疑問:その境界は、まだぼんやり?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「・・・・・・うううう。」
朝のランニングを終え、お風呂に入って一息ついた。
肉体的に落ち着いたと同時に、昨日の夜のことを思い出してしまった。
湯船の中をぷかぷか漂いながら、イザベルが呆れた声を出した。
「まだ気にしてるのね。」
「だって・・・。初めてだもん。」
「確かに、あそこまで明確にサーズがアリスを叱るのは初めてね。」
そう。
かなりちゃんと叱られたと思った。
“相手のため”という言葉は、ときに境界を曖昧にする。
確かに、その通りだと思った。
ルーナさんが死神だと分かっているのに、そのことを横に置いて日向達と話す時と同じように話してた。
線引きを決めた方が良い。かぁ・・・
確かにリュースさんの時は、もう少し気を付けてた。
でも、なんとなく、出会って数週間。
普段は影の中から何もせず、私が自分の部屋に入ろうとすれば、影から出て隣の部屋に静かに入っていく。
そんなルーナさんが、“気になる”と初めて自分から話しかけてくれて。
多分あの時、嬉しく感じた。
少しだけ距離が近くなれた気がした。
でも。
それで、線が曖昧になる。
分かってるのに、私は近づく方を選んでしまう。
「・・・・・はぁぁ。」
「ごめんなさい。」
ルーナさんが少し離れた場所から、気まずそうに話しかけてきた。
昨日の夜のお風呂も一緒に入って、朝のランニングも影から出て後ろからついてきていた。
そして、今も一緒に湯船に入っている。
「私のせいで怒られた。」
「・・・・・うー・・・んん。」
ルーナさんは、申し訳なさそうな顔をしている。
スーツを着ていないその姿は、普通の女性にしか見えない。
普段の会話は良くても、伝える情報は考えるべき。
それは確かに意識的に注意しないと、私はそのラインを知らず知らずのうちに越えていそう。
現に、今も何を言えばいいのか分からない。
「気にしないで。死神の人と長く一緒にいるの初めてで・・・。」
言葉が出てこない。
「分かってる。私も、距離を間違えないようにする。」
うー。
そう言われるとちょっと寂しい感じもする。
でも、今はその方が安全かもしれない。
着替えて、浴場のある階から三階のダイニングへ降りると、まだ早い時間なのにみんな揃っていた。
「えー!スズちゃん今日も夜しか会えないのー?がっかりー。」
「スズは仕事人間だからねー。」
「時間を確保するのは大変なのだよー。」
「キュウ・・・。」
「本当にスズ大好きっ子なんだね。」
尚弥さんも混ざって、食卓はすっかり朝の熱気に包まれていた。
「そうだね!なんせ僕の運命の人だからね!」
「ぶふっ!・・・・・けほ・・・。運命って、凄いね。」
「キーキ」
今日の朝ごはんは、グラタンみたい。
「あつつ。これ凄い熱いけど美味しい!」
「気をつけてねー。」
「和のご飯はいつも美味しいよー。」
それにしても、颯太君は本当に帰らなくて大丈夫なのかな?
なんだかんだで、もう一週間が経つよね。
「じゃあ会ってすぐ告白したってこと?」
「残念ながら明確には言葉にできてないんだよね。でも、気持ちはちゃんと伝えてる!
それでもスズちゃんからの良い反応が、貰えないんだよー。」
カウンターで和さんから、コンポタスープと海藻サラダを受け取った。
その次に、ルーナさんも受け取った。
「うーん。そもそも状況がおかしくない?日向達は言ってないの?」
「んー?」
「何をー?」
焼き目から湯気を立てるグラタンを、和さんがテーブルへ置いてくれた。
「和とスズの関係。」
「…は?!」
和さんが、一瞬お皿を落としそうになりながら声を上げた。
「うーん。二人の関係、曖昧だから。」
「そうそう。僕らが口を出すのは違うかなー?って。」
「ふんふん?つまり、スズと和はどういう関係?」
「キュウ!」
確かに、颯太君の一直線に流されて、見て見ぬふりしていた部分だよね。
「確かに、明確ではないから良いのか。」
「・・・。」
和さんは自分の皿を運びかけたまま、途中で足を止め、カウンター席に向きを変えてしまった。
「これは三角関係と言えるのでしょうか?秀人さん。」
「うーむ。そうですねぇ。第三者視点の私達からは成り立って見えますが・・・ちらっ?」
でもスズって颯太君のことを、そういう視点では見てない気がする。
じゃあ和さんはどうかということになるけど、和さんはちゃんとスズにとって特別な位置にいる気がする。
二人の間に流れる空気は、他のメンバーとは少し違う。
実際に話している場面は少ないのに、不思議と入りづらい。
「和はまさかのライバルだったのか。それならそうと言ってくれれば・・・は!つまり僕は戦力外に見られている!?」
颯太君が和さんに向かって話しかけると、和さんが少し離れているこの距離でも分かるぐらい、すごく嫌そうな表情で顔を上げた。
「・・・・好きにすればいい。」
「むむ?それは君が身を引くと、つまりそういう事かい!?それはいけない!
