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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
165/201

答え:場が違えば、情けもただの仇

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

エルフであるアーシャとの情報交換を重ねるごとに、妖精が相談所にいる数が増えてきた。

中にはアーシャからの伝言を運んでくる妖精もいれば、ただ気まぐれについて来ているだけのモノもいて、正直かなり鬱陶しい。


こちらから話しかけない限りは、あまり関与してくることはないけれど、それでも何を見てそれをどこへ持っていくのかもわからない。

彼らが何をするかは、その時々の彼らの欲求次第なのだから。


そして気になるのは、妖精と一緒に時々精霊も顔を出すようになったこと。


≪ねぇねぇ。聞いてよ。≫


普段話を聞く時に現れる精霊とは違う。

その見覚えのない精霊達も、周りの妖精につられて話しかけてくる。


「…はぁ。」


みんなへは、地下に極力足を踏み入れないように伝えているけれど、このまま放置しておくわけにもいかないか。

アーシャにも伝えて、少し妖精側からまずは注意を促しておいた方が良いだろう。


≪旅人は、ずっと好きな場所で好きにいられるのね。≫


好きな場所で、好きに。

人によっては確かに、良く見える言い方だろうな。


妖精や精霊にとって、生死という概念はない。

彼らは共有思念体であり、そこから生まれる個々の思念も、人間の呼吸のように自然に生まれては消えていく。


彼らはそれをまるで善意のようにこちらに押し付けてくる。

そんなもの、無視してしまった方が楽だろう。


あたりに漂う光を無視して、モニターに視界を向けた。


できれば次の週末で、怪異の世界の探索を一周したい。

もう使われていなくても、フォーラスの拠点はいくつか目星が立っている。

どこかに扉の履歴が残っていれば、攫った先の世界の候補にもなるはず。


元々可能性として上がっている一つは、巨人の世界。

そして、最初に行った怪異の場所にも重なっている、鬼の世界。

後は今までの流れからも、悪魔の世界とエルフの世界。


フェンリルであるバースを連れて行ったとしても、多少のリスクはある。

ここで、私がもしも一時的にここの席を開けてしまえば、アリスを放置することになってしまう。


今後は、和がいない場合も想定されるのだから…


今はできるだけ安全な手段を――


「……」


変な話だ。


それはつまり、元々の想定では、有限である彼の存在を前提に、私は今まで考えていたことになる。


多少の危険を冒したとしても、良い結果が得られる可能性の高い手段を選ぶ理由に…

いつの間にか組み込んでいたことに。


変えたつもりはないと言いつつ、結局変わっていた。


それはダメだ。

戻すべきだ。


“誰かがそこに居続けてくれること”を前提にして、動いてはいけない。

そう思わなければ、私はまた判断を誤る気がした。


勢いよく椅子を立ち上がり、奥の扉へ早足で向かった。


扉をくぐり、白い通路に入る。

この景色が答えだろう。

私には、帰る場所なんてものはない。


–カチャ


「失礼。」


扉をくぐり、部屋へと進む。

リビングのテーブルの影が動く。


「やっと会えたね。」


「…気づいていたのか?」


魔法世界の私の家。


「ただの消去法。」


リビングに姿を現す紫色のスーツを着た男。

ブラッド・オルティース。


そもそもこの場所を知っている者は少ない。

フォーラスやクラーレンなら、既に何度も接触している。

そうなれば、わざわざ彼らとは別に接触しようとしているのは、その関係者しか残らない。


「まず、人の家を勝手に拠点にするのはやめて欲しい。」


「…なぜ分かって、わざわざ会いに来た。」


たった数メートルの距離。


「もうお前の目的が果たされるのは難しい。」


「…何を知っている?」


ブラッド・オルティースは、死神として長く回収部を勤め、真面目な成果を認められた経緯がある。


「お前は、単純に私達walkerの存在そのものに対しての疑念で、動いている可能性が高いと思った。」


フォーラスに殺させた、アリスと山本梓の履歴の代わりに載せる為の第三者。

死神側の情報からその人物の経緯を調べ、魂そのものの消滅を狙った可能性。


それは、フォーラスにとってはただの人間。

でもブラッドにとっては、その魂をどうするかの方が重要だった。

そう考えれば、ここまでの動きはむしろ単純に見えた。


ガーディの秩序側に属しながら、秩序そのものに絶望した管理者。


「…管理できない魂がなぜある?」

