疑問:そこに、あなたは含まれない?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「つまり、山本梓としての公的な書類の手配も含めて、保証人として、裏で糸を引いていたのはその男ってこと?」
–ニャ(そういう事ね。魔法世界側でも過去の動きを追いかけて、裏は取ってあるわ。)
夕食後。
風呂へ向かおうと階段へ足を向けた時。
ミランダさんが窓から入ってきた。
昨日、相談所に来たあの男の人。
夕方、スズが魔法世界の病院へ連れていったのは、その男だったらしい。
やっぱりスズの動きは早い。
考えるより先に、盤面を並べ終えているみたいだった。
そして、それを聞いた和さんが溜息をつく様子から、きっと何も伝えてなかったんだろうなぁ。
さっき和さんから、スズがバースさんと巨人の世界に行ったと聞いて驚いた。
バースさん達を事前に連れてきていたことも含めて、全部一人で進めていたんだろう。
「アリスさん。どうですか?」
和さんが、私に声をかけた。
「あ!すみません。・・・はい。思い出したというか、少し前に過去のことを見直した時にも、あの男の人が私の山本梓としての人生の中に時々いました。
でも・・・ちゃんと話した記憶とかはほとんどなくて、正直ピンとはきてないのですが。」
どこか遠い記憶になってしまって、過去にあの男の人とどういう話をしたかとかは、まったく思い出せない。
だからなのか、自分のことだって認識がどこか薄くなってしまっていた。
「まぁ、それならミランダ達がその男から引き抜いた記憶は、証拠としても問題ないんじゃないかい。その男はどうするんだい?」
–ニャア(基本世界の人間なので、魔法媒体を抜いて体調が戻り次第、基本世界へは戻すつもりよ。)
「またブライアンに襲われる可能性はあるだろう?」
アンジェラさんが確認していく。
–ニャ(基本世界側の担当者には引き継ぐわ。魔法使いが関与している以上は、魔法使い側でも監視や保護の協力はするつもりよ。)
「で、その男が居たっていうアパートは?」
そういえば、以前イザベルが妖怪のハーフって聞いた時。
ミランダさんは、猫の妖怪って言ってたんだよね・・・
妖怪なのに、魔法世界側の立場でも動いてるんだ。
–ニャニャ(調べたところ、魔法世界の入口の一部になっている場所に建っていて、基本世界にも魔法世界にも、あの建物は存在しない状態だったわ。
一応魔法世界側から、トラップを張ってある。)
ならあの男の人のことは、後はミランダさんに任せることになるのかな。
「そうかい。教えてくれてありがとうさん。」
–ニャ
ミランダさんが机を下りて、窓から出ようとした時。
「ミランダさん。ちょっと。」
–ニャ?
和さんが椅子から立ち上がり、ミランダさんの乗った窓際へ向かう。
二人は窓際で何かを話している。
小声で交わされる会話だけが、夜風に紛れて消えていった。
「ひとまず昨日の件で、ブライアンというかフォーラスが、長女シャロンを探しているってことは、また何かしてくる可能性があるだろうし、こっちはこっちで気を付けるしかないね。」
ミランダさんと和さんは話し終え、ミランダさんは窓の外へ出て行った。
「スズちゃん。今日も会えないのかぁ・・・寂しい。」
「ねー・・・。」
「うーん・・・。」
口を出さないと言った手前、日向も秀人も和さんに向かって何も言わない。
けれど、二人の視線は和さんに向いている。
「「あだ!」」
アンジェラさんが、二人の頭を軽く叩く。
「とにかく、あんた達は風呂に行っておいで。」
「・・・はぁい。」
「分かったよー。」
「キュウ?」「キーキ」「キュ」
日向と秀人は、ウーノ達と一緒に階段に向かった。
私もお風呂に入ろうかなぁ?
でも静かなお湯に浸かるなら、みんなが出てからの方が良さそう。
午後の土煙で、まだ少し埃っぽい感じがするから、ゆっくり入りたいし。
「アンジェラはしばらく、ここにいられるのか?」
和さんは台所へ入りながら、アンジェラさんへ質問を投げかけた。
「それは私次第じゃないだろう?」
「・・・まぁ。そうなるのか。」
「いいんだよ?私はすぐに出かける用はいくらでもある。」
アンジェラさんは、ニヤニヤしながら返した。
「実際どうなのよ?そこがはっきりしないから、皆あんたと一緒にうじうじしてんのよ。」
「・・・・はい。すみません。」
イザベルもずっとイライラしてるもんね。
とはいえ、それは二人の問題だと思うんだけど・・・
「昨日も言った気がするけど、最初と同じなだけじゃないのかい?」
「・・・そう言われると、そうなんだけど。」
最初?
