疑問:見たものは記憶に残り、それは体にも残る?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
沖縄旅行から帰ってきて数日。
スズはいつものように会社に行って、私はスケジュールを調整しながら英語や魔法を勉強する日々に戻った。
死神の観察担当のルーナさんも、今のところは静かで、少しずつ、前の生活に戻ってきた気がしていた。
だからこそ、その通知音はやけに大きく響いた。
–ピロン
六階で英語の文字を勉強していると、スマホの通知音が耳に入る。
圭「変なのが来た。」
「変なの・・・?」
相談所のやりとりをしているチャットで、圭さんから変なメッセージが入っている。
集中していたけれど、窓を見上げるともうすぐ夕方に近い時間みたい。
「どうしたの?」
「うーん?なんだろう、誰か来たのかもしれない。降りてみようか。」
イザベルと一緒に階段を下りる。
一階へ向かって階段を降りていくと、玄関の方に日向と秀人、ウーノ達の姿が見えた。
その奥に、和さんの姿が見えた。
「あ。アリス。」
階段を下りていくと、日向が私に気が付いた。
「どうしたの?」
「うーん?なんか倒れてて・・・」
地下の扉が開く音と同時に、圭さんの大きな声が響いた。
「・・・・・・みんな近づかないで!日向と秀人、ウーノ達は二階に上がって!」
「圭?」
それを聞いて、日向と秀人は急いでウーノ達を引っ張って二階まで上がってきた。
「・・・・・・・・・・・スズに連絡して。」
「分かった。私の方でメッセージ送るね。」
圭さんの指示を聞いて、二階から日向が返事を返す。
その声は低く抑えられていたけれど、それまでの“知らない侵入者”に向けるものとは明らかに違っていた。
「知っているのか?」
少し遠くて見えないけれど、多分和さんの正面には誰かが倒れているみたい。
女の人・・・?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・和。動けないように拘束した方が良い。」
「分かった。」
拘束?
もしかしてかなり危ない人?
でも女性である以上ブライアンでもブルースって人でもない、もちろんクラーレンでもない・・・
顔を上げると三階の方で、勘右エ門さんの顔がのぞいている。
「・・・・・・・・・・・・・・・ミランダに連絡した。このまま、小屋の方に・・・。」
和さんが拘束をかけ、圭さんが言葉を続けようとしたところで止まった。
「・・・。・・・・・はぁ。暴れないわ。もう少し緩めてくれない?」
小さくて聞き取りづらいけれど、女性の声。
気が付いたのかもしれない。
「圭。この人は誰だ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・スズの調査で見た情報・・・・・・・エルフの姿をしてるけど・・・・・・・シャロン・フォーラス。・・・・・フォーラス家の子女。アリスの姉。」
「…なるほど。なら拘束は、このままだ。」
シャロン・・・
急に息が詰まった気がした。
アリスの記憶の中で、知っている名前。
私のお姉さん・・・
「・・・・はぁ。あっそう。まぁそれは仕方ないとしても・・・・小屋にぶち込むのは、やめて欲しいわね。」
少し大雑把で、明るくて、優しかった記憶。
でも、その記憶に重なるように、別の感覚が一気に押し寄せる。
本当に?
疑うより先に、体が引いた。
胸の奥がひやりと冷えて、息が浅くなる。
頭の奥に残っていた映像が、違う色で塗りつぶされていく。
自分の記憶というにはやっぱり違和感があるのに、恐怖だけははっきり残っていた。
そして同時に、こちらを捉える青い目を思い出す。
一瞬女性のような姿が見えた途端、隠れるように後ずさった。
「っ・・・・・。」
「アリス?」
向こうからは見えていないはずなのに、目が合った気がした。
「何の用だ?」
「・・・あのままじゃ、お母様と同じく殺されるのが目に見えてるから、逃げてきたのよ。」
「逃げてきた?フォーラス・・・ブライアンやブルースからという意味か?」
「そうよ。他に無いでしょ。」
ブライアン達から逃げてきた?
日向は話に耳を傾けながら、スマホで今の状況を送り続けている。
でもスズは既に移動中らしく、もう少し時間がかかりそう。
「わざわざここに逃げてくる理由がない。」
「・・・はぁ。私だって馬鹿な事をしてることはわかってるわよ。だからといって、他に逃げる場所もなかったのよ。
ねぇちゃんと話す気があることは分かるでしょ?せめて床じゃなくて、どっか無いの?」
「分かった。圭、運んで欲しい。あっちの部屋。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった。」
その後の会話は聞こえなかった。
ただ、体が動かなかった。
どうなったんだろう?
