答え:多少なら、一念天に通ずと
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「5番目に会わせてよ。」
「…なんで?」
昨日ミランダからのメールを受けて、朝から魔法世界に来ていた。
その場所は、何重にも結界が重なりほとんどの魔法を遮断。
更にその中でも、魔法が使えないように設置魔法も多重に設置しているらしい。
けれど、魔法は全く見えない私にとっては、いたって普通の部屋の中央で、シャロンと丸いテーブル越しに向き合っている。
「会いたいからよー。この私のお願いを聞いてくれるなら、エルフがいる場所を教えてあげても良いわよ?」
シャロンからの交渉は、概ね予想通りの内容だった。
私にフォーラスが攫ったエルフの場所を教える。
その代わりに、walkerの5番目であるフィフに会わせて欲しいと。
「会う目的を聞いてる。」
「そこまで教える必要無くない?ただの交換条件よぉ。良いじゃないそっちは減るものじゃないでしょ?」
シャロンは、前回話した時も5番目のことを口にしていた。
walkerとして会いたいのだとしたら、個人的ではなくフォーラスとしての目的である可能性が大きい。
「その目的は、私では条件に合わないという意味?」
「探るわねー。まぁ、条件と言えばそうね。だってあなた女じゃない。」
性別の問題か。
その時点で、フォーラス絡みの嫌な予想が頭をよぎる。
walkerは、男でも女でも基本の性質は変わらない。
「シャロンが個人的に会いたいという意味?」
「そうそう。私が、個人的に、男のwalkerに会いたいのよ。良いでしょ?」
わざわざ、男のwalkerに会いたい。
もちろん興味本位の可能性もあるけれど、この女の場合は気軽に見積もらない方が良いだろう。
「男で良いなら、魔法使いでもなんでもいいはず。なんでわざわざwalker?」
「内緒よ。いちいち聞くなんて野暮ねー。」
一瞬シャロンの視線が、右上へ流れる。
条件を指定している以上、理由はあるのだろう。
「それは本人の意向次第。」
「えぇ。会えなかったら交換条件が未達成よ。
ちゃんと連れて来てくれた後で、場所について教えるわ。」
条件が性別と言われると、嫌でもフォーラスの目的として、今までの経緯が思い浮かぶ。
過去にブルース・フォーラスは、私と話した時もwalkerからの子孫について質問してきた。
そして、フィーに対して…
シャロンが女性であることからも、男のwalkerに興味を持っている目的は、同じ理由に繋がってしまう。
「walkerは、子孫はできない。」
walker同士でなければ。
「…なんで言い切れるの?」
シャロンの貼り付いていた笑みが、一瞬だけ剥がれ落ちる。
「これまで、人間以外も含めて数え切れないほど試されてる。」
「もう試してない条件が、一つも無いと言いたいの?」
「全て試したとは言わない。それでも殆どの条件は満たしている。子孫はできない。」
それがやっぱりフォーラスとしての目的なのか。
あるいはシャロンのただの好奇心なのかは、どうでもいい。
「じゃあ逆に聞くけど、まだ試されてない条件が何か、あなた達は本当に把握してるの?」
「それを教える理由はない。」
シャロンの表情から笑みが消えた。
「クラーレンお兄様は、あなた達が基本世界の人間だから、魔力が阻害していると同時に、何か別の条件があると仮定しているわ。」
「それを調べることに、協力する理由もない。」
彼女の指が、私の中央を指す。
「だって、あなた。いたことあるんでしょ?」
「そこから、その条件までしか出てこないのなら、情報不足。無駄足だと言っておく。」
フォーラスの地下の部屋に保管されていたイヴの書物から、私に子供がいたことまで知っているのだろう。
そこまで読んでいるなら、ファストの存在にも辿り着いていそうなものだけど。
中途半端にしか読み解いていないのか、この女が都合が良い部分しか拾っていないのか。
いずれにしても付き合う理由はない。
「話は以上?」
「なによ。連れて来てくれないわけ?」
椅子から立ち上がる。
「会うだけだとしても、相手の意向を確認する必要がある。そして、それを確認するかどうかをここで返答する必要はない。」
「…はぁ。本当、あなたって冷たいのね。攫われたエルフを、今すぐにでも助けに行こうと思わないの?」
シャロンは、顎に片手を添える。
「助けに行く為に行動はとる予定だけど、解決に向けてどこまで譲歩するかは私の勝手。
そもそもその問題を起こした当事者に、とやかく言われるいわれはない。」
話が通じる相手ならまだしも、シャロンの損得勘定では、人としてのルールが通じない。
相手の弱みや罪悪感に目をつけることに長けていることで、今までの交渉を上手くやってきたのだろう。
