答え:割り切れても、最後は紙一重
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
後悔をしても、もう遅い。
早く、あの地下の状況をどうにかするべきだった。
電車に乗り、“アリス達が地下で消えた”というメッセージを見た瞬間、頭の中がそれ一色に変わった。
電車を降り、急いで走った。
途中で人にぶつかり、何度か転んだ。
背後で何か声がしたが、振り返る余裕はなかった。
誰かの『大丈夫ですか』が背中を掠めた。
それでも、とにかく急いで相談所へ戻った。
玄関を開くと、ヒナとヒデ、そして奥にイザベルとルーナが立っていた。
「「スズ!!」」
「アリスと和が、地下で消えたという認識で間違いない?」
ヒナとヒデが心配そうに近寄ってくるけれど、それより先にイザベルが飛び出すように近づいた。
「ええ!そうよ!急にアリスが消えそうになって、そこにカイルが飛び込んできたと思ったら、二人とも私の目の前で消えたわ!」
「それはいつ?」
スマホからの通知は、ヒナとヒデからのメッセージ。
つまり、イザベルがそれに立ち会ってから、ヒナ達に伝えるまでに時間差がある。
「ええと・・・あ!夕方のチャイムが鳴る前だったわ。17時より少し前よ!」
それは、既に1時間が経過している。
「そこに精霊は一緒にいた?」
「分からないわ・・・でも!アリスがいるって言ってたからいたと思うわ!」
魔法によって距離制限があるイザベルが置いて行かれた。
二人が消えた場所も、もともと私の地下である以上、連れていかれた先は他世界である精霊の世界の可能性が高い。
他の要因は薄いとみていいだろう。
「いた。精霊がいた。白いのが。」
ルーナがイザベルの後ろから、静かに教えてくれた。
「分かった。助かる。」
ひとまず地下に降りよう。
階段裏に回り、地下への扉を開く。
同時に軽い声が耳に入った。
「へいへい。ちょっとお待ちなさいな。」
「…戻っておりましたか。」
扉をくぐると同時に、後ろから勘右エ門がついて来た。
しばらく相談所から姿を消していたから、気まぐれにどこかへ去って行ったと思っていた。
「いやぁちょっと空気が気まずくってね。ちょっと散歩に行ってただけだよ。」
いつもの軽い調子で、嫌味を乗せてきた。
「大変申し訳ございません。多少そういうやり取りもございますので。それよりも――」
階段を下りながら、話を進める。
「どれどれ。そこの妖精ちゃん。お話を聞かせてくれんかね?」
勘右エ門が近くの妖精に声をかける。
それにつられるように、近くの妖精達も次々と集まってきた。
【神様ー】
【神様だー】
【はーい!】
【なになにー?】
その声につられ、更に地下にいるほとんどの妖精が一気に集まってきた。
騒がしい勘右エ門の傍から離れ、階段を下りる。
デスクの上には、お盆に乗せられたタッパーが積み上がっていた。
和の作り置きだろう。
これを運ぶ為に、アリスと一緒に地下へ降りてきたのか?
「ここに、金髪の女の子と身長の高い男が来たと思うけど、何があったのかな?」
のらりくらりと話す勘右エ門の様子に、少し手に力が入る。
精霊は時として人間の肉体から魂をずらし、精霊の存在に近づけさせることがある。
和にも、そのことで何度か注意をしたことがある。
そして過去に、そうなった人間やエルフ達を見たこともある。
それは自身で望んでそうなった者もいれば、精霊の言葉に惑わされそのまま流されるようになった者もいた。
でも、今はその理由は問題じゃない。
一度精霊側へずらされた魂は、もう元の在り方には戻れない。
もう二度と、アリス・フォーラスと、カイル・ヴィンセントという本来の存在には戻れない。
更に手に力が入る。
バラバラに喋る妖精達の内容を、どうにかまとめる。
恐らくは、白い精霊がアリスの前に現れた。
それをすぐにアリスは嫌がるように階段を上り始めたけれど、精霊はそのまま話しかけ続けていた。
「その女の子は、精霊の世界に移動することをOKしたかい?」
【うーん?】
【OK?】
【いいよ。って?】
【言ってなかったよー】
【でも何か言ってた?】
【えっと、なんだっけー?】
【違うとかー】
【ただーとか、それだけーかな?】
【OKしてないー】
【いいよって言ってないー】
「ふむふむ。ありがとうねー。それでひとまず十分だ。」
「手をお借りして宜しいのでしょうか?」
勘右エ門は、階段を下りてこちらを向いた。
「お前だけ行っても、どうしようもないだろう?」
「…はい。お願い申し上げます。」
勘右エ門に向かって、頭を下げる。
平静を装っていても、指先の強張りだけはどうにもならなかった。
差し伸べられた手を、両手で取る。
何が代償になるかは分からない。
けれど、そんな交渉を一つずつゆっくり確かめている時間はない。
何が代償でも、無くなるよりはいい。
その考えが自然に浮かんだことに、違和感を覚える余裕すらなかった。
次の瞬間、体は意識ごと引っ張られた。
勘右エ門と移動した先には、クラーレンと白い精霊。
そして、その正面に和とアリスの姿が見えた。
二人の姿を見た瞬間、肺を締め付けていたものが僅かに緩んだ。
それでも、クラーレンが関わっているのが一目瞭然なその状況に、再び拳を握り、ほとんど睨みつけるように近づいた。
和の影でアリスが、気絶していると分かった瞬間。
踏み出そうとする私の肩を、勘右エ門が叩く。
≪まぁまぁ。落ち着きなさいな。≫
