↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
168/201

疑問:呼ばれた名前は、誰のもの?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

重い空気を引きずったまま地上へ上がると、日向達が覆い被さるように和さんへ抱き着いた。


和さんも、泣きそうな日向達を宥めることに意識を向けていた。

その様子を見て、少しだけ落ち着けた。


さっきまでの和さんは、クラーレンに向き合っていた時の敵意を持った雰囲気とは違うけれど、それ以上に怖かった。


目の前で話してるはずのスズの姿が、和さんには見えていない気がした。

普段なら、誰よりも早くスズの違和感に気が付くはずなのに。

それに気づけないくらい、今の和さんは余裕がない。


「アリス。大丈夫?」


イザベルが足元に近づいて来た。


「うん。特に問題ないよ。心配かけてごめんね。」


白い精霊に会ってからあの花畑で起こったことは、ほとんど分からないことだらけだけど。

そこに勘右エ門さんの力を借りて、スズが助けに来てくれたことは分かってる。


そして、和さんは多分スズがその時のリスク確認ができてなかったから、スズに怒っていたんだと思う。


それでも、普段の二人ならもっと丁寧に話し合っている。

数日前から喧嘩している状況と合わせて、きっと和さんだけじゃなくスズも余裕がない。


「和さん。」


日向達が少し落ち着いてきたところで、和さんに声をかけた。


「・・・はい。ちょっと言い過ぎたのは分かってます。すみません。」


和さんも気まずそうに返事をする。


「なに?またスズと喧嘩したの?」

「和ー・・・出て行っちゃ嫌だよ・・・。」


昼のことを思い出し、日向達がまた泣きそうな表情を滲ませる。


「俺も少し時間が欲しいんだよ。このまま焦ったままだと、多分うまくまとまらない。」


「・・・時間はいいんだけど。そのままいなくなるのが嫌だ・・・。」

「和・・・。僕達もう何も言わないから・・・ここに居て。」


二人は静かに和さんに抱き着いた。


「・・・・分かったよ。一旦、今週の交渉での出張は見送る。でも、その先はちょっと考えさせてくれ。」


その夜は、静かな夕食になった。

ウーノ達や颯太君が気を使ってくれていたけど、どこか気まずい雰囲気が抜けずにみんな自分の部屋に戻って行った。


時間は必要。

それは分かる。

私だってそうだった。


でも日向達は、そのまま和さんが戻ってこなくなることを怖がってる。


スズはどう思ってるんだろう。


今日最後に見たスズは、表情だけはいつもと変わらなかった。

それでも、何となくだけど。

あのまま和さんと話し続けたら、あの目から涙がこぼれてしまう。

そんな気がした。


だから、止めた事は間違いじゃないと思ってる。


最後に部屋へ入っていくスズの背中を焼き付けたまま、深い眠りに落ちた。


翌日。


ちょっとまだぎこちない雰囲気はあるけれど、みんなできるだけいつも通りに午前中を過ごしていた。


しばらくパソコンと向き合っていると、下から階段を上がってくる音が聞こえる。


「ふらりと現れた旅人。暗く苔むした森のほとりを、とぼとぼ進んでいる。

懐かしいはずなのに、どうにも落ち着かない。右へ左へ。何かを探しているけれど、中々見つからない。荒らしたいわけでも、壊したいわけでもない。

少しだけ、迷子探しを手伝ってくれないだろうか。」


圭さんが、静かに話しかけてきた。

何か探してるのかな?

相変わらず、何が言いたいのかはよく分からない。


「えっと。何を探してますか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・和は?」


和さんを探してる?

昨日のことを思うと、また圭さん、怒ったりしてるのかな?


「あの。怒ってます?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・喧嘩はしない。・・・相談したい。」

「それなら・・・今会議室に入ってるんで、声かけてみますね。」


–コンコン


二階の階段裏にある、一番手前の会議室の扉に向かってノックをした。


「あの。圭さんが来てます。」


そう言って扉を開くと、ノートパソコンと山積みにされた資料に向き合っている和さん。


「圭?」


和さんは資料から意識を引き剥がすように、ノートパソコンを閉じた。


「どうした?」

「ここから二つ離れた町。ある者には遠く、ある者には近い場所。

そこへ向かう影の中で、二つだけが前へ進んでいった。

仲間は引き留めようとしたけれど、手が届かずに見送った。

寒々しい風の中、残された影たちは一つの建物へ身を寄せた。」


「えーと。怪異の世界に行ってたんだよな。カル達のことか?」


確かに、スズが先週から怪異の世界に行っていることは聞いている。

圭さん達も一緒に行ったことも。

無事に夜は帰って来てたから、ちょっとだけ昔のように感じてしまっていたけれど。


「そこへ、僅かな輝きと共に待ち人。牛のようでもある。だけどただの牛じゃない。

あぁおやおや。もう輝きも尽きたと思っていたのに、最後の最後で現れるとはねぇ。

仲間は小さくささやく。

行く? 行かない?

