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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
166/201

疑問:私はどこまでが私なのかな?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

相談所の地下から、多分精霊の世界に来てしまった。

そこへ、アディール・クラーレンが姿を現した。


周りを見てもイザベルもいなければ、影の中にルーナさんの気配もない。

たぶん今ここにいるのは、私と和さんだけ。


あたりには、不気味なほど鮮やかな花畑がどこまでも広がっている。

出口があるのかすら、分からない。

帰る方法はあるのかな・・・?


–やっとそれらしい形を得られたと思ったところで、君という存在が現れた。


クラーレンは、こちらの様子を気にすることもなく一人で話し始めた。


–なぜか精神体としての私と同じ立ち位置でありながら、肉体的な干渉方法を持ち、さらには魂への接触も可能。


全てあの通路の橋の上で起こったことを言ってるよね。


–君はどうして、そんなことができるんだろうか?


問いを投げかけているのに、クラーレンは私達の反応を気にする様子がない。


–私はね。ある仮説を持っている。


和さんはクラーレンへ顔を向けている。

その表情は、私の位置からは見えなかった。


–世界に存在できる魂には上限があるのではないかと。


ずっと、何の話をしているんだろう。

世界の魂の上限?

言葉の意味は分かるのに、それがどうして私に向いてくるのかが見えない。


–君の魂は、イヴの魂からその形を変えたのだろうか。


私の魂の形?

魂を見ることができるようになった私は、何かが変わった?


気づけば、目に力が入っていた。


クラーレンの姿には黒い靄がいくつも重なって見えて、黒い靄が重なり、本来の輪郭が潰れて見えた。

これが魂?


今まで見てきたものとは明らかに違う。


–それを私が確認することができないということが、非常に残念でならない。


–それはつまり、お前が彼女に興味を持っていても、調べられないってことだろう。


和さんが、話し続けるクラーレンの話に口を挟む。


–それなら、彼女から手を引け。


クラーレンと視線は合っていないはずなのに、黒い靄だけが和さんを見ている気がした。

体の周りにある黒い靄だけが、和さんの方へ意識を流している。

和さんの服を強く握った。


–それは無理な話だと、君なら分かってくれるだろう?

–なに?


クラーレンが何を考えているのか、今どういう感情で話しているのか。

今まで、どんなに無表情なスズでも、ガルシアさんでも、初めて会ったどんな人でも、そこに雰囲気や空気みたいなものがあった。


–彼女の傍にいる君は、昔の私に似ている。

–っは、どこが!


クラーレンと話しているはずなのに、中身が空洞みたいだった。


–彼女に近づくことで、その答えに近づけると。

–・・・・。


–世界に存在できる魂の数には、限りがあるのかもしれない。

もしwalkerの魂が、その枠に含まれていないのだとすれば。

その質が変化しないことにも説明がつく。

なら彼らは、生き物とは別種の存在なのではないだろうか。


–そう。まるで神のようだ。


どこに彼の感情はあるの?


靄だけが、生き物みたいに脈打った。


–その神に近づく為に、私は彼らの見る永遠を知りたい。


–それが、神の怒りに触れることになってもか。


一瞬。笑った?


–それは大変光栄な話だな。やっと答えに近づけたことと同義じゃないか。


クラーレンの黒い靄の一部が、私の方に流れを変えた。


–先に天罰を受けるのはどちらだろうね。


黒い靄の奥に、こちらを覗く何かがいた。

そう思った。


その瞬間。


息が止まった。

空気が喉で凍りついたみたいに、息が入ってこない。


息が・・・できない。


–っあ・・・わた、しは・・・

–アリスさん?


アリス?


–walkerの魂である君の魂は、その本質はwalkerのままなのだろうか。


私の魂。


–それなら君の自己も、きっとイヴとして、君として、残り続けるのだろうね。


イヴさんとして、私として・・・?


私は、アリスなんだよね?

