疑問:ゆっくり知っていく暇もない?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「おーい!誰かー!?」
眠っていた意識が、浮き上がる。
ん?
誰かの・・・声?
「おーい!――聞こえる―――くれ!」
外の階段の方から、バースの声が聞こえた。
「・・・?」
寝ぼけた頭のまま部屋を出ると、声がはっきり届いた。
「誰か返事をくれんかー!」
「バース!何ですか?こんな夜中に・・・。」
階段の方からはバースさんの声、さらに上の階からは和さんの声が聞こえた。
「お!助かった。ちと緊急だ。手を貸してくれ。」
緊急?
どうしたんだろう?
眠そうなイザベルと一緒に、暗い階段の方に近づく。
「どうしたんですか?」
「うるさいわねぇ・・・。」
暗い階段の中で、バースさんの白い耳と尻尾が浮いて見える。
「さっきスズとここへ戻って来たところでな。儂が庭に出ようとしたところで、階段で少年と出会ったのだ。
その時急に、少年とスズが目の前から消えてしまってな。」
「・・・・・は?」
消えた?
え?
アンジェラさんも部屋から顔を出し、不機嫌そうに壁を背にして立った。
「魔法には見えんかったから、止められなかった。そして、追いかけようにも、追いかけられずに困っているのだ。」
「ちょ、ちょっと待ってください。少年って・・・颯太ですか?」
「すまん。名前は知らんが、見覚えのない奴だ。その娘と同じくらいの背丈の少年だった。」
バースさんが私の方を指差した。
うーん。
それは今いるメンバーだと、颯太君しか思い当たらない。
しかも颯太君と一緒に消えたとなると、未だよく分かっていない颯太君の移動能力が関係している気がした。
え?
待って、それってどこかの世界に飛んだってこと・・・?
「ちょ・・・圭に確認してきます。アンジェラ。アリスさん達と一緒にいて。」
「あいよー・・・。」
和さんが、階段を駆け下りて行った。
「・・・んで、他に何か情報になりそうなことは言ってたかい?」
低い声で、アンジェラさんがバースさんに質問を投げる。
「む?うーむ。・・・少年が、爺さんとか言ってな。」
「爺さん?・・・あー・・・なんか言ってたね。山本梓の祖父・・・えー・・・。」
「や、山本宗一郎さんです。」
アンジェラさんの言葉に、私が答えた。
「あぁ・・・そうそう。それがなんだって?」
「分からん。それ以外は何を言っているのか、儂には分からんことだったな。」
アンジェラさんが深く溜息をはいた。
「・・・その山本宗一郎が絡んでるなら、怪異の世界かもしれないねぇ・・・まぁ、断定はできないけど。」
アンジェラさんの瞼は、今にも閉じそうなくらい重たそうだった。
窓の外はまだまだ暗く、明るくなる様子はない。
今何時だろう?
「儂はひとまず、降りておこうか。夜分邪魔して悪かったな。」
「・・・・・あ?いや、一緒に降りるよ・・・アリスは、戻って眠り直していいよ。」
バースさんが階段を下りて行くのを、アンジェラさんもついて行くように歩き出した。
「あの。コーヒーでも入れますよ。スズのこと、私も気になります。」
「・・・分かったよ。無理そうなら、すぐ寝に戻って良いからね。」
ついて来た私の頭を、アンジェラさんが何か言いたそうに撫でた。
なんだろう?
三階の台所に降り、お湯を沸かす。
さっきまで眠かったはずなのに、今は妙に頭だけが冴えていた。
結構寝た後のような感じ。
そんなに寝たっけ?
三階で静かにお湯の沸く音だけが響く中、下から階段を駆け上がってくる音が聞こえてきた。
和さん戻ってきたのかな?