「聞く相手が違う。」


死神も個がある以上、ルーナのように独自の思考に進んでいくことが起こる。

しかし、死神にとって管理者という立場は、絶対。

その基準以外の物に対して、嫌悪という形で表層に出ることは、すでにあのビル内での私への視線から明白なこと。


「2番目のwalkerのように、回収すればいい。」

「それが今は難しいと分かっているから、こうしてここで私を待っていたように見える。」


「…それなら、ここまでということなんだろう。」


その眼に光は見えない。


「私からの提案は一つ。今の悪魔との契約については、時期はこちらで決めさせてもらうがいずれ提供する。」


「…何?」


明らかな不信感を持って、こちらに視線を向けてきた。


「その代わりに、ケーリー・フォーラスの魂の場所を知りたい。」


「…死神の席に戻る事はできない。」


仮に悪魔との契約が解消したとしても、回収部としての彼の席はないだろう。


「お前の疑念は、死神の多くが持っているモノだろう。だがその答えを持つ者は存在しない。

テーブルの影に戻りたいなら止めないけど、まだ先へ進みたいならガルシアへは繋ぐ。」


「…結局、無意味だったのか。」


それが分かれば、フィーもフィフも苦しんではない。


「それを決めるのも私じゃない。」

「なぜお前は他の生者と違い、そのままでいられる。」


少し前までは、それに同意しただろう。


「変わらないことの方が、難しいのかもしれない。」

「?」


今は関係ないことか。


「それで、どうする?」


ブラッドの視線から不信感が薄くなる。


「…ケーリーの場所については、今は追ってない。後から伝える。」

「分かった。教える気があるなら、またここで。」


そこに恩も仇もない。

だからこそ、この交渉は成立する。


読めなかったブラッドの意図から、クラーレンの意図が抜け、その目的が明確になった時。

今回の神の関与が、ブラッドにとってかなり迷惑である可能性が高くなった。

ブラッドにとって重要なのは、最初からwalkerだけだった。


クラーレンがイヴを戻そうとすれば、止める気ですらあったのかもしれない。

そのブラッドの悪魔との契約条件となれば、私の魂回収を目的に私の肉体を代償にすることだろう。

もしも、これ以上クラーレンと動く理由が無いのであれば、次もここで会えることを期待しておこう。


扉をくぐり、もと来た道に戻る。


相談所の地上へ上がると、もう寝静まっている時間。

玄関をくぐり、少し感覚を覚える為に走り始めた。

このままソファに入っても、眠れない気がした。


片目を失った今の、半分しかない視界。

それだけを頼りに、足が地面に届く感覚を覚えるしかない。


前よりも速度は遅い。


同じ距離で足を出したつもりでも、距離感が曖昧な視界では、ずれる。

そうなれば、地面の反動を受けた体の反射に頼るタイミングが出てくる。


「・・・はっ・・・はっ。」


もしもブラッドが死神の世界へ戻れば、クラーレンにとって魂の研究は難しくなるはず。

クラーレンがブラッドだけに、それの全てを委ねていた可能性は、正直低い。

それはつまり本質的な情報提供者が見えてくることになる。


ブラッドが持っている死神の権利だけでは、ここまで死神側で起こった内容の全てをブラッドのせいにするには少し無理がある。

恐らくは、他にも協力者はいるはず。


「・・・はっ・・・はっ・・・っつ。」


踏み外した。


「はぁ。」


アリスが魂が見えるということについて、エルの見解では、精霊からの加護という可能性。


精霊にとって相性のいいアリスの魂は、精霊から見て分割された魂として不安定に見え、

その不安定感を補うために、提供された加護。

それは、死が近い人間に幽霊や精霊が見える現象に近いのかもしれない。

あくまで回避するための手段という授け物だとしても、迷惑でしかない。


「つ!」


ただ走るだけの今の状況でも、考えながら走るのはかなり集中力が必要だな。


「…はぁ。」


これを続けていくのかどうか。

いや、私はいずれそう遠くない先で、この体を諦めると思う。


その時には、恐らくあの喪失感のある目を見る事になっていた。

それが早く来ただけなのだから、遅くなるよりお互いにとってそれが良かったはず。


予定していた半分も走っていないけれど、時間はずいぶん経ってしまっている。

明日のことも考えれば、もう風呂に入って寝ておいた方がいい。

これ以上ここにいても、また繰り返すことは目に見える。


和のあの視線だけが、胸の奥に小さな棘みたいに残り続ける。

けれど、だからといって、それを行動の基準にしてはいけない。


相手がいてくれることを当然として、先を決めるのは違う。

それは信頼とは別だ。

ただの甘えに近い。


