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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第二部 第四章 接触 × 価値観 境界の崩れ
154/201

疑問:違うということは、思ったより大変なこと?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「え?」

「うわぁ。」


イザベルが少し嫌そうな声をあげる。

朝のランニングで相談所の庭へ出ると、庭の隅に置かれたアスレチック用の台の上に、颯太君が座っていた。


「あ。アリスちゃん。おはよー。」


さも当然のように、爽やかな挨拶をしてきた。


「お。おはよう。急だね・・・まだ早朝だよ?」

「週末来るの待ちきれなくてさ、早く来ちゃった!」


颯太君は笑いながら、台を跳び降りた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリス。」

「わ!!!!」


真後ろで急に聞こえた声に驚いた。

振り返れば、圭さんが立っている。


け、気配がまったく無かったよ。

心臓がバクバクいってる。


「圭さん。おはようございます・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう。・・・その子は、僕が見るよ。」

「お、お願いします。」


圭さんが私を避けて、庭へ出た。

まだ朝の日差しが庭の奥までは届いていない。

圭さんも、まだ平気そうかな。


「ええっと。たしかお風呂場で一瞬会ったよね。誰だっけ?お兄さん。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・圭。・・・・・・入りたいんでしょ?・・・・・ついてきてくれる?」

「なんで、話すのが遅いの?」


圭さんが颯太君に近づいていき、向き合って話しかけてるけど。


これは、歯車が噛み合わない組み合わせかもしれない。


「・・・・・・・・・・」

「ってかスズいる?」


「・・・・・・・・・・」

「僕、会いに来たんだけど。」


圭さんが言いだそうとする間に、颯太君がどんどん話を進める。

相変わらず一直線だね。


「・・・・・・・喋るの苦手。こっち。」


圭さんの言葉が出てくるのを待つ間も、颯太君はジッとできない様子で両手をぶらぶら揺らしている。


「・・・ぬー。ねーねー。スズいるー?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こっち。」

「うーん。なんかぁ。お兄さん話しづらいよ!」


会話がしづらいのが嫌なのか、なかなか動き出そうとしない颯太君。

このままじゃ、ちょっと良くなさそう。


足を踏み出し、二人に近づく。


「颯太君。あの――」

「圭!悪い。遅くなった。」


今度は、後ろから和さんが出てきた。

圭さんが振り返り、ちょっと安心した表情を見せた。


「うわ。なんだっけ。怖い兄ちゃん。」

「和だ。来るにしても早すぎる。ひとまずついておいで。」


「しょうがないなぁ。スズちゃんはー?」

「いるから。来るのが早すぎるんだよ。まだ寝てるだろ。ちょっと中で大人しく待ってろ。」

「え?マジマジ?どこで寝てるの?どこどこどこ?」


「・・・はぁ。」


ようやく、動く気になってくれた颯太君は、和さんに向かって駆け寄る。

その後ろから、圭さんもついて行った。


今回颯太君は、ちゃんと玄関から入って来たけど、怪異の世界から、こんな風に気軽に来られてしまうんだね。

これまでも色んな移動方法を見てきたつもりだったけど、颯太君の来方はあまりにも突発的で、和さん達も少し困ってる感じがする。


三人を見送り、ひとまず朝のランニングに踏み出した。

その後、お風呂に向かって階段を上がると、上から颯太君の声が響き渡る。


「これ!・・・っすげー美味い!もぐ。もっとある?ぐむ。食べたい!」

「食べながら話すな。」

「キュウ!」「キーキ!」「キュキュー」


三階のダイニングテーブルで、颯太君がホットサンドを口に詰めながら話している。

和さんはそれを注意しながら、呆れた表情で追加を用意し始めた。

そんな颯太君の様子を見ながら、窓際の席からウーノ達がお行儀よく食べている。


「あ。アリスちゃんも一緒に食べる?」

「えっと、先にお風呂入ってくるね。」

「アリスさん。いってらっしゃい。」


まずは汗を流してしまいたい。

四階へ上がっても、まだ階下からは颯太君の声が響いてくる。

こんなにうるさくても、きっと日向達はまだ寝てるだろうなぁ。


お風呂から上がって改めて三階へ下りると、ダイニングテーブルには颯太君もウーノ達の姿もなくなっていた。


「なんで大きいのは喋れるのに、小さいのはキーしか言わないの?同じ生き物じゃないの?」

「分からナイ。」

「キュウ?」


声のする方向に顔を向けると、階段裏の和室の方で颯太君はウーノ達と喋っていた。


「アリスさん。どうぞ。」

「あ。和さん。ありがとうございます。」


和さんはまだ朝だというのに既に疲れきった表情で、私とイザベルの分、そして自分の分のホットサンドとサラダやスープをテーブルに並べ始めてくれた。

あのテンションをずっと見てるのは、大変だろうなぁ。


「・・・お疲れ様です。」

「はぁ。疲れました。」


ゆっくりと椅子に座った和さんの姿は、最低限の着替えだけ済ませただけみたい。

後ろ髪もまだすこし乱れてるし。


「スズ。多分、午前中は起きてこないですよね。その間、私が颯太君見てましょうか?」


「・・・お願いしたいですが、日向達が起きればで・・・お願いします。」


まぁ颯太君は普通の人間っぽいとはいえ、ここへ出入りしている方法が分からないし、和さん的にもそうなりますよね。

日向達、起きるかなぁ・・・


時計は、まだ朝七時前を指していた。


「おおー!口でかいね!僕の頭ぐらい余裕で入りそう!」


颯太君がウーノの口を、好奇心のままにぐいっと横へ引っ張っていた。


「やめて、ほしィ・・・イタい・・・。」

「引っ張ると痛イよ。」

「キュウ!」「キーキ!」「キュキュ!」


徐々に引っ張られていってるのか、明らかにウーノが嫌がり始め、セイ達も止めに入っている。


わわ。

それは良くないよ!


