答え:それは言葉に宿るのか、魂に宿るのか
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
圭への返事をした後、アンジェラへ連絡を入れた。
ここから先、和がどういう判断をするかによっては、アリスの状況が不安定になる。
「……。」
ここまでずっと、和に頼りっきりだったからな。
それはもしもの為でもあるし、アリス達を抱えているせいで和が自由に選択できないのなら、環境を変えられるようにした方が良い。
アンジェラにも相談して、後はミランダや他にもいくつかの保険を考えておくべきだろう。
そうなれば、今の仕事も続けられるか分からない。
できる限り残しておきたい「普通」だったけれど。
基本世界で池田美優として生きる為にも、できる限り続けていきたかった。
けれど、変に固執してアリスやヒナ達を危険に晒しては、元も子もなくなる。
昨日の夜。
勘右エ門が地下へ戻ってきた。
今回の代償については、あの男らしくこちらをかなり気にした様子で、ツケにしてきた。
その代わり、その回収はどこまでもついてくると笑いながら。
神の代償がツケでいいのかは知らないけれど、今これ以上動けなくなるのも困る。
後から面倒事になる可能性はあるけれど、その条件はありがたく受け取るしかなかった。
未だに、目先の対応ばかりに追われて、未来の選択肢を自分で削るような動きばかりしている。
攫われた者達を追いかけることも必要だけど、今はこれまで放置してきたアリスやヒナ達の環境を整える事も並行して急いだ方が良い。
せっかく、500年代層からの協力者も出てきたことで、魔法世界の環境は多少落ち着いてきたのだから。
…眠い。
まだ昼休憩だし、食事をしに行く気もおきないのだから、少し寝よう。
和は、怪異の世界へ行くかもしれない。
それなら、今日は早めに帰った方がいい。
「お。お疲れさん?」
一度眠ってスッキリできたので、午後の仕事を手早く片付け、定時で席を立った。
「はい。お疲れ様でーす。お先に失礼します!」
「待て待て。俺も一緒に降りる。」
午後に出した資料を確認したのだろうか?
少し気になるが、わざわざ質問するほどではないので、放っておこうか。
「いやぁ後輩がいると助かるよー。お前も新しい後輩が入ると良いなぁ。」
気が付けば、もうすぐ4月か。
「そうなったら、先輩の後輩役もお役御免ですかねぇ。」
「えぇぇ。お前、めっちゃちゃんと仕事してくれるからなぁ。残っててほしいー。」
帰宅時の満員エレベーターに乗り、一階へ降りる。
この男も同じ方向の電車だったはず。
急いで帰りたいが、電車なのだから今急いだところで、そこまで早さは変わらない。
念の為、スマホだけでも確認しておこうか。
スマホをポケットから出しながら、進む。
「待ってたよ。」
「ん?池田?知り合いか?」
顔を上げると、確かに知っている顔がそこにはあった。
元交渉人だった。
リュース・ジェロフト。
「…はい。知り合いなんで、先輩は先に行っちゃってください。お疲れ様です。」
こちらを気にするように、歩き出す先輩にリュースは声をかける。
「折角だし、お兄さんも一緒にお茶でもします?」
「ダメですよー。会社の先輩なんで、迷惑かけないで貰えます?」
「え?どっちでも良いよ。」
断って欲しかった。
「ならご一緒にどうぞ。ちょっとそこの喫茶店にでも入りましょう。」
会社ビルの出口で、変な動きをするわけにもいかない。
リュースが歩き出すのを、黙ってついて行った。
先輩も少し嬉しそうについてきた。
少し先にある交差点の手前に立つビル。
その一階に喫茶店が見えた。
恐らく、目的地はあそこなのだろう。
流石にそこまで連れて行くわけにはいかない。
すぐ手前のビルの脇に、先輩を引っ張って連れ込んだ。
「ん?」
リュースが振り返るのが見えたけど、今気にしてもしょうがない。
「先輩。すみません。」
「な!?なんだ?え?もしかして・・・?」
先輩を壁へ押し込み、そのまま体重を預けるように重心をかけた。
