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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
162/201

疑問:普通の時間は、どこまで普通?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

日向が手にしているスカートを見て、秀人がちょっと苦い顔をする。


「ねぇねぇ!これどう?」

「えー日向。それはちょっと短すぎない?」


確かにスカートにしても、長さが太ももの半分しかない。

座ったら危ないんじゃないかってくらい短いかも?


「むー」と顔を膨らませた日向へ、尚弥さんが助け舟を出した。


「でも、日向なら似合いそうだね。」

「だよね?だよね!」


次々に服を選んでは腕に重ねていきながら、日向は試着室へ入って行った。


そう。

今日は、以前尚弥さんと話してた買い物に誘われて、みんなでショッピングモールに買い物に来ていた。


メンバーは尚弥さん、日向、秀人。

それに颯太君と、その颯太君に半ば引っ張られる形で来たスズ。


「アリスさんも、これくらいでも、バランス的に似合いそうだけどどうかな?」


尚弥さんが手にした服は、かなりふわふわしたフリルのある長めのスカート。


「こ、これは凄いですね。私が着たら、ちょっと無理してる感じになりませんか・・・?」

「今どういう見た目だと思ってんのよ。金髪娘なんだから、これぐらいじゃないと逆に似合わないわよ。」


と、横から珍しく人の姿をしたイザベルが顔を出した。

さすがにショッピングモールで、猫の姿のままでいるのは厳しいもんね。

そんなイザベルの人間姿を見るのは、これで二回目。


改めて見るイザベルの人姿は、少し狐目で、どこかカッコいいお姉さんって感じがする。

同じ声なのに、目線の高さが違うだけで、いつもより“隣を歩いている”感じがして少し嬉しい。


「そっか・・・金髪という前提で、服を選んだことなかったや。」


日向が奥の試着室から時々カーテンを開いては、楽しそうに秀人やスズに見せている姿が目に映る。

さっきの短めのスカートも、日向が着ると自然に見えるから不思議だ。


「それならより、まずは色々試してみた方が良いですね。この色違いとか、イザベルさんと一緒にどうですか?」

「あら良いわね。ワンサイズ大きいのあるかしら?」


スズ達の方を見ていたので、気が付けば、尚弥さんは更に服を増やして持って来てくれていた。

これから暖かい季節に変わっていく時期だし、春物も見て行こうかな。


イザベルと一緒に試着室へ向かうと入れ替わりに、日向達が出てきた。


「スズちゃんも何か選んで良いー?」

「服は足りてるから、今日は日向達のだけでいいよ。」


うん。

いつものスズだね。


スズは自分の服売り場だと露骨に立ち止まらないのに、誰かが別の棚へ移れば自然についてくる。

興味がないというより、付き合う方に慣れている感じがする。


「ダメダメ!今日はスズのも選ぶよー。さぁ颯太チョイスも見せてもらおうじゃないの!」

「よし来た!選んでくる!」


颯太君も慣れない場所でも、ほとんどいつもと変わらないね。

それでも日向や秀人の動きを参考にしながら、周りを真似しながら動いているせいか、たまに不自然になる時がある。


「…まぁほどほどに。」


試着室の鏡に映る自分は、見慣れないのに、もう他人とまでは言えない顔をしている。


尚弥さんやイザベルに選ばれた服を着て、改めて鏡越しに見る。

水色の布が動くたびに、少しだけ気分まで軽くなるのが不思議。

最初は少しフリルは派手かと思ったけど、意外としっくりきた。


普通の買い物をするのが久しぶりってこともあるけれど、買い物自体が楽しくて、気が付けばお昼が過ぎていた。


洋服を買い終え、みんなの空気もすっかり賑やかになっていた。

その中でふと、自分だけ少し離れた場所から見ているような感覚になる。


こうして笑っている時間が、どこまで普通のものなのか、少しだけ分からなくなった。


「さすがにそろそろお昼ご飯にしましょうか。」


秀人の要望で、鞄の買い物を終えたところで尚弥さんがそう言った。

尚弥さんと秀人は、驚くほど決断が早かった。

二人とも、迷う時間がほとんどない。


そんなにすぐ決まっちゃうの?


日向は「かわいい!」で籠に入れ、秀人は値札と生地を見て止め、尚弥さんは似合う形だけを迷いなく選んでいく。

同じ買い物なのに、選び方だけで性格が見えるのが面白かった。


「一階にある中華が美味しいよ!」

「僕はその隣にあるパスタも好きだけどなぁー。」


慣れた日向と秀人が、颯太を引っ張りながら進む。


「あーん。僕、スズちゃんの隣がいいー。」


尚弥さんがその後ろについて歩き出したので、イザベルと一緒について行った。


たまに行き交う人が私をチラチラと見るので、つい目が合ってしまうのが気になる。

やっぱり金髪娘は気になるよね。


イザベルと選んだ色違いのワンピースを早速着て歩いてるので、一層目立つかもしれない。


「周りはあまり気にしなくていい。似合ってるよ。」

「!・・・本当に?」


後ろからついてきてたスズが、右から横に並んだ。


「本当に。春に向けて、水色は涼し気で良いと思うよ。」

「あら、分かってるじゃない。私も似合うでしょう?」


イザベルが反対側から、淡いピンク色のスカートを広げながら顔を出す。


「そうだね。髪色は全然違うのに、不思議と姉妹っぽく見える。」


やっぱり言う時は、率直に言ってくれるよね。

ちょっと照れる。


「・・・あれ?池田?」


すれ違った男の人が、急にスズに向けて声をかけてきた。


池田?

