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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
171/201

答え:近くて見えぬは睫なら

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

ん。


誰かの話し声。


「それは悪かった。ただ・・・。いや悪かったと思ってる。」

「悩んでることを責めてるわけじゃない。それならそれで、僕でもアンジェラさんでもいいから、とにかく連絡を――」


和と尚弥の声が、ぼんやり耳に届く。


「ごめん。うるさかったよね。」


薄暗い。


小さな明かりの中で、ナオの顔が視界に入った。

顔に上げた左手は、包帯が巻かれている。


「…ん。和が帰ってきたのか。」

「今帰った。大丈夫か?」


「…問題ない。」


和と尚弥の声以外、部屋は静まり返っていた。

頭の上に見える窓の外は真っ暗。

どうやら今は夜中らしい。


体の状況は、目で一つ一つ見ないと確認のしようがないけれど、ナオがいるから大丈夫か。


それより、まずは――


「アリス達は?」

「寝てるよ。まだ真夜中だよ。」


ここは、三階か。


暗い明かりの中、左下に台所が見えた。

今は和室の角にある小さな明かりだけ。


「怪我は?」

「日向と秀人は少し擦り傷があっただけ。アリスさんは疲労してたけど、すぐ休んで貰ったし、明日の朝にもう一度診るよ。」


この状況から見ても、怪我をしたのは私だけということか。


「…ん。ありがとう。」

「玄関もそのまんまで、一体何があったんだ?」


布団の足元側から、和が様子を窺うように顔を出した。


とはいえ、私もちゃんとした状況は聞けてないままだから、答えようがないのだけれど。

帰ってきたばかりの和には、少しでも分かる範囲で説明をした方がいいだろう。


「…私の分かっている範囲にはなるけれど、夕方会社から出て――」

「スズ待って。和。明日にしよう。スズはまだ寝てた方が良い。」

「っ・・・。悪い。帰ってきたばかりで、状況が掴めなくて。」


和が立ち上がる。


「いや…問題ないよ。少し下で話そうか。」


布団から体を起こそうとして、尚弥に止められる。


「待て待って。ダメ。ドクターストップ。」

「悪かった。明日でいい。」


薄暗い灯りは、立ち上がった和の表情までは照らしてくれなかった。

それでも、声がどこか焦って聞こえる。


「和。」

「いいって言ってるだろ。尚弥の言う通り寝てろ!」


離れていく姿を、なんとなく視線だけ追いかけた。


「もー。大声出さないでよ。」


「・・・悪かった。」


和は階段を上がって行く。


「・・・はぁ。本当に二人ともどうしたの?ひとまずスズは横になって。」


尚弥も眠そうな顔。

寝ていたところに、和が帰ってきたのだろうか。


「いや。特には。」

「さすがに無理があると思うよ。痛いところはある?」


これもどう説明するべきだろうか。

ひとまずそれが答えられない理由として、感覚が無いことを伝えるしかない。


尚弥は、先日から違和感があるとは言っていた。

だからか、大きく驚きはしなかった。

代わりに、深いため息を吐いた。


「・・・はぁぁぁぁぁぁぁ・・・・あー・・・なるほどね。それで喧嘩になったと。」

「喧嘩になるほどの言い争いはしてないけれど、困らせたとは思う。」


「寝てたから、勝手に一通り確認はしたけれど、本人も気がつけないんじゃ。明日もう一度確認だねぇ。」

「ごめん。」


尚弥は角にある明かりを消し、隣の布団に潜り込んだ。


「スズ・・・。和が、このまま出て行ってもいいの?」

「それが和の判断なら。」


「どうだかねー。スズはそれでいいの?」

「私は和の判断に任せる。」


それを止める理由はない。


「・・・スズ。止めるって選択肢だってあるんだよ?」

「止める理由が無い。」


尚弥のため息が聞こえる。


「本当に?本当にスズはそれでいいの?」

「危険な選択ではない以上、人の選択に口を挟むつもりはないよ。」


「和がそれを望んでいなくても?」


「…望んでいない選択なら、考える時間が必要だろう。」


個人の迷いがあるのなら、それは本人にしか答えは分からない。

手伝えるなら、手を貸すこともできるけれど、それを望んでいないのであれば、時間に任せるしかない。


「それは、確かに和に聞かないと分からないだろうけれど、多分スズにしか手伝えないことだよ。」


「…私は、今和に手を貸すべきことが何なのかよく分かってない。」


そもそも、今の和に手を貸すべきなのかどうかも。


「スズが、和が出て行くことをどう思ってるか、伝えてみたら分かるかもよ?」


和が出て行くことをどう思ってる?


私が?


