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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
142/201

疑問:そういえば、普通の人なんだよね?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「大丈夫そうですね。」

「ありがとうございます。」


緊張で熱を出すなんて、遠足前日の子供みたいだと思った。


「もう一晩様子を見ても良いと思いますが、今日帰ると尚弥が相談所にいると思います。

もし大丈夫そうでしたら、今日で戻っておくのも良いと思いますがいかがでしょうか?」


尚弥さん。


その名前を聞いた瞬間、少しだけ胸が軽くなった。

お見舞いの時に会ったのが、最後だったこともあるし、相談所の空気が、少し恋しくなっていたのかもしれない。


「はい。大丈夫そうなので、良ければ戻っても良いですか?」

「もちろん構いませんよ。でも、少しでも気分が悪くなったら言って下さいね。」


和さんが、ベッドの端から立ち上がった。


「日向を呼んできます。」


その間に着替えを済ませ、来てくれた日向と部屋の片づけを進める。

来た時に持ってきた荷物や洋服をリュックに詰めて、階段を下りると既に片付け済みのようで、来た時と同じさっぱりした状態だった。


そんなリビングの様子からも帰ることを実感する。

今日で帰るとなると、これはこれでちょっと物寂しい感じもする。

本当に、自分の気持ちなのによく分からない。


「こっちこっち。」


秀人に呼ばれて、開いたままの玄関の扉を日向とくぐり、外に出た。

外では秀人と一緒にウーノ達。

そしてフィフさんの家の扉の前で、和さんが立っていた。


「通路繋いでるみたいなので、行きましょうか。」


来た時と同じく大人数で扉をくぐっていく。


そういえば、圭さん達がいない。

寝ている間に先に戻ったのか、それとも残っているのかな?


和さん達を追って、水の通路を歩いていく。


そういえば、フィフさんにも色々手伝ってもらったのに、ちゃんとお礼を言えていない。


話せそうなタイミングはあったはずなのに、あの時は空気が重くて、すっかり逃してしまった。

ちゃんとお礼を言わないまま帰るのは、少しだけ引っかかった。


また、会えるかな。


そんなことを考えている間に、短い通路の終わりに辿り着いていた。

すぐに反対側の扉を和さんが開いた。


少し薄暗い地下の景色。

ほとんど入ることはない場所だけど、ここはスズのいる場所。

でも、その姿は見えない。


「いないねー。」

「上かなー?」


日向と秀人達もスズの姿を探して見渡しながら、地上への階段へ上がっていく。

壁の隙間から入り込む外の光も、どこか薄暗い。

まだ昼だと思うけれど、天気が悪いのかもしれない。


「お?帰ってきたね。おかえりー」


勘右エ門さんが玄関から声をかけて来た。

その手元では、木材を使って何かを作っている様に見える。

この人本当に何なんだろう?

不思議な人だなぁ。


三階に上がると、和さんだけが台所に向かっていった。


スズの姿が見えない。


ひとまず荷物を下ろしに部屋に戻る。

と、同時にリュックを床に置いて、考えるより先にベッドに沈み込んだ。


「大丈夫?ぶり返した?」

「違うよ~・・・なんか安心するー。」


イザベルが心配そうにベッドに上がってきた。

木の家にあったベッドより大きさは小さいけれど、今の私には十分なサイズのシングルベッド。


こっちでは半月みたいだけど、精霊の世界では1ヵ月ぐらい経っている。

本当に行くときに言っていた、長期旅行から帰ってきたような気分。


「はぁぁぁぁ・・・落ち着くー。」

「確かにここも数か月しか過ごしてないけれど、こうして戻ると帰ってきた感じはするわね。」


確かに。

イザベルの言う通り、ここも来て2ヶ月ちょっとぐらいなのに不思議。


木の家も穏やかだったのに、落ち着くという意味では少し違った。

ここは、ちゃんと自分の生活がある場所なんだと思う。


しばらくベッドの上で休んでいると、お昼ご飯を要求してお腹が鳴り始めてしまったので、三階へ降りた。


「あ!アリスアリス!チョコ作らなきゃ!」

「あ?!ああ!忘れてた!賞味期限大丈夫?」


日向の言葉に、すっかり忘れていた事を思い出した。

バレンタインはかなり過ぎてしまったけれど、折角だし作りたいよね。


「まだ調理前ですし、時間経過を遅めにしているので、大丈夫ですよ。」

「今日作っちゃう?」

「キュウ?」


和さんが、お盆の上どんぶりを乗せて、冷蔵庫を漁る日向を避けながら、台所から出てきