答え:何事も簡単明瞭なら
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
相談所へ帰り、玄関を開けると、本来ならアリスの影の中にいるはずのルーナが、そこに立っていた。
「何?」
「報告書、そっちに先に送った。」
「…上司に回す前に、先に私に見せて問題ないの?」
スマホを開くと確かに、ルーナからメールがきている。
先週、初めての報告書を受け取った時には、ルーナが上司に送った報告書をガルシアが私に転送してきた。
つまりその時の報告書は一度上司の確認を経ており、内容に手が加えられている可能性もあった。
「ガルシアに言われた。私の判断で先にあなたへ回した。
修正された報告より、私が実際に見た形を、先にあなたに渡すべきだと思った。」
ということは、前回の報告書はやはり修正が入っているのだろう。
「修正前のものを先に回すって、なんでそう判断したの?」
わざわざそういったルーナの行動を、私から死神側に漏らすことはないにしても、多少なりとも、火種になる行動ではある。
「問題がありそうな場合は、経由する。でも、今回は問題ないと判断した。」
「そう。こちらとしては助かるけれど、あまり不用意な行動をして、トラブルを起こすことは気を付けてもらえると助かる。」
変なトラブルで、再び厄介事に巻き込まれるのは困る。
ルーナは少しだけ眉を寄せ、悩んでいる雰囲気を漏らした。
彼女は、アリスほど感情は顔に出ないが、ガルシアのように完全な無表情でもない。
「分かった。気を付ける。」
「でも確認させてもらうよ。ありがとう。」
そう伝えると、ルーナは人の形を崩して階段の影に消えていった。
アリスの影へ戻ったのか、はたまた自分の部屋に行ったのか。
ひとまず、二度目の報告書。
つまりルーナがここへ来て、二週間が経つことになる。
和や日向達から、ルーナに関しての話はほとんど出てない。
それは、同時にルーナの観察対象であるアリスにも、大きな変化はないということだろう。
正面の階段の脇を進み、階段裏から地下への階段に降りる。
ルーナをここへ置いた死神側の目的は、本当に観察だけなのだろうか。
正直、再びアリスの魂を回収する為の情報収集くらいはしてくると予想していた。
なので、下手にルーナが、アリスを探るような発言や行動をした場合は、すぐにでも対処をすることも考えていた。
予想を肩透かしするように、何事もなく時間だけが過ぎていく。
だがまだ、判断を変えるには早い。
もうしばらくは、様子を見ておこう。
地下へ降り、正面にあるデスクの椅子につく。
スリープ状態のパソコンを起動し、まずは送られたばかりのルーナの報告書に目を通した。
内容は一日毎にまとまっており、先週土日に沖縄へ行った時の詳細から始まった。
そして、シャロン・フォーラスが来た時のこと。
その時の、アリスと勘右エ門との会話。
–神族の発言により、彼女の魂を視認できる精度は、我々死神と同等に明確な形で捉えている可能性が高い。
管理者である死神と同じくらい明確に魂を見ることができる。
それは個人の特性としても、かなり飛び抜けている。
精霊や妖精でさえ、生者の魂はぼんやりとしか見えていないらしく、少し目を離せばその姿を見失うという。
私が知っている範囲にはなるけれど、死神以上に魂をしっかり捉えられる存在は、神くらいしか知らない。
「…はぁ。」
椅子が軋む音を立てる。
彼女が魂の視認をできるようになった理由が、精霊に関与したからなのだとしたら――
あの時、精霊の世界へ彼女を連れて行った判断は、思っていた以上に重かったのかもしれない。
今はまだ、クラーレンやフォーラス、そして死神と一部の精霊にしか知られていない。