聞く? 聞かない?

『君たちに選択肢はないよ。これが最後なのだから。』

『山を越え、川を進み、見える物を見なさいな。』」


物語に現れてきた牛のような妖怪?


「・・・何に会ったんだ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・件(くだん)。」


くだん?

聞いたことがない。

妖怪の名前なのかな?


「未来を告げる妖怪、だったか。・・・なるほど。それで先に進んだのか。」


和さんは納得するように、圭さんに先を促す。


「前に進んだ影はまだ見えない。それでも萎れた声の言う通りに、歩みを進める。

山を越え、川を進み、何かが見えるだろうか?

何が見える?その前に何かが近づいて来た。赤い光。青い光。黄色い瞬きが目の前を広がり、轟音が鳴り響き始めた。光が弾けるように飛び交い――」

「あ!やっぱり上がって来ていたのか。少し寝させてくれても良いだろうに。」


圭さんが話していると、私の後ろからカルさんが話しかけてきた。

その後ろからイェさん。


「怪異の世界に行ってたのか?」

「そうそう。スズが行った場所が気になって、ここ数日調べていたんだよ。」

「さっき戻ってきた。」


カルさんは手を腰に当てて、眠そうにしながら話を補足してくれた。


「件の言う通りに、天狗の山を越えた先に行ったら、なんだっけ?あんた達と知り合いの魔法使い。」

「フォーラス。」


「は?フォーラスに会ったのか?」


急に出てきた名前に和さんと一緒に驚いた。


「そうそう。まぁ普通の魔法使いなら圭だけでも何とかなるんだけど、悪魔も引っ付いて最初は多少ぶつかったんだけど、ひとまず話を聞いたんだ。」

「それで?」


「その一人が言うには、あんたと話がしたいんだと。」

「俺?」


カルさんが、和さんを指さす。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ブルース。・・・長男。」

「内容については本人が来てからって言ってる。」

「うさんくさい。」


意外にも三人の会話のテンポが良い。

結構、仲良しに見える。


和さんが腕を組み、少し考え込む。


「スズは?」

「あんた次第って。」


既にスズも知ってるんだ。

そりゃそうだよね。


「・・・・・。それは、怪異の世界に行くことになるのか?」

「こっちに呼ぶ訳にはいかないだろ?あんたが行くなら、昨日と同じ場所に行くことになるね。」

「怪異と鬼の世界が重なった場所。天狗の領域。」


鬼、天狗。

そんな場所に行くのは、さすがに危ないんじゃ。


「目的が分からない以上は、聞くしかないのか。」


和さんが決めることなのだけど、昨日のことを含めると、少しだけ嫌な予感がしてる。


少しの沈黙が流れる。


「・・・分かった。夜向かえるように準備するから、案内を頼む。」


そんな気はしてた。

私が口を挟めることじゃないけれど、今の和さんは少し怖い。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・和。・・・・先に一度・・・・スズと話した方が良い。」


圭さんが静かにつぶやく。


「今、あいつと話しても、喧嘩にしかならないのは目に見えてる。

それに、俺が行かなかったら、多分あいつが行くだろ。それは避けたい。」

「あんた達ってそんな感じだよね。それがうまくかみ合う時もあれば、完全に外してる時もある。」


カルさんは、眠そうに階段の方へ戻って行った。

それにイェさんが続いていく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・噛み合わないままは、良くない。・・・・・後悔する。・・・・・本当に行くの・・・・?」

「分かってる。」


圭さんは少しの間、和さんの返事を待っていた。

けれど、和さんが口を開かないままなのを見て、階段を下りて行ってしまった。


離れた場所から様子を窺っていた日向と秀人と目が合った。

口を出さないといった手前、二人からも言いづらいよね。

和さんも少しそれを気にしながら、会議室に戻っていってしまった。


その日の夕食は、元々用意されていた作り置きになった。


「そういえば、まだ帰って来てないんじゃない?」


静かな夕食の中で、イザベルが顔を上げた。


「そういえば僕も見てないなぁ。スズちゃん今日は遅いのかなぁ?」


残業の可能性もあるけれど、そんな時は大抵メッセージが入る。

こんな時に連絡がないのは、やや引っかかった。


「まだこのくらいの時間なら、たまに遅い時もあるけれどー。しょぼしょぼ。」

「一応、チャットは投げとこうかぁ。うじうじ。」

「キュウ・・・」


–ピンポーン


「誰だろ?」

「はーい!」


響くチャイム音に、日向と秀人が立ち上がった。

圭さん達も出かけてるから、来訪者の情報についての通知も入ってない。


大丈夫かな?


