疑問:違うということは、思ったより大変なこと?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「え?」
「うわぁ。」
イザベルが少し嫌そうな声をあげる。
朝のランニングで相談所の庭へ出ると、庭の隅に置かれたアスレチック用の台の上に、颯太君が座っていた。
「あ。アリスちゃん。おはよー。」
さも当然のように、爽やかな挨拶をしてきた。
「お。おはよう。急だね・・・まだ早朝だよ?」
「週末来るの待ちきれなくてさ、早く来ちゃった!」
颯太君は笑いながら、台を跳び降りた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・アリス。」
「わ!!!!」
真後ろで急に聞こえた声に驚いた。
振り返れば、圭さんが立っている。
け、気配がまったく無かったよ。
心臓がバクバクいってる。
「圭さん。おはようございます・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう。・・・その子は、僕が見るよ。」
「お、お願いします。」
圭さんが私を避けて、庭へ出た。
まだ朝の日差しが庭の奥までは届いていない。
圭さんも、まだ平気そうかな。
「ええっと。たしかお風呂場で一瞬会ったよね。誰だっけ?お兄さん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・圭。・・・・・・入りたいんでしょ?・・・・・ついてきてくれる?」
「なんで、話すのが遅いの?」
圭さんが颯太君に近づいていき、向き合って話しかけてるけど。
これは、歯車が噛み合わない組み合わせかもしれない。
「・・・・・・・・・・」
「ってかスズいる?」
「・・・・・・・・・・」
「僕、会いに来たんだけど。」
圭さんが言いだそうとする間に、颯太君がどんどん話を進める。
相変わらず一直線だね。
「・・・・・・・喋るの苦手。こっち。」
圭さんの言葉が出てくるのを待つ間も、颯太君はジッとできない様子で両手をぶらぶら揺らしている。
「・・・ぬー。ねーねー。スズいるー?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・こっち。」
「うーん。なんかぁ。お兄さん話しづらいよ!」
会話がしづらいのが嫌なのか、なかなか動き出そうとしない颯太君。
このままじゃ、ちょっと良くなさそう。
足を踏み出し、二人に近づく。
「颯太君。あの――」
「圭!悪い。遅くなった。」
今度は、後ろから和さんが出てきた。
圭さんが振り返り、ちょっと安心した表情を見せた。
「うわ。なんだっけ。怖い兄ちゃん。」
「和だ。来るにしても早すぎる。ひとまずついておいで。」
「しょうがないなぁ。スズちゃんはー?」
「いるから。来るのが早すぎるんだよ。まだ寝てるだろ。ちょっと中で大人しく待ってろ。」
「え?マジマジ?どこで寝てるの?どこどこどこ?」
「・・・はぁ。」
ようやく、動く気になってくれた颯太君は、和さんに向かって駆け寄る。
その後ろから、圭さんもついて行った。
今回颯太君は、ちゃんと玄関から入って来たけど、怪異の世界から、こんな風に気軽に来られてしまうんだね。
これまでも色んな移動方法を見てきたつもりだったけど、颯太君の来方はあまりにも突発的で、和さん達も少し困ってる感じがする。
三人を見送り、ひとまず朝のランニングに踏み出した。
その後、お風呂に向かって階段を上がると、上から颯太君の声が響き渡る。
「これ!・・・っすげー美味い!もぐ。もっとある?ぐむ。食べたい!」
「食べながら話すな。」
「キュウ!」「キーキ!」「キュキュー」
三階のダイニングテーブルで、颯太君がホットサンドを口に詰めながら話している。
