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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
172/201

疑問:そのまま。それじゃあダメなのかな?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

翌朝。

階下から暖かい空気が流れてきた。

三階へ降りると、和さんが台所に立っている。


いつもの風景。


ただそれだけのことなのに、ホッとする自分がいた。


「和さん!戻って来てたんですね!おかえりなさい。」

「アリスさん。おはようございます。昨日のことはアンジェラから少し聞きました。

本当にすみませんでした。」


嬉しい気持ちを隠さずに声をかけると、和さんが顔を上げた。

台所から出てきて、急に頭を下げる和さんに驚いてしまった。


「いえいえいえいえ!和さんは悪くないですよ!怪我はありませんでしたか?」

「いえ・・・。フォーラスに呼ばれた時点で、もっと考慮するべきだったんです。

考えが足りず、運よくアンジェラが帰ってきただけだと聞いて、怪我が無くて良かったです。」


確かに、ここ最近和さんの様子はいつもと違っておかしい。

そんな中で、昨日のことが起きてしまった。

それは悪いことが重なった結果でもあるのだけれど、私には昨日から続いている二人のぎこちなさの方が気になってしまった。


「・・・あの。プライベートなことだとは分かっているんですが・・・それよりもスズと落ち着いてお話して頂けたらな・・・って、思います。」


「・・・そうですね。そっちも、迷惑をかけていることは分かってるので、申し訳ないです。」


申し訳ない表情で顔を上げた和さんの視線が、和室の方に向いた。


あれ?

そういえば、スズは?

地下に戻ったのかな?


「実はまだ、ろくに話もできないまま、あいつは出社していきまして・・・・。

早めに対応するようには・・・努力します。」


あぁ・・・

スズらしいといえば、スズらしいけど。


言いたいことはあるよね。


「でも、スズが仕事に行ったのも、なんとなく分かる気がします。」


「・・・?」


スズは“仕事が好き”というより、“いつも通り”という形を崩したくないのかもしれない。

毎朝同じ場所へ戻る渡り鳥みたいに。

いつものように朝が来るように、いつものように仕事に行って、ここへ帰って来る。

それが崩れると、何をしていいか分からなくなる気がして。


「いつも通り過ごしていることに安心する。って感じが・・・。」


そして、それが日向や秀人、私達の居場所を守ることに繋がっているだろうから。

スズはきっとそこは簡単には崩さない気がする。


「ただ、少し抱え込み過ぎにも見えて・・・だから、たまには休まない?って思っちゃうんですけどね。」


「全部切り捨てろとは言うつもりはないんですけど、もう少し割り切って欲しいというのは、僕のわがままですかね・・・。」


ここまで、色々な人がスズに話すのを横で聞いていて思った。

スズは平等に扱うからこそ、明確な理由がない限りほとんど切り捨てない。


ルーナさんの質問を最初は一刀両断したけれど、なんだかんだでちゃんと答えてくれたし。


「完全に合理的じゃないスズだから、拾ってくれてる気がします・・・。

それで救われた人もきっといると思うと、それが間違ってるとは・・・あまり思えないんです。

でも、今は少し無理してる感じもするので、えーと・・・。」


和さんを見上げる。


「そういうのを調整してるのが、和さんや日向達だなぁって思ってます。」


「・・・。」


なんだかんだで、色々と不器用なスズ。

そこに、日向達のわがままを『しょうがない』と受け入れて、気付けば自然に調整してくれている和さんがいる。

だから全部が、なんとか回っているように見える。


「スズって、相手に合わせて全部を切り替えてる訳じゃないですよね。」

「まぁそうですね。」


「ルーナさんとの話を聞いて、その考え方や判断基準を、完全に一致させる必要があるのかって、ちょっと気になったんです。」


足元で、影が動いた気がした。


「基本世界の人間でも、家族や友達、仕事仲間って、それぞれ違う人間関係があるので。

スズはスズなりに、死神のことをちゃんと理解して、ガルシアさんやバレンさん、エルさんとの関係を作ってるのかなって。それじゃあダメなのかなぁ・・・と・・・えー。」


なんか、勢いのままに話し過ぎた気がする。


「えーと、・・・はい。私は個人的にちょこっとだけそう思いました!走ってきますー。」


和さんの反応を待たずに、勢いのまま階段を駆け下りて行った。

そのせいで、最後の言葉までは聞き取れなかった。


ちょっと思ったことを口にしていたら、どんどん出てきてしまった。


うわわわぁぁぁ。


こんな感覚的な説明だと、絶対に和さんを困らせたよね。

そりゃあ、スズみたいに可能性とか確証とか、具体的な説明なんて私には絶対できないけど!


