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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
155/201

答え:多少なら、一念天に通ずと

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「5番目に会わせてよ。」


「…なんで?」


昨日ミランダからのメールを受けて、朝から魔法世界に来ていた。


その場所は、何重にも結界が重なりほとんどの魔法を遮断。

更にその中でも、魔法が使えないように設置魔法も多重に設置しているらしい。

けれど、魔法は全く見えない私にとっては、いたって普通の部屋の中央で、シャロンと丸いテーブル越しに向き合っている。


「会いたいからよー。この私のお願いを聞いてくれるなら、エルフがいる場所を教えてあげても良いわよ?」


シャロンからの交渉は、概ね予想通りの内容だった。


私にフォーラスが攫ったエルフの場所を教える。

その代わりに、walkerの5番目であるフィフに会わせて欲しいと。


「会う目的を聞いてる。」

「そこまで教える必要無くない?ただの交換条件よぉ。良いじゃないそっちは減るものじゃないでしょ?」


シャロンは、前回話した時も5番目のことを口にしていた。

walkerとして会いたいのだとしたら、個人的ではなくフォーラスとしての目的である可能性が大きい。


「その目的は、私では条件に合わないという意味?」

「探るわねー。まぁ、条件と言えばそうね。だってあなた女じゃない。」


性別の問題か。

その時点で、フォーラス絡みの嫌な予想が頭をよぎる。


walkerは、男でも女でも基本の性質は変わらない。


「シャロンが個人的に会いたいという意味?」

「そうそう。私が、個人的に、男のwalkerに会いたいのよ。良いでしょ?」


わざわざ、男のwalkerに会いたい。

もちろん興味本位の可能性もあるけれど、この女の場合は気軽に見積もらない方が良いだろう。


「男で良いなら、魔法使いでもなんでもいいはず。なんでわざわざwalker?」

「内緒よ。いちいち聞くなんて野暮ねー。」


一瞬シャロンの視線が、右上へ流れる。

条件を指定している以上、理由はあるのだろう。


「それは本人の意向次第。」

「えぇ。会えなかったら交換条件が未達成よ。

ちゃんと連れて来てくれた後で、場所について教えるわ。」


条件が性別と言われると、嫌でもフォーラスの目的として、今までの経緯が思い浮かぶ。

過去にブルース・フォーラスは、私と話した時もwalkerからの子孫について質問してきた。


そして、フィーに対して…

シャロンが女性であることからも、男のwalkerに興味を持っている目的は、同じ理由に繋がってしまう。


「walkerは、子孫はできない。」


walker同士でなければ。


「…なんで言い切れるの?」


シャロンの貼り付いていた笑みが、一瞬だけ剥がれ落ちる。


「これまで、人間以外も含めて数え切れないほど試されてる。」


「もう試してない条件が、一つも無いと言いたいの?」

「全て試したとは言わない。それでも殆どの条件は満たしている。子孫はできない。」


それがやっぱりフォーラスとしての目的なのか。

あるいはシャロンのただの好奇心なのかは、どうでもいい。


「じゃあ逆に聞くけど、まだ試されてない条件が何か、あなた達は本当に把握してるの?」

「それを教える理由はない。」


シャロンの表情から笑みが消えた。


「クラーレンお兄様は、あなた達が基本世界の人間だから、魔力が阻害していると同時に、何か別の条件があると仮定しているわ。」

「それを調べることに、協力する理由もない。」


彼女の指が、私の中央を指す。


「だって、あなた。いたことあるんでしょ?」

「そこから、その条件までしか出てこないのなら、情報不足。無駄足だと言っておく。」


フォーラスの地下の部屋に保管されていたイヴの書物から、私に子供がいたことまで知っているのだろう。

そこまで読んでいるなら、ファストの存在にも辿り着いていそうなものだけど。

中途半端にしか読み解いていないのか、この女が都合が良い部分しか拾っていないのか。


いずれにしても付き合う理由はない。


「話は以上?」

「なによ。連れて来てくれないわけ?」


椅子から立ち上がる。


「会うだけだとしても、相手の意向を確認する必要がある。そして、それを確認するかどうかをここで返答する必要はない。」


「…はぁ。本当、あなたって冷たいのね。攫われたエルフを、今すぐにでも助けに行こうと思わないの?」


シャロンは、顎に片手を添える。


「助けに行く為に行動はとる予定だけど、解決に向けてどこまで譲歩するかは私の勝手。

そもそもその問題を起こした当事者に、とやかく言われるいわれはない。」


話が通じる相手ならまだしも、シャロンの損得勘定では、人としてのルールが通じない。