それとも、イヴさんの続きを生きてるだけなんだろうか。


黒い靄が目の間に広がる。

遠くで、和さんの声が聞こえる。


靄は、頭の中へ流れ込んできた。


視界に夜のカーテンが落ちてきた。

視界が暗い海の中へ沈んでいく。


「イヴ。準備はいい?」


水泡の中で声がハッキリと届いた。


誰の声?


温度が無い声。


「・・・・・・ふふ。面白い・・・・。私があんなにあなたの事を殺したんだもんね・・・。一度くらい・・・。最後ぐらい・・・・・確かに良いわね。」


別の声。

別の声のはずなのに。

耳に触れた瞬間、どうしてか自分の声だと思ってしまった。


空気の質感が急に変わった。


ここはどこ?


「分かった。」


肌触りの良いシーツ。

多分、ベッドの上で横になってる。


手が動かない。

視界の端には、誰かの影。


その人が、同じベッドに上がってきた。


女の人。

静かに、寝ている私の上にまたがるように乗った。


月明かりしかない部屋の中。

表情は見えない。


その人が、私の首にゆっくりと手をかけた。


近づいて来た視線。

知らない女の人。


でも、その目だけは知っている。


首にかけられた手は冷えきっている。

私の体も冷たいのか、どちらの体温も感じることはできない。


目が合った。


どうして、こうなってしまったの?


ねぇ。

あなたも結局、この子の方が気になっていたんでしょ?


あぁ羨ましい。

どうして、何もしないあなたは良くて、私だとダメなの?


あぁ妬ましい。

あなたに少しでもこの苦しみが伝われば良いのに…


でも、もうこれで終わりなのね。

やっと終わるのね。


それなら、最後に…


「っ・・・・私はあなたが憎い。」


–カラーン


木の響くような音。


あれ?


≪お嬢さん。お入りなさい≫


場違いなくらい軽い男の声。

聞いたことがある声。


あれ?


これって・・・誰?


≪ほらほら、君は今、違うでしょ。フィアリ・フォーラスさん。≫


フィアリ。


雷みたいに、全身の感覚が跳ね上がった。


同時に意識が、出口を見つけた水のように一気に流れた。


「アリスさん!!!」


「っは!」


暖かい空気が肺に入ってきた。


–っつは!あれ?あ・・・・和さん。


同時に視界に、和さんの顔が入る。


–和さん・・・?


–良かった。大丈夫ですか?


–ここは・・・・・?


周りには、花畑が広がっている。


場所は変わってない?


でも。

黒い靄だったクラーレンの姿がなくなっている。

そして、代わりにスズと・・・何故か、勘右エ門さんがこちらを背に立っていた。


≪だからぁ、彼女がダメだって言わなかったのよ?≫


白い精霊。

スズと話すように、向き合っている。


今、これってどういう状況・・・?


まだ喉の奥に息苦しさが残っていて、頭がうまく回らない。


–それは了承じゃない。私とのルール違反だろう。


≪なんでダメなの?だってその方が良いじゃない。≫


精霊は、やっぱり分からないとでも言いたげな、素直な表情をしている。


–もういいよ。勘右エ門。


スズは、白い精霊に背を向けるように、私達の方に振り向いた。


≪お前は、まだ属性を持たないねぇ。できたばかりだから、ちょっとおいたが過ぎたかな?≫


≪なんで?なんで?どうし・・・?≫


精霊の言葉が空気に馴染んでいくように、姿と一緒に光に絵の具のように混ざっていった。

勘右エ門さんが、何かしたようには見えなかった。


精霊は、最初から存在しなかったみたいに跡形もなく消えた。


いつもの精霊の消え方と違う。


–え?