和さんはそれを注意しながら、呆れた表情で追加を用意し始めた。
そんな颯太君の様子を見ながら、窓際の席からウーノ達がお行儀よく食べている。
「あ。アリスちゃんも一緒に食べる?」
「えっと、先にお風呂入ってくるね。」
「アリスさん。いってらっしゃい。」
まずは汗を流してしまいたい。
四階へ上がっても、まだ階下からは颯太君の声が響いてくる。
こんなにうるさくても、きっと日向達はまだ寝てるだろうなぁ。
お風呂から上がって改めて三階へ下りると、ダイニングテーブルには颯太君もウーノ達の姿もなくなっていた。
「なんで大きいのは喋れるのに、小さいのはキーしか言わないの?同じ生き物じゃないの?」
「分からナイ。」
「キュウ?」
声のする方向に顔を向けると、階段裏の和室の方で颯太君はウーノ達と喋っていた。
「アリスさん。どうぞ。」
「あ。和さん。ありがとうございます。」
和さんはまだ朝だというのに既に疲れきった表情で、私とイザベルの分、そして自分の分のホットサンドとサラダやスープをテーブルに並べ始めてくれた。
あのテンションをずっと見てるのは、大変だろうなぁ。
「・・・お疲れ様です。」
「はぁ。疲れました。」
ゆっくりと椅子に座った和さんの姿は、最低限の着替えだけ済ませただけみたい。
後ろ髪もまだすこし乱れてるし。
「スズ。多分、午前中は起きてこないですよね。その間、私が颯太君見てましょうか?」
「・・・お願いしたいですが、日向達が起きればで・・・お願いします。」
まぁ颯太君は普通の人間っぽいとはいえ、ここへ出入りしている方法が分からないし、和さん的にもそうなりますよね。
日向達、起きるかなぁ・・・
時計は、まだ朝七時前を指していた。
「おおー!口でかいね!僕の頭ぐらい余裕で入りそう!」
颯太君がウーノの口を、好奇心のままにぐいっと横へ引っ張っていた。
「やめて、ほしィ・・・イタい・・・。」
「引っ張ると痛イよ。」
「キュウ!」「キーキ!」「キュキュ!」
徐々に引っ張られていってるのか、明らかにウーノが嫌がり始め、セイ達も止めに入っている。
わわ。
それは良くないよ!
三人同時に、食事中の席を立ち上がった。
「こら!ちょっと止めてあげなさいよ。痛がってるでしょ。」
「颯太君。ちょっ!」
イザベルと一緒に注意して、和さんは颯太君の首元を掴み、引きずりながらウーノからはがした。
「ごめんごめん。つい気になっちゃって。怒った?」
一応こうして謝るし、良い子だとは思うけど、やっぱり子供なんだろうなぁ。
でも颯太君は、とにかく“距離感”が分かっていない。
「もう少し大人しくしてろ。じゃないとスズに会わせないからな!」
「はぁ?!それはダメ!何のために来たと思ってんだよー。スズはまだー?ねぇねぇー。」
ああ。マズい。
スズの事を思い出した颯太君が、喋り出してしまった。
「どこにいるのさ?もう!いいよー!勝手に探すからー。」
立ち上がろうとした颯太君を、和さんが引き留める。
和さんの周囲の空気だけ、すっと温度が下がった気がした。
「まず聞きなさい!ここはそう自由にしていい場所じゃない。ちゃんとルールが守れないなら、追い出すぞ。」
和さんは怒鳴っているのに、その奥では必死に蓋を押さえている感じがした。
「そんな悪いことしたつもりないよ。っていうか、ちょっと気になる事が多いんだよー!しょうがないじゃん?」
イザベルが私の隣で溜息をついた。
「好奇心があるのは良いけれど、ここは颯太の家じゃないんだから、せめて相手の気持ちを考えて行動しなさい。
ここには色々な人がいて、みんなそれぞれ気を遣って生活してるんだよ。
颯太の好奇心をそのままぶつけてたら、相手は傷ついたり、嫌な気持ちになることもあるんだ。」
「むー。そんなにやり過ぎないようにはしてるよ。」