ブラッドとの交渉には、そういう甘さはない。

だから成立する。


情がないからこそ、場が荒れないこともある。

近くないからこそ、壊さずに済む話もある。


今はまだ、そちらを頼る方がましだ。

それで後から何かを失ったとしても、少なくとも同じ見誤りは繰り返さずに済む。


「わ!驚いたよ。こんな時間に会えるとは。」


玄関を開こうと近づくと、先に玄関が開いた。

颯太が寝間着姿のまま立っている。


「妖怪の世界に馴染んでいる颯太には、今の時間は寝づらい?」

「まぁそうなんだよね。」


颯太からは昼間の明るさが薄れ、静かな雰囲気の返事が返ってくる。

夜と共に動き出す妖怪達の中で、人間としての生活スタイルを維持するのは大変だろう。


「何か飲み物でも入れようか。」


颯太を連れて三階へ上がり、台所の明かりをつけた。

こういった深夜に、たまに日向達が起きてくる時に作ることになるので、ココアのある場所も作り方も問題はない。


「ここに居続けてても、颯太の欲しい答えには繋がらないよ。」


「・・・ふふ。スズちゃんにはお見通しかな?」


カウンターの向こうに、柔らかく笑った表情を覗かせる。

恐らく颯太は人間として、妖怪の世界で生きづらいのだろう。

だから、他の世界を行き来し、今ここにたどり着いた。


最初は、ただの好奇心だったのかもしれない。

けれど、こうして今の相談所に居続けることで、元々どこかにあった疑問が深まる。


「それは亜季子と話すべきだろう。」

「そうなんだけど。それを言うと、きっとお母さんが悲しい表情をするって分かってるから。」


青森の実家の写真からの予測でしかないけれど、亜季子はおそらく見た目の問題から、基本世界を離れるしかなかった。

それでも完全な妖怪ではない以上、妖怪の世界でも生きづらい場面は生まれる。

そして、その息子も同じ問題を抱えていることは分かっているはず。


「颯太が今の生き方を選び続ける場合、いつか亜季子は今以上に悲しむことになる。」


移動手段があるとはいえ、他の世界を行き来できるただの人間。

しかも、まだ子供でもある颯太には、常に高いリスクがある。


「・・・スズちゃんっぽいね。だからここはこういう場所になったのかな。」

「私だけじゃ、こうはなってなかった。」


静まり返っているフロアを見渡す。


アンジェラが、日向達を頼んできた。

和やウーノ達がここにいたいと希望した。

そんな彼らがいたから、アリスも安心して過ごせているのだろう。


…そこには確実に情があった。


「颯太。ここに長居すれば、戻れなくなる可能性もある。

簡単なことではないけれど、早めに決めた方がいい。」


ココアを手渡した。


「ははっ。そこですぐに出て行けって言わないなんて、本当にスズちゃんは優しいね。」

「追い出したところで、祖父から受け継いだその能力で、戻ってくることは簡単だろう。」


世界を行き来できる妖怪なんて限られてる。

当時は、魔法世界にいた死に近いアリスへ干渉できた亜季子のことも含めれば、その正体は高い確率で一つ。


「君と目があった時、もう一度君に会いたいと思ったのは本当だよ。

でも、行きたい場所に行けたのはこれが初めてだった。

・・・それがどういう意味かも分かってる。」


「それなら、もうこれ以上言うことはないよ。」


変に情をかければ、余計に決められなくなる。


時間は限られている。

どんな生き物であろうとも、いつまでも同じ時間が永遠に続くことはない。


「・・・僕が本当に君を連れて行きたいって言っても、君はやっぱり来てくれないのかな?」


–旅人は、ずっと好きな場所で好きにいられるのね。


確かに好きな場所を自由に選べる。

でも、選ばない。


「…逃げないと約束したからね。私はまだここにいるつもりだよ。」


そう望まれなくても。

まだ、そうしたいとどこかで思ってる。


結局は、割り切れない。


「はぁぁぁぁぁ・・・そっかぁぁぁ。かなわないなぁ。」

「今、君が見るべき相手は私じゃない。まずはそちらから頑張りな。」


ミルクパンを洗い、片付けた。


「私はさすがにそろそろ寝る支度をするよ。」

「はーい。おやすみ。スズちゃん。」


階段を上がり、お風呂場へ向かった。


相手毎に選択も違えば、更に優先順位も異なる。

それでも手放せないものがあると分かっているのに、同時に手放すべきだと過去の私は言っている。


場が違えば、同じ情でも形を変える。

なら、今のこれは何として扱うべきなんだろう。


誰のためにこの選択は必要なんだろうか。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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