↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
173/201

答え:不易を知って、流行の風新たに

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「っあ・・・はぁ・・・・。」


苦しい。


急に壁に飛ばされた。


それだけは分かった。

痛すぎて、悲鳴も出なかったけど。


ブライアンの「逃げろ」と言う声が頭に響き、軋む体を無視して、何も考えずに逃げた。

そうしてどうにか、いつもの場所に戻れば、ブライアンが立っていた。


「お疲れ。シャロンの居場所は掴めなかったけど、あの様子だと魔法世界に行っちゃってる感じだろうなぁ。」


立っていられず、路地裏の壁を背に座り込んだ。


「・・・・はぁ・・・あぁ。痛いんだ・・・、どうにかしてくれ。」

「はいはい。」


ブライアンが手を当てると、その部分が暖かくなった。

同時に、苦しかった胸の痛みが薄れていく。


「・・・はぁ。もうあの女の面倒を見なくていいんだろ・・・?なぁ。そろそろ、俺を魔法使いにしてくれよ。」


胸の痛みが薄れ、やっと声を絞り出せるようになった。

次いつ会いに来るかも分からない男に、何度も言い続けてることを伝える。


「もう少しだけ、君がここに居てくれた方が助かるんだよね。次、上手く行ったら、連れて行ってあげるよ。」


「・・・・本当か?本当に次連れて行ってくれるのか?」


ブライアンは少し笑う。


「うん。約束するよ。とにかく、いつもの場所で少し休みなよ。」


「・・・・分かった。待ってるからな。」


ブライアンが用意してくれた、いつもの場所に足を向ける。

そこは居住地のアパートの一室だというのに、隣人の姿を見たこともなければ、音も聞いたことがない。


だが、今はその方が助かる。


ボロボロな姿のまま、アパートに戻る。

ここでは誰も、何も聞かない。

壁の向こうに人がいる気配すらない。


「・・・・はぁ。・・・・やっと。やっとなれる。」


それだけの為に、ここまできたんだ。

今さら引き返す気はない。


–


「・・・ここは?」


扉から入ってきた男の姿が見えた。


まだ距離のある通路を、男へ向かって歩き出した。


–パタン


扉を閉める音。

男は、中へと足を進め始めた。


よく分からない場所だというのに、戻ろうともしないのは少し気になる。


「どこだ?ブライアンか?」


ブライアン。

その名前が聞こえ、人違いではないことを確信する。


小林建一(こばやし けんいち)。


昨日、相談所に入ってきた人間に間違いないだろう。

その姿から、圭に調べてもらい、男の経歴を追った。


公的な住所は見つからない。

それでも昨日の夜、駅やコンビニの防犯カメラを繋いでいくと、男が消えたアパートが浮かび上がった。


「初めまして。」


「・・・お前、誰だ?」


小林建一は、進んでいた足を止めた。


「私は、スズって呼ばれることが今は多い。ブライアンの場合はwalkerとか3番目とかだろうか。」


「ここは何なんだ?お前はブライアンの使いか?」


白い通路の中で、男は困惑した表情を浮かべた。


「違うよ。逃げたいのなら、あなたの後ろにある扉へ逃げればいい。」

「は?」


男は、一歩下がった。


「だけど、忠告しておく。このまま今の状態を続ければ、近い内にあなたは死ぬ可能性があるだろうね。」


「・・・どういう意味だ?」


昨日。

アンジェラから様子を聞いた時、気になった事。

基本世界の人間に見える男であろうと、なぜ相談所でブライアンの遠隔操作魔法が維持できていたのか。


その条件をくぐり抜けるとすれば、イザベルのように体自体が本質的に違うものか、または作り替えている状態である可能性。