ウーノ達も颯太君から少し距離をおいて、困った雰囲気で見守っている。
「少しやり過ぎてるから注意してるんだ。言うことが聞けないなら、帰りなさい。」
「分かった!分かったよ!でもスズにはいつになったら会えるのさ?僕が今日来るって知ってただろー。」
「来るにしても時間を考えろ。まだやっと7時過ぎたところだぞ。来るのが早すぎるんだよ。」
「ふぁぁぁ・・・なにぃ?どしたの?和、怒ってるー・・・?」
日向が寝間着姿のまま、階段を降りてきた。
流石にうるさすぎたよね。
「日向。朝早くに悪いけど、秀人も起こして着替えてきて欲しい。」
「えぇぇ?二度寝ダメー?・・・・あ。颯太だ。」
「日向ちゃんおはよー。和お兄ちゃんが朝から怖いよー。」
日向は寝ぼけまなこのままで、周りの状況を見渡した。
「・・・あー・・・多分。これは颯太が悪いね。・・・和を怒らせちゃダメだよぉ。」
「ええー僕が悪いのぉー?何もしてないのにー。」
「ふひひ。この家のルールだねぇ。和は怒らしちゃダメだよぉ。ふぁぁ・・・とりあえず着替えてくるー。」
「ちぇー。そろそろ離してよ。」
和さんは、颯太君を半目で睨みながら、溜息をつく。
「…日向達が降りてくるまでは、ここから動かないように。」
「はいはーい。」
そうだね。
和さんは怒らせない方が良いよ。
ともかく、ウーノ達にしたことは、もう少し反省して欲しいんだけど。
「ウーノ大丈夫?」
「大丈夫。口痛かっタ・・・。」
「キュウ・・・」「キーキ!」「キュキュ」
「ごめんごめん。もうしないよー。」
怒られて、少し大人しくなってくれたので、ひとまず朝食に戻った。
和さんも再び重そうに椅子へ腰かけた。
既に疲れていた和さんの疲労度は、更に増していってる気がする。
「日向達が起きてきたら、朝食食べた後に庭に出てますね。」
「・・・すみませんが、お願いします。」
「あれは少しやんちゃ過ぎるわね。」
少し静かになったと思ってたのに、その後も颯太君は、しばらくすれば台所の冷蔵庫や引き出しを漁り出したりと、ジッとできずにあちこち動き回り始めた。
その度に和さんからの注意が入り、注意される度に一瞬は止まるのだけど、すぐ次の気になる物へ飛んでいってしまう。
日向達が降りてくるまでずっとてんやわんやだった。
「なるほどねー。そりゃあ台所もめちゃくちゃになるよねー。」
「颯太ー。しばらく三階に行かない方が良いよー。多分、和。めっちゃくちゃ怒るのこらえてるから。」
日向達が朝食を終えると、すぐに颯太君をつれて庭へ出た。
和さんが燃え尽きたような表情で、ゆっくりと台所に向かっていく後ろ姿が目に残る。
その元凶の颯太君は、今は勘右エ門さんが作ったアスレチックで遊んでくれているので、その間にまだ眠そうな日向と秀人に、朝の状況を一通り説明した。
「だって僕の家には無い物が、いっーーぱいあるんだよ。気になるじゃん?」
颯太君は、アスレチックからそのまま木へよじ登り、枝に足をひっかけながら上から返事をしてきた。
「でも、よその人の家だからねー。やり過ぎは良くないよ。」
「友達の家とか行ったら怒られない?」
「うーん。僕友達いないから、分かんないよ。」
その返事を聞いて、みんな颯太君の方に目が向いてしまった。
颯太君は確かにやんちゃだけど、友達がいなさそうなタイプには見えない。
「家の近所に友達いないの?」
「家からは出ちゃダメって言われてて、出ると怒られるんだ。妖怪は僕を食べるからって。」
「あー・・・そっか。」
その答えを聞いて、みんなで納得した。
確かに妖怪の世界の中で、颯太君が人間に近いのだとしたら、気軽に外には出られないのか。
それを聞いた瞬間、さっきまで“やんちゃな子”だった印象が少しだけ揺らいだ。
だからこそ、こうして一人で別の世界に来てしまうのかもしれない。