–ひとまず帰ってから話そう。頼む。


スズは、私と和さんの背後へ視線を投げた。


≪分かったわ。ごめんなさいね。気を付けてお帰り。≫


さっきの白い精霊とは違う、暖かい風のように柔らかな声。


後ろを振り返ろうとすると、一瞬視界の端に緑色の光が見えた気がした。

でもすぐに、視界は切り替わるようにその明るさを失っていった。


真っ暗になりきらずに、少し前にいた地下の暗さに戻った。

さっきまで明るい場所にいた反動なのか、かなり暗い。


でも、相談所の地下に戻ったんだ。

肩の緊張感が抜けた。


確か、地上に上がる階段にいたはずなのに、今は地下のフロアに座っている。

視界にはパソコンの乗ったデスクやソファと大量の資料の山。


和さんとスズの立ち位置は、さっき花畑にいた時と同じまま。

和さんは私の傍で、背中を支えてくれて、スズは正面に立っている。


スズが迎えに来てくれた。


細かい状況まではまったく分からない。

それでも、あの訳の分からない場所から、私達を引き戻しにきてくれたのだと、それだけは分かる。


二人の間に、冷たい空気が張り詰めている。


「・・・えと。ごめんなさい?」

「怒ってないよ。大体の状況は妖精から聞いた。」


スズの表情はいつもと変わらない。

声のトーンも確かに、怒ってる感じはしない。


それでも空気はやっぱり重い。


「スズ。詳細が聞きたい。」

「先に上がった方が良い。イザベルが日向達に伝えて、私はその連絡を受けた。上でみんな心配してる。」


そっか。

すぐ上がった方が良いよね。


「…アリスさん、怪我は?」

「い、いえ!まったく!何も!大丈夫です。上がれます!」


和さんが私に向かって振り向いたので、とっさに和さんに支えてもらっていた背中を起こした。

息の苦しさはもうないし、体は少し軽く感じるぐらい。

まったく問題はなさそう。


そんなことよりも、とにかく二人の雰囲気が重すぎる。


「それならアリスさんは先に、上がって――」

「和も夕飯の時間だから、一緒に上がった方が良い。」


和さんが私を先に上がるように言う言葉に、スズが重ねた。

和さんの視線がスズへ戻る。


「これは俺の優先順位だ。」

「今急いで話すべき内容じゃない。それよりも――」

「それを決めるのは俺の勝手だろ。」


ううう。

これはやっぱり喧嘩してるよね。

そういえば、勘右エ門さんはいないのね。


「クラーレンが引っかけたことが原因だろうけれど、精霊がちょっかい出してきただけだろう。」

「それを収めるのに、なんで勘右エ門さんが一緒に来たんだ?」


確かに、それはちょっと引っかかる。

勘右エ門さんの正体を、スズは分かってるんだろうけれど。


「精霊のルールは上位精霊にしか管理できない。その干渉は勘右エ門に頼むのが早かった。」

「その交換条件は?」

「まだ決めてない。」


和さんが、勢いよく立ち上がった。


「は?待て。どんなリスクかも分からないまま、お前一人でその条件を飲んだのか?」


これはマズい予感。


「それをゆっくり決められる状況じゃなかった。」

「っ!いや。それは分かってるけど、それでもいくつか提示の一つや二つ決めて――」

「考える余裕が無かった。」


「な!」


少しだけスズの声が、大きく返ってきたように聞こえた。


表情はいつもと変わらない。

表情は変わらないのに、追い詰められているように見えた。


「だから、お前は!」


大声を上げ、和さんはスズの方へ一歩踏み込んだ。


ダメだ。


「和さん!!」


思ったよりも大きな声が出た。


沈黙が流れる。


「…とにかく、上に上がった方が良い。今、これ以上話しても意味がない。」


スズはそういうと、冷蔵庫の奥の方にある部屋の中へ入っていった。


「和さん。まずは上がりましょう。」


二人がなんで喧嘩したのかは分からない。


それでも。

あそこで止めなきゃダメだと思った。


だって、そうしないと・・・


多分、スズが今にも泣きそうに見えた。


「大声を出してすみません。・・・分かりました。」


スズにそんなイメージはまったくできないのに。


私にはそう見えてしまった。


静かに階段を上がる和さんの背中を追って、私も階段を上がった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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