僕と和はライバルでいいじゃないか!よろしく!」
その表情を気にする様子もなく、颯太君は和にさらに続けていく。
「ふっはははは!!ライバルかぁ。青春だね。あははは!」
「・・・ぷふ!そっか。そうなるんだー。」
「・・・颯太凄い。ぶふっ。応援してるよ。」
「キュ・・・。」
「そうか。それならよりちゃんと段階を踏んでいくべきだな。」
みんなが笑っていても気にせず、颯太君は真面目な顔。
本当に色々な意味で、君は凄い。
「まずは告白からか。彼女の様子を見る限りでは、まだまだアピールが足りない様子だし、家族計画・・・はまだ後だとしても、人生計画に向けて、彼女の死に場所の好みくらいは聞いてみたいな。」
え?
笑い声が、そこでぴたりと途切れた。
「・・・・ん?死に場所の好みって?」
その中で、一番早く反応を返せたのは尚弥さんだった。
死に場所・・・?
颯太君の中の“妖怪側”が、急に覗いた気がした。
「?死にたい場所はそれぞれあるだろうから。彼女の好みが気になるかな。
僕は昔から海が良いなぁと思ってたけど、スズちゃんはどうだろう?」
「んー・・・?まず、颯太君は、どうして死ぬ場所を決めるのかな?」
「え?だって、決めた場所で一緒に死にたいじゃないか。
みんな、そういう話は先にするものじゃないの?」
本人は本気で当然のことを言っている顔だった。
え?死ぬ場所を決めるの?
みんなが考え込む。
そんな中、ウーノが手を上げた。
「エエと。多分、ウーノ達と同ジ。一緒に生きて、一緒に死ヌ。それが家族。」
その言葉に、颯太君とは違う意味で目が開く。
「でも寿命が違うから、一緒には死ねないよ?」
日向が、ウーノに質問を投げる。
そ、そうだよね。
仮に死に場所を決めても、その時にその場所で同時に死ねるかどうかは分からない。
「ウーノ達の場合、一緒に死ぬト、次に生まれる時間は一緒だって信じられテル。
ダカラ、番が死ぬときハ、片方も自分で死ヌ。」
死を揃えれば、次の生も寄り添える。
ウーノ達は、そう信じている。
だから、片方が死ぬときは、もう片方も一緒に死ぬ。
「なるほど。そういう考え方なんだね。
大切な人と最後をどう迎えるかが、君たちにとっては大事ってことかな?」
「多分・・・?颯太ハ、ウーノ達に近イ?」
「分からないな。日向達はそうじゃないってこと?僕は、ウーノ達の方に近いのかな?」
妖怪の世界で生きていた颯太君の常識は、やっぱり妖怪の常識に近いのかな?
「・・・妖怪は、そういう選択をする。だから、妖怪によっては死に時間を決めて、立ち合いの妖怪に最後の生気を与えることもある。」
ルーナさんが、隣で静かに教えてくれた。
そうなんだ。
私達の場合は、将来に向けて一緒に生きる事の方をやっぱり考えるけど、ウーノ達や妖怪にとっては一緒に死ぬことの方が大事なのかもしれない。
「まぁスズにそれを聞いたところで、どこでもいいって答えそう。」
確かに。
昨日のルーナさんからの質問も、最初は一刀両断だったし。
「なんか古い魔法使いにも習わし?そういうのはあった気がするー。」
「あぁ魔力の受け継ぎみたいなのだっけー?和知ってるー?」
日向と秀人が昔のことを思い出すように、いつもより低いトーン。
魔法使いにもあるの?
「今はほとんど行っている家はないけれど、確かに婚姻の儀とかで昔はあったな。」
そうなんだ。
こういう世界毎での歴史や伝承とかは、それぞれまったく違うだろうし。
それによって、家族の在り方や生き方、死に方も違ってくる。
それが相手にとって大事なことなら、知らないまま踏み込んでしまうこともある。
それが本当に相手のためかどうかは、後にならないと分からないこともある。
スズの言ったことは、こういうことも含んでいるのかもしれない。
それを分からないままに、曖昧に対応するのは確かに気をつけなきゃいけない。
食事を終えて、それぞれが好きな場所に向かって行った。
日向達は階下に降りて行ったから、きっと家庭菜園かな?