「今この場所に入って、体の調子はどうだろうか?」


「そ、ういえば・・・?体が軽い。頭痛も・・・ない。どういうことだ?」


世界の座標からずれたこの通路では、外部からの魔法干渉は基本的に届かない。

男が、外部からブライアンの魔力を受けているのだとしたら、その媒体の場所は――


「外側に媒体がないのなら、お前の内側に魔法を受ける媒体が、埋め込まれている可能性があるのだろう。」


歩み寄り、男との距離が数メートルとなったところで、足を止めた。


「・・・俺の中に何かが埋め込まれてる?」

「恐らくは。」


見たところ、荷物は持ってない。

身に付けているものは洋服だけ。

それにフォーラスなら、そんな不安定な設置方法は取らないだろう。


「そ、そんなの知らん!と、とにかくブライアンが迎えに来るのをっ・・・。」

「生き残れることを祈るよ。」


男が後ろへ振り返り、もと来た道に戻ろうとした。


「お、お前は、なんなんだ?魔法使いか・・・・?」

「違う。」


「俺は・・・魔法使いになりたいんだ・・・。あの男は、頼みを聞けば・・・ならせてくれると・・・。」


予想はつく。

颯太もそうだったように、基本世界の人間は魔法使いと出会った時。

その内の多くの人間は、魔法というものを羨ましいと欲することが多い。


「基本世界・・・普通の人間では、魔法使いにはなれない。」


「・・・・・・・・う・・・嘘だ。」

「普通の人間の体には魔力は馴染まない。

だから、媒体からの魔力を受けて、体に悪影響が出ているんだろう。

それをそのまま放置するだけでも、いずれ体に限界はくる。」


こちらに背を向けたまま、男は手の拳を握り、震わせる。


「・・・・嘘だ。・・・・・嘘だ!」

「そう思うなら、ここを出てブライアンを待てばいい。

出た瞬間、再び魔力の影響を受ける。体は重くなるし、頭痛は戻ってくる。」


「!!」


男は勢いよく、こちらを振り返った。


「嘘だ!!!!嘘だ!嘘だ!嘘だ!!!・・・・・・・・・・・・・嘘だ。」


「ここまでの話が聞きたい。それだけでいい。その後に、媒体の確認と除去ができるか手配する。」


男の目は、光を落とした硝子みたいに濁っていた。

絶望したように、暗い影を落としている。


「・・・・俺は、魔法使いになれない・・・?」

「なれないよ。現時点では魔法使いの方でも、その方法は未だ見つかっていない。」


こちらを襲ってくる気力もなさそうに見える。


「・・・・・・それなら、俺は・・・何のために・・・・。」


男は支えを失ったように、床へ崩れ落ちた。


「全てを戻すことはできないが、恐らく体に埋め込まれていると思われる媒体は、悪影響でしかない。それを取り出して、元の生活に戻ることをおすすめする。」


少しだけ、足に力を入れて踏み込んだ。

近寄った男の首元に手をかける。


暴れる気配はない。


「・・・・・・・・・・そんな・・・・今さら・・・・・。」

「一度、落ち着いて整理するといい。今は眠ってもらう。」


男の意識がなくなったことを確認して、男の上半身を背中に乗せた。

身長差があるので、足を引きずってしまうのは仕方ない。


遠くない距離を戻り、魔法世界の病院に入った。

男に言った通り後からの対応でもいいけれど、下手に暴れられても面倒だし、先に媒体の確認をしておいた方が良いだろう。


先に話をつけておいたので、待っていた看護師に引き渡し、男を見送る。

明日にでも、話が聞ければいいけれど。


そして一度相談所へ戻り、バースと合流しようと地上へ上がった。


地上へ上がると、日は落ちていた。

昨日のことからも、玄関や芝生が綺麗に整っていることは分かるけれど、こんなに広い範囲だっただろうか?


