疑問:私はどこまでが私なのかな?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
相談所の地下から、多分精霊の世界に来てしまった。
そこへ、アディール・クラーレンが姿を現した。
周りを見てもイザベルもいなければ、影の中にルーナさんの気配もない。
たぶん今ここにいるのは、私と和さんだけ。
あたりには、不気味なほど鮮やかな花畑がどこまでも広がっている。
出口があるのかすら、分からない。
帰る方法はあるのかな・・・?
–やっとそれらしい形を得られたと思ったところで、君という存在が現れた。
クラーレンは、こちらの様子を気にすることもなく一人で話し始めた。
–なぜか精神体としての私と同じ立ち位置でありながら、肉体的な干渉方法を持ち、さらには魂への接触も可能。
全てあの通路の橋の上で起こったことを言ってるよね。
–君はどうして、そんなことができるんだろうか?
問いを投げかけているのに、クラーレンは私達の反応を気にする様子がない。
–私はね。ある仮説を持っている。
和さんはクラーレンへ顔を向けている。
その表情は、私の位置からは見えなかった。
–世界に存在できる魂には上限があるのではないかと。
ずっと、何の話をしているんだろう。
世界の魂の上限?
言葉の意味は分かるのに、それがどうして私に向いてくるのかが見えない。
–君の魂は、イヴの魂からその形を変えたのだろうか。
私の魂の形?
魂を見ることができるようになった私は、何かが変わった?
気づけば、目に力が入っていた。
クラーレンの姿には黒い靄がいくつも重なって見えて、黒い靄が重なり、本来の輪郭が潰れて見えた。
これが魂?
今まで見てきたものとは明らかに違う。
–それを私が確認することができないということが、非常に残念でならない。
–それはつまり、お前が彼女に興味を持っていても、調べられないってことだろう。
和さんが、話し続けるクラーレンの話に口を挟む。
–それなら、彼女から手を引け。
クラーレンと視線は合っていないはずなのに、黒い靄だけが和さんを見ている気がした。
体の周りにある黒い靄だけが、和さんの方へ意識を流している。
和さんの服を強く握った。
–それは無理な話だと、君なら分かってくれるだろう?
–なに?
クラーレンが何を考えているのか、今どういう感情で話しているのか。
今まで、どんなに無表情なスズでも、ガルシアさんでも、初めて会ったどんな人でも、そこに雰囲気や空気みたいなものがあった。
–彼女の傍にいる君は、昔の私に似ている。
–っは、どこが!
クラーレンと話しているはずなのに、中身が空洞みたいだった。
–彼女に近づくことで、その答えに近づけると。
–・・・・。
–世界に存在できる魂の数には、限りがあるのかもしれない。
もしwalkerの魂が、その枠に含まれていないのだとすれば。
その質が変化しないことにも説明がつく。
なら彼らは、生き物とは別種の存在なのではないだろうか。
–そう。まるで神のようだ。
どこに彼の感情はあるの?
靄だけが、生き物みたいに脈打った。
–その神に近づく為に、私は彼らの見る永遠を知りたい。
–それが、神の怒りに触れることになってもか。
一瞬。笑った?
–それは大変光栄な話だな。やっと答えに近づけたことと同義じゃないか。
クラーレンの黒い靄の一部が、私の方に流れを変えた。
–先に天罰を受けるのはどちらだろうね。
黒い靄の奥に、こちらを覗く何かがいた。
そう思った。
その瞬間。
息が止まった。
空気が喉で凍りついたみたいに、息が入ってこない。
息が・・・できない。
–っあ・・・わた、しは・・・
–アリスさん?
アリス?
–walkerの魂である君の魂は、その本質はwalkerのままなのだろうか。
私の魂。
–それなら君の自己も、きっとイヴとして、君として、残り続けるのだろうね。
イヴさんとして、私として・・・?
私は、アリスなんだよね?