三人同時に、食事中の席を立ち上がった。


「こら!ちょっと止めてあげなさいよ。痛がってるでしょ。」

「颯太君。ちょっ!」


イザベルと一緒に注意して、和さんは颯太君の首元を掴み、引きずりながらウーノからはがした。


「ごめんごめん。つい気になっちゃって。怒った?」


一応こうして謝るし、良い子だとは思うけど、やっぱり子供なんだろうなぁ。

でも颯太君は、とにかく“距離感”が分かっていない。


「もう少し大人しくしてろ。じゃないとスズに会わせないからな!」

「はぁ?!それはダメ!何のために来たと思ってんだよー。スズはまだー?ねぇねぇー。」


ああ。マズい。

スズの事を思い出した颯太君が、喋り出してしまった。


「どこにいるのさ?もう!いいよー!勝手に探すからー。」


立ち上がろうとした颯太君を、和さんが引き留める。

和さんの周囲の空気だけ、すっと温度が下がった気がした。


「まず聞きなさい!ここはそう自由にしていい場所じゃない。ちゃんとルールが守れないなら、追い出すぞ。」


和さんは怒鳴っているのに、その奥では必死に蓋を押さえている感じがした。


「そんな悪いことしたつもりないよ。っていうか、ちょっと気になる事が多いんだよー!しょうがないじゃん?」


イザベルが私の隣で溜息をついた。


「好奇心があるのは良いけれど、ここは颯太の家じゃないんだから、せめて相手の気持ちを考えて行動しなさい。

ここには色々な人がいて、みんなそれぞれ気を遣って生活してるんだよ。

颯太の好奇心をそのままぶつけてたら、相手は傷ついたり、嫌な気持ちになることもあるんだ。」

「むー。そんなにやり過ぎないようにはしてるよ。」


ウーノ達も颯太君から少し距離をおいて、困った雰囲気で見守っている。


「少しやり過ぎてるから注意してるんだ。言うことが聞けないなら、帰りなさい。」

「分かった!分かったよ!でもスズにはいつになったら会えるのさ?僕が今日来るって知ってただろー。」

「来るにしても時間を考えろ。まだやっと7時過ぎたところだぞ。来るのが早すぎるんだよ。」


「ふぁぁぁ・・・なにぃ?どしたの?和、怒ってるー・・・?」


日向が寝間着姿のまま、階段を降りてきた。

流石にうるさすぎたよね。


「日向。朝早くに悪いけど、秀人も起こして着替えてきて欲しい。」

「えぇぇ?二度寝ダメー?・・・・あ。颯太だ。」


「日向ちゃんおはよー。和お兄ちゃんが朝から怖いよー。」


日向は寝ぼけまなこのままで、周りの状況を見渡した。


「・・・あー・・・多分。これは颯太が悪いね。・・・和を怒らせちゃダメだよぉ。」

「ええー僕が悪いのぉー?何もしてないのにー。」


「ふひひ。この家のルールだねぇ。和は怒らしちゃダメだよぉ。ふぁぁ・・・とりあえず着替えてくるー。」

「ちぇー。そろそろ離してよ。」


和さんは、颯太君を半目で睨みながら、溜息をつく。


「…日向達が降りてくるまでは、ここから動かないように。」

「はいはーい。」


そうだね。

和さんは怒らせない方が良いよ。

ともかく、ウーノ達にしたことは、もう少し反省して欲しいんだけど。


「ウーノ大丈夫?」

「大丈夫。口痛かっタ・・・。」