強く頸動脈を押さえる。
「な!待て待て、俺が先に言いたい・・・っつあ?」
何かを言おうとしているのは無視して、意識を失っていく先輩をそのまま壁に沿って、床に座らせた。
「大胆だねぇ。」
「無関係な人間を巻き込むな。」
「その方が、僕が安全かな?って思ってね。」
先輩は、そのうち目が覚めるだろうし、このままにするしかない。
「ほらもうすぐだよ。あ。逃げない方が良いよ。その人を連れて行けるなら良いけど。」
リュースは、既に基本世界の人間であるナオを殺しかけてる。
そこにもうハードルは無いだろう。
進みだしたリュースに、再びついて行った。
見えていた喫茶店に到着し、その扉にリュースが手をかけると扉の雰囲気が変わる。
交渉人としての扉の権限はない。
なら、フォーラスが作った通路の方だろうか。
「入った途端、死ぬのは困る。」
「どうだろうね?」
リュースは扉を開き、私に入るように促す。
扉の先に広がっていたのは、通路ではなく、生活感のない部屋だった。
「魔法使いの扉か。」
静かに、開かれた扉をくぐる。
私が入るのを見て、リュースは後から入りその扉を閉めた。
「何の用?」
「当てて御覧?」
どこかのワンルーム。
家具は何もない。
窓から見える景色は、基本世界に見える。
高さはせいぜい二階くらい。
これなら飛べそうだ。
「逃げる為の交渉。または、フォーラス関係の協力。」
逃走経路を確認して、リュースに向き直る。
リュースは魔法世界に戻らず、怪異の世界に逃げたと聞いていた。
ブラッドのように、個別の目的がある可能性もあるが、今のところそれは分からない。
死神との関連もあるけれど、ここで今死神が出てくる理由は少ない気がする。
逆に、和のこともあるのだから、フォーラスの可能性の方がかなり高い。
「ふーん?」
ずれてはいないようだ。
だとすれば、リュースの目的を確認してる場合じゃない。
今すぐにでも、帰るべきだろう。
「今度は、フォーラスの駒か。」
一瞬、リュースの表情が引きつった。
「・・・はぁ!?何言ってんの!」
風か氷が飛ばされると予想した体の上から、重圧がのしかかる。
いきなり上から押される勢いに、とっさに膝をついた。
「…っは。そんなところは変わりない。」
表面的には落ち着いた動きを意識しているようだけど、トラブルやイレギュラーの時にはすぐに感情が前に出る。
癇癪だけが先に育ってしまった子供みたいだ。
「だいたい!お前みたいな存在がいることのせいでおかしいんだ!」
のしかかる重さに、手が床につく。
下から見上げたリュースは、普段隠している侮蔑の表情を見せる。
「基本・・・世界と比べるのは・・・止めた方が良い。」
ナオの怪我の詳細を思い出す。
重症だった頭の怪我とは別に、腕の骨折やヒビもあった。
「魔法も使えないくせに、こんな目の前の設置魔法にも気づかないんだよ!」
「・・・ぁあ。それで?・・・こんな弱い者いじめのような方法で、・・・納得できる?」
ナオを襲った理由も時間稼ぎと合わせて、基本世界の人間に向けたただのストレス発散だったのかもしれない。
今、それを仕掛けてくる理由があるとすれば、同じく時間稼ぎなのだろう。
「それは弱い奴が悪いんだろう?それをハッキリさせることの何が悪い?」
「・・・なるほど。でもやり方は悪いだろうね。・・・・このやり方で、・・・誰がお前の話を聞く?」
何をどう評価しようと人それぞれだろう。
ただし、その意見を通したいなら、それなりに聞いて貰える立ち位置は必要になる。
「正論ばかりで、何もできないお前よりマシだろ!」
「!」
感情に引っ張られて、魔力制御が乱れたのだろう。
このまま耐えても、長くは持たない。
全身を押さえつけていた重圧が、一瞬だけ緩んだ。
そのタイミングで、足を踏み出した。
そのまま体を窓の外へ投げる。
–ガシャァァァン
窓ガラスが割れる音。
顔を覆った両手の間から、外の様子を見る。
コンクリートに体を投げ出した。
二階から落ちた勢いを殺すように何度か転がった。