スズの基本世界の名前だけど。

声のした方向に目を向ける。


「!あ。米原君!」

「え?ん?」


声の主と、目が合った。


あ!!

しまった!


無意識に、口に出てしまった。

まさかここで、会社の元同僚に会う事になるとは。


「こんにちは!米原先輩。私がたまに先輩の話をしてたから、この子の方が先に気が付いたみたいです。」


スズが、ちょっと苦しめだけどフォローを入れてくれた。


「そうなの?何繋がり?カワイイ子だね。」

「通ってるジムで知り合った子なんですよー。あんまりちょっかいかけちゃダメですよ。」


スズは、会社や先日沖縄に行った時の軽い調子で答えた。

米原君が、私の方を見た。


「こ、こんにちは。」


ううう。

山本梓として知っている顔。

でも、向こうの目に映っている私は、もう“山本梓の続き”じゃない。


そう思った途端、少しだけ足元が落ち着かない。

知っている顔なのに、もう同じ場所には立っていない気がした。


「えー池田。ジム通ってんだー?今度俺にも教えてよ。」

「先輩にはぜーったい教えませんよー。今日は他の子も一緒に来てるんで、また会社でー。」


そう言って、まだ話したそうな米原君を無視して、スズが切り上げた。

前を見ると少し先で尚弥さんと一緒に、日向と秀人がニヤニヤとこちらを見ていた。


「スズとアリスの会社の人ー?」


日向達が近づいてきたところで、スズが眉を顰める。


「…颯太は?」


その言葉で、みんなの空気が固まった。


「・・・え?」

「あれ?」

「さっきまでここにいたけど、どっかお店入っちゃったかな?」


え?

それってかなりまずくない?


さっきまで一緒にいたはずなのに、と思うだけで胸がざわつく。


颯太君はスマホを持っている訳もないので、まず日向達は辺りの店を探し回った。

それと一緒にスズと私達は迷子センターに向かう。


そこで無事、颯太君が待っている姿を見つけて一息ついた。


「ごめんごめん。つい気になった物があったから、みんなを見失っちゃったよ。」

「もー見つかって良かったよ!」

「手を繋ごうかー!」


・・・すぐに合流できて良かったぁ。


「えーじゃあ、スズちゃん手を繋いでくれる?」

「……次は本当に見失うからな。」


とにかく合流できたから良かったけど、連絡手段がないから本当に焦った。

今のところ変なことをしたりはしないけれど、何をするか予想がつかない颯太君は、目を離しちゃダメだ。


スズも、再び迷子にならないように、ってだけだと思うけど颯太君と手を繋いで歩き出した。

その後ろ姿は、頑張って見ても姉弟って感じにしか映らないけどね・・・


その後、ちょっと遅めのお昼ご飯がやっとできた。


食事中は反対側の席で、尚弥さんとスズが少し話し込んでいるように見えた。

話の内容は聞こえなかったけど、それが少しだけ気になった。

二人とも普通にしているのに、少しだけ相談所の空気に戻っている感じがした。

あまりない休みなのに、疲れさせちゃったかな?


食事後は、消耗品や食品の買い物を済ませて、スズが運転する車で帰宅。

今日は途中、ちょっとバタバタしたけど、外出はやっぱり楽しい。


でもさっきから、運転席と助手席にいる尚弥さんとスズの表情だけが、少し違う気がする。

外では普通に笑っていても、二人とも頭のどこかでは別のことを考えているみたいだった。


「あ。帰って来たな。薫さん来てるよ。」


家に帰ると、和さんが階段を降りてきた。


「あぁ。これ頼む。」


薫さん?

会社の同僚に続いて、またまた久しぶりの名前を聞いた。


どうしたんだろう?

私の着物やドレスをオーダーメイドしてくれた薫さんが来てる?

また洋服でもオーダーするのかな?


スズは、和さんへ手荷物を渡して、そのまま奥の応接室へ行ってしまった。


「なんか多くない?どんだけ買ったんだ。」


「へへへー色々買ってしまいました。」

「まぁまぁ。アリスの久しぶりの買い物ってことでー。」

「やっぱ色々と並んでるものも違うんだねぇ。勉強になったよ。」


違うんだ・・・

妖怪の世界のお店では、一体何が並んでるんだろう。


荷物を持って三階へ上がった。


「お疲れ様。荷物の片づけは俺がするから。先にお風呂済ませておいで。」

「お帰リ。」

「キュウ!」「キーキ」「キュ」


みんなで階段を上っていく中で、尚弥さんは上らず和さんと残った。

二人ともいつも仲良しだなぁ。


でも尚弥さんは、どこか真面目な表情をしている。

さっき昼食の時に、スズと話していた時の表情に近い。


「行かないの?」


イザベルが少し上った階段の上から、振り返ったので急いで上がった。


楽しかったはずなのに、帰ってきた途端、家の中の空気が少し変わる。

外に出ている間だけ、忘れていられたものがあったみたいに。


さっきまでの時間が、本当に同じ一日の中にあったのか、少しだけ自信が持てなかった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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