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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
174/201

疑問:そこに、あなたは含まれない?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「つまり、山本梓としての公的な書類の手配も含めて、保証人として、裏で糸を引いていたのはその男ってこと?」


–ニャ(そういう事ね。魔法世界側でも過去の動きを追いかけて、裏は取ってあるわ。)


夕食後。

風呂へ向かおうと階段へ足を向けた時。

ミランダさんが窓から入ってきた。


昨日、相談所に来たあの男の人。

夕方、スズが魔法世界の病院へ連れていったのは、その男だったらしい。


やっぱりスズの動きは早い。

考えるより先に、盤面を並べ終えているみたいだった。

そして、それを聞いた和さんが溜息をつく様子から、きっと何も伝えてなかったんだろうなぁ。


さっき和さんから、スズがバースさんと巨人の世界に行ったと聞いて驚いた。

バースさん達を事前に連れてきていたことも含めて、全部一人で進めていたんだろう。


「アリスさん。どうですか?」


和さんが、私に声をかけた。


「あ!すみません。・・・はい。思い出したというか、少し前に過去のことを見直した時にも、あの男の人が私の山本梓としての人生の中に時々いました。

でも・・・ちゃんと話した記憶とかはほとんどなくて、正直ピンとはきてないのですが。」


どこか遠い記憶になってしまって、過去にあの男の人とどういう話をしたかとかは、まったく思い出せない。

だからなのか、自分のことだって認識がどこか薄くなってしまっていた。


「まぁ、それならミランダ達がその男から引き抜いた記憶は、証拠としても問題ないんじゃないかい。その男はどうするんだい?」

–ニャア(基本世界の人間なので、魔法媒体を抜いて体調が戻り次第、基本世界へは戻すつもりよ。)


「またブライアンに襲われる可能性はあるだろう?」


アンジェラさんが確認していく。


–ニャ(基本世界側の担当者には引き継ぐわ。魔法使いが関与している以上は、魔法使い側でも監視や保護の協力はするつもりよ。)

「で、その男が居たっていうアパートは?」


そういえば、以前イザベルが妖怪のハーフって聞いた時。

ミランダさんは、猫の妖怪って言ってたんだよね・・・

妖怪なのに、魔法世界側の立場でも動いてるんだ。


–ニャニャ(調べたところ、魔法世界の入口の一部になっている場所に建っていて、基本世界にも魔法世界にも、あの建物は存在しない状態だったわ。

一応魔法世界側から、トラップを張ってある。)


ならあの男の人のことは、後はミランダさんに任せることになるのかな。


「そうかい。教えてくれてありがとうさん。」


–ニャ


ミランダさんが机を下りて、窓から出ようとした時。


「ミランダさん。ちょっと。」

–ニャ?


和さんが椅子から立ち上がり、ミランダさんの乗った窓際へ向かう。

二人は窓際で何かを話している。

小声で交わされる会話だけが、夜風に紛れて消えていった。


「ひとまず昨日の件で、ブライアンというかフォーラスが、長女シャロンを探しているってことは、また何かしてくる可能性があるだろうし、こっちはこっちで気を付けるしかないね。」


ミランダさんと和さんは話し終え、ミランダさんは窓の外へ出て行った。


「スズちゃん。今日も会えないのかぁ・・・寂しい。」

「ねー・・・。」

「うーん・・・。」


口を出さないと言った手前、日向も秀人も和さんに向かって何も言わない。

けれど、二人の視線は和さんに向いている。


「「あだ!」」


アンジェラさんが、二人の頭を軽く叩く。


「とにかく、あんた達は風呂に行っておいで。」


「・・・はぁい。」

「分かったよー。」

「キュウ?」「キーキ」「キュ」


日向と秀人は、ウーノ達と一緒に階段に向かった。


私もお風呂に入ろうかなぁ?

でも静かなお湯に浸かるなら、みんなが出てからの方が良さそう。

午後の土煙で、まだ少し埃っぽい感じがするから、ゆっくり入りたいし。


「アンジェラはしばらく、ここにいられるのか?」


和さんは台所へ入りながら、アンジェラさんへ質問を投げかけた。


「それは私次第じゃないだろう?」


「・・・まぁ。そうなるのか。」

「いいんだよ?私はすぐに出かける用はいくらでもある。」


アンジェラさんは、ニヤニヤしながら返した。


「実際どうなのよ?そこがはっきりしないから、皆あんたと一緒にうじうじしてんのよ。」


「・・・・はい。すみません。」


イザベルもずっとイライラしてるもんね。

とはいえ、それは二人の問題だと思うんだけど・・・


「昨日も言った気がするけど、最初と同じなだけじゃないのかい?」


「・・・そう言われると、そうなんだけど。」


最初?

