代わり、鬼の身体的な力は強く偏って持っているようで、回復と身体能力はかなり高いですが。」
能力がないから、追い出された?
たったそれだけで?
種族から?
自分の世界からも?
「吸血鬼は能力へのプライドが高い種族です。圭は家系情報にも載せられず、公的な記録すら残されていません。
そのせいで、申請関係も通らない状態ですね。」
家系にも載せない・・・
ただ生まれて、能力を持っていないだけで?
圭さんには、何の非もないのに?
「そんなこと、あるんですね・・・。」
それぞれの価値や基準を否定するつもりはないけれど、それでもあまりにも酷い扱いに感じてしまう。
「そうですね。このあたりは日本の領域に重なってるので、吸血鬼自体もほとんど居ないので、圭も今はそこまで気にはしてないみたいですけどね。」
–ピピピ
「はい。あ、どこら辺にいらっしゃいますか?今僕らは――。」
和さんが電話を取り、誰かと話し始めた。
多分フィフさんかな?
フィフさんも合流するって言ってたけど、もしかしてもう来てる?
茂みの中だから、周りの様子はほとんど分からない。
空一面に雲が覆って、月明かりもない。
かなり真っ暗な中で、周りに目立たない程度に、和さんが小さな光を灯してくれている。
おかげで、和さんやイザベルの姿は何とか見えるけれど、それ以外は何も見えなくて、やっぱり怖い。
見えないはずなのに、暗闇の奥から何かに見返されている気がした。
–ぼやぁ
暗闇の中を、ぼんやりとした光が・・・
「イザベル。光が・・・。」
「和!」
最初は一つだった光が、二つ、三つと徐々に増えていく。
提灯・・・?
和さんが、私達の前に一歩踏み出した。
「人間の匂いがする。人間だな?」
「人間か?人間!」
「食っていい?人間?」
提灯が浮いている。
そして、その声が提灯から聞こえる?
「それ以上近づいたら、燃やすよ。」
提灯の数が、どんどん増えていく。
「燃やす?」
「燃やされる?」
「火は無い!食える!」
「食おう!」
和さんが、魔法で火を発動した。
それを見て、近づこうとしてきた提灯が一斉に動きを止めた。
「火だ!火!」
「燃やされる!」
「火だ!」
「火だ!?」
「燃える!」
「逃げろ!」
提灯達は、蜘蛛の子を散らすように飛び去っていった。
何とかなった・・・?
冷たくなっていた手を握る。
「匂いで見つかるのは困りますね。ちょっと方法を考えましょうか。ひとまず結界を。」
「そうね。長く同じ場所にいないようにするしか、今はないかしら。」
こんな暗い森の中にいても、見つかっちゃうんだ・・・
「あ。すみません。ちょっと妖怪に見つかってしまっていて・・・。」
和さんが、電話に戻って話し続けた。
「フィフは大丈夫ですか?え?あ!それなら良かったです。
今、火車の拠点を回ってるんですが、移動する場所が分かったらまた連絡しますね。」
電話が終わり、和さんがこっちに振り返った。
「フィフもこっちに来ていて、カル達と合流できたそうなので、次の僕らの移動場所が決まったら、合流しましょうか。」
「そうなんですね・・・分かりました。」
圭さん、いつ戻ってくるかな?
暗闇の中で、見えないのは怖い。
けれど、見えなくても怖いし、見えてもやっぱり怖かった。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