でも、最初スズと会ったっていう死神の世界だって、かなり危ない場所なのに。
「じゃあ。ここで絶対に守らないといけない事!」
「その一!」
日向が手を腰に当てて言い放った。
それにノリながら秀人が、颯太を手招きする。
「和が、言う事はちゃんと守る!」
「怒らせると、ご飯抜きにさせられるし、最悪追い出されちゃうからねー。」
「うへぇ・・・。」
颯太君は木から降りて、日向と秀人の前に座った。
颯太君にとってこの二人の方が距離が近い感じがするのか、ちゃんと言うことを聞いてる気がする。
「その二!」
「人の物は勝手に触らない!出した物もちゃんと元の場所に片付ける!」
「ここには色々な物があるから、気になるのは分かるけど、自分の物も勝手にいじられたら嫌でしょ?」
「むー・・・勝手に触ったらダメかぁ。」
颯太君は不貞腐れた表情を見せる。
「その三!」
「初めての人や生き物に対しては、まずは気を遣おうね!」
「相手が何が良くて何が嫌かは、すぐには分からないからね。まずは相手に合わせながら、ゆっくり話していかなきゃ。」
ウーノ達は、庭について来なかった。
多分気の利くあの子達のことだから、きっと和さんと台所の片付けをしてくれている気がする。
「えー!嫌だって言われたら、すぐ止めればいいんじゃない?」
「嫌なことを先にすると、仲良くなれないよ?」
「気になってもダメ?」
「ちゃんと聞けばいいんだよー。むやみやたらはダメだけど、颯太が今私達の話を聞いて質問してるみたいに、一つ一つ話さなきゃ。」
今度は、ちょっと面倒くさそうな表情に変わった。
「一つ一つ?面倒くさいねぇ。」
「人付き合いって、わりと面倒なんだよ。颯太君。」
「そうそう。急に仲良くはなれないってことだよ。少年よ。」
日向と秀人はそういう意味だと、相手との距離感の取り方が上手いなぁ。
こうして、颯太君にもちゃんと説明してるし、言い方も上手い気がする。
「それにスズのこと好きなんでしょ?」
「颯太は、スズが何が好きで、何が嫌いか気にならない?」
「!すっごく気になる!」
おっと。そっちにいくのね。
でも、好奇心旺盛な颯太君の場合は、たしかにその方が分かりやすいかも。
「スズは中々に分かりづらいよぉ!スズの好きなことと嫌いなことを聞いてごらんよ。」
「それが聞き出せるぐらいなら、ウーノ達にもちゃんと謝って仲直りすることも、和に許してもらうのも簡単だから。」
「えー?日向達が教えてくれれば良いじゃん?」
二人が人差し指を上げて、横に振る。
「「ちっちっちー。」」
「何事もやってみて慣れていかなきゃ。」
「なんでも答えをすぐ貰おうとしちゃダメー。」
「うっ・・・。」
思わず変な声が漏れた。
秀人の言葉が、私の胸に刺さる。
「ちぇ。でも朝からずっーと待ってるけど、スズちゃんにまだ会えないの?」
「それも相手のことを考えなきゃねー。」
「そもそも土曜日に、スズが朝から起きてくることの方が珍しいことだし。」
「それにまずはスズのいるこの場所で、一番に守らなきゃいけないことは?」
日向の目が光った。
「えーと・・・和の言う事を聞く?」
「そうそう!もう分かってるねー。まぁ今日早く来たのは知らなかっただけだから、しょうがないね。」
「それより、台所を荒らしたことは、ちゃんと謝らないとねー。」
「もー・・・分かったよー・・・。」
颯太君は背中から、芝生に倒れ込んだ。
颯太君のこれまでの環境は分からないけれど、ちゃんと説明すれば聞いてくれるし、とにかく一つ一つ丁寧に話していければいいかな。
同じ人間でも、育った環境が違えば、こんなにも違う。
それが人外なら、なおさらだ。
“違う”ということは、思っていたよりずっと難しいことなのかもしれない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