「私と話すのは、これで二度目。」
「……で?」
立ったまま続ける。
「その中で、前回私がどういう人間かと判断し、今回の条件を提示したのだとしたら。
そもそもの情報不足も含めて、判断としてはまだ浅い。」
「…あっそ。」
ブルースの方が、交渉内容についてはまだマシだけど、結局はどんぐりの背比べだろう。
そのままシャロンを背に部屋を出た。
廊下を進むと、途中でミランダが窓を背に立っていた。
「珍しく感情的だったわね。」
「…分かってる。」
シャロンに乗せられたとは感じている。
ため息が漏れた。
「エルフの居場所は必要じゃない?」
「シャロンが、正しい居場所を言う理由がない。」
「それはそうね。一応解析班も見ていたから、場所情報が出た場合は連絡するわ。」
「助かる。」
魔法省を出て、スマホを取り出すと和からの連絡が入っている。
メッセージと合わせて、電話も数件。
先にメッセージから目を通すと、颯太が早朝から来ているとの内容。
確かに週末に出直すようには言ったけれど、本当にすぐ来たようだ。
そのメッセージの通知に紛れて、別の宛先からのメールが目に入る。
和からではなく、エルフのアーシャから。
エルフの肉体を持つシャロン・フォーラスの事について連絡したから、その返事だろうか。
魔法世界にある自分の家へ足を進めながら、内容を確認する。
シャロンについて、まず調べてみるとのこと。
そしてそれとは別に、以前相談として話が上がった、攫われたエルフについての状況が聞きたいと。
上位エルフの方でも、やや問題が大きくなってきているようだ。
「……。」
シャロンへの返答を思い返す。
フォーラス全体として、アリスのことや、フィーのこと、そして今回フィフのことも重なっていることは事実だけど、彼女への回答について、いつもと考え方を変えたつもりはない。
もちろん、攫われたエルフを見つけることが、早いに越したことは無いことは分かってる。
でも彼女からの情報の信頼性の低さも含めて、フィフを合わせることは天秤に合わない。
再度交渉するとしても、その条件をのむのは、最低でも彼女からの情報が確認された後だろう。
改めて考えても、そういった結論になる。
それでも、シャロンとのやり取りが頭に残っていた。
…感情が含まれていた、か。
「……。」
自分の中の秤が、わずかに傾き始めている。
シャロンの言葉のせいだけじゃない。
最近は、以前のように切り捨てきれない場面が増えている。
これまでなら、ここまで考えないで切っていたはずなのに。
なぜ?
家に入り、寝室の扉を通路へ繋ぐ。
広がる白い通路。
その扉へ入る直前。
一瞬だけ、リビングに残る違和感。
それを無視して扉をくぐった。
「……。」
–この中に・・・いるのね?
クラーレンの通路と重複した座標の通路で聞こえたイヴの声が、勝手に頭の中で再現される。
なんで今さら、こんなことで…
–だって、あなた。いたことあるんでしょ?
こめかみが脈打つ。
片目になってから増えた頭痛が、今に限って顔を出した。
–カチャ
白い通路を抜け、相談所の地下階段を上がると、庭の方から騒がしい声が聞こえる。
「いいなぁ!僕も使えるようになりたい。」
颯太の声。
玄関の扉を開けると、正面にヒナとヒデ、その奥に颯太とアリス達が見える。
アリスが、魔法を出す練習をしているようだ。
手元で、火を出したり消したりを繰り返している。
「そうそうー。何度も何度も繰り返すのー。そうするとその言葉を言う時には、反射でイメージが浮かぶようになってくるから。」
「だから、日向は昔たまーに、普通に喋ってても魔法を出したりしてたよー。」
確かに昔はヒナとヒデが、家の中で魔法を発動して壁や家具を焦がしたりしていた。
そしてその度に、美弥が不機嫌そうに直していた。
「え?それって危ないよね?」
「魔力をのせなければ大丈夫ー。」
「まぁすぐ消せば良いしね。」
アリスが、日向達の後ろにいる私に視線を合わせた。
「あ!スズー。」
「え?スズちゃーん!会いたかったよー!」
アリスの声に反応して、颯太が両手を広げて走って来た。
「ちゃんと家に帰った?」
「もちろんだよ。」
颯太が飛びついて来たのを受け止める。
「あ。そうそう。だから、お母さんから手紙を受け取ってるよ。」
颯太が一旦私から体を離し、ポケットからくしゃくしゃになった手紙を取り出した。
「ありがとう。」
手紙は封筒に入っているので、封筒の中の紙はそこまで皴は入っていなさそう。
ここに和はいないようだし、三階へ昼食ついでに手紙を見ようか。
「中に戻るの?じゃあ僕も一緒に行くー。」
足を室内へ戻すと、颯太がくっついて来た。
「まぁそろそろ大丈夫かなぁ?」
「颯太、まずは謝るんだよ。」
「分かったよぉ。」
全員付いてくるようで、芝生から立ち上がった。
謝る?