うわぁぁぁぁ。


勢いのままに庭を走り出した。


「え?あれ!?」


半周したところで、相談所の脇にある小屋の前を通り過ぎようとした時。

そこから出てきた姿に、見覚えがあった。


「アリスー!」

「やほやほー。」


大きさは決して小さくはないけど、子供のような声。


「ハウ!デンだー!来てたの!?」


フェンリルのバースの子供。

前にフィフさんのところで過ごすことになった時に、精霊の世界へは連れて行けないってことになって、お別れになってしまっていたままだった。


「ちょっと今日用があるって、ついて来たー。」

「わーい!おいかけっこするー?」


ってことは、バースもいるのかな?


左奥の小屋を見ると、中に大きな白い毛の塊が見えた。


「ここには、フェンリルもいるんだ。」


ルーナさんが少し驚いた表情で、私の影から出てきた。


「あ。ルーナさんって言うんだよ。襲っちゃダメだよ?」


前にここにいた時。

たまに来るお客様に、ちょっかいかけていいかって何度も聞いてきたりすることもあるから、念の為ね。


「えーそっかー?」

「デンだよー。」


「ルーナ。よろしく。」


ルーナさんは、少しだけ恐る恐るとハウの頭を撫でた。


「アリス。」

「ん?」


「さっきアリスが言ってたこと、ちょっとだけ納得した。」

「え?・・・まぁ聞いてましたよね。」


ちょっと恥ずかしくなって、投げ出してしまったけど・・・


「でも、全部が当てはまるとも限らないから、私ももっと知りたいと思った。」


確かに、死神とスズのことがパッと出てきたから言ったけれど、それが全部に当てはまるかは分からない。


「そうだよね・・・。私も分かってないことが、山のようにあるから、私ももっと色々考えてみるね。」


精霊のことや、昨日のこと。

それぞれ別々の問題だと思うけど、気を付けるべきことも含めて、もっとちゃんと知っていった方がきっといい。


「アリスさん。ちょっと攻撃してみましょうか。」


午後は和さんと庭に出て、魔法の練習。


「こ、攻撃ですか?」

「はい。発動は徐々に慣れてきているので、それを目的の方向に飛ばすイメージで投げましょう。」


和さんが小さな火の玉を出し、それを真上へ投げ飛ばした。

火の玉は勢いよく上がって、相談所の七階の高さを少し過ぎたあたりで、空の中にふわっと消えた。


投げ飛ばす感じ?


「ぼおぼお。えい!」


無事に小さく灯った火を、ボールを投げるようなイメージで上に振り上げた。


–ぽと


「・・・・。」


火は小さな弧を描いて、地面に落ちてしまった。


「わわ。」


落ちた火は、芝生を小さく黒く焦がした。


「イメージはちゃんとできてますよ。ぶつける対象がハッキリしてないから、弱くなってしまうんだと思うので、僕に向かって投げてみましょうか。」


う。

ちょっと怖いけど、私の魔法が和さんに当たるはずもないし、やってみるしかない。


「ぼおぼお。ったあ!」


さっきより勢いよく飛んだけれど、数メートル先に立っている和さんの足元に落ちた。


「弱いです。本当にぶつける気で。」


「ぼおぼお。っえい!!」


和さんの右にずれて落ちた。

次は左にずれた。


「なんだいなんだい?そんな火なら、いくらカイルに当てたところで、ビクともしないよ。燃えろ。焼け。」


笑いながら、アンジェラさんが庭に出てきたと思った途端。

頭の上からボールくらいの大きな火が、ジャグリングの玉のように出てきて、和さんの方に向かっていった。


「!!和さん!」


–ボボボボボボッ!!!!


