疑問:そういえば、普通の人なんだよね?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「大丈夫そうですね。」
「ありがとうございます。」
緊張で熱を出すなんて、遠足前日の子供みたいだと思った。
「もう一晩様子を見ても良いと思いますが、今日帰ると尚弥が相談所にいると思います。
もし大丈夫そうでしたら、今日で戻っておくのも良いと思いますがいかがでしょうか?」
尚弥さん。
その名前を聞いた瞬間、少しだけ胸が軽くなった。
お見舞いの時に会ったのが、最後だったこともあるし、相談所の空気が、少し恋しくなっていたのかもしれない。
「はい。大丈夫そうなので、良ければ戻っても良いですか?」
「もちろん構いませんよ。でも、少しでも気分が悪くなったら言って下さいね。」
和さんが、ベッドの端から立ち上がった。
「日向を呼んできます。」
その間に着替えを済ませ、来てくれた日向と部屋の片づけを進める。
来た時に持ってきた荷物や洋服をリュックに詰めて、階段を下りると既に片付け済みのようで、来た時と同じさっぱりした状態だった。
そんなリビングの様子からも帰ることを実感する。
今日で帰るとなると、これはこれでちょっと物寂しい感じもする。
本当に、自分の気持ちなのによく分からない。
「こっちこっち。」
秀人に呼ばれて、開いたままの玄関の扉を日向とくぐり、外に出た。
外では秀人と一緒にウーノ達。
そしてフィフさんの家の扉の前で、和さんが立っていた。
「通路繋いでるみたいなので、行きましょうか。」
来た時と同じく大人数で扉をくぐっていく。
そういえば、圭さん達がいない。
寝ている間に先に戻ったのか、それとも残っているのかな?
和さん達を追って、水の通路を歩いていく。
そういえば、フィフさんにも色々手伝ってもらったのに、ちゃんとお礼を言えていない。
話せそうなタイミングはあったはずなのに、あの時は空気が重くて、すっかり逃してしまった。
ちゃんとお礼を言わないまま帰るのは、少しだけ引っかかった。
また、会えるかな。
そんなことを考えている間に、短い通路の終わりに辿り着いていた。
すぐに反対側の扉を和さんが開いた。
少し薄暗い地下の景色。
ほとんど入ることはない場所だけど、ここはスズのいる場所。
でも、その姿は見えない。
「いないねー。」
「上かなー?」
日向と秀人達もスズの姿を探して見渡しながら、地上への階段へ上がっていく。
壁の隙間から入り込む外の光も、どこか薄暗い。
まだ昼だと思うけれど、天気が悪いのかもしれない。
「お?帰ってきたね。おかえりー」
勘右エ門さんが玄関から声をかけて来た。
その手元では、木材を使って何かを作っている様に見える。
この人本当に何なんだろう?
不思議な人だなぁ。
三階に上がると、和さんだけが台所に向かっていった。
スズの姿が見えない。
ひとまず荷物を下ろしに部屋に戻る。
と、同時にリュックを床に置いて、考えるより先にベッドに沈み込んだ。
「大丈夫?ぶり返した?」
「違うよ~・・・なんか安心するー。」
イザベルが心配そうにベッドに上がってきた。
木の家にあったベッドより大きさは小さいけれど、今の私には十分なサイズのシングルベッド。
こっちでは半月みたいだけど、精霊の世界では1ヵ月ぐらい経っている。
本当に行くときに言っていた、長期旅行から帰ってきたような気分。
「はぁぁぁぁ・・・落ち着くー。」
「確かにここも数か月しか過ごしてないけれど、こうして戻ると帰ってきた感じはするわね。」
確かに。
イザベルの言う通り、ここも来て2ヶ月ちょっとぐらいなのに不思議。
木の家も穏やかだったのに、落ち着くという意味では少し違った。
ここは、ちゃんと自分の生活がある場所なんだと思う。
しばらくベッドの上で休んでいると、お昼ご飯を要求してお腹が鳴り始めてしまったので、三階へ降りた。
「あ!アリスアリス!チョコ作らなきゃ!」
「あ?!ああ!忘れてた!賞味期限大丈夫?」
日向の言葉に、すっかり忘れていた事を思い出した。
バレンタインはかなり過ぎてしまったけれど、折角だし作りたいよね。
「まだ調理前ですし、時間経過を遅めにしているので、大丈夫ですよ。」
「今日作っちゃう?」
「キュウ?」
和さんが、お盆の上どんぶりを乗せて、冷蔵庫を漁る日向を避けながら、台所から出てきた。
「ひとまずは親子丼作ったから、お昼ご飯にしな。」
「「はーい。」」
「キュウ!」「キーキ」「キュキュー」
日向達と並んで、ダイニングテーブルについた。
「アリスさんは重そうでしたら、雑炊も作れるので無理しないでくださいね。」
「ありがとうございます。大丈夫そうです!」
温かなどんぶりから、だしのいい匂いが漂い、食欲をそそる。
和さんの雑炊ならきっと美味しいけど、今は目の前の親子丼が食べたい。
「和ー午後に台所使ってもいいー?」
「良いけど、分担しなよ。アリスさんも今日作ります?」
どうしようかな。
日向達と、作るタイミングをずらした方が良さそうな気がするけど。
「はーい。アリスの分も溶かしたりするよー。」
「そっかぁ。じゃあ横で作ろうかな?」
「手伝ウ?」
「その前に、家庭菜園を見に行コウ。」
「キニナル。」
「キュウ?」「キー」「キュ」
賑やかな声の合間に、無意識に台所の奥やリビングの方へ目が向く。
でも、やっぱりスズの姿はなかった。
目が泳いでいると、日向と目が合った。
いつもの元気な笑顔ではなく、柔らかく微笑んだ。
昼食の片付けを終えて、日向と秀人と一緒に台所に並ぶ。
「こっちがミルクチョコレート。こっちがブラック。」
丸いチョコが入った袋を並べていく。
クーベルチュールっていうんだっけ?