少し気になったけれど、バースの方へ向かった。


「今から行ける?」

「うむ。巨人の世界だったな。」


バーベキューコンロが洗われて、乾かしている状態になっている。


「和がもしかして来た?」

「さっきな。夕食を食べたばかりだ。」


「……。」


バース達は、すぐに戻すつもりだったし、特に伝えてない。

でも、これは一度説明をしておいた方が良いだろうか。


「準備して、一階に入ってきて。」


先に戻った。

玄関の扉を開くと、階段前に和が立っていた。


「…ただいま。」

「おかえり。」


フロアへ足を上げる。


「バース達の面倒を見てくれてありがとう。夜の間に元の世界に戻すよ。」

「だから言わなかった?」


和は、神妙な表情で腕を組んでいる。


「ああ。アリス達の方がバタついてたし、こっちは放っておいても問題ないと思った。」


「・・・昨日のことについて、俺も話を聞いたよ。」

「そうか。お疲れ。和の方の話も、明日にでも少し聞かせてもらえると助かる。」

「今から、どこか出かけるのか?」


後ろから、バースが歩いてくる音が聞こえる。


「怪異の世界から入ってきた者達の話が聞けそうだから、巨人の世界に行ってくる。」


「・・・バースといい、アンジェラといい。俺はもうお役御免か。」


和は力を抜くように、腕を下した。


「お前は今、お前の考えるべきことを考えればいい。それを邪魔するつもりはない。」

「どういう意味だ。」


一番シンプルな理由を伝えたつもりだった。

昨日ナオと話したことを思い出す。


「ここに居続ける必要がないとお前が判断すれば、その為にアリスや日向達の環境整理はするべきだとは思ってるけれど、それはお前の判断次第でいい。」


「それは、俺が出て行った後に向けた状況整理ってことだよな。」


和が、ここを出て行くことをどう思うか。


「そうだけど。その可能性も含めた対応を進めることは、お前の選択に対して何か意図があるわけじゃない。」


「・・・俺には、出て行けって言ってるのと同じに見える。」

「そんなつもりはない。あくまで可能性への対処だけ。」


和が頭をかく。


「それが、お前の意思にしか・・・はぁ。」


溜息をつき、続けた。


「お前は俺がいない前提で進めるのか?」


胸の奥を掴まれたみたいに、一瞬息が止まった。


「…そうするべきだと思ってる。」

「思ってる?」


「それが、できてなかったから今環境を見直してる。…だから、お前はお前の好きにすればいい。」

「できなかった。って・・・お前、分かって言ってる?」


さっきまでの渋い表情から、少し力が抜けたように見える。

何か変なことを言ったのだろうか。


「?」


「・・・俺は、お前の意思も知りたいんだけどな。」


私がどう思っているのか。

…それには未だに、言葉が見つからない。


答えに詰まっていると――


「そんなの簡単だろうに?何を長々と話しているんだ。お前ら家族なんだろう?