いくつか痣は残りそうだ。
急いで立ち上がり、走り出した。
無作為に飛び出した先は、普通の道路。
自転車に乗っていた人が驚いた顔を見せるが、放っておくしかない。
あたりを見渡しながら走り続ける。
目に入る扉を確認していく。
もしも和が出かけているのだとしたら…とにかく急いで帰る。
通行人の視線が突き刺さる。でも立ち止まる余裕はない。
後ろからリュースが追いかけてくる様子はない。
「・・・はっ、・・・はぁ。」
アパートの一階の扉が目に入った。
ポケットから鍵を取り出し、差し込む。
–カチャ
白い通路に飛び込むように入った。
後ろ手で扉を閉める。
「…はぁ。」
一度目を閉じ、座り込んで一息ついた。
目を開く。
「……。」
スーツのところどころが、破れている。
背中はリュックを背負っているから、問題ないはず。
手足もひとまず問題ないか。
体を起こそうと立ち上がった途端、足から力が抜ける。
意識が切れた。
急がないと…
……
…
–とおりゃんせ~とおりゃんせ~
…うるさい。
–こ~こはど~このほそみちじゃ~
何度、聞かされるんだ。
–てんじんさまのほそみちじゃ~
用があるなら、直接来い。
–ちょ~ととおして くだしゃんせ~
頭が上がらない。
–ごようのないものとおしゃせぬ~
「…ぅるさい。」
–このこのななつのおいわいに~
視界が、白い塗料をぶちまけたみたいに塗り潰された。
–おふだを…
意識が浮き上がる。
同時に、歌はそこで途切れた。
どのくらい意識を失っていただろうか。
通路の中では時間感覚がなくなる。
スマホを開くといくつか通知が入っている。
アリスからの電話も。
今は、とにかくあそこに戻りたい。
体を起こし、歩き出す。
泥でも詰め込まれたみたいな体を引きずって、地下の扉へ手をかけた。
–カチャ
ふわふわと光が漂っているのが見えるが、それを無視して地上への階段を上がる。
今の姿が少し気になる。
本当なら着替えて上がった方が良いのだろうけど、今は状況の確認が先だろう。
階段を上がると玄関は少し荒れた様子。
扉は閉まっているが、所々の柱や壁に、抉れた傷や焦げた跡が残っている。
耳をすませば、上の階から話し声が聞こえてくる。
足に力を入れなおす。
二階を通り過ぎ、三階へ上がる。
「キュウ!?!?!」
セイが三階の手すりから飛び降りてきた。
無事なようだ。
「!!スズ!!」
「良かった!帰って来た!」
「二人とも待ちな!ちょっとタオル!」
「えええ?!怪我してるよね!はい!タオルタオル!」
日向。
秀人。
そしてアンジェラとアリス、イザベル。
奥にウーノ達と颯太、ルーナ、ひとまず全員いそうだ。
…和は、もう怪異の世界へ向かった後なんだろう。
「…状況は?」
「こっちはひとまず落ち着いたばかりだよ。先にあんたの応急処置!」
アンジェラが、来てくれていたのが助かった。
「はぁ。アリスは大丈夫?」
「私は大丈夫だよ!!それより、うわ!スズここ切ってるよ多分!スーツ破れてる!」
タオルを大量に持って近づいてきたアリス。
確かにその様子からは、ひとまずは問題無さそうで良かった。
「秀人!尚弥は、来れそうかい?」
「えーと!うん!今向かってるって!スズのことも伝えとく。」
「私、着替え適当なの持って来るー。」
騒がしい声が、沈みかけた意識を無理やり現実へ繋ぎ止めてくれる。
ダイニングテーブルも焦げている部分が見える。
よく見れば、床も少しだけど血の跡。
「…このあたりも何かあった?」
「説明は後だよ。今急いでも良いことはない。ひとまず信じな。」
無理に話しを聞くのも無理そうだ。
それなら…
「…寝る。」
「分かった。」
再び意識を手放した。
アンジェラの言葉通り、今は信じた方が良い。
未だに空回りしている状況で、明確な理由もない言葉に縋るしかなかった。
……やっぱり私は、昔の私にはもう戻れないのかもしれない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