その声が無ければ、私はどうするつもりだったのだろうか。
クラーレンはいつものように、淡々とこちらに向けて話しかけてきていた気がするけれど、言葉が耳に入ってこない。
頭の中は、とにかくアリス達をこの場から離したい。
それだけ。
「・・・えと。ごめんなさい?」
――戻ってきた瞬間。
やっと手から力が抜けた気がした。
「怒ってないよ。大体の状況は妖精から聞いた。」
アリスが心配そうにこちらを見てきた。
その横で、和はあの時と同じ目をしている。
今回は、明らかに二人が悪いわけじゃない。
この環境をそのままにしていた私が悪い。
出そうになる溜息をこらえる。
「スズ。詳細が聞きたい。」
「先に上がった方が良い。イザベルが日向達に伝えて、私はその連絡を受けた。上でみんな心配してる。」
日向達にはろくに説明することもできずに、放っておいてしまっている。
恐らく、今も二人を心配して1階で待っている。
「…アリスさん、怪我は?」
「い、いえ!まったく!何も!大丈夫です。上がれます!」
アリスのそんな声を聞いて、改めて安心できた。
精霊の世界で、気を失ったアリスが目に入った時。
冷静ではなかった。
勘右エ門がいて助かった。
…とにかく良かった。
「それならアリスさん先に、上がって――」
「和も夕飯の時間だから、一緒に上がった方が良い。」
和がここに残ろうとする言葉を聞いて、無意識に口を挟んだ。
状況の説明は後ででもいい。
先に日向達を安心させるべきだろう。
多分、そう思ったんだと思う。
…いや、違うのかもしれない。
今、その目と向き合えない。
さっきまでとは違うざわつきが、胸の中で聞こえる。
「これは俺の優先順位だ。」
「今急いで話すべき内容じゃない。それよりも――」
「それを決めるのは俺の勝手だろ。」
和の声が少し大きく地下に響き、言葉が止まる。
何を言えばいいのか、分からない。
いや、状況を…ひとまず説明をするべきだろう。
分かっていることだけを、大雑把に口にする。
「クラーレンが引っかけたことが原因だろうけれど、精霊がちょっかい出してきただけだろう。」
「それを収めるのに、なんで勘右エ門さんが一緒に来た?」
それは、そもそも想定外ではあった。
でも、あの場に勘右エ門がいたから、すぐに迎えた。
最終的に問題が精霊側にあるのなら、その方が話も早い。
理屈としては間違っていないはずなのに、どうしてかその説明に自信が持てなかった。
「精霊のルールは上位精霊にしか管理できない。その干渉は勘右エ門に頼むのが早かった。」
違う。
分かってる。
すぐにでも迎えに行きたかった。
ただそれだけだった。
勘右エ門がいたのは、ただの偶然。
「その交換条件は?」
「まだ決めてない。」
それに飛び乗る以外の選択肢は、あの時の私には無かった。
他の方法?
なぜ目の前にすぐに迎えに行ける方法があるのに、他の方法を考える必要がある?
交換条件?
代償?
そんなものを検討する理由が見当たらなかった。
無くしたくないものがあった。
それだけ。
「は?どんなリスクかも分からないまま、先に進めたのか?」
それでも、和が言うことは正しい。
昔の私なら、そんな無謀な行動はしなかった。
……本当に?
状況が違う。
同じ過程と判断じゃない。
それなら、もう少し無難な説明くらいできるはずなのに、言葉が出てこなかった。
溜息をもう一度抑える。
「それをゆっくり決められる状況じゃなかった。」
思っていることが、上手く言葉にならない。
「っ!いや。それは分かってるけど、それでもいくつか提示候補を一つや二つ決めて――」
分かってる。
「考える余裕が無かった。」
和はただ心配をしているだけ。
だから、この言葉は間違えてる。
「な!」
それでも。
私には、できない。
できなかった。
私には、慎重にリスクを交渉して、自分を優先にする理由が見つからなかった。
向かった先で、和とアリスがいないその光景を見るくらいなら…
「だから、お前は!」
そんなリスクなんて、どうでもいい――
「和さん!!」
ここまで静かにしていたアリスが、急に大きな声を上げ、和の名を呼んだ。
その声に和が言葉を止めた。
これが間違いだとしても、私は再び同じことをする。
それは、あの通路にある橋を渡った時と同じ。
みんな、結果そのものだけじゃなくて、スズが一人で決めて先に行くことに困ってる。
…あぁそうか。
ナオの言っていることが、少しだけやっと理解できた気がする。
私にとっての途中は、もう結果なのだろう。
後からゆっくり選び直せる未来を、最初から想定していない。
だから、先に行っているつもりもなかった。
「…とにかく、上に上がった方が良い。今、これ以上話しても意味がない。」
私は選択を間違えた。
和には和の結果がある。
たとえ本人が望んだとしても、受け入れるべきことではなかった。
あのプラットフォームで、泣き叫んでいた子供のように、どんなに泣き叫んでいたとしても、その結果に向けて願うべきだったのだろう。
久しぶりに入った寝室。
ゆっくり足を進め、ベッドの上に体を投げた。
私はあの母親にはなりきれなかった。
中途半端に手をかけ、子供を惑わせ、今だけが少し楽になるような偽善をしていただけなのだろう。
冷たいはずのシーツ。
冷たいからこそ暖かさを求める。
でも、もうどちらを求めているのかも分からないのだから、今はただ目を閉じた。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