それとも、イヴさんの続きを生きてるだけなんだろうか。
黒い靄が目の間に広がる。
遠くで、和さんの声が聞こえる。
靄は、頭の中へ流れ込んできた。
視界に夜のカーテンが落ちてきた。
視界が暗い海の中へ沈んでいく。
「イヴ。準備はいい?」
水泡の中で声がハッキリと届いた。
誰の声?
温度が無い声。
「・・・・・・ふふ。面白い・・・・。私があんなにあなたの事を殺したんだもんね・・・。一度くらい・・・。最後ぐらい・・・・・確かに良いわね。」
別の声。
別の声のはずなのに。
耳に触れた瞬間、どうしてか自分の声だと思ってしまった。
空気の質感が急に変わった。
ここはどこ?
「分かった。」
肌触りの良いシーツ。
多分、ベッドの上で横になってる。
手が動かない。
視界の端には、誰かの影。
その人が、同じベッドに上がってきた。
女の人。
静かに、寝ている私の上にまたがるように乗った。
月明かりしかない部屋の中。
表情は見えない。
その人が、私の首にゆっくりと手をかけた。
近づいて来た視線。
知らない女の人。
でも、その目だけは知っている。
首にかけられた手は冷えきっている。
私の体も冷たいのか、どちらの体温も感じることはできない。
目が合った。
どうして、こうなってしまったの?
ねぇ。
あなたも結局、この子の方が気になっていたんでしょ?
あぁ羨ましい。
どうして、何もしないあなたは良くて、私だとダメなの?
あぁ妬ましい。
あなたに少しでもこの苦しみが伝われば良いのに…
でも、もうこれで終わりなのね。
やっと終わるのね。
それなら、最後に…
「っ・・・・私はあなたが憎い。」
–カラーン
木の響くような音。
あれ?
≪お嬢さん。お入りなさい≫
場違いなくらい軽い男の声。
聞いたことがある声。
あれ?
これって・・・誰?
≪ほらほら、君は今、違うでしょ。フィアリ・フォーラスさん。≫
フィアリ。
雷みたいに、全身の感覚が跳ね上がった。
同時に意識が、出口を見つけた水のように一気に流れた。
「アリスさん!!!」
「っは!」
暖かい空気が肺に入ってきた。
–っつは!あれ?あ・・・・和さん。
同時に視界に、和さんの顔が入る。
–和さん・・・?
–良かった。大丈夫ですか?
–ここは・・・・・?
周りには、花畑が広がっている。
場所は変わってない?
でも。
黒い靄だったクラーレンの姿がなくなっている。
そして、代わりにスズと・・・何故か、勘右エ門さんがこちらを背に立っていた。
≪だからぁ、彼女がダメだって言わなかったのよ?≫
白い精霊。
スズと話すように、向き合っている。
今、これってどういう状況・・・?
まだ喉の奥に息苦しさが残っていて、頭がうまく回らない。
–それは了承じゃない。私とのルール違反だろう。
≪なんでダメなの?だってその方が良いじゃない。≫
精霊は、やっぱり分からないとでも言いたげな、素直な表情をしている。
–もういいよ。勘右エ門。
スズは、白い精霊に背を向けるように、私達の方に振り向いた。
≪お前は、まだ属性を持たないねぇ。できたばかりだから、ちょっとおいたが過ぎたかな?≫
≪なんで?なんで?どうし・・・?≫
精霊の言葉が空気に馴染んでいくように、姿と一緒に光に絵の具のように混ざっていった。
勘右エ門さんが、何かしたようには見えなかった。
精霊は、最初から存在しなかったみたいに跡形もなく消えた。
いつもの精霊の消え方と違う。
–え?