和さんとスズの最初?
「スズは、好きにしろって言ってるんだろう?」
「何よ。なら、カイルが勝手に決めればいいんじゃない。」
「・・・・いや。あの時はそれを押し通したんだけど、今になってもその状態が変わらないってことはさ・・・って考えると。」
「あぁ。愛想が尽きたって?」
なるほど。
和さんがそう感じるのも少し分かる気がする。
聞けば素直に返してくれるスズだけど、本当に欲しいスズの気持ちまでは、どこかあと一歩届かない時がある。
それで、嫌われてるのかもって感じる時もあった。
スズはいつも一歩後ろから、本人の答えを待ってくれることが多い。
それなら、その答えをスズしか持っていないなら、スズの答えはどこにあるんだろう?
スズはいつも、一歩後ろで答えを待つ。
でももし、その答えにスズの未来も含まれているのなら。
その答えを決めるのは、本当に和さんだけでいいんだろうか。
スズにとって、スズの先はどういうイメージなんだろ?
「なによ?アリス。あんたまで考え込んで。」
「え・・・いやぁ。えぇと。」
今喋っても、また何となくそう思った、って感じになってしまいそう。
台所からの温かい湯気に、コーヒーの香りが混ざり始める。
「うまく言えないんだけど。一生涯のイメージが無い時、先のことをどうやって考えるのかなぁ・・・っと。」
過去は勝手にできていくけど、未来はどうやって進むイメージなんだろう。
「んーそうねぇ。そういうのは圭とかに聞いた方が、イメージは近いかもしれないけれど・・・つまり、アリス的にはスズの将来には、カイルがいない感じがするってことかしら?」
「ややや!イザベル!そこまで言ってないよ。違います!和さん。」
「あははっ!」
和さんが、コーヒーポットを持って歩いて来た足が一瞬止まった。
アンジェラさんは笑っちゃってるし。
「というよりも、あんまりそれを考える機会が、少なかったんじゃないかなぁと。」
「面白いね。アリスは、どんな相手でも相手の視点から考えようとするのかな?」
どんな相手。
といわれると、幅が広いけれど。
「えぇとできそうな場合は、だけでしょうか?」
「確かに、長命の中でも度を抜いたスズの視点は、気になるだろうけれど、そんなの考えてもわかるもんじゃないだろう?」
確かに、想像もつかない。
基準も分からない。
基準が分からない以上、どうしても私は、自分の感覚を基準に考えてしまう。
「例えば、私にとっては数ヶ月前まで、人生は長くても80~100年ぐらいのイメージだったのに、ある日いきなり800~1000年と言われて、10倍に増えたんです。」
和さんが、静かにコーヒーを配ってくれた。
「私にとっては基準があまりに違い過ぎて、今でも、数年単位くらいでしか想像が追いつかないんです。」
「ふんふん?でもそれは終わりの目安に対するってことだね。」
アンジェラさんが拾ってくれた。
少し話がずれてしまったけれど。
「はい。あくまで“終わり”を基準にした話ですね。
だからもしも更に長いというか、終わりが分からない時、スズ的には考えても無駄ってことになりそうだなぁ・・・と。」
「その仮定でいくなら、答えはシンプルだね。」
ん?
シンプル?
「つまり、将来を前提に考える感覚が薄いってことだろ?」
その言葉に、部屋の空気が更に静かになった。
そっか。
考える機会が少ないとかじゃなくて、そもそも考えてない。
確かにそうかもしれない。
「だから押せば流される。でも、本人に聞いたところで答えは出ない。結構正解なんじゃないかい?」
「んな。大雑把な・・・・・・・・。」
和さんは、椅子に座りながら少し呆れた表情を見せたけれど、そのまま考え込んでしまった。
「生者が将来を考えるのは、生物としての本能からでは?」
ルーナさんが、静かにつぶやいた。
「あはははは!」
「は・・・・。」
「・・・た、確かに。」
「元も子もないわね。」
アンジェラさんの笑い声が響く。
ルーナさんは、ちょっとまずかった?って顔をしてる。
「・・・いや、一理どころか正論だねぇ。」
「はぁ。日向達がいなくて良かった。」
確かに生き物としての本能である、生存や繁殖。
それがあるから、人は将来について考える。
でもそれって結局、スズとの根本的な感覚の距離が、広がっただけって感じ。
いつまでも埋まらないものがあるなら、それはやっぱりどうしようもない?
