疑問:見落としていただけで、ずっとそこにあった物は多い?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
スズは食べ終わると、すぐに下りて行ってしまった。
その姿を見送りながら、もう少し話したい気持ちに後ろ髪を引かれたけれど、今は別の事が頭を占めてしまっている。
基本世界の人間として生まれている以上、実家があるのは当たり前だ。
でも、その当たり前が、今までうまく結びついていなかった。
スズの実家。
その言葉だけが、頭の中で妙に浮いた。
「日向達も初めて行くの?」
早速少し残念そうにしていたウーノ達に、お土産について聞いている二人に質問する。
「初めてだよ!たまーに帰ってたみたいだったけど、すぐに帰ってくるから行ったことないよー。」
「そうそう!だから楽しみだね!ウーノ達のお土産もいっぱい買ってこよー。」
「キュウ!」「キーキ!」「キュキュ!」
「来週って・・・結構すぐだな。」
和さんは、呆れた顔でカウンターにサバの味噌煮を並べていく。
確かに急な話ではある。
沖縄かぁ。
今まで行く機会も無かったので、日本とはいえ行ったことが無い場所。
そして場所以上に、実家というからには両親や兄弟がいるということ。
私達も挨拶するのかな・・・?
それとも旅行として楽しむだけってことかな?
各々、カウンターに乗った自分のお皿をテーブルへ運んでいると、尚弥さんも降りてきた。
「何々?何か楽しそうだね。」
「尚弥ー来週沖縄に行くんだよー。」
「尚弥も行こー?」
「沖縄?なんでまた?」
尚弥さんもテーブルに着いて、最後に和さんが座り一緒に食事を始める。
「スズの実家があるんだと。正月帰ってないから急かされているっては言ってた。」
「あぁなるほど。ご両親への挨拶?」
「っぶふ!」
和さんがお味噌汁を吹き出す。
「「は!」」
「あれってそういう意味だったのかな?」
「スズならありえる・・・?」
「ありえねぇ。」
和さんがすかさずに返す。
スズの両親かぁ。
どんな人なんだろう?
「でも和!これはチャンスじゃない!?」
「そうだそうだ。これを逃すのはもったいないよ!?」
兄弟の話とかも聞いたことない。
フィーさんやフィフさんのイメージが強くて、何となく上よりは下がいそうな印象はあるけど。
「何がもったいないだよ。ただの旅行。尚弥はどうする?行くなら伝えとくよ。」
「そうだねぇ。折角だし土日なら行こうかな?」
「やった!尚弥も行こうー。」
「ウーノ達の為にも、色々買って来よう。」
「キュウ!」「キュキュ」
尚弥さんも行けると聞くと嬉しくなる。
帰ってきたばかりで安心してたというのに、もうわくわくしてる。
夕食を終えて、のんびりしていると――
意識の表面を、何かが静かに撫でていった。
スズの廊下に入った時みたいに、全部が引かれる感じではない。
もっと淡くて、何かがそっと通り過ぎるような感覚。
少し寂しい。
でも、その奥に、ようやくほどけたような気配があった。
――あぁ、そうだ。
やっと、行けたんだ。
「アリス?」
イザベルの声に意識が戻る。
「ん。」
「疲れたんじゃない?部屋に戻らない?」
「大丈夫。ずびっ」
少しだけ、感情に引かれたのだと分かった。
そしてそれが、あの時瓶に感じたものと同じことも。
「多分。なんとなくだけど・・・梓さんが行くべき場所に行けたんだと思う。」
賑やかな日向達の声に紛れるように、イザベルだけに聞こえる小さい声で伝える。
「…それなら、良かったわね。」
イザベルも静かに返事を返す。
あの時の寂しそうな、悲しそうな感情を思い出す。
輪廻の先がどうなっているのかは分からないけれど、あのまま寂しく置いておくのは嫌だった。
またどこかで出会うかもしれない。
その時、私は気が付かないと思うけれど、でも会えたら嬉しいなぁ。
あ。
そういえば、スズにチョコのことお礼言うの忘れてた・・・
明日作ったチョコを渡す時に、伝えよう。
――翌朝。
久しぶりに相談所の庭を走ろうと外に出た。
「・・・凄い。」
「流石に、やり過ぎじゃないのかしら?」
庭の景色が一変していた。
今まで障害物リレーのようだった場所が、全体ごと作り替えられている。
土の壁や倒木の足場だったものは、木も石も一つ一つ削られ、磨かれ、ちゃんとした遊具みたいな形になっていた。
新しく立てられた壁には石が打ち込まれ、上を見れば、木と木の間に橋までかかっている。
「これって……クライミング?」
精霊の世界へ行く前に見た庭とは、もう比べようがなかった。
「おはよーさん。」
勘右エ門さんが後ろから声をかけて来た。
「おはようございます・・・。凄いですね。」
「へへ。暇だったんでね。」