「キュウ・・・」「キーキ!」「キュキュ」


「ごめんごめん。もうしないよー。」


怒られて、少し大人しくなってくれたので、ひとまず朝食に戻った。

和さんも再び重そうに椅子へ腰かけた。

既に疲れていた和さんの疲労度は、更に増していってる気がする。


「日向達が起きてきたら、朝食食べた後に庭に出てますね。」


「・・・すみませんが、お願いします。」

「あれは少しやんちゃ過ぎるわね。」


少し静かになったと思ってたのに、その後も颯太君は、しばらくすれば台所の冷蔵庫や引き出しを漁り出したりと、ジッとできずにあちこち動き回り始めた。

その度に和さんからの注意が入り、注意される度に一瞬は止まるのだけど、すぐ次の気になる物へ飛んでいってしまう。

日向達が降りてくるまでずっとてんやわんやだった。


「なるほどねー。そりゃあ台所もめちゃくちゃになるよねー。」

「颯太ー。しばらく三階に行かない方が良いよー。多分、和。めっちゃくちゃ怒るのこらえてるから。」


日向達が朝食を終えると、すぐに颯太君をつれて庭へ出た。

和さんが燃え尽きたような表情で、ゆっくりと台所に向かっていく後ろ姿が目に残る。


その元凶の颯太君は、今は勘右エ門さんが作ったアスレチックで遊んでくれているので、その間にまだ眠そうな日向と秀人に、朝の状況を一通り説明した。


「だって僕の家には無い物が、いっーーぱいあるんだよ。気になるじゃん?」


颯太君は、アスレチックからそのまま木へよじ登り、枝に足をひっかけながら上から返事をしてきた。


「でも、よその人の家だからねー。やり過ぎは良くないよ。」

「友達の家とか行ったら怒られない?」


「うーん。僕友達いないから、分かんないよ。」


その返事を聞いて、みんな颯太君の方に目が向いてしまった。

颯太君は確かにやんちゃだけど、友達がいなさそうなタイプには見えない。


「家の近所に友達いないの?」

「家からは出ちゃダメって言われてて、出ると怒られるんだ。妖怪は僕を食べるからって。」


「あー・・・そっか。」


その答えを聞いて、みんなで納得した。

確かに妖怪の世界の中で、颯太君が人間に近いのだとしたら、気軽に外には出られないのか。


それを聞いた瞬間、さっきまで“やんちゃな子”だった印象が少しだけ揺らいだ。

だからこそ、こうして一人で別の世界に来てしまうのかもしれない。

でも、最初スズと会ったっていう死神の世界だって、かなり危ない場所なのに。


「じゃあ。ここで絶対に守らないといけない事!」

「その一!」


日向が手を腰に当てて言い放った。

それにノリながら秀人が、颯太を手招きする。


「和が、言う事はちゃんと守る!」

「怒らせると、ご飯抜きにさせられるし、最悪追い出されちゃうからねー。」

「うへぇ・・・。」


颯太君は木から降りて、日向と秀人の前に座った。

颯太君にとってこの二人の方が距離が近い感じがするのか、ちゃんと言うことを聞いてる気がする。


「その二!」

「人の物は勝手に触らない!出した物もちゃんと元の場所に片付ける!」

「ここには色々な物があるから、気になるのは分かるけど、自分の物も勝手にいじられたら嫌でしょ?」

「むー・・・勝手に触ったらダメかぁ。」