「あ!イザベル!良かった。ミランダさんを呼んでもらえないかな。」
和さんが階段から顔を出すと、私の足元で眠っていたイザベルに声をかけた。
イザベルもまだ眠そうに頭を上げた。
「・・・はぁ?・・・あっちも夜なら、お母様も寝てるわよ?」
魔法世界は、基本世界の倍の速度で時間が進む。
タイミングによっては、真昼か真夜中ってことだよね。
「分かってるよ。申し訳ないけれど、急いで移動できるとしたらカル達が帰ってくるのを待つか。他にミランダさんしか、今思いつく手段がないんだ。」
和さんが、申し訳なさそうにしながらも焦った声で、膝をつき頭を下げた。
「どうしたら、そうなるのよ・・・ちょっと待って。」
その時、下の階段から再び足音が上ってきた。
振り向くと、圭さんが姿を現した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お願いします。できれば早く。」
「なんなのよ。どういう状況?」
その様子に耳を向けながら、お湯が湧いたので、コーヒーポットに流していった。
「恐らくは、怪異の世界に行った可能性が高いらしいです。」
和さんが、顔を上げて圭さんの方に視線を送る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分。」
圭さんも申し訳ない様子で、うなずき返す。
「それで?」
「その・・・怪異の世界に行くとなると、圭は一人では入れないんです。種族側の制限で。」
「は?何でよ?吸血鬼なんでしょ?」
圭さんは一人で、怪異の世界に行けない?
それは、移動手段がないってことじゃなさそうだけど、どういうこと?
「そうなんですが、圭は基本的に、誰かと一緒じゃないと怪異の世界に入れなくて・・・。」
カウンターに並べていったマグカップを、和さんが受け取ってテーブルへ運んでくれた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕は種族からの許可が出ない。・・・・基本的に・・・・・申請が降りない。・・・・・・入れても一人だったら、怒られる。」
「は?・・・吸血鬼から、追い出されてるってこと?」
圭さんが、うなずいた。
仲間に追い出されてる。
申し訳なさそうにする圭さんに、気まずい空気が流れた。
圭さんは、自分の世界に一人では戻れないってことだよね。
そんな状況だったなんて・・・
「・・・ですが、同行が可能なカル達は、今怪異の世界に行ってしまっているようで、戻ってくるとしても朝の予定らしく。」
まだ時計は1時過ぎ、朝を待つには遠い時間。
「だから、お母様にお願いしたいのね。」
「はい。お返事はありそうですか?」
スマホのチャットには、既に和さんのミランダさん宛へのメッセージが入っていた。
イザベルが顔を上げる。
「・・・まだ返事はないわ。寝ているか、ミーティング中とかなのかもしれないわ。」
ミランダさんからも返事がないとなると、今すぐに怪異の世界に向かう方法が、無いってことになるのかな?
「怪異の世界か。」
バースさんが、テーブルに顎をついたままつぶやく。
その隣でアンジェラさんは、座ったまま頭を揺らしてる。
「どこか入れる入口は分かるか?儂が入ったら、マズいだろうか?」
「・・・基本世界からの場所は、いくつか把握してますが・・・。
外部からの入室の場合は、スズに申請してもらうことが殆どです。先日はカル達がいたから、狐の許可があったんですが・・・。
あと流石に、フェンリルが入るのは、色々とトラブルになりそうな気がします。すみません。」
「むむ・・・それもそうか。」
別世界への移動。
外部側からの申請が通らないなら、方法はほとんどないってことだよね。
いつもはスズの通路って事だと思うし、そうなると――
「そういえば。」
一人だけ知っている顔を思い出す。
「フィフさんはどうでしょう?」
「!」
「ぬ。5番目の者か。連絡できるのか?」
和さんは、思いついた可能性に飛びつくみたいにスマホを取り出した。
「たしかに、でも精霊の世界なら、もしかしたらまだ起きてる可能性があるわね。」
和さんが電話をかけ始めた。
「アリスさん。ありがとうございます。抜けてました・・・。」
「いえ、フィフさんもミランダさんも、起きていればですし・・・。」
「あ。返事が来たわ。」
電話をかけてる途中で、イザベルがテーブルに上がってきた。
「本当?早い方が良いし、ミランダさんにすぐにお願いできそう?」
「一応申請を出せるって言ってるわ。移動できる?」
「分かった。アリスさん、しばらくイザベルをお借りさせてください。アンジェラ、後は頼む。」
「は、はい!イザベルも気をつけてね。」
「はいはい。アリスの方が心配よ。」
イザベルが心配そうな顔を向ける。
でも私は相談所にいるだけだから、大丈夫だと思うけれど・・・?