けれど、この認知がもしも広がれば、彼女に価値を見出す存在は確実に増えることになる。
そうなってからでは遅い。
もっと慎重に、いくつもの未来を想定して判断するべきだった。
最近は、見ている先が近すぎる。
死神やフォーラスの襲来のような、“すぐ来るかもしれない危機”ばかりを気にしている。
いくら空論を抜けないとしても、もう少し先の選択肢やパターンを想定して動くべきだろう。
そうしなければ、ここから彼女に関わる世界や存在次第では、さらに、二度と引き返せない場所まで彼女を連れていってしまいそうだ。
–ブブブ
スマホが揺れる。
同時にパソコンからも、メールが届いた。
ミランダから。
先日、魔法世界に連れて行ったシャロン・フォーラスについての進捗だった。
内容にはミランダの愚痴も混ざっている。
シャロンが相変わらず周囲を振り回していることと、私との直接交渉を望んでいることが書かれていた。
交換条件は直接伝えたいらしいが、ひとまず“とある場所を教える”とのことだった。
先日の話の流れからしても、攫った魔法使いか他種族の場所だとは予想できる。
今さらになって、交渉を希望するあたりは、あの時の気まぐれな様子からもありえそうだけれど、もちろん罠の可能性も高い。
それに、シャロンの求める交換条件も分からない。
…一度話を聞いておくべきだろうか。
交渉に乗るかどうかは別にして。
話だけは聞いておいた方が、今後の選択肢としても良いだろうし、他の情報とも、何か繋がるものが出てくるかもしれないか。
ひとまずミランダに「明日行く」と、返信した。
留置されているシャロンとの情報交換なら、リスクがある訳でもないし、無駄足でも良いだろう。
カレンダーを開き、明日のスケジュールに予定を追加した。
–魔法練習
普段なら、ほとんど追加や変更がないはずの和達のスケジュールに、珍しく変更があったので目に止まった。
少し前に考えていたことが戻ってきた。
山本梓としてのアリスと出会った当初のゴール。
その時のゴールと今目指すゴールは、変えざるを得ないもの。
今は彼女が魔法使いとして、普通に暮らせるようになれれば。
その為にも魂の視認が、精霊からの影響による一過性のものならいいのだけど。
もしも、死者を経由したことで魂の特性が変化しているのなら、解除方法を探すべきだろう。
ひとまず死神の中でも、そういったことに詳しい研究者のエルに相談してみようか。
死神との問題が解決すれば、イヴの復元が不可能になる以上、それで彼女の問題は終わりだと思っていた。
それなのに相変わらず、目指せば目指すほど、予想とは違う方向に進んでいく結果。
本当は、もっと単純なら良かった。
けれど最近は、一つほどこうとすると別の問題が絡みついてくる。
しかも今は、その彼女自身の問題と、彼女の“元いた側”の問題が並行して動いていることもある。
予定していた定例ミーティングが始まった。
その手元で、彼女の”元いた側”である山本家についての情報を見直す。
父方、母方両方の家系。
公的な情報からは、やっぱり宗一郎より上の家系情報が見つけられない。
いつ知れず、ふと現れた野村宗一郎という男。
そして野村宗一郎は山本家に入り、その後は長女の亜季子が家を継ぐ形になっている。
現在青森で暮らしている弘和が、山本家に婿入り。
その子供は、書類上は長女梓と長男圭吾の二人だけ。
宗一郎の時代では、ほとんどの家系は男側が苗字を引き継ぐ風習が強かった。
その中で宗一郎は野村の苗字を捨て、山本家に入り、更には長女の亜季子も相手方に嫁がずに、まるで山本家の姓を守っているようにも見える。
山本家に、何かあるのか?