どや顔を向けてくる。
「しかも、作ってしばらくするとスズが簡単に進んじまうから、こっちも熱が入っちまってなぁ~。」
「なるほど?」
スズならありそうだけど、それにしてもこれは凄い。
「一応怪我しないように落下防止用のネットとかも所々に設置してるから、まぁ良ければ使ってやってくれ。」
「ありがとうございます・・・。」
まずは走ろうと思って、庭の一番端の方に歩き出すと、アスレチックが入口から見えている以上にあり、それぞれが繋がりに繋がってさらに驚く。
「暇って言っても・・・一ヵ月ぐらいだよね?」
「限度ってものがあるわね。」
イザベルもあきれた声を出す。
外側の走るスペースはちゃんと一周あったので、のんびりと走り出した。
3月に入り、少し暖かくなってきたかと思ったけれど、朝はまだ寒かった。
走っていると白い息が目立つ。
3周走ったところで、少し休憩。
「ちょっと試してみようかな?」
ずっと視界に入るアスレチックが気になってしょうがない。
「まぁ確かにちゃんとアリスも登れるようになってるみたいだし、良いと思うわよ。」
イザベルの言う通り、良く見れば私の身長でも届く範囲に、手や足をかける場所がある。
手前にある障害物から、くぐったり登ったりを繰り返しながら進む。
足元に隙間のある足場を進んだり、上に行ったり、降りたり。
ただ単純に進むだけでいっぱいいっぱいだ。
この中をもしも駆け抜けるとなると、今の私には難しすぎる。
「っはぁ!ほっ!」
木の葉っぱが目に入り、周りの景色を見渡す。
目の前の障害物に集中して進んでいたので、気が付けば、思っていた以上に高い場所にいた。
「わ!」
「ちょっと、急に落ちないでよ。」
「大丈夫ー。」
ちょっと離れた場所から、イザベルの声が聞こえる。
相談所の窓を見ると、少し下に2階がある。
2階と3階の間ぐらいにいるみたい。
思ったよりも高い事に、一瞬足がすくみそうになったけど、足場はしっかりしている。
それに勘右エ門が言った通り、すぐ下にはネットも張ってある。
少し開けた場所に出ると、庭の景色が見渡せる場所にたどり着いた。
「わぁ・・・やっぱり結構広い。」
視界の端まで、空間が広がっている。
外周約一キロ弱もある庭の広さを、改めて実感する。
朝の日差しが少しずつ入り始めて、少し眺めているだけでも雰囲気が変わっていく。
少しずつ温度も上がっていく感覚が楽しくて、眺め続けていると庭の正面から誰かが歩いて来た。
その正体は、遠目でもすぐに分かった。
紫色のスーツ。
死神の人みたい。
でも、その隣は黒いスーツ?
登って来た場所を下り、地面に足をつけると、紫色のスーツの人が声をかけてきた。
「こんにちは。お元気そうで何よりです。」
いつも通りのガルシアさん。
と、その隣の白い髪に黒いスーツの不思議な雰囲気をした女の人が会釈をしたので、会釈を返す。
「こんにちは。和さん達、呼んできますね。」
「いえ、もういらっしゃるようです。」
–カララ
玄関の開く音。
そこから顔を出す秀人。
「こんにちは。お待ちしてました。どうぞ。」
秀人がガルシアさん達を迎え入れたので、その後から続いて中へ入った。
日向と秀人の姿は見えるけれど・・・
「今スズを呼んでるので、こちらでお待ちください。」
秀人はそのままガルシアさん達を中央の応接室へ案内して、日向は給湯室に入っていった。
どう動こうか迷っていると、秀人が応接室にガルシアさん達を入れた後に、入口から手招きをしてくれた。
応接室へ歩いていくと、階段裏にある扉が開いた。
「あ。アリスさん。朝早くからすみませんが少し同席して頂けますか?」
「はい。ガルシアさん達ですよね。こんな格好のままで大丈夫でしょうか・・・?」
和さんは普段通りのカジュアルな服とはいえ、ちゃんとしている。
走る用のトレーニングウェアの恰好なので、ちょっと気まずい。
「大丈夫ですよ。急ですし、気にしないでください。」
和さんと入れ替わりに、秀人は部屋を出て行った。
「スズは今準備中なので、もうしばらくお待ちください。」
「いえ、こちらの都合がつかず急な訪問となってしまいましたこと、申し訳ございません。」
和さんの隣に座る。
「そちらが担当者の方でしょうか?」
担当者。
少し前の会議の内容を思い出す。
そうだ。
観察対象。
確かに、そう言っていた。
熱を出したり、相談所に戻ってきたりで安心して、すっかり抜けてしまっていたけれど、死神との会議で決まった事。
ガルシアさんの隣に座る白い髪の女性は、少女に近い年齢に見える。
まだ表情は見えないけれど、スズやガルシアさんほど無表情ではなく、少しだけ緊張してるような感じがする。
「はい。こちらは調査部所属のルーナ・フレットと言います。」