颯太君は不貞腐れた表情を見せる。


「その三!」

「初めての人や生き物に対しては、まずは気を遣おうね!」

「相手が何が良くて何が嫌かは、すぐには分からないからね。まずは相手に合わせながら、ゆっくり話していかなきゃ。」


ウーノ達は、庭について来なかった。

多分気の利くあの子達のことだから、きっと和さんと台所の片付けをしてくれている気がする。


「えー!嫌だって言われたら、すぐ止めればいいんじゃない?」

「嫌なことを先にすると、仲良くなれないよ?」


「気になってもダメ?」

「ちゃんと聞けばいいんだよー。むやみやたらはダメだけど、颯太が今私達の話を聞いて質問してるみたいに、一つ一つ話さなきゃ。」


今度は、ちょっと面倒くさそうな表情に変わった。


「一つ一つ?面倒くさいねぇ。」

「人付き合いって、わりと面倒なんだよ。颯太君。」

「そうそう。急に仲良くはなれないってことだよ。少年よ。」


日向と秀人はそういう意味だと、相手との距離感の取り方が上手いなぁ。

こうして、颯太君にもちゃんと説明してるし、言い方も上手い気がする。


「それにスズのこと好きなんでしょ?」

「颯太は、スズが何が好きで、何が嫌いか気にならない?」

「!すっごく気になる!」


おっと。そっちにいくのね。

でも、好奇心旺盛な颯太君の場合は、たしかにその方が分かりやすいかも。


「スズは中々に分かりづらいよぉ!スズの好きなことと嫌いなことを聞いてごらんよ。」

「それが聞き出せるぐらいなら、ウーノ達にもちゃんと謝って仲直りすることも、和に許してもらうのも簡単だから。」

「えー?日向達が教えてくれれば良いじゃん?」


二人が人差し指を上げて、横に振る。


「「ちっちっちー。」」

「何事もやってみて慣れていかなきゃ。」

「なんでも答えをすぐ貰おうとしちゃダメー。」


「うっ・・・。」


思わず変な声が漏れた。

秀人の言葉が、私の胸に刺さる。


「ちぇ。でも朝からずっーと待ってるけど、スズちゃんにまだ会えないの?」


「それも相手のことを考えなきゃねー。」

「そもそも土曜日に、スズが朝から起きてくることの方が珍しいことだし。」

「それにまずはスズのいるこの場所で、一番に守らなきゃいけないことは?」


日向の目が光った。


「えーと・・・和の言う事を聞く?」

「そうそう!もう分かってるねー。まぁ今日早く来たのは知らなかっただけだから、しょうがないね。」

「それより、台所を荒らしたことは、ちゃんと謝らないとねー。」


「もー・・・分かったよー・・・。」


颯太君は背中から、芝生に倒れ込んだ。

颯太君のこれまでの環境は分からないけれど、ちゃんと説明すれば聞いてくれるし、とにかく一つ一つ丁寧に話していければいいかな。


同じ人間でも、育った環境が違えば、こんなにも違う。

それが人外なら、なおさらだ。


“違う”ということは、思っていたよりずっと難しいことなのかもしれない。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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