和さんとスズの最初?


「スズは、好きにしろって言ってるんだろう?」

「何よ。なら、カイルが勝手に決めればいいんじゃない。」


「・・・・いや。あの時はそれを押し通したんだけど、今になってもその状態が変わらないってことはさ・・・って考えると。」

「あぁ。愛想が尽きたって?」


なるほど。


和さんがそう感じるのも少し分かる気がする。

聞けば素直に返してくれるスズだけど、本当に欲しいスズの気持ちまでは、どこかあと一歩届かない時がある。

それで、嫌われてるのかもって感じる時もあった。


スズはいつも一歩後ろから、本人の答えを待ってくれることが多い。

それなら、その答えをスズしか持っていないなら、スズの答えはどこにあるんだろう?


スズはいつも、一歩後ろで答えを待つ。

でももし、その答えにスズの未来も含まれているのなら。

その答えを決めるのは、本当に和さんだけでいいんだろうか。


スズにとって、スズの先はどういうイメージなんだろ?


「なによ?アリス。あんたまで考え込んで。」

「え・・・いやぁ。えぇと。」


今喋っても、また何となくそう思った、って感じになってしまいそう。


台所からの温かい湯気に、コーヒーの香りが混ざり始める。


「うまく言えないんだけど。一生涯のイメージが無い時、先のことをどうやって考えるのかなぁ・・・っと。」


過去は勝手にできていくけど、未来はどうやって進むイメージなんだろう。


「んーそうねぇ。そういうのは圭とかに聞いた方が、イメージは近いかもしれないけれど・・・つまり、アリス的にはスズの将来には、カイルがいない感じがするってことかしら?」


「ややや!イザベル!そこまで言ってないよ。違います!和さん。」

「あははっ!」


和さんが、コーヒーポットを持って歩いて来た足が一瞬止まった。

アンジェラさんは笑っちゃってるし。


「というよりも、あんまりそれを考える機会が、少なかったんじゃないかなぁと。」

「面白いね。アリスは、どんな相手でも相手の視点から考えようとするのかな?」


どんな相手。

といわれると、幅が広いけれど。


「えぇとできそうな場合は、だけでしょうか?」

「確かに、長命の中でも度を抜いたスズの視点は、気になるだろうけれど、そんなの考えてもわかるもんじゃないだろう?」


確かに、想像もつかない。

基準も分からない。


基準が分からない以上、どうしても私は、自分の感覚を基準に考えてしまう。


「例えば、私にとっては数ヶ月前まで、人生は長くても80~100年ぐらいのイメージだったのに、ある日いきなり800~1000年と言われて、10倍に増えたんです。」


和さんが、静かにコーヒーを配ってくれた。


「私にとっては基準があまりに違い過ぎて、今でも、数年単位くらいでしか想像が追いつかないんです。」

「ふんふん?でもそれは終わりの目安に対するってことだね。」


アンジェラさんが拾ってくれた。

少し話がずれてしまったけれど。


「はい。あくまで“終わり”を基準にした話ですね。

だからもしも更に長いというか、終わりが分からない時、スズ的には考えても無駄ってことになりそうだなぁ・・・と。」

「その仮定でいくなら、答えはシンプルだね。」


ん?

シンプル?


「つまり、将来を前提に考える感覚が薄いってことだろ?」


その言葉に、部屋の空気が更に静かになった。


そっか。

考える機会が少ないとかじゃなくて、そもそも考えてない。

確かにそうかもしれない。


「だから押せば流される。でも、本人に聞いたところで答えは出ない。結構正解なんじゃないかい?」


「んな。大雑把な・・・・・・・・。」


和さんは、椅子に座りながら少し呆れた表情を見せたけれど、そのまま考え込んでしまった。


「生者が将来を考えるのは、生物としての本能からでは?」


ルーナさんが、静かにつぶやいた。


「あはははは!」

「は・・・・。」


「・・・た、確かに。」

「元も子もないわね。」


アンジェラさんの笑い声が響く。

ルーナさんは、ちょっとまずかった?って顔をしてる。


「・・・いや、一理どころか正論だねぇ。」

「はぁ。日向達がいなくて良かった。」


確かに生き物としての本能である、生存や繁殖。

それがあるから、人は将来について考える。

でもそれって結局、スズとの根本的な感覚の距離が、広がっただけって感じ。


いつまでも埋まらないものがあるなら、それはやっぱりどうしようもない?