しばらくしても戻ってこない二人に、ウーノ達も少し心配そうに階段の方を何度も見る。


「ちょっと見てきた方が良いかな?」

「私が行くわ。アリスはここで待ってて。」


イザベルが階段を下りて行った。


ううう。

私は下手に動かない方が良いのは分かるけど、こういう時もどかしい。


「アリス。」


一緒に隣で食事をしていたルーナさんが声をかけてきた。


「うん?」

「連絡手段が他にある人は?」


緊急時に連絡する人かな?

誰だろう。


「えっと、魔法世界だとミランダさんかな?」

「すぐに来れる人が良い。何か入ってきた。」

「え?」


ルーナさんが階段の方へ視線を向けた。

その視線を追いかける。


階段の先に、見覚えのある男が立っていた。

どこかで見た事がある人。


30代後半か40代くらい。

一体どこで?


「あの・・・。何かご用でしょうか?」


日向達は?

イザベルは?


日向達もイザベルも、簡単に突破される相手じゃない。

階段で入れ違いになったとしても、三人が魔法使いを見逃して、ここまで通してしまう可能性は低い。


椅子を立ち上がった。


今、相談所には圭さん達も和さんもスズもいない。


「あ!もしかして、君が山本梓さんだった人?」


男の人が思いついたように、私を見る。


は?

山本梓さんだった人?


確かに、そう言われると否定しづらい質問だけど。

それをなぜこの人が知って――


「あ。」


思い出した。


山本梓として、生きていた頃。

この人と何度か会ったことがある。


そして、最近では山本梓さんの記憶の中で、この人がブライアンと一緒にいたのを見た。


「あなた・・・誰ですか?」

「なんだよ。忘れちゃったのか?何度も面倒見てあげたのに。」


男の人がこちらに足を進める。

ウーノ達も警戒するように、男の人を見ている。


「そこから、近づかないでください。」


この人は人間?

それとも魔法使い?


とにかく、イザベル達が戻ってくるまで、時間を稼がないと。


「君に用があるんだ「僕がね。」。」


話し始める男の声の中から、別の声がした。


「みんな離れて!」


聞き覚えのある声が割り込んだ。


「「なんだい。久しぶりに話すのにつれない妹だね。」」


男の声と重なって聞こえる声。

ブライアン・フォーラス。

私の兄。


「その男は普通の人間に見える。恐らく魔法によって、遠隔操作されてるんだと思う。」


ルーナさんが、後ろから教えてくれる。


「「そこの女は見た事がないな。まぁいいや。」」


男が一歩前に出る。


「「シャロンはどこにいる?」」


シャロン。

先日ここへ逃げてきたシャロン・フォーラス。

私の姉。


同時にあの青い目を思い出した。

けれど、今はそれどころじゃない。

忘れるように、手に力を籠めた。


「ここにはいないです。」


階段側に座っていたウーノ達とは、男との距離が近い。


「「つれて来て欲しいんだよ。」」

「無理です。できません。」


魔法世界に連れていかれた姉が、今どうなっているのかは知らない。


「「アリス。」」


ブライアンの声が響く。


一瞬だけ違和感が走る。


何かが違う。

呼ばれたはずなのに、呼ばれていないような。


「「いや。”フィアリ”。」」


その言葉を聞いた瞬間。


脳の奥へ直接鐘を叩き込まれたみたいに、視界が軋んだ。


「・・・っは・・・・あっああ。」

「「まずは、どんな手段でもいい。シャロンの居場所を聞け。」」


痛い。

頭の奥を掻き回される。


「あぁぁぁぁぁ・・・・っ。」

「アリス!」

「キュウ!」「キーキ!」「キュキュ!」


思考が硝子みたいに砕け散る。

痛い。痛い。痛い――


「「3番目に聞いた方が早いだろう。」」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


「「壊してもいい。絶対にだ。」」


「ぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」


その声が全身に響き渡る。

頭の痛みで視界がゆがむ。


喉が裂ける感覚も分からないまま、悲鳴だけが零れ落ちた。


「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


誰か――

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。