答え:小善は大悪に似ているなら、その情けの行く先は
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「それに答える必要性がよく分からない。」
怪異の世界から戻った夕食後。
ヒナ達やウーノ達がお風呂へ向かって階段を上がるのを見て、私は席を立とうとした。
その時。
アリスの影から、ルーナが出てきたと思ったのも束の間、意図が見えない質問を投げてきた。
「す、スズ・・・。」
「確かにそういう返事もあるわね。」
そう答えるとアリスとイザベル、そして何故か台所に立っている和までが並んで渋い表情をした。
率直に答えたつもりだったけれど、何か違うらしい。
「一応、これってルーナさんの個人的な質問なんだって。」
アリスがおずおずと補足を入れた。
個人的な質問。
それならより一層のこと、こちらの基準を説明したところで、死神である彼女には、その判断がどこへ繋がるのか理解しづらい。
つまり、意味があるとは思えない。
とはいえ、このまま無視して、地下へ戻ると後から和に小言を言われるのは目に見える。
ひとまず窓際の椅子に座りなおした。
座り直しながら、アリス達それぞれの様子へ視線を向ける。
アリスはルーナの方へ体を向けたまま、少しだけ身を乗り出している。
相手の言葉を取りこぼさないようにする時の姿勢。
イザベルはその横で、様子を伺っている。
和は台所に立ったまま、手を止めてこちらを見ている。
会話には入らないが、誰が何を選ぶかを見ている顔だ。
…距離が近い。
物理的な話じゃない。
相手の領域へ踏み込むことに、躊躇いが薄い。
この状況から思いつく予想が正しければ、今のアリス達の方向はあまり良くない。
「それが、気になっている理由は?」
「ここまで死神として見てきた判断と、ここでの判断が違いすぎる。だから、聞きたい。
・・・生者は、その時その状況次第で判断が変わると言う。」
ルーナは、少し言いづらそうに答える。
「それで?」
「そんなに都度の基準や答えが変わっていては、安定性がないようにも見える。」
確かに死神からすれば、基準の安定性は重要だろう。
それも、死神側の一つの基準なんだろう。
「だろうね。少なくとも死神の基準から見れば、その答えはそのまま価値にはなりにくい。」
「なぜ?」
ルーナは、ここまでの様子からの判断にはなるけれど、魔法使いの中でのイザベルに近いのだろう。
周囲の話をフラットに受け止め、一つの意見だけに偏らず、自分の目で判断しようとしている。
だからこそ、危ない面もある。
「生者にとって、基準や判断の先に求める要素は、安定性だけじゃない。」
「状況次第で答えを変えるのは、それが理由?」
相手が”魔法使い”であるイザベルなら、気にしなかった。
だが、”死神”の彼女の場合はそうはいかない。
その姿勢が、死神として生きやすいかどうかで言えば、明らかに否だろう。
「それも一つ。目的が違えば、基準も変わる。それだけの話。」
「だから時代や時間経過、そして状況次第でも判断は変わる?」
魂を公平に判断し、管理するべき死神にとっては、切り分けるべき境界線。
「ただの興味本位なら、ここまでで良いだろう。」
「・・・多すぎる。それは答えがないといっているのと同じじゃないの?」
彼女にとって、この質問はただの好奇心なのか。
それとも、その先に何かを求めているのか。
「そうだよ。実際に残っているものも、正しいとは限らない。それはただ、残っただけ。」
「それを実績として、繰り返すこともある。」
彼女はまっすぐこちらを見る。
最初に会った時は、視線を合わせなかった。
今、その目は真面目に考え、答えを見つけようとするアリスと同じ目をしている。
「無作為に答えを探すことは大変だからね。過去の結果を評価して、それを繰り返すこともある。」
「だけど、それも状況次第だと・・・。」
明確な答えがない不安定さは、死神の観点からすれば、ただ迷走し惰性的に動いている様にも見えるだろう。
だけど、それで良いと私は考える。
基本世界の人間。
魔法使い。
妖怪。
そして、死神。
それぞれ、根本的な部分から違う生き物だ。
違う世界で生きている以上、互いを完全に理解する必要なんて、本来ほとんどない。
大事なのは、違うという事実を見誤らないこと。
ただし——
違うまま関わるなら、その扱い方は選ばないといけない。
アリスとイザベル、そして和の様子を流し見する。
ため息を吐く。
死神にとって、この回答が何の意味も持たない可能性は大きい。
それでも、場合によっては一つの分岐点になることもある。
その判断は私がするべきではない。
「もしも本当に知りたいのなら、まずは一緒に生活してみればいい。
同じ湯気の中で飯を食って、同じ灯りの下で眠るところから。」
「・・・生活してる。」
ルーナ・フレット。
死神として、最終的に敵となるか味方となるかは分からない。
そもそも死神が生者の味方となっては、ガーディからすれば頭の痛い話だろう。
「一緒に食事をして、風呂に入り、睡眠をとる。
死神にとっては必要がないけれど、生者にとっては当たり前のように必要なこと。
それをやって、それでも分からないなら。最初から、分かる必要はない。」
「?・・・分かった。」
これ以上、必要はないだろう。
それよりもこの問題は別にある。
ここまでのアリス達の様子を見ていると、概ね予想は当たっているように見える。
「ひとまず君の質問に答えたのだから、一つお願いをしたい。」
「なに?」
「先に風呂に上がって欲しい。使い方は先に行っているヒナ達に聞いて。
アリスもすぐそっちに向かってもらうけれど、少しだけ話す時間が欲しい。」
アリスの表情が、少し固まるのが目に映る。