–ひとまず帰ってから話そう。頼む。
スズは、私と和さんの背後へ視線を投げた。
≪分かったわ。ごめんなさいね。気を付けてお帰り。≫
さっきの白い精霊とは違う、暖かい風のように柔らかな声。
後ろを振り返ろうとすると、一瞬視界の端に緑色の光が見えた気がした。
でもすぐに、視界は切り替わるようにその明るさを失っていった。
真っ暗になりきらずに、少し前にいた地下の暗さに戻った。
さっきまで明るい場所にいた反動なのか、かなり暗い。
でも、相談所の地下に戻ったんだ。
肩の緊張感が抜けた。
確か、地上に上がる階段にいたはずなのに、今は地下のフロアに座っている。
視界にはパソコンの乗ったデスクやソファと大量の資料の山。
和さんとスズの立ち位置は、さっき花畑にいた時と同じまま。
和さんは私の傍で、背中を支えてくれて、スズは正面に立っている。
スズが迎えに来てくれた。
細かい状況まではまったく分からない。
それでも、あの訳の分からない場所から、私達を引き戻しにきてくれたのだと、それだけは分かる。
二人の間に、冷たい空気が張り詰めている。
「・・・えと。ごめんなさい?」
「怒ってないよ。大体の状況は妖精から聞いた。」
スズの表情はいつもと変わらない。
声のトーンも確かに、怒ってる感じはしない。
それでも空気はやっぱり重い。
「スズ。詳細が聞きたい。」
「先に上がった方が良い。イザベルが日向達に伝えて、私はその連絡を受けた。上でみんな心配してる。」
そっか。
すぐ上がった方が良いよね。
「…アリスさん、怪我は?」
「い、いえ!まったく!何も!大丈夫です。上がれます!」
和さんが私に向かって振り向いたので、とっさに和さんに支えてもらっていた背中を起こした。
息の苦しさはもうないし、体は少し軽く感じるぐらい。
まったく問題はなさそう。
そんなことよりも、とにかく二人の雰囲気が重すぎる。
「それならアリスさんは先に、上がって――」
「和も夕飯の時間だから、一緒に上がった方が良い。」
和さんが私を先に上がるように言う言葉に、スズが重ねた。
和さんの視線がスズへ戻る。
「これは俺の優先順位だ。」
「今急いで話すべき内容じゃない。それよりも――」
「それを決めるのは俺の勝手だろ。」
ううう。
これはやっぱり喧嘩してるよね。
そういえば、勘右エ門さんはいないのね。
「クラーレンが引っかけたことが原因だろうけれど、精霊がちょっかい出してきただけだろう。」
「それを収めるのに、なんで勘右エ門さんが一緒に来たんだ?」
確かに、それはちょっと引っかかる。
勘右エ門さんの正体を、スズは分かってるんだろうけれど。
「精霊のルールは上位精霊にしか管理できない。その干渉は勘右エ門に頼むのが早かった。」
「その交換条件は?」
「まだ決めてない。」
和さんが、勢いよく立ち上がった。
「は?待て。どんなリスクかも分からないまま、お前一人でその条件を飲んだのか?」
これはマズい予感。
「それをゆっくり決められる状況じゃなかった。」
「っ!いや。それは分かってるけど、それでもいくつか提示の一つや二つ決めて――」
「考える余裕が無かった。」
「な!」
少しだけスズの声が、大きく返ってきたように聞こえた。
表情はいつもと変わらない。
表情は変わらないのに、追い詰められているように見えた。
「だから、お前は!」
大声を上げ、和さんはスズの方へ一歩踏み込んだ。
ダメだ。
「和さん!!」
思ったよりも大きな声が出た。
沈黙が流れる。
「…とにかく、上に上がった方が良い。今、これ以上話しても意味がない。」
スズはそういうと、冷蔵庫の奥の方にある部屋の中へ入っていった。
「和さん。まずは上がりましょう。」
二人がなんで喧嘩したのかは分からない。
それでも。
あそこで止めなきゃダメだと思った。
だって、そうしないと・・・
多分、スズが今にも泣きそうに見えた。
「大声を出してすみません。・・・分かりました。」
スズにそんなイメージはまったくできないのに。
私にはそう見えてしまった。
静かに階段を上がる和さんの背中を追って、私も階段を上がった。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