しばらく日向達と待っていると、和が上がってきた。
「スズは?」
「もうちょいかかるって。」
すぐに日向が返事をする。
「分かった。ひとまず俺と圭は下にいるから、日向と秀人は二階で待機。アリスさんとウーノ達は三階の方で待っていてもらえますか?」
「分かった。」
「・・はい。」
–ニャ(お邪魔するわ。)
ミランダさんの声が下から聞こえ、和さんが再び階段を下りて行った。
気になるけれど、何があるか分からないし、言われた通り三階に上がった方が良いよね。
ウーノ達と階段を上がると、勘右エ門がお茶を入れてくれていた。
「ここは、なかなかイベントが絶えないね。」
「そうですね・・・。」
テーブルに着いたけど、下の階の様子が気になってしょうがない。
「キュウ」「キー」「キュ」
ウーノ達も心配そうにしてる。
「まぁここじゃ、エルフといっても普通の人間と変わらない。心配しなくても大丈夫だろ。」
確かに、相談所の中では部外者は魔法が使えないだろうけれど、とはいえ心配なものは心配。
?
普段はチラッとしか見かけない勘右エ門さんの姿が目に入る。
全体が白い光に包まれてみえる。
「・・・?」
普通の人ではないけれど、何者なのか分からない人。
ついジッと見てしまったので、勘右エ門さんと目が合った。
「ん?あぁそうか、嬢ちゃん。精霊の世界にしばらく過ごしたから感化されてるな。」
「・・・感化・・・ですか?」
「その眼は、魂が見えてる。」
「・・・・。」
あの時は、梓さんの魂だから特別なんじゃ・・・?
「なるほどね。だから死神がくっついてきちゃったのか。」
勘右エ門さんが、私の足元の影に視線を向ける。
「・・・・私が今見えてるものは、皆と違うんですか?」
「違うだろうなぁ。肉体と魂を分けて捉えてる。変なモノが見えたことはなかった?」
変なモノ・・・
確かに精霊の世界に行ってから、変な見え方をする時が増えた。
「カルさん達に狐みたいな影が・・・見えたり、他にもブレて見えるものや・・・生きているような光を、何度か・・・・。」
思い出しながら口にしていく。
そして、一番気になっていたこと。
「あと・・・・スズの姿が、たまに・・・?」
勘右エ門さんが、自身の唇に人差し指を立てた。
これ以上、言っちゃダメってこと・・・?
「魂の姿は、時々状態まで示す。精霊やエルフはぼんやり掴む程度だが、嬢ちゃんは死神に近い見え方をしてるんだろうな。」
足元の影が少し動いた気がした。
状態・・・
魂の状態?
スズが薄く見える理由。
「ま。そういったところで、見えるものはしょうがねぇよな。」
勘右エ門さんは、それが何でもない事のように続ける。
「本来は見えるはずがないもんだから、口にはあまりしない方が良い。
もし伝えるにしても、相手は選ばないとな。」
「・・・分かりました。ありがとうございます。」
「お。どうやら帰って来たみたいだぞ。」
私の頭を撫でて、階段を上がって行ってしまった。
どんな相手でも殆ど言葉遣いが変わらないスズが、勘右エ門さんにだけはいつも丁寧に話してる。
どう見ても人間のようにしか見えないのに、何故か人間ではないと感じる人。
さっき見た白い光。
人の形をしているのに、
人という枠に収まっていないような違和感がある。
もしかしてなんだけど・・・
「キュウ・・・?」
セイが心配そうに近寄ってきた。
「大丈夫だよ。」
勘右エ門さんの最後の言葉。
スズが帰って来たのかな・・・?
私は魂が見えてる。
勘右エ門さんにそう言われると、今まで時々気になっていたぼんやりした姿や光に少し納得がいった。
見えていたものが急に増えたわけじゃない。
ただ名前がついただけなのに、急に怖くなる。
カルさん達は、狐の妖怪。
だから魂の姿が狐に見えると思える。
精霊の世界でも、精霊が自然の魂としての形と言われれば、納得がいく景色な気がする。
「んー・・・・。」
「キュウ?」
目の前のセイを見つめる。
特に気になる感じはしない。
姿と魂が同じ形をしてるのかな?
魔法を見る時と同じように、意識を目に集中してみる。
すると、ふわっと白い霞が視界にかかった。
その奥に、セイの姿に重なるような影が見える。
これが、魂?