なら、一緒がいいに決まっているではないか。」


バースは待ちくたびれたのか、人の姿で後ろから私の頭に顎を乗せてきた。


一緒がいい。

でも私は、ずっとそのままでいる未来を、どこか否定している。


「お前がどこへ進みたいのか、それはお前の判断を尊重している。

そこになぜ私の意思が必要になる?」


「・・・はぁ。ちょっと分かったよ。今話すべきことじゃないな。もう一度時間をくれ。」

「よし!では行くぞ!」


「…分かった。」


どちらに返したのかも変わらない返事をして、バースと地下への階段に進んだ。


私の意思。


それは、やっぱり好きにすればいい。という言葉になる気がする。

だが、同時にここに和が残ることが、非生産的にも感じている。

そういう意味だと、出て行って欲しいという答えになるのだろうか。


しかし、それを口にしようとするとどこか体が冷たく感じる。

これが感情なのか、ただの習慣なのかは分からない。


でも、この感情も一時的なものだ。


なら――


バースは前を向いたまま、小さく笑った。


「お前の答えは、いつも遅いな。」


それは、返事を返すスピードの話じゃないだろう。


「お前の答えは、早いな。」


通路を進みながら、バースは先へ先へ進んで行く。


「儂は考えることが苦手だが、それでも考えてもしょうがない時は、そのまま行動してしまうな。」

「それも一つの進み方だろうな。」


直感的な答えは、無意識な経験則や潜在的な危機察知の答えに繋がることも多い。


「儂は何も考えずに、お前に手を貸しているわけじゃないぞ?」

「肉以外のメリットはないんじゃないか?」


バースが振り返る。


「儂はバカだが、人を見る目は自信があるぞ。」


「…それは喜んでおけばいいのか?」


ニヤッと笑う。


「左様。喜んでおけ。お前は良い奴だからな。」


「…どうも。」


出口の扉が近づく。


「儂はお前の答えを信じている。もしもお前ほどの奴が、考えても答えが出ないなら。」


「……。」

「たまには直感で出た答えに乗るのも良かろう?」


直感。

バースは直感で行動することの方が多いだろうな。


–カチャ


「失礼。」


くぐった扉よりも大きなレンガが積み重なる景色が広がり、再び巨人の世界へ足を踏み入れた。

大きな振動が響く中を、前と同じ道に進む。


昔はどの世界も、入って話をするまでに何日もかかることもあれば、途中で死ぬことも多かった。

他の世界の話をしたところで、信じない者の方が多く。

話を最後まで聞いて貰えることも少なかった。


それが今では、怪我や死のリスクは残るものの、話し合いや交渉ができる場面は確実に増えた。

それはどの世界においても変化する速さは違えど、前に進んでいっている証拠だろう。


「来たな。」


同じように階段を上がった先の扉を開く。

前回話し合いの場で、一番手前で話しかけてきたトレーが、すぐにこちらに気が付いた。


「行こうか。乗ってくれ。」


差し出された手に、バースと一緒に乗った。


「ふむ。やはりこういう景色は慣れないな。」


手のひらから、トレーのポケットに入り、トレーが歩き始めた。

移動していく景色を見渡す。


「ははは。すみません。こちらに来てもらってるので、すぐ着くよ。」


バースの声が、巨人であるトレーの耳にも届いたらしい。


あまりに大きすぎると、地面を歩いてもあまり周りの様子は見えない。

けれど、こうして巨人の視点から見れば、その景色は普通の建物の中の様子と同じ。


大きな窓からは大きな木や鳥の姿。

そういえば昔、一度鳥に攫われて、雛鳥の餌にされたことがあったな。


歩く振動で、ポケットの中へ滑り込んだ。


「ここです。」


歩いている振動が落ち着き、ポケットから顔を出すと、正面には扉。

トレーは、扉を開き中へ入った。


すると正面のテーブルの上には、まるで子供向けの人形の家がいくつか置いてあった。


「中に?」

「えぇ。ひとまずはこちらに話したエルフの方々。こちらに妖怪がいます。

あっちはまた後で移動の時に。」


左のテーブルの上にある家にエルフ。

右に妖怪。


それ以外にも、別種族がいるのか?

少し離れた、家もいくつか並んでいる。


トレーにテーブルへおろしてもらうと、家の窓からこちらを覗く視線が目に入る。

まずは一つ一つ話を聞いていくしかないだろう。


「バース。極力喧嘩は売らないように、そしてできるだけ買わないように頼む。」

「分かった分かった。」


まずはエルフから。

左に足を向けて進み始めた。


妖怪の世界から入ってきたとなれば、エルフの世界からの逃亡者などである可能性もある。

妖怪よりも、精霊や妖精寄りである彼らは、やや欲求に正直すぎる部分はあるけれど、生き物としての秩序を持って生きている。

だが、魔法使いの倍以上を生きる彼らは、エルフ内でも時代の進み方がかなり極端に分かれている。


過去を生きる者。

そして今を生きる者。


その価値観は大きく違う。

それが内部のトラブルとなる事も多い。


変わらないものを守るのか。

それとも、状況に合わせて変わるのか。


そこに普遍的に正しい答えがないのなら。


少し溜息をついて、扉のドアノブに手をかけた。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。