「日向はミルクにするでしょ?僕はブラックにしてみようかなー。」
台所といえば。
たまにレンジを使ったり、お皿を洗ったりする程度に入る場所。
だから、あんまり道具とかまでは確認したことがなかった・・・
足元や奥の開き戸を開く。
「凄いね・・・なんでも揃ってる気がする。」
「一通りあると思うよー。」
「これでもスズに捨てられた方だけどね。」
普通の料理に使うフライパンやボウルなどは当たり前としても、お菓子を作る用の量りや型もほとんど揃って見える。
これでも捨てられた方なんだ・・・
「アリスは結局何作るのよ?」
「んー・・・昔作ったことがあるからブラウニーかなぁ。」
カウンターの方にいるイザベルに返事する。
確か会社に入って日が浅かった頃に、まとめて作った気がする。
「じゃあアリスもミルクチョコにするー?」
「そうだね。ありがとう。じゃあ道具を準備しようかな。」
分担しながら、三人で進めていくと。
二人が道具の場所も分かっているし、それなりに同じ作業も多かったので、意外とスムーズに進んでいく。
溶けたチョコの甘い匂いが、部屋の空気をゆっくり満たしていく。
「お?珍しい三人が台所にいるね。」
階段から誰か上がってきたと思ったら、和さんと一緒に尚弥さんだった。
「あ!尚弥ー!」
「元気そう!良かったー。」
「お久しぶりです。尚弥さん。」
尚弥さんは、入院の時に見た頭の包帯もなく、いつもの優し気な笑顔で近づいて来た。
「久しぶりですね。何々?チョコ?」
「バレンタイン作れなかったから、今作ってるー。」
「そういえば冷蔵庫にあったね。いいね。僕の分も宜しく。」
こちらを覗きながら、和さんと一緒に並んでイザベルの横に座った。
「これはしばらくおやつはチョコになるな。」
「僕は大歓迎だね。アリスさんは発熱したって聞いたけど、元気そうだね。」
「はい。朝にはすっかり熱も引いたので大丈夫です!尚弥さんも怪我が治って良かったです。」
「それなら良かった。僕の方も深い傷じゃなかったからね。すっかり元気だよ。」
いつもの尚弥さんだ。良かった。
料理の温かい空気に馴染むように、気になっていた気持ちも落ち着いた。
「和は作らないの?」
「余った材料見ながら、何か作るよ。いつも通り無難にチョコレートケーキになると思うけど。」
「いいねぇ。スポンジ?」
「生クリームを沢山用意してるし、あと確かゼラチンがあったから、ムースでもいいかもしれない。」
ゼラチンもあるんだ・・・
材料も大体揃ってるのかもしれない。
尚弥さんと和さんの会話を聞きながら、卵と砂糖の入ったボウルを混ぜる。
「去年は確かスポンジだったよね。チョコが全体にかかってたやつ。」
「あー。確か去年は誰かがリクエストしてきたから、ザッハトルテ作ったな。」
「ザッハトルテ?ケーキの名前なの?」
お菓子のことだから、イザベルも気になったみたい。
「そうそう。チョコレートのスポンジにアプリコットジャムを挟んで、上からチョコをかけたホールケーキですよ。」
「スポンジもムースも、どっちも気になるわ。」
和さんが悩む声を上げる。
「まぁ余るなら後日考えるよ。そんな連日チョコも大変でしょ?」
「私は、気にならないわね。」
「僕もー。」
「「気にならないよー。」」
「いやいや。」
誰の反論もなく、和さんが引いてる。
こうしてみても、甘いの好きな人の方が多いのかも?