もし、お互いの価値観を“違うもの”として受け入れるなら――

スズがスズの基準で死を選択しても、それは”どうしようもない”ことになってしまう。


ふと、時々目にしていた輪郭が薄くなるスズの姿が思い浮かぶ。


ある時。


ふと。


誰にも気が付かれずに――


「そういえば、シャロンお姉様はどこにいるんですか?」


あれ?


無意識に口からこぼれた。


その瞬間。


誰かの息をのむ声が聞こえた。

二人の反応に、急に胸の奥がざわつく。


「・・・アリス。それを知ってどうするんだい?」


さっきまで笑っていたアンジェラさんの表情が消えた。

和さんも驚いた様子で、私の方を見ている。


「私・・・今、なんて?」


シャロンお姉様?


なんて言ったんだっけ?


「カイル。」


「・・・いや、精神介入は・・・。」


え?

どうしてあんなこと言ったんだろう?


お姉様がどこにいるのか?


「ああ。そうか違う。一時的な命令じゃなかったのか。」

「アンジェラ?」


「ルーナ。ブライアンは、アリスに真名で命令したと言っていたね。

それは、シャロン・フォーラスを探していることについてだと。」

「え、・・・えぇ。『シャロンの居場所を聞け』、そう言ってたのは聞こえた。」


–シャロンの居場所を聞け


そうだ。


–ガタッ


「アリス?」

「居場所・・・を聞かなきゃ。」


誰に?


–3番目に聞いた方が早いだろう


そうだ。


「3番目・・・。」


頭の奥で、答えだけが浮かぶ。


「悪いけど、少し寝てもらうよ。」


その声と同時に、目の前が真っ暗になった。


–


「真名で命令した。それは確かなんだね?ルーナ。」


アンジェラが、倒れるアリスさんを床に着く前に受け止める。


「えぇ。それは確か。その子の魂の名前を、昨日の人間の男が口にしていた。

そして、シャロンの居場所を聞けと。そこまでは確かに聞こえた。」


「最後に、アリスは3番目とも言っていた。その対象にスズが含まれている、ということだろうけれど、知っている可能性の高い私達にも、命令は発動したということかもしれない。」

「それが正解なら、ある程度成功が成立しない限り、アリスさんに命令認識が残り続けることになる。」


確かにフォーラス家であるアリスさんの真名。

それによって、昨日は疲労していたということだろう。


魂の持つ名前は、生まれる度に少しずつ変わる。

だから今を生きるその存在にとって、真名は唯一になる。


それを普通に口にするだけなら、ほとんど意味を持たない。

けれど命令意思の上で、魔力、妖力、霊力や更には神の力などの”力”を含んで口にすれば、強い命令に変わる。


そして魂に刻まれた命令は、それを達成するかまたは死ぬまで残り続けることになる。


「気が付かなかったわ。なんで?なんで、こんなに時間が空いたの・・・?」


イザベルが、心配そうにアリスさんの傍に寄る。


「・・・それは、推測でしかないですが、さっきの話の中で不安感が出て、精神的に隙が生まれたのかもしれません・・・。」


生き物の本能としての違いは、今までの価値観の違いとはまた少し違う。

それに対して急に距離感を感じ、彼女にとって不安につながったのかもしれない。


いずれにしても、これは対応を考えないといけないだろうし・・・

スズにも相談した方が良いだろうな。


さっき玄関で話した時のあいつの言葉は、以前は俺がいる事を前提に考えていたということを肯定していた。

認めたくはないけれど、尚弥の言葉は正しかったことになる。

そしてアンジェラの言う通りなら、俺がここでもしも引いたら、多分あいつはただ昔に戻るだけ。


今俺は俺の基準で、勝手にあいつを含んでいる。

そしてあいつも、無意識にでも俺を含んでくれていたんなら、少しは変わっていたってことだろう。

それならやっぱり――あいつが待つだけなら、押す側になるしかないんだろうか。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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