和さんは、火の雨に飲み込まれ大きな煙が立つ。


「大丈夫よ。」


前に出ようとした右足の前に、イザベルが出てきた。


「ほら御覧な。」


「・・・アンジェラ。邪魔すんな。」


煙の中から、和さんは無傷のまま姿を現した。


よ、良かった・・・

びっくりした。


「可愛い練習してるのが見えて、ついね。」


攻撃。


それはやっぱり、私が出すような小さな灯火のような火じゃなかった。

あれが当たれば、きっと大火傷になるし、最悪・・・


少し前の火傷をしたスズの姿を思い出す。

その光景に、少し胸が冷えた。


魔法使いと庭で戦っているのを、三階から見ていた時とは違う。

同じ空間にいるだけで、こんなに感じ方が違うんだ。


知らない空気。


「まぁ、でもあれくらいでも大丈夫なので・・・。」


和さんと目が合う。


「怖いですか?」


「・・・ちょっと・・・いえ、すごく・・・ごめんなさい。」


あまい事を言ってるのは分かる。

ブライアンや他の魔法使いと向き合えば、こんな攻撃どころじゃない。


「いえ、それが平和だってことだと思います。

でも、身を守る為にも、どういうものか知っておいた方がいいので、ちょっと離れててください。

少し慣れることからはじめましょう。・・・アンジェラ、ちょっと付き合え。」


和さんが、アンジェラさんの方に体を向けた。


「お?良いのかい?まだ言い足りないことがあったのを、思い出したところだよ。」

「今回は俺に非がある。聞くよ。」


アンジェラさんが、構えるように姿勢を落とす。


えええ?!


急いで離れた。

和さんは、私が離れたことを確認するように、一瞬だけ視線を向けた。


すぐに視線が戻ると同時に、和さんの周りが急に光る。


料理をする時と同じ。

丸い光がいくつも現れる。


つまり、設置魔法?


と同時に、アンジェラさんは、さっきと同じジャグリングのような炎。

でも大きさはさっきの倍ある。


「なんでフォーラスと聞いた瞬間に、用心をしなかった?余裕がない?本当かい?」


降り注ぎ始める火の雨。

あたりの空気まで燃やすような熱い風が吹き上げる。


それは、和さんに当たる直前。

蒸発するように煙に変わる。


「・・・ずっと対応方法が見つからないまま。あちらからのちょっかいばかり。」


煙の中から、空気を切るような風が吹く。


瞬間。


アンジェラさんの目の前で、大きな破裂音が響く。


「あいつはいつまで経っても、都度の防御対応ばかり。無傷で済むはずもない。」


目で追えない。

重なる音だけが、二人の発動する魔法の数を伝えてくる。


アンジェラさんと和さんの魔法がいくつもぶつかる。


その度に吹き上げる風が、私の髪を後ろへ流す。


「んなの、いい加減にしろってんだ!」


アンジェラさんの火の玉の嵐は降り続く中、更にアンジェラさんの声が響く。


「走れ。貫け。」


その吹き荒れる蒸気の中。


稲妻が走った。


「は!だから、とどめでも差す気だったかい?」


稲妻は和さんに届く前に。


–パシンッ!


歪んだ?

跳ね上がるように光は上空を駆け抜ける。


和さんからの風。

アンジェラさんの炎。

その中をいくつもの閃光が混ざる。


光と炎と風が重なって、もうどちらの魔法なのか見分けがつかない。


魔法同士が、重なるようにぶつかる。

土煙が竜巻のように巻き上がり始めた。


「当たり前だろ!一人でもやれれば良いと思ったよ!」


大丈夫?!

これって大丈夫!?