もし、お互いの価値観を“違うもの”として受け入れるなら――
スズがスズの基準で死を選択しても、それは”どうしようもない”ことになってしまう。
ふと、時々目にしていた輪郭が薄くなるスズの姿が思い浮かぶ。
ある時。
ふと。
誰にも気が付かれずに――
「そういえば、シャロンお姉様はどこにいるんですか?」
あれ?
無意識に口からこぼれた。
その瞬間。
誰かの息をのむ声が聞こえた。
二人の反応に、急に胸の奥がざわつく。
「・・・アリス。それを知ってどうするんだい?」
さっきまで笑っていたアンジェラさんの表情が消えた。
和さんも驚いた様子で、私の方を見ている。
「私・・・今、なんて?」
シャロンお姉様?
なんて言ったんだっけ?
「カイル。」
「・・・いや、精神介入は・・・。」
え?
どうしてあんなこと言ったんだろう?
お姉様がどこにいるのか?
「ああ。そうか違う。一時的な命令じゃなかったのか。」
「アンジェラ?」
「ルーナ。ブライアンは、アリスに真名で命令したと言っていたね。
それは、シャロン・フォーラスを探していることについてだと。」
「え、・・・えぇ。『シャロンの居場所を聞け』、そう言ってたのは聞こえた。」
–シャロンの居場所を聞け
そうだ。
–ガタッ
「アリス?」
「居場所・・・を聞かなきゃ。」
誰に?
–3番目に聞いた方が早いだろう
そうだ。
「3番目・・・。」
頭の奥で、答えだけが浮かぶ。
「悪いけど、少し寝てもらうよ。」
その声と同時に、目の前が真っ暗になった。
–
「真名で命令した。それは確かなんだね?ルーナ。」
アンジェラが、倒れるアリスさんを床に着く前に受け止める。
「えぇ。それは確か。その子の魂の名前を、昨日の人間の男が口にしていた。
そして、シャロンの居場所を聞けと。そこまでは確かに聞こえた。」
「最後に、アリスは3番目とも言っていた。その対象にスズが含まれている、ということだろうけれど、知っている可能性の高い私達にも、命令は発動したということかもしれない。」
「それが正解なら、ある程度成功が成立しない限り、アリスさんに命令認識が残り続けることになる。」
確かにフォーラス家であるアリスさんの真名。
それによって、昨日は疲労していたということだろう。
魂の持つ名前は、生まれる度に少しずつ変わる。
だから今を生きるその存在にとって、真名は唯一になる。
それを普通に口にするだけなら、ほとんど意味を持たない。
けれど命令意思の上で、魔力、妖力、霊力や更には神の力などの”力”を含んで口にすれば、強い命令に変わる。
そして魂に刻まれた命令は、それを達成するかまたは死ぬまで残り続けることになる。
「気が付かなかったわ。なんで?なんで、こんなに時間が空いたの・・・?」
イザベルが、心配そうにアリスさんの傍に寄る。
「・・・それは、推測でしかないですが、さっきの話の中で不安感が出て、精神的に隙が生まれたのかもしれません・・・。」
生き物の本能としての違いは、今までの価値観の違いとはまた少し違う。
それに対して急に距離感を感じ、彼女にとって不安につながったのかもしれない。
いずれにしても、これは対応を考えないといけないだろうし・・・
スズにも相談した方が良いだろうな。
さっき玄関で話した時のあいつの言葉は、以前は俺がいる事を前提に考えていたということを肯定していた。
認めたくはないけれど、尚弥の言葉は正しかったことになる。
そしてアンジェラの言う通りなら、俺がここでもしも引いたら、多分あいつはただ昔に戻るだけ。
今俺は俺の基準で、勝手にあいつを含んでいる。
そしてあいつも、無意識にでも俺を含んでくれていたんなら、少しは変わっていたってことだろう。
それならやっぱり――あいつが待つだけなら、押す側になるしかないんだろうか。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




