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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
177/201

答え:時は相対して移ろう

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

空を落ちていく。


体を動かすこともままならないので、諦めて思考だけを進める。

とはいえ、どうにもならない状況過ぎて、方法は思いつかない。


このままあと数秒もすれば、地面に叩きつけられて死んでしまうだろう。


恐らく原因は颯太の能力によるものだろうけれど、その颯太の姿も見当たらない。

そんな状態では、もはやどうしようもない。


全身に受ける風の中で、溜息もつくことができない。


–チカ


何か光った?


と思った瞬間。


地面が爆ぜたみたいに、巨大な土煙が夜を覆った。

かなり広い範囲だ。

その煙の中に、白い何かが見える。


地響き?

なんだ?


考える間にも、土煙は凄まじい速さで迫ってくる。


骨?


白い骨の手が、土煙の中からこちらへ伸びてくる。


でかい――これは、ぶつかる!


とっさに手で頭を覆った。


「・・・っぐ!!!!!!!」


落下の勢いそのままに、体が骨の掌へ叩き込まれた。


「がはっ!!・・・っはぁ・・・はぁ。」


肺が詰まって声が出ない。

感覚は伝わってこないのに、指の一本も動く気配がない。

頭を上げようにも、上がらない。


どこか折れたかもしれない。


とにかく呼吸を止めないように――


視界はぼやけていく。


これは、マズい。


妖怪の世界で、意識を失うことはあまりに危険すぎる。

けれど、体はいうことを聞かずに、どんどん視界は水に溶けるみたいに白く滲んでいく。


ここまでかな。


…次も会ってくれるだろうか。


この体の最後の意識だろうと――抵抗を手放した。


–


――懐かしい声がした。


「頼む。できればお前の元に俺を置いて欲しい。」


魔法使いを、基本世界におく?