どう思ってるんだろうか。

彼が次に進もうとすることは、良いことだと思う。

クラーレンのように、人から外れて永遠を望む選択よりも遥かに。


魔法使いとして有能な和なら、魔法世界の未来に向けた新たな一歩を進んでいく上で、望まれる立場は数多くあるだろう。

それは多くの魔法使いも認めている。


それでも。


和が、あの時。

思い出で終わる気もないと言った時――私は、どう思ったんだろうか。


あれも和の一つの選択だった。


寝息が聞こえてきた。

考え込んでいたら、ナオは寝入ったようだ。


ここ数日、時間はあったはずなのに、どこかゆっくり考えられなかった。

その間も、精霊の世界にアリスと和が連れて行かれたり、今日もリュースがちょっかい出してきたりと、落ち着かない状態が続いている。

怪異の世界のことも圭達に任せてしまっているし、どれもこれも中途半端になっていることは分かってる。


今の優先順位は、アリスの安全確保。

そして、できるだけ平行に、攫われた者達の確認。

地下については、美弥に圭達以外を入れないように頼んでおいたし。


ひとまず明日は、今日の襲撃についての話を聞いて、状況を整理するとして。


…だが、そこに和がいたら、和はおそらく出て行くかどうか、その選択を変える可能性がある。


何度進もうとしても、最後には同じ壁の前へ戻ってくる。


邪魔はしたくない。


もし隣にいなくても、大事な存在であることに変わりはないのだから。


–


四階へ向かう階段を上がると、個別部屋の扉が開いた。

不機嫌そうなアンジェラが顔を出す。


「…なんだい。遅いお帰りだねぇ。」

「悪かった。色々面倒かけた。」


「はぁ。日向達が、やっと泣き疲れて眠ったところなんだ。上で少し話そうかね。」

「いや、明日でいいだろ。お前も眠そうだ。」


明らかに眠そうなのは、どう見ても分かる。

朝が弱いアンジェラは、いつも凄まじく不機嫌に起きてくる。


「だから今言いたい事言うんだよ。寝たら忘れるからね。」


「・・・分かったよ。」


言い訳なのは分かってる。

怪異の世界では、息を吐く間もなく移動と交渉が続き、スマホを確認する余裕すらなかった。

俺が出かけることは、スズが勝手に予測していると思っていた。

だから、考えることを止めてしまっていた。


――それが、基本世界へ帰ってきた途端。


チャットには、『スズが帰ってこない』『魔法使いが来た』『スズが怪我してる』。

日向や秀人からの報告が、交差するように大量に流れていた。

その一部一部が理解できても、状況がまったく掴めなかった。


玄関には焦げ跡が残り、三階にも魔法の痕跡が残っていた。

階段裏の和室では、尚弥とスズが眠っている。


ひとまず落ち着いたのだと分かっても、それ以上のことは何も分からなかった。


「あんたも色々あったのは分かるけど、まず言いたいことは一つだよ。」

「ん。」


「あんたらしくないね。」


六階へ上がり、階段裏の空き部屋に入った途端、アンジェラが口を開いた。


「ここを空けるにしても、圭達を連れて行くんだから、いつものあんたならスズが帰ってくるのを待ってから、出掛けただろう?」


「・・・。」


その通りだな。


「それが何だい。子供みたいに、気まずくて顔を合わせたくないからって、戻ってくるのを確認もせずに出掛けたってのかい?」


「・・・そうなる。」


ぐうの音も出ない。

帰宅時間を見越して、スズと顔を合わせる前に出掛けた。


「それで最悪どうなるか。あんたなら言わなくても分かるだろう?」


そう。

勝手に、スズがいつも通り帰ってくると、仮定していた。


「悪かった。みんなが無事で良かったよ・・・。」


「運が良かっただけさ。私がただ偶然早めに戻って来ただけだよ。」


玄関や三階の跡からも、襲撃があった事は明らかだった。

そこにアンジェラが、早めに戻ってきてくれたのか。


「・・・助かったよ。本当にすまなかったと思ってる。」

「どうしたんだい?普段のあんたなら、こんなアホな真似絶対にしないだろう?」


落ち着いて考えれば、分かること。

同じことをした部下が入れば、俺も確実に叱っていただろう。


「そうだな。・・・よ――」


–考える余裕が無かった。


昨日、スズが言っていた言葉が蘇る。


「余裕がなかった・・・。」


スズにも余裕が無かった。


あの時、あいつはどんな表情をしてた?


あの言葉を聞いて、俺は逆上して詰めようとした。

そこを、アリスさんが止めに入ってくれた。


「そうだろうね。だけど、普段のあんたならそれでも割り切って、ちゃんと判断できることを私は知ってる。・・・スズのことかい?」


そう。


俺もそう思った。


余裕がない?


スズが、そんな曖昧な判断をするわけがないと思った。

だからあの言葉を聞いた瞬間、適当に誤魔化してきたのだと思った。

それで、無意識に逆上した。


あの時のスズの表情が思い出せない。


俺は、見てるようで、見ていなかった。


「・・・見る余裕が、無かった・・・。」


「はぁ・・・。あんたが全部悪いとは言わないよ。これまでちゃんとここを守ってきたのは、あんただからね。

それだけに、みんなあんたがいるだけで、どんだけ安心してると思ってんだい。」


「・・・いや、それは・・・。いや、ごめん。・・・何があったんだ?できれば聞かせて欲しい。」


自分が無責任だったことは、嫌になるほど理解していた。

日向達にも、アリスさん達にも迷惑をかけた。

スズとのいざこざは皆には関係ないのに、巻き込んでいることも自覚してる。


アンジェラは、相談所に来てからの状況を、だるそうに話し始めた。


魔法使いが襲ってきて、日向や秀人とイザベルさんが対応し、それを今は小屋にしまってあること。

その三人が抜けている間に、三階にいたアリスさんのところへ、ブライアンに操られた人間が接触したこと。

スズは恐らく別の襲撃を受けて、怪我して帰ってきたこと。


それを聞いて、改めて肝が冷えた。


死ぬ時は一瞬だというのに。


何してんだ・・・俺。


「あんたとスズがどうするかは、あんた達二人の問題だよ。それは日向達にも割り切るように言ってある。」


「・・・分かった。」


本当に、大怪我やそれこそ最悪が起こらなくて本当に良かった・・・


「でも、あんたがここに来た時のことを未だに覚えてるけど、ちょっと安定した位置で満足しているのは、あんたの方じゃないのかい?」


「・・・は?」


「その辺も尚弥からちょっと聞いたよ。私達が口を挟むことじゃないけど、私はどうせあんたはここを離れない気がするね。

結局それならそれで、周りを混乱させるんじゃないよ。まったく・・・。さて、私は寝るよーおやすみさん。」


「・・・・・・・・・・は?」


あの女。


本当に言いたい事だけ言って、戻って行きやがった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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