そんなこんなで出来上がったブラウニーは、四角い型から外してカウンターの上で粗熱をとる。
そして日向と秀人のチョコパイは、先に焼いて冷ましたので冷蔵庫に入れる。
一通り作り終えて片付けをしていると、日向達と入れ違いに和さんが台所に入ってきた。
「三人のは明日からのおやつにするとして、早速今日からのおやつもチョコだよ。」
おやつ。
チョコ作ってたからだけど、もうそんな時間なんだ。
「えぇ!?すでにあった?」
「先に和作ってたのー?」
和さんがすでに出来上がってる丸いチョコをお皿に移し、電子レンジで温める。
その間にお湯を沸かし、コーヒーを入れるみたいなのでマグカップを並べる。
そして同時に、魔法の方では生クリーム?
「…俺じゃなくて、勘右エ門さんと…スズが作ったんだって。」
和さん、少しだけ言い淀んだ?
「えぇ!?え?何でっ。」
「は?何?その組み合わせ・・・。」
私が言い留まったことを、イザベルが突っ込んでいった。
そして、何故かそれ以外のメンバーが一瞬固まった気がした。
「ええと。と、とにかく勘右エ門・・・お菓子作れるの!?」
「待って。日向!しかもこれ、フォンダンショコラ!?」
日向と秀人が、よく分からない驚きの声を上げる。
「ふははははは!本当に作ったんだ。そうそうー。そんな話してたよ。」
尚弥さんは知ってたみたい。
すごい笑ってる。何故?
入れたコーヒーをテーブルに並べていくと、ウーノ達も上がってきた。
生クリームを添えたフォンダンショコラが、それぞれの席に並んでいく。
「イザベルは、ちょっと熱いと思うから気を付けて。」
「チョコなのに温めるのね・・・。」
不思議そうな顔で、イザベルは置かれたお皿の上を眺めている。
「中にも、溶けてるチョコが入っててちょっと熱いよー。」
まさかのスズが作った。
フォンダンショコラ・・・
「見た目は普通・・・?」
日向が、つぶやく。
「匂いもチョコ・・・?」
秀人もつぶやく。
ちょっとわくわくしたけど、何か様子が変・・・
あれ?
スズって料理下手とかって言ってたっけ?
ちょっとだけドキドキしながらフォークを入れる。
フォークを入れた瞬間、中から熱を持った甘さが溢れ出した。
口に入れる。
丁度良い食感、甘さも甘すぎない。
「わ。美味しい!」
「!?ね!!和、これっておかわりあるの?」
「!?なななな甘ーい。美味しいー!?」
「チョコ美味しイ。」
「甘イ。溶けテル。」
「不思議。」
「キュウ!」「キーキ!」「キュキュ」
それぞれの感想がリビングにあふれる。
「いや、丁度人数分だけだったよ。」
和さんも尚弥さんも、何故か慎重にチョコを口にした。
「・・・すごい・・・普通に美味しい・・・?」
尚弥さんが、不思議そうな顔をする。
「勘右エ門さんがいたから・・・?」
和さんも不思議な顔をする。
どういう反応?
「不思議なチョコね。でも美味しかったわ。」
イザベルも食べ終えて、足元に戻ってきた。
「これはどういう現象だと思われますか?秀人さん。」
「えぇ・・・そうですね。スズがそもそも、チョコを湯煎で溶かすという作業をするとは非常に考えにくく、恐らくは勘右エ門がいたからこそ成り立った可能性がありますね。」
「キュウ?」「キーキ?」「キュ?」
二人はテーブルの上で両手を組んで顔を乗せ、意味深な顔をしている。
この様子から察するに・・・
「つまりサーズは基本的に、こういうものを作らないのね。」
イザベルが答える。
「すぐに食べきるには、もったいなかったかもしれない・・・!」
「は!確かに!写真を撮っておけば・・・くぅぅ。」
「あはは。勘右エ門さん凄いね。作るところ見たかったー。」
「もしかして、ほとんどあの人が作ったんじゃないのか?」
みんなの反応からもイザベルの答えが正しそう。
どうやら、スズがこういうものを作ること自体が珍しいらしい。
貴重なチョコを食べたみたい。
でも美味しかった。
その当人達は、夕飯には来るのかな?
それが気になりながらも、リュックの荷物を片付けたり、お風呂に入ったりして、のんびり過ごす。
気づけば夕飯の時間になっていた。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