その理由も必要性も思いつかない。


「なぜ?」

「な・・・そうだな。お前の傍にいたい。お前の視界を見たい。」

「魔法使いであるお前が、基本世界に来ても得られる情報はほとんど無いだろう。

ほぼ無意味である可能性が高い。諦めて帰りなさい。」


それでも食い下がらず、男は顔を上げた。


「頼む!お前の邪魔はしない!手伝えることは何でもする。・・・だから頼む。」


カイル・ヴィンセント。

魔法世界で、知り合った魔法使いの一人。

何世代かに分かれてはいるけど、会う機会が多いほうではあった。


「ついてくることが、そもそも邪魔。お前にはお前のするべきことがあるだろう。」


そう言って、当時住んでいた魔法世界にある家の玄関の扉を閉めた。

そこから、しばらくは魔法世界に行くことをできるだけ避けていた気がする。


それなのに、約一年が経った頃。

魔法使いのアンジェラが、基本世界で暮らす私の家に、しばらく面倒を見て欲しいと双子の魔法使いを連れてきた。


できれば、断りたかった。


だが、何度か手を借りてるアンジェラの相談を、無下にしづらいこともあった。

そして、どうせすぐに出て行くだろうと見越していたこともある。


「頼む!!その魔法使いの子供の面倒も俺が見るから!」


「…なんで、ここに来れた?」


現在の相談所になる少し前の平屋。

その玄関の扉を開くと、以前と全く同じ姿勢で、頭を下げたカイル・ヴィンセントがいた。

なんで、基本世界に一般の魔法使いが来ているのか。


「交渉人になったんだ。基本世界担当のな。だから!基本世界にいても問題はないはず。」


「……はぁ。」


しかも、わざわざ交渉人になってここに来たということか。


「何その人?」

「誰?」


部屋の奥から、アイリスとユリアスが顔を出した。

最近やっと警戒が解けてきたので好きにさせているが、この二人も数か月経つのに出て行こうとする気配が見えない。


「お前、何がしたいんだ…。」

「ここにいたいだけだ!頼む!」


交渉人なら、今後もここに来ることができるということになる。

そうなれば、何度追い返しても来ることが嫌でも予想できる。


…これ以上は無駄か。

非常に面倒くさい。


「…はぁ。好きにしろ。」

「!!ありがとう!」


面倒くさくなった結果。

簡単な方を選んでしまったことを覚えている。


「はぁ!?寝室一つしかないのか?」

「当たり前だろう。一人で住んでいたんだ。」


「そう。だから私達にベッドを使わせて、その人いつもソファで寝てる。」

「スズだよ。」


ぶっきらぼうにアイリスがつぶやく。

好きに呼んでくれても構わないけれど、あまり放っておくと後でアンジェラに小言を言われる。


「・・・はぁ。とにかくベッドは増やした方が良いな。」


どうせどちらも、すぐに出て行くのだからどうでもいい。


一緒に住み始めるとカイルは、言った通り家の家事やアイリス達のことも面倒を見て、ちゃんとこなしていっていた。

まぁ一時的にでも、面倒を見る手間等が省けて良かったくらいには思っていた。


…それが、どうしてこうなったのか。


その後数年経っても、アイリス達はおろかカイルも出て行く気配がない。

更には、フィフの方から圭まで戻ってくる事になり、気づけば人数は、増える一方だった。


それを見かねた美弥は、とうとう家を作り直してしまった。

平屋から、二階建てへ変わった家。


「流石に狭かったよ。」

「そうだけど…分かった。」


作り変えるのも一瞬なら、元に戻すのも一瞬だろう。

もう放っておくしかなかった。


そんなある日。


「カイルは、スズのことが好きなの?」

「押しかけってこと?」


そんなアイリス達の話をきっかけに、二人はどんどんカイルを詰めていく。

その様は、同じ建物の中で過ごしている以上、嫌でも何度も目にした。


さすがに、この流れはまずい。

そう思った時には、既に遅かった。


魔法で整えられた庭。

その庭から見える玄関脇の窓に、アイリス達が時々顔を出す。


私の目の前には、カイル・ヴィンセントが立っている。

その口が今まさに開こうとするのを見て、制するように手を上げた。


「待て。私にそういったものを求められても無理だ。」

「わ、分かってる!それは分かってるよ。」


だがその様子は、止めなければ確実に口にしていたことが明白だった。


「なら、魔法使いを対象に――」

「でも、お前が良いんだ!」


言葉に詰まった。


過去にもそういったことを言われる機会はあった。

だが、それは普通の人間として見られてのことだった。

今の私を理解した上で、そう言われたのは初めてだった。


「無意味なこと。私は答えられないよ。」

「無意味!無意味!って、お前はいっつもそればっかりだな!」


「この場合、適切な言葉だと思う。」

「うるせぇ!とにかく俺は、ちゃんと理解して言ってるんだ!

ってか、ここまで何度も生まれ変わったお前に会ってきて、今さら知らないわけがねぇだろ!」


「分かっているなら、諦めて――」

「それでもお前が良いんだ!お前の一部の時間だけでもいい!俺の最後までくれ!」


肺の奥に溜まっていた疲れが、ため息になって零れた。


私の時間についてはどうでもいい話。

使ってしまう時間に関しては、どちらかと言えば、限りあるカイル・ヴィンセントの時間の方が問題だろう。


「…ダメだ。ここに長居しすぎだ。」


流されるままに、滞在を放っておいたことを今さらながらに後悔した。


その後はすぐに時間が許す限り、ミランダや魔法世界の知り合いに掛け合い、カイルの紹介を数えられない程にしていた気がする。


カイル・ヴィンセントの紹介は簡単だった。

名前を出せば、だいたいの魔法使いが知っている。


短縮発動の実績は、そもそも大きい。

そして、今も設置魔法等も、常々絶やすことなくいくつも発表している功績も重なり、こちらから声を掛けなくても、声が掛かってくることも多かった。

どこからも招待が絶えず、いくらでも行く先は見つけられた。


「ふざけんな!!ここがいいって言ってんだろ!」

「ダメだと言っている。どれも悪い場所ではないはず。」

「それを決めるのは、俺だろ!!」


そんなやり取りが増えていった。


最初は泣いたり、困ったりしていたアイリス達もやがて、気にしなくなっていっていた。

どんどんと日を重ねるごとに、日常茶飯事になっていく。

いくら続けても、出て行くことを拒み続けるカイルに、ある日質問を投げた。


「どうしたら、出て行くんだ?」


「・・・何でダメなんだよ?俺はお前が良いんだ。それだけだ。」


一途にも程がある。

私にはそこまでのことを、この男にした覚えはない。


「何がそんなに良いんだ?」

「具体的には、ちゃんとまとめられてないけど、それを知る為にもお前と一緒にいたいと思ってる。」


具体的な理由はないか。


「君は魔法使い。それなら、魔法使いとして自分の世界で生きた方が、色々な可能性が広がるだろう。」

「それも俺が決めることだろう?俺はここでもそれができると思ってるんだ。

ダメならダメなちゃんとした理由を教えてくれ。・・・俺はお前が良いんだ。」


平行線は、どれだけ言葉を重ねても交わらなかった。


「…はぁ。分かった。もう口を出さない。好きにしろ。」

「ありがとう。・・・スズ。俺はちゃんと考えてここを選んでるつもりだ。」


魔法使いとして、探求心の高いこの男のことだ。

長くはなるだろうが、いつかは諦めて出て行くだろう。


そう割り切るしかない。


「そうか。」

「個人としても、お前と向き合いたいと思ってる。

今はまだ、お前の土俵にいないと思うけれど、少しでも見てくれたら嬉しい。」


許可を出した時と同じ、嬉しそうな顔を上げた。


–


懐かしい。


夢?


どこだここは?


感覚の薄い体では、今の状況すら上手く掴めなかった。

狭い視界には木目が映る。


室内?


というか、ひとまず生きている。


腕は動かない。

背中で縛られているのかもしれない。


どうにか体を起こし、周りの様子を見渡した。


「…はぁ。」


どうやら物置小屋のようで、壁を背に周りには葛籠が重なっている。

湿った闇が、小屋の中に沈殿していた。


最後に見た骨の手。


大きさからいっても、がしゃ髑髏と呼ばれる妖怪だろう。

死者の骨が寄り集まった、巨大な骸骨の妖怪。

そこからここに来るまでの経緯が予想できない。


逃げられるなら、逃げた方がいいだろう。


それでも昔なら諦めて寝ていた気がする。


「……はぁ。」


言われた通り、気が付けばここまで見てきた。


それをやっと諦める日が来たというのに、

あの日と同じ言葉が出てこない。


何度も好きにしろと言っておいて、潔くないにも程がある。

ここまで引きずっている時点で、答えは決まっていた。


もう一度溜息をついた。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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