相手の弱みや罪悪感に目をつけることに長けていることで、今までの交渉を上手くやってきたのだろう。


「私と話すのは、これで二度目。」


「……で?」


立ったまま続ける。


「その中で、前回私がどういう人間かと判断し、今回の条件を提示したのだとしたら。

そもそもの情報不足も含めて、判断としてはまだ浅い。」


「…あっそ。」


ブルースの方が、交渉内容についてはまだマシだけど、結局はどんぐりの背比べだろう。


そのままシャロンを背に部屋を出た。

廊下を進むと、途中でミランダが窓を背に立っていた。


「珍しく感情的だったわね。」


「…分かってる。」


シャロンに乗せられたとは感じている。

ため息が漏れた。


「エルフの居場所は必要じゃない?」

「シャロンが、正しい居場所を言う理由がない。」


「それはそうね。一応解析班も見ていたから、場所情報が出た場合は連絡するわ。」

「助かる。」


魔法省を出て、スマホを取り出すと和からの連絡が入っている。

メッセージと合わせて、電話も数件。

先にメッセージから目を通すと、颯太が早朝から来ているとの内容。

確かに週末に出直すようには言ったけれど、本当にすぐ来たようだ。


そのメッセージの通知に紛れて、別の宛先からのメールが目に入る。


和からではなく、エルフのアーシャから。

エルフの肉体を持つシャロン・フォーラスの事について連絡したから、その返事だろうか。


魔法世界にある自分の家へ足を進めながら、内容を確認する。


シャロンについて、まず調べてみるとのこと。

そしてそれとは別に、以前相談として話が上がった、攫われたエルフについての状況が聞きたいと。

上位エルフの方でも、やや問題が大きくなってきているようだ。


「……。」


シャロンへの返答を思い返す。

フォーラス全体として、アリスのことや、フィーのこと、そして今回フィフのことも重なっていることは事実だけど、彼女への回答について、いつもと考え方を変えたつもりはない。


もちろん、攫われたエルフを見つけることが、早いに越したことは無いことは分かってる。

でも彼女からの情報の信頼性の低さも含めて、フィフを合わせることは天秤に合わない。

再度交渉するとしても、その条件をのむのは、最低でも彼女からの情報が確認された後だろう。

改めて考えても、そういった結論になる。

それでも、シャロンとのやり取りが頭に残っていた。


…感情が含まれていた、か。


「……。」


自分の中の秤が、わずかに傾き始めている。


シャロンの言葉のせいだけじゃない。

最近は、以前のように切り捨てきれない場面が増えている。

これまでなら、ここまで考えないで切っていたはずなのに。


なぜ?


家に入り、寝室の扉を通路へ繋ぐ。

広がる白い通路。


その扉へ入る直前。


一瞬だけ、リビングに残る違和感。

それを無視して扉をくぐった。


「……。」


–この中に・・・いるのね?


クラーレンの通路と重複した座標の通路で聞こえたイヴの声が、勝手に頭の中で再現される。


なんで今さら、こんなことで…


–だって、あなた。いたことあるんでしょ?


こめかみが脈打つ。

片目になってから増えた頭痛が、今に限って顔を出した。


–カチャ


白い通路を抜け、相談所の地下階段を上がると、庭の方から騒がしい声が聞こえる。


「いいなぁ!僕も使えるようになりたい。」


颯太の声。


玄関の扉を開けると、正面にヒナとヒデ、その奥に颯太とアリス達が見える。


アリスが、魔法を出す練習をしているようだ。

手元で、火を出したり消したりを繰り返している。


「そうそうー。何度も何度も繰り返すのー。そうするとその言葉を言う時には、反射でイメージが浮かぶようになってくるから。」

「だから、日向は昔たまーに、普通に喋ってても魔法を出したりしてたよー。」


確かに昔はヒナとヒデが、家の中で魔法を発動して壁や家具を焦がしたりしていた。

そしてその度に、美弥が不機嫌そうに直していた。


「え?それって危ないよね?」

「魔力をのせなければ大丈夫ー。」

「まぁすぐ消せば良いしね。」


アリスが、日向達の後ろにいる私に視線を合わせた。


「あ!スズー。」

「え?スズちゃーん!会いたかったよー!」


アリスの声に反応して、颯太が両手を広げて走って来た。


「ちゃんと家に帰った?」

「もちろんだよ。」


颯太が飛びついて来たのを受け止める。


「あ。そうそう。だから、お母さんから手紙を受け取ってるよ。」


颯太が一旦私から体を離し、ポケットからくしゃくしゃになった手紙を取り出した。


「ありがとう。」


手紙は封筒に入っているので、封筒の中の紙はそこまで皴は入っていなさそう。

ここに和はいないようだし、三階へ昼食ついでに手紙を見ようか。


「中に戻るの?じゃあ僕も一緒に行くー。」


足を室内へ戻すと、颯太がくっついて来た。


「まぁそろそろ大丈夫かなぁ?」

「颯太、まずは謝るんだよ。」

「分かったよぉ。」


全員付いてくるようで、芝生から立ち上がった。


謝る?