「・・・・・・・・・ぁいよー。」
「え?」
和さんが、スマホを耳にしたまま止まった。
「はい。今から怪異の世界に向かおうとして・・・。はい。圭とイザベルと・・・え?」
和さんが通話をスピーカーに変えて、スマホをテーブルに置いた。
『なんで、急いで向かうことになってんだ?』
フィフさんの声が、スマホから響く。
「スズがおそらく怪異の世界に飛ばされたので、それを迎えに行こうと――」
『あいつはまた何やってんだ。・・・で、何の準備もせず行こうとしてるのか?圭と猫ちゃんだけ連れて?』
「今は急いでいるので、そうするつもりですが。」
『はぁ。まずは落ち着け。・・・圭。お前だけじゃ匂いしか分からないだろ。和も行くなら、アリスの嬢ちゃんも連れて行った方がマシ。』
私も?
それを聞いて、圭さんが思い出したように私を見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・あ。・・・・・・・・・・魂が見えるから。」
「は?魂が見える方が良いのか?」
『妖怪の正体が見分けられる嬢ちゃんがいた方が、圭も敵味方の判断がしやすいだろ。
ひとまず、申請ができるんなら、あっちで合流しよう。』
–ピ
フィフさんは、すぐに電話を切ってしまった。
えと、私も行った方がいいのでしょうか?
「・・・圭。俺は怪異のことは分からない。お前の判断に任せたいが、どうだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・妖怪の正体が判別できるなら、・・・・危険も判断しやすくはなる。
・・・・・・フィフが言うことも正しい・・・・・・・・でも、危ない。」
「動きやすいっていうのは、そういう意味か。確かにゆっくり準備をしている場合じゃないけれど・・・。」
和さんは、再び悩み込んでしまった。
フィフさんに言われたから、和さんとしても無視もしづらいのかもしれない。
「ふぁ・・・・・・アリスはどうしたいんだい?
あっちでは、妖怪から食われる心配があるから、危ないことは危ない場所だよ。」
眠そうにアンジェラさんが、教えてくれる。
“食べられる”――その言葉だけで、喉の奥が冷たく縮こまった。
それだけで、とても危ない場所だってことは分かる。
でも、そこにみんな行く。
しかも、そんな所にスズは今一人で行ってる。
「・・・みんなが危ない場所に行こうとしてるのは・・・変わりないので、それが手伝えるなら・・・。
何もしないで待ってる方が、たぶん嫌です。」
それならみんなで、一緒に戻って来たい。
それを少しでも手伝えるなら・・・
「・・・・・なら、行っておいで。・・・・ほら、ゆっくりしてる場合じゃないだろう?」
アンジェラさんが押す。
和さんも眉を寄せて悩みながら、諦めた表情で顔を上げた。
「・・・わかりました。行きましょうか。」
言うや否や和さんは、パッとテーブルのスマホを手にしたので、その勢いに乗って椅子を立ち上がる。
もちろん不安はあるけれど、決めたからには、行こう。
「車を回してくるので、アリスさん着替えて降りて来て下さい。」
「分かりました。急いで着替えてきます!」
急いで着替えてきて、階段を下りた。
イザベルと一緒に玄関の扉をくぐる。
まだ寒い夜の風が吹く。
明日は、雨が降りそう。
夜空の見えない真っ暗な庭を足早に進むと、出てすぐに車に乗った和さんと圭さんを見つけた。
「ひとまず外部からの入室なので、魔法世界を経由します。」
「面倒ね。」
魔法世界から、怪異の世界に移動するってことなんだろうな。
まだ行った事がない世界。
そして、怪異ってことは妖怪ってことだから・・・
食べられる危険もあるってアンジェラさんも言ってた。
どんな場所かもどんな危険かも、ゆっくり聞いている時間はない。
それでも今は行かないといけない。
後からどれだけ穏やかな時間を作れても、そこに“帰ってくる相手”がいなければ意味がない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