「こんにちは…」
小さな声。
調査部。
今までいくつかの部の方と話してきたけれど、黒いスーツの人を見るのは初めてな気がする。
「調査部ですか?」
「はい。主に現地調査をしており、魂の回収前の調査や回収後の対応等をしておりますので、殆どが別世界にいることが多いです。」
ルーナさんがうなづく。
「そうなんですね。初めましてフレットさん。僕はカイル・ヴィンセント。そして、こちらがアリス・フォーラスさんです。」
その紹介を聞いて、ルーナさんの視線がこちらに移る。
「は、初めまして。」
ルーナさんが、最初と同じように会釈で返す。
あまり話さない人なのかもしれない。
白い髪と黒いスーツ。
肌の色も薄くて、今にも消えてしまいそうな雰囲気。
「観察となると、フレットさんはしばらくここに滞在する、ということになるのでしょうか?」
和さんが気になっていた質問をしたところで、部屋の扉が開く。
お茶を持った日向と一緒にスズが入ってきた。
スズの視線が、ルーナさんに止まる。
「なんで、調査部?」
「今回のトラブル内容から、回収部から出すのは妥当ではないと判断があり、その次に現地に慣れている調査部から選んだとのことです。」
「そう。初めまして。」
スズは、入口に一番近い一人掛けソファに座った。
「名前はルーナ・フレットさん。今観察の方法について、滞在の質問をしようとしていたところ。」
和さんが来る前の説明を入れる。
日向は、そそくさと部屋を出て行き、扉が閉まる。
部屋の中を、変な緊張感が漂った。
「分かった。その質問続きから、どうぞ。」
会議の時と変わらない温度で、スズが返す。
「はい。観察については、アリスさんの影に入らせて頂き、基本的には生活に支障が無いようにさせて頂きます。」
影に入る・・・?
ガルシアさんが私の影から現れる時を思い出す。
「つまり終始、張り付く?」
「私達は、食事や睡眠といったものが、基本必要がありませんので、週に一度報告に戻るタイミング以外はその予定です。」
つまりスズの言った通り、ほぼずっと影の中から見られる?
「今回の観察対象の理由は、魂との接触によるもの。なら、普段の私生活まで常時張り付く理由が分からない。」
「逆に、どのタイミングが適切と考えられますか?」
確かにいつ起こるのかと言われると、そんなのは分からない。
今回は明白に山本梓の魂の回収として動いたけれど、今後のことなんて・・・
「この建物の地上部分は基本世界。以前いた精霊の世界よりも、そういった介入や干渉が少なくなる可能性は高い。
必要に応じて観察するという意図であれば、基本は同居人程度の立ち位置でも問題ないはず。」
「それでは基本は影の中に入らず、そちらの猫の方と同じように動くという認識で宜しいでしょうか?」
イザベルが嫌そうな顔をする。
「同室というのも、人間として生活する上で休めない状態が続くことになる。せめてアリスが個室に入る時には、隣室で過ごしてもらいたい。」
スズの提案を聞いて、同じくそれが通ることを期待しながらガルシアさんを見る。
ずっと見られ続けるのは、流石に厳しい・・・
「…あと、報告内容についてもこちらに共有して貰いたい。」
確かに。
何を報告されるのかは気になる。
観察対象となってしまった以上、受け入れないといけないことなのは分かってる。
それでも、スズの提案が通って欲しい。
ガルシアさんは少し考える間をおいて、口を開く。
「分かりました。ルーナ。ひとまずは、それでお願いします。」
「分かりました…。」
「運用については一度持ち帰り、変更提案がある場合には改めてご連絡いたします。」
「…分かった。あと、いずれタイミングを見て期限を決めたい。それも含めて検討を。
アリス。それで問題ないだろうか?」
個室にいる場合は、隣の部屋。
それ以外はずっと傍にいるって事になるけれど、それは仕方ない・・・
「うん。分かった。」
スズに目を向ける。
返事と一緒にうなづく。
「…ありがとう。」
スズは、ガルシアさんに視線を戻す。
「もしもアリスに対して明確な妨害や害が確認された場合は、その瞬間にこちらで停止を宣言する。
生者として、丁寧な対応を期待する。以上。」
「分かりました。それも合わせて、今回報告にあげさせていただきます。」
そう言ったと同時に、ガルシアさんとスズは同時に立ち上がった。
それにつられて和さんと私と・・・ルーナさんが続く。
大丈夫かな・・・?
ほとんど喋らなかったルーナさん。
怖い感じや明らかにこちらを嫌悪する態度はなさそうだけど・・・
よく分からない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