多少の自覚はあるようだ。
「・・・分かった。質問に答えてくれて、ありがとう。」
ルーナが、階段を上っていくのを見送る。
「・・・・・・・・えぇと。スズ・・・さん?」
「優しくすること自体は、悪いことではない。」
彼女の大事な長所だと思う。
「・・・?」
「でも、“相手のため”という言葉は、ときに境界を曖昧にする。
善意であっても、必ず良い結果になるとは限らない。」
でも、状況次第では短所にもなりえる。
「っ・・・。」
「それが本当に相手のためかどうかは、後にならないと分からないこともある。」
だからといって、情けをかけること自体が間違いだとは思わない。
ただ——その結果まで背負う覚悟がないなら、やめた方がいい。
それが分かった時に、まだ引き返せる場所にいるならいい。
私は、テーブル越しにルーナへ向けていた体を、ゆっくりアリスの方へ向け直した。
「同じ生活圏で時間を過ごして、特にアリスの場合は、まず相手へ理解を深めようとする姿勢は、とても良いところだと思う。」
だからこそ、ヒナ達ともうまくやってくれているし、他世界の生き物であるウーノ達や圭達のことへの対応も、気になる事はほとんどない。
「それは、簡単に真似できることじゃない。」
「・・・・はい。」
「それでも、気をつけないといけないということは、分かっているはず。」
縮こまるアリスを見たイザベルが、不機嫌そうにこちらを見る。
その気配に気づき、今度はイザベルへ向き直した。
「イザベルも。」
「わ、分かってるわよ。」
特に死神は、これまで生活圏に入ってきた対象とは本質が違う。
恐らく彼女はガルシアやエルやバレンを、死神の基準に寄せているのかもしれない。
しかし同時に、彼女自身もリュースの件や死神の会議を通して、様々な死神の姿を見てきている。
「もしも距離を見誤りそうだと思うのなら、線引きを決めた方が良い。」
死神はあくまで、管理者。
会話が可能で、ルーナのように死神側も理解をしようとする姿勢があれば、友人という関係になることも可能だろう。
それでも――
「今は良くても、後で困ることもある。」
「・・・・うん。」
死神にも死神の基準がある。
それを踏み外してまで、ルーナがアリス側に寄る理由は、今現在において一切ない。
とはいえ、常に一緒に暮らしている以上、彼女を冷たくあしらったり、無視することはアリスはしないだろうし、できないだろう。
「ルーナも、死神としてはまだ安定していない。ひとまずは様子を見るだけに留めるけど、伝える情報は慎重に選ぶようにした方が良い。」
「・・・ごめんなさい。気を付けます。」
あまり言いすぎても、観察期限がまだ定かでない彼女とのこれからの共有時間に対して、アリスも困るだろう。
「もしも、判断しづらいと感じた場合には、保留することも視野に。以上。質問はある?」
「・・・・普通の会話くらいなら・・・良いのかな?」
「普通の会話まで駄目とは言わない。
ただ、何をどこまで話すかは、口にする前に一度考える癖をつけた方がいい。」
「う。・・・はい。」
これ以上は、止めておこう。
「イザベルも。相談所内であれば、常に警戒して欲しいとは言わないけれど、リュースに向けた警戒くらいは残して欲しい。」
「分かったわよ・・・。確かに気が緩んでいたわ。気を付けるわ。」
そこまでにして、少し落ち込んだ様子のアリスとイザベルが、階段を上がっていくのを見送る。
そして、最後に。
視線を送る前に、和は席についた。
「まて、スズ。」
「…和。なんでお前も混ざってる。」
いつもなら、一歩後ろから観察に徹する和まで、今回はルーナとの話に入っているのが目に見えた。
「アリスさんもイザベルも、あくまで彼女の質問の範囲から逸脱するようなことを、大きくは答えてない。」
「そこは問題じゃない。」
そう言うと、和は続けて何かを言おうとした口を閉じた。
「アリスに情報面の精査について言ったのは、彼女が意識的に気を付ける為の手段として、分かりやすくする為。」
「あー・・・なるほど。」
アリスに、本音と建て前を使い分けて欲しいと言ったところで、本来言うべきことも言えなくなってしまう可能性が高い。
「特にここしばらく、アリスの傍についてくれていたお前なら分かるだろう。
彼女が今、明確に敵視する相手はフォーラスくらい。クラーレンにすら、共感性を見せる。」
「・・・そうだな。」
すでに知らぬ存ぜぬではない以上、彼女から他世界のかかわりを完全に遮断するのは違う話。
とはいえ、彼女は自分が今、薄氷の上に立っていることへの自覚が薄い。
「彼女が、数か月前までただの基本世界の人間として生きていたことを忘れるな。」
そんな彼女に全ての危険を理解してもらうのは、まだまだ時間がかかる。
「そして、イヴとの問題が収束したことと引き換えに、彼女の特異性はフォーラスやクラーレン以外に対しても慎重な対応が必要になる。もちろんその対象は、魔法世界も含んで。」
「分かった。分かったよ。悪かった。」
和も和で、相手の気持ちを汲む点では、アリス以上に相手への理解度を高く持とうとする。
だから、これに関しては和にとっても、苦手分野なのはわかっている。
それでも、その境界を甘く見ることは決して許されない。
結果として、泣こうが喚こうが、それこそ死をもって謝罪したとしても、二度と取り返しのつかない場所まで転がり落ちることもある。
基準なんてものは、立場でいくらでも変わる。
その中で出た答えに、普遍的な価値なんてない。
でも——
どんな基準で選んだとしても、
その結果だけは、他の誰にも渡せない。
それが、生きている側のやり方だ。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