辺りを見渡す。
「・・・イザベル?」
「?何?」
イザベルの姿に重なって、猫耳としっぽのある女の人の姿がぼんやり見える。
「イザベルって猫耳あるの・・・?」
「は?あぁ。さっき言ってた魂が、本当に見えてるのね。」
あ。
でもあんまりそういうことを気軽に言っちゃダメなんだ。
思わず、口に出してしまった。
気をつけなきゃ・・・
「私は母親。ミランダが化け猫の妖怪で、父親が魔法使いのハーフなのよ。」
「えええええ?」
「キュウ!?」「キー!?」「キュキュ?」
今まで当たり前のように猫の姿でいたから、考えたこともなかった。
ここに来て、急に世界の見え方が一段増えたみたいだった。
「聞いてこなかったから、事前に知っていたんだと思ってたわ。」
「ええええ?!し、知らなかった・・・。」
妖怪と魔法使いのハーフ。
そっか。
どちらも存在するのだから、そういうこともある・・・んだ・・
「私は化け猫の方が、要素として強いのよ。
だから、魔法で人間の姿になる事はできるけど、魔法が使えないとこの姿よ。」
「そうだったんだ・・・。」
「キュウ?」「キー・・・」「キュ」
「魂が見えると、そういう正体も分かるのね。」
なるほど。
本来の姿が見えてしまうと、こういうことも分かるんだ。
でも状態も分かるって、どういう意味なんだろう。
みんなの魂は、肉体の姿よりはぼんやりしてるけど、それでもしっかり見える。
それが、薄くなるってことは。
輪郭がほどけていくように見える理由。
その先にあるものを、言葉にしたくなかった。
ただ、悪い予感だけが胸の奥に沈んだ。
「アリスー。」
秀人が階段を上がって来た。
「!・・・どうしたの?」
「呼んで来てってー。」
私を呼んだの?
「・・・分かった。」
相手が、シャロンお姉様だから?
でもだからといって、今のシャロンお姉様のことで知ってることは少ない。
呼ばれた理由がいまいち分からないけど、とにかく降りよう。
イザベルと一緒に階段を下りて行った。
「大丈夫?」
イザベルに指摘されて、自分が少し震えていることに気が付いた。
気づかないふりをしていたけれど、指先がずっと冷たかった。
「・・・大丈夫。」
ゆっくり降りていく。
それでも一階にはすぐに到着した。
扉が閉まっていた一番左の洋室の応接室に静かにノック。
「どうぞ。」
スズの声が聞こえた。
冷たいドアノブを握り、扉を開いた。
「わ。本当にアリスだわ。」
シャロンお姉様・・・
アリスの記憶が馴染んできているのか、やっぱりその呼び方がしっくりくる。
和さんとミランダさんがいるソファに腰を掛けた。
正面に座っている耳の長い女性。
さっきまで意識していた“見え方”が、勝手にその輪郭を拾った。
目の前の女性の姿と重なって、シャロンお姉様の長い金髪と白い肌がぼやけて見える。
本当に、シャロンお姉様なんだ・・・
「これで良いだろう。続きを。」
遠く淡い明るい記憶と同時に、暗く赤い記憶が引き出される。
手に力が籠る。
彼女に視線を置いていたくなくて、自分の足元に移った。
「何よ。妹と久しぶりに会った感動の時間くらい少しは頂戴よ。」
完璧な笑顔で、出来上がった仮面を被っているシャロンお姉様の姿。
「それをアリスが望むなら良いが、何をしたかお前も分かってるだろう。」
「別に私は何もしてないわよ。主にお父様とブルースお兄様のせいでしょ。ね?アリス?」
優しい言い方。
声は違うけれど、シャロンお姉様の声と重なる。
異論を言わせないように、でも優しく・・・
息が浅くなって、うまく吸えない。
イザベルが膝に乗って来た。
「アリス。無理なら出ましょう。スズ、良いでしょう?」
「そうだね。シャロンのわがままだ。ごめん。」
スズの言葉が耳に入ると同時に、今すぐにでも立ち上がろうと力が入った。
「なんなのよ?アリスが私の事を嫌がるわけないじゃない。」
スズの方に、顔を上げようとした時。
「ね?アリス。」
シャロンお姉様の声のトーンが下がった。
反射だった。
何を言えば機嫌を損ねないのか。
どう返せば怒らせずに済むのか。
考えるより先に、体がそれを探してしまう。
アリスとして、私は・・・
「・・・はい。」
逆らえない。
足の力が抜ける。
体が動かない。
「和。アリスを連れて行って。」
「分かった。」
和さんが立ち上がって、私を横抱きにしたのが分かった。
いつもなら恥ずかしくて、すぐに断るはずなのに。
反応する気が起きない。
体が、石みたいに動かなかった。
「先に確認せずに呼んでしまって、すみませんでした。」
「本当によ!アリスはずっと怖がってたのに!」
和さんが階段を上ってる。
「一度様子を伺いに行けば良かったですね。」
「アリス?大丈夫?アリス。」
イザベルの声が下から聞こえる。
「部屋に行きますね。」
その後も和さんとイザベルが、色々話していたけど、言葉が耳に入ってこなかった。
青い目。
閉じても、あの目だけが消えない。
あの目がまだ見ている。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