宗一郎の結婚相手は、山本家長女の節子。
当時の山本家系は、時代相応に兄弟が多いなどの特徴はあるけれど、おかしな部分は見られない。
山本家は商家として、青森で古くから営んできている。
ただし、青森という場所は、そもそも怪異の世界への道が発生しやすい。
昔は一般的な家系の中にも、一部妖怪が混ざる事が時々あったけれど、今では徐々に減ってきている。
そういうことからも、山本家に、偶然怪異である宗一郎が入り込むこと自体はありえる。
だが、宗一郎が意図して山本家と繋がった可能性も考えるなら、念の為山本家をもう少し調べてみようか。
土地柄で起こりうることと、山本家固有の事情は、まだ切り分けきれていない。
–ブブブ
和「夕飯は?」
ミーティングの終わりと同時に、スマホが震えた。
「……。」
気が付かなかったことにして、このまま山本家を調べようか。
いや、明日は土曜日。
調べる時間は十分にある。
今、下手に和の機嫌を損ねる必要はない。
資料から意識を切り離し、地上へ戻った。
二階に上がったところでふと思い出し、三階へ向かう足を止めた。
階段から左奥にある、今はほぼアリスと和しか使っていない、六つのまとまったデスク。
基本世界の公的な情報だけでは、宗一郎の“前”が出てこない。
なら、妖怪側の記録を当たった方が早いのかもしれない。
並んでいる壁側に三つ並ぶデスク。
左奥が尚弥、右がアンジェラのもの。
その二つに挟まれた真ん中のデスクは、以前アンジェラに聞いた時には、今はアフリカにいるらしいグェンの物。
グェンは元々は交渉人だった。
だが、自称古代研究者に移り変わってからは、魔法世界の歴史のみならず、今は基本世界の歴史を調べまわっている。
魔法使いの彼が、基本世界にいる為の管理責任者であるアンジェラとは、定期的にやりとりしているようだけど、住所も持たずスマホも持たないあの男と直接連絡をとる手段は私にはない。
そのデスク下に付随している引き出しの一番下を開くと、ただ積み重ねられただけの積み上がっていた資料が、雪崩みたいに崩れ落ちてきた。
ひとまずそれらをまとめて机の上に乗せ上げ、中身を一つ一つ確認していると、和が階段からこちらに向かってきた。
「…上がってこないから、降りただろうが。」
「ごめん。」
階段で入れ違いになってしまっていたのだろう。
少し不機嫌そうな顔をこちらへ向ける。
「なんでグェンの資料?・・・あぁあいつ妖怪のことも調べてたか。」
「そう。確か、少しはここに残ってた気がしたけれど…。」
整理されていない紙の山から、目的の資料を見つけ出すのは時間がかかりそうだ。
「どんだけあると思ってんだ。明日探しとくから、今やるな。」
もう少し整理しておいて欲しかった。
「…分かった。大丈夫だよ。後で自分で探してみる。」
「・・・なぁ。今さらなんだけどさ。」
和から少し言葉を選ぶような慎重な声を耳にして、崩れそうな資料を抑えながら顔を上げた。
「あー・・・。いや、やっぱりなんでも・・・。」
その表情を最近見かけた。
和が精霊の世界に移動して、フィフとしばらく過ごしてた頃。
「範囲が広すぎる。しかも、颯太は…あの子はまだ精神年齢は子供だろう。」
「・・・そういう観察は早い。」
「和のことは、思ってるより見えてる気がする。」
資料が崩れないのを確認して、椅子から立ち上がる。
「不安がるな。……そう簡単に形にできる話でもないが。」
和が不安になるのは、見える形で確認できるものが何も無いからだろう。
「いや。そういう形が欲しい訳じゃない。
そんなもんでお前が変わるとも思ってないし、変わって欲しいとも違う。」
「でも、こう頻繁に不安になるのは嫌だろう?」
私がそういう意味で、他者への対応を変えることは今までなかった。
そういった対応の変化は、場合によってどちらに対しても失礼になる。
「俺のわがままといえば、わがままなんだけど・・・いやとにかく、今聞きたいのは一つ!」
その姿は、あまりに意を決し過ぎている。
いつかの姿と重なる。
「スズ――」
「…ダメだ。多分、今は答えられない。」
「っ・・・・。」
「それでも良いなら、私はここにいる。」
これだと、足りない。
それは分かってる。
「いなくならない。」
「――」
和が何か言うより先に、ほんの一瞬だけ、互いの距離感が曖昧になった気がした。
ふと、焼き魚の匂いが鼻をかすめた。
それとは別の慣れた匂いに、どこか安心する。
私にはそれで足りていても、和には足りないのだろう。
実際に先へ進もうとしているのは、お前の方だというのに。
どこまでも自己評価が低い姿勢は、和らしいといえば和らしい。
何事も簡単明瞭なら良い。
けれど、実際はそうなれないものばかりだからこそ、私はまだここに立っているのかもしれない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