足元のイザベルは、それを気にする様子もなくただ眺めてる。


「で?いつもの、冷静さはどこへやら?」


アンジェラさんの声は、笑っているようで少しだけ低い。


土煙で二人の姿が、見えづらい。

大きな轟音が地震のように響く。


地上に現れた台風。


再び、いくつもの閃光が空に向かって走っていく。


「振り回される身にもなってみろ!毎回毎回あいつは怪我して帰って来て!」


和さんの怒鳴り声は、怒りというより、押し潰されそうな悲鳴に近かった。


–ぶわっ


煙が割れるように、風が駆ける。

熱い。


「混ぜるんじゃないよ!同じ機会があれば、私だってそうするさ!燃え滾れ。」


アンジェラさんの頭上に、私の体よりも大きな火の玉が現れた。

それはまるで小さな太陽。


「ただ、あんたの優先順位を見落とすな!って言ってんだよ!」


大きな嵐の火は、和さんに向かって弾かれるように跳ぶ。


本当に!?

これって本当に大丈夫!?


嵐の火が土煙の風を燃やす。

さらに大きな火の竜巻へと姿を変えた。


距離のある私の場所にも、焦がすような熱風が吹き荒れる。


その時。


火の竜巻が――割れた。


「んな俺が悪いことは分かった!分かってる!もう二度としねぇよ!」


和さんの魔法が走り、一刀両断するように火の竜巻が縦に割れた。


真ん中に氷の柱が立ち上がる。

熱風から熱い水蒸気に変わった。


「でもっ・・・・俺には、先が見えない!」


聞いたことがない、和さんの大きな叫び声が響く。


一瞬。


目の前が真っ白になった。

別の場所から大きな稲妻の音。


–ゴォォォォォォォォォン!!!!


い、隕石!?


「ええええ?!」


何!?

何があったの!?


「あ。ちょ。」

「バース!?待て!」


アンジェラさんと和さんの焦った声。


土煙を吹き飛ばすような大量の風が吹き流れる。


「なんじゃい?混ざりたかったんだが?」


相談所の左奥から、白い大きな影が現れた。


「フェンリル?」

「そう。って来てたのか。聞いてないぞ。」


いきなり音が消え、耳鳴りが頭に響く。


轟音も光も消えた。


やっと土煙も落ち着いた間から、アンジェラさんと和さんの姿が見えた。


お、終わった?


「楽しそうだったんでな、すまん?」

「また、珍しいのがいるねぇ。神獣が混ざったら、相談所の庭が壊れるどころじゃ済まないよ。」

「そうなんです。ここでは、できるだけ止めて下さい・・・。後片付けが大変です。」


バースは、少し不貞腐れたように、腰を下ろした。


「うむ・・・。」

「まぁストレス発散にはなったね。」


アンジェラさんは、スッキリした顔をしている。


その奥の玄関から日向と秀人が顔を出す。

颯太君まで出てきた。


「すげぇぇぇぇ!!!魔法すげぇぇぇ!」

「わぁ。アンジェラと和、喧嘩ぁ・・・?」

「仲直りできる・・・?」


「いつものことだよ!心配はいらないよ。うじうじ話を聞いてたのさ。」

「・・・はぁ。喧嘩じゃないよ。ちょっと実演するつもりだったんだけど・・・。」


でも完全にノッてましたよね?

少しだけ和さんもスッキリして見える。


「まぁ空気は分かったんじゃないかしら?」


イザベルが、やっと立ち上がった。


「・・・空気はね。何してるかはサッパリだったけど。」


和さんが近づいてきた。


「ま、まぁ。ちょっとやり過ぎたとは思いますが、実際はこんな感じです。解説は改めてしますね。」

「お、お願いします。」


こんな魔法から、もしも逃げるだけだったとしても、逃げられるイメージがサッパリ思い浮かばない。

そして最後に響いた和さんの言葉が耳に残った。


先が見えない。


こんなに凄い魔法が使えても。

分からないことやできないことがどうしてもある。


それでも、私から見ればやっぱり凄いし。

日向達も、和さんがいなくなるのは怖い。


ずっとそのままでいられたらいいのにって、つい思ってしまう。


みんながいて。

いつもみたいに朝が来て。

また同じようにここへ帰ってきて。


それだけで、いいんじゃないかって。

でもきっと――和さんは、それじゃ駄目なんだろうな。


……そのままじゃ、駄目なのかな。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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