「和を怒らせたの?」

「朝から、台所めちゃくちゃ。」

「ウーノ達も大変だったみたい。」


ヒナとヒデが答えてきた。


なるほど。

スマホにきていた和からの通知数が、いつもより多かった理由はそれだろう。

そして、珍しくこういう場に、ウーノ達がいないことにも納得がいく。


「悪かったって。気を付けるよー。」


三階へ上がると、和とウーノ達がダイニングテーブルに座っていた。


「来たか。ってスズも帰って来てたか。」

「キュウ!!!」


セイが飛びついてきた。


「あ。ずるい僕もー。」

「待て待て、颯太。先に・・・。」

「そうそう。先に。」


ヒナ達が、私に抱き着こうとする颯太の腕を引いて促した。


「うー。朝はごめんなさい。これからは気をつけます。」


颯太が、和やウーノ達の方に向かって頭を下げた。


しばらく静かな空気が流れる。

その空気を見て、和が口を開いた。


「…はぁ。反省してるならいい。とにかくこれからは、もう少し落ち着いてもらえると助かる。」


和が返すと、颯太が頭を少しだけ上げてウーノ達の方を見た。


「・・・はーい。・・・えーと・・・ウーノもごめんね。」

「もう大丈夫。痛くしないで欲しイ。」

「痛いの良くナイ。」

「うンうン。」

「キュウ」「キーキ」「キュキュ」


ウーノ達はその見た目が、子供視点からは気になる姿をしているのだろう。

ここまでの様子で、颯太が朝来て早々に暴れ回ったことは予想できる。


さっきのシャロンのことを思い出した。


育った環境や年齢が違えば、見えている“当たり前”も変わる。

それが極端かどうかの違いだけで、やっていることの本質は、そこまで違わないのかもしれない。


「ありがとう。気を付けるよ。」


「ふむ。良かった良かった。」

「一安心したらお腹すいたー。」


ヒナ達が明るい声を上げて、椅子に着いた。


「はいはい。座って待ってて。」


和が台所の方へ入っていくので、途中まで続いてカウンター席に座った。

その隣へ、颯太が当然のように腰を下ろしてきた。


「スズちゃんはこっちで食べるの?」

「一緒に食べるよ。先に手紙を見せて。」

「どーぞどーぞ。」


颯太から受け取った手紙を開く。

中身は少なかった。


–

拝啓 スズ様。


この度は、手紙でのお返事となりましたこと大変申し訳ございません。

颯太よりあなたのお話を、お伺いいたしました。


私にお会いされたいとのことについて

大変恐縮ではございますが、

現在どなたからのご挨拶もお断りさせて頂ております。


このような返事となり誠に申し訳ございませんが

ご理解頂けましたら幸いでございます。


また、颯太については

ご迷惑をおかけしておりますこと深くお詫び申し上げます。

息子が勝手に移動してしまうのを止めることが難しい為、

恐れ入りますが、無理が無い程度でかまいませんので

お付き合い頂きたく存じます。

帰宅についても颯太自身で可能な為、

いつでも、本人へ指示頂いて問題ございません。

そちらのご判断にお任せ致します。


それでは勝手ながら、まずは書中にて失礼いたします。


敬具

山本亜季子 

–


丁寧な字体と言葉遣いが並んでいるけれど、会うことについてはお断り。

そして、颯太の移動については、亜季子の方では止められないから、このままになっているのか。


「颯太。亜季子はどんな様子だった?」

「んー。お母さんは、いつもと変わらない感じかな?」


颯太は、抱き着いてきている状態のまま、こちらに顔を上げて答えた。


「お母さんは外に出ないし、誰にも会わないよ。お母さんも半分人間だし、危ないんだってさ。」

「私の事を、なんて説明した?」


とくに颯太に対しても、これといった説明はしなかった。


「そりゃあ。僕の将来の嫁だって言ったよ!」

「キュウ!?」


セイが、私の肩の上で跳ねる。


「だから挨拶して欲しいって結構言ったんだけどねぇー。ダメだった。」


「…その説明は訂正しておいて。ひとまずは分かった。」


下手にwalkerや梓のことを伝える必要はないと思った。

それが裏目になってしまったかどうか分からないけれど、基本的に外部との接触を断っているのだとしたら、次はどうしようか。


「宗一郎もたまに家に来ると言っていたけど、だいたいどのくらいの頻度で会いに来る?」

「爺ちゃん?爺ちゃんは月に1~2回ぐらいかなぁ。爺ちゃんにも会えるか聞いてみる?」

「そうだね。できれば、お願いしたい。」


会えるなら、どちらからでもいい。


「はい。昼ご飯できたよ。」


和がカウンターの上に、出来上がったばかりの焼きそばを並べ始めた。


「おお!旨そう!!和の兄ちゃんすげぇぇ!」

「颯太。これをあっちに運ぶよ。」

「分かった!」


カウンターに並んでいく皿を受け取って、ダイニングテーブルに運んでいく。


山本家については、フォーラス家との立ち位置が明確ではない以上、下手に警戒させてしまうわけにもいかない。

被害者である可能性も残っているのだから、できればまずは話し合いから進めたい。


宗一郎は怪異でありながら、人間社会で生きてきた。

亜季子の手紙も、少なくとも普通の人間として成立している。

だからこそ、フォーラスよりは話が通じる可能性を期待したい。


多少の違いなら、時間をかければ調整はできる。

少なくとも、そうやってここまでやってきた。

簡単ではない。

それでも、目を逸らさずに積み重ねるしかない。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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