私は、まだ午前中だしちょっと勉強しようかな。
イザベルと階段を上がる。
最後までダイニングに残ったのは、和さんと尚弥さんだった。
尚弥さんはゆっくり食後のコーヒーを飲みながら、窓の外を眺めてた。
–
「っぶふ・・・。」
「まだ笑ってるのか。」
朝食が終わる頃には、ダイニングには尚弥だけが残っていた。
カウンター席で、コーヒーのお湯を用意する。
「颯太君、面白い子だね。」
「・・・あまり首を突っ込むなよ。山本梓さん関係だから、フォーラスにも繋がってるかもしれない。」
尚弥がリュースに攫われて、大怪我をしたのはまだ最近のこと。
ここに関与している以上、尚弥も基本世界で普通に働く人間だからといってまったくの無関係ではない。
尚弥は、窓から室内に視線を戻し、首をすくめる。
「だから、扱いづらそうにしてるんだね。君たちの関係は、本当に曖昧だもんね。」
「・・・明確なものを求めたところで、意味を持たせる気が、あいつにはない気がする。」
あいつは、どんな時でも線引きをしっかり引いている。
颯太のことも。
ルーナさんのことも。
それ以外の相談所にいる、日向や秀人、圭やアリスさん。
そして、俺に対しても。
何か明確なものを求めたところで、多分あいつはすぐには変えない。
今は、変える理由を持っていない。
「そんな風に引いてたら、颯太君に負けちゃうかもよ?」
「かもな。」
「和君。弱気だねぇ。折角沖縄でスズの許可も貰ったのに。」
「押してダメになるくらいなら、今のままがいい。」
線引きを俺が越えようとした時、あいつはどうするだろうか。
その想像の先は、正直悪いイメージばかり。
颯太のようなタイプであれば、尚弥が言う通りそれを超えようとチャレンジするだろう。
分からないその先に向かって、何度でも。
新しいコーヒーを入れなおし、尚弥の方に向かう。
「これは僕視点だけどね。」
尚弥が持ち上げたマグカップに、コーヒーを注ぐ。
「スズは、確かに今の和との状態で満足できると思うよ。」
自分のマグカップにも追加して、台所側のダイニングテーブルの椅子に座る。
「でも、それはスズにとって、その先がないだけにも見える。」
「先がない?イメージできない?」
尚弥は少しだけコーヒーを口にして、続ける。
「和。スズが過去に親しい関係を持ったことがある人の話、聞いたことある?」
「んー・・・・大正とか、古い日本の時代では、お見合い結婚したことがあるとかないとか。」
文献でしか知らないけれど、昔の日本は家系を守るために、そういう結婚が主流だったと。
魔法世界でも似たような時期はあった。
そうなれば、環境上親しい関係といえるだろうな。
「僕から見たら、君たちはお互いに距離感を見極めようと、シーソーしている感じ。」
押せば離れ、離れれば近づく。そんな意味か?
「それは根拠がなくないか?」
「そうかな?どちらも自覚がないけど、スズの選択肢にはちゃんと和が入ってる。
それって、結構すごいことだと思うよ。」
選択肢に入ってる?
「いやいや。現に今も圭達と妖怪の世界に行ってるんだぞ?」
「ノンノン。和くーん。なんでスズのことになると視野が狭いかな君。」
日向達みたいな軽い調子を真似しているのは分かるが、少しイラつく。
「少し前に、橋から落ちたとかで色々あったんだよね?」
スズが通路の端から落ちて、俺たちの記憶から消えた時のこと。
「確かにあれは無謀だった。そして僕から見ると、ちょっと無責任にも見えた。」
「・・・まぁ。そうかもな。」
確かに戻れる保証もないのに、いつもより無理を通していた。
「スズって、“自分がいなくなった後”に和が残っていることを前提に、動いてる気がするんだよね。」
「?・・・どういう意味だ?」
俺が残されるのはいつものことだ。
アリスさんのことも任されてるし、ここには日向と秀人やウーノ達もいる。
「もしも和がここにいなかったら、日向や秀人、アリスさん達は行き場を失う。」
「・・・・そうかもしれない。
あぁ。だからあの時は俺が残っている前提で、無謀なことを選択してたと言いたいのか?」
その可能性は確かにある。
行動する前には、先の状況も想定してあいつなら動くだろう。
「それって凄くない?フィフだっけ?
他のwalkerなら分かるけど、それ以外を前提条件に含めて選択すると思う?」
「んー・・・。ただの消去法じゃないか?」
「しかもスズ。多分無自覚だからね。」
無自覚?
自覚がない?
「はぁ?無自覚で前提を考えるほど、あいつは・・・。」
どうなんだろう?
「とにかく僕が言いたいのは、もう少し自信を持ちなってことだよ。
さっきは颯太君のことで煽ったけど、スズにとって颯太君が和と入れ替わることは絶対ないから。」
「それができれば、良いんだろうなぁ。」
自信はない。
踏み込める気がしない。
スズがそれで満足してるなら、多分このままだ。
「それこそ和次第だろうけどさ。そのままだと和が持たない感じがしたから、ちょっと外からのアドバイスだよ。」
「・・・・。」
あいつにとって、線引きは生き残る手段でもあると思う。
俺やアリスさんは、そこの危険に対する経験がほとんどない。
だから、どうしてもその境界が曖昧になってしまう時が生まれる。
さっきの朝みたいに、何気ない会話の中でも、少しずつ踏み込んでいくことはできてしまう。
そんなあいつが命綱みたいに握っている線を、俺が越えようとしたら——あいつはどうするんだろうか。
ルーナさんの場合は、それが越えていいものなのかどうか、今まさに試行錯誤しているように見える。
あいつは、それを止めてはいない。
ただ、線は消していない。
でも、曖昧だからといって、何も選ばないままなら、何も変わらない。
越えていい線かどうかも含めて、俺は決めないといけないか。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