「和を怒らせたの?」
「朝から、台所めちゃくちゃ。」
「ウーノ達も大変だったみたい。」
ヒナとヒデが答えてきた。
なるほど。
スマホにきていた和からの通知数が、いつもより多かった理由はそれだろう。
そして、珍しくこういう場に、ウーノ達がいないことにも納得がいく。
「悪かったって。気を付けるよー。」
三階へ上がると、和とウーノ達がダイニングテーブルに座っていた。
「来たか。ってスズも帰って来てたか。」
「キュウ!!!」
セイが飛びついてきた。
「あ。ずるい僕もー。」
「待て待て、颯太。先に・・・。」
「そうそう。先に。」
ヒナ達が、私に抱き着こうとする颯太の腕を引いて促した。
「うー。朝はごめんなさい。これからは気をつけます。」
颯太が、和やウーノ達の方に向かって頭を下げた。
しばらく静かな空気が流れる。
その空気を見て、和が口を開いた。
「…はぁ。反省してるならいい。とにかくこれからは、もう少し落ち着いてもらえると助かる。」
和が返すと、颯太が頭を少しだけ上げてウーノ達の方を見た。
「・・・はーい。・・・えーと・・・ウーノもごめんね。」
「もう大丈夫。痛くしないで欲しイ。」
「痛いの良くナイ。」
「うンうン。」
「キュウ」「キーキ」「キュキュ」
ウーノ達はその見た目が、子供視点からは気になる姿をしているのだろう。
ここまでの様子で、颯太が朝来て早々に暴れ回ったことは予想できる。
さっきのシャロンのことを思い出した。
育った環境や年齢が違えば、見えている“当たり前”も変わる。
それが極端かどうかの違いだけで、やっていることの本質は、そこまで違わないのかもしれない。
「ありがとう。気を付けるよ。」
「ふむ。良かった良かった。」
「一安心したらお腹すいたー。」
ヒナ達が明るい声を上げて、椅子に着いた。
「はいはい。座って待ってて。」
和が台所の方へ入っていくので、途中まで続いてカウンター席に座った。
その隣へ、颯太が当然のように腰を下ろしてきた。
「スズちゃんはこっちで食べるの?」
「一緒に食べるよ。先に手紙を見せて。」
「どーぞどーぞ。」
颯太から受け取った手紙を開く。
中身は少なかった。
–
拝啓 スズ様。
この度は、手紙でのお返事となりましたこと大変申し訳ございません。
颯太よりあなたのお話を、お伺いいたしました。
私にお会いされたいとのことについて
大変恐縮ではございますが、
現在どなたからのご挨拶もお断りさせて頂ております。
このような返事となり誠に申し訳ございませんが
ご理解頂けましたら幸いでございます。
また、颯太については
ご迷惑をおかけしておりますこと深くお詫び申し上げます。
息子が勝手に移動してしまうのを止めることが難しい為、
恐れ入りますが、無理が無い程度でかまいませんので
お付き合い頂きたく存じます。
帰宅についても颯太自身で可能な為、
いつでも、本人へ指示頂いて問題ございません。
そちらのご判断にお任せ致します。
それでは勝手ながら、まずは書中にて失礼いたします。
敬具
山本亜季子
–
丁寧な字体と言葉遣いが並んでいるけれど、会うことについてはお断り。
そして、颯太の移動については、亜季子の方では止められないから、このままになっているのか。
「颯太。亜季子はどんな様子だった?」
「んー。お母さんは、いつもと変わらない感じかな?」
颯太は、抱き着いてきている状態のまま、こちらに顔を上げて答えた。
「お母さんは外に出ないし、誰にも会わないよ。お母さんも半分人間だし、危ないんだってさ。」
「私の事を、なんて説明した?」
とくに颯太に対しても、これといった説明はしなかった。
「そりゃあ。僕の将来の嫁だって言ったよ!」
「キュウ!?」
セイが、私の肩の上で跳ねる。
「だから挨拶して欲しいって結構言ったんだけどねぇー。ダメだった。」
「…その説明は訂正しておいて。ひとまずは分かった。」
下手にwalkerや梓のことを伝える必要はないと思った。
それが裏目になってしまったかどうか分からないけれど、基本的に外部との接触を断っているのだとしたら、次はどうしようか。
「宗一郎もたまに家に来ると言っていたけど、だいたいどのくらいの頻度で会いに来る?」
「爺ちゃん?爺ちゃんは月に1~2回ぐらいかなぁ。爺ちゃんにも会えるか聞いてみる?」
「そうだね。できれば、お願いしたい。」
会えるなら、どちらからでもいい。
「はい。昼ご飯できたよ。」
和がカウンターの上に、出来上がったばかりの焼きそばを並べ始めた。
「おお!旨そう!!和の兄ちゃんすげぇぇ!」
「颯太。これをあっちに運ぶよ。」
「分かった!」
カウンターに並んでいく皿を受け取って、ダイニングテーブルに運んでいく。
山本家については、フォーラス家との立ち位置が明確ではない以上、下手に警戒させてしまうわけにもいかない。
被害者である可能性も残っているのだから、できればまずは話し合いから進めたい。
宗一郎は怪異でありながら、人間社会で生きてきた。
亜季子の手紙も、少なくとも普通の人間として成立している。
だからこそ、フォーラスよりは話が通じる可能性を期待したい。
多少の違いなら、時間をかければ調整はできる。
少なくとも、そうやってここまでやってきた。
簡単ではない。
それでも、目を逸らさずに積み重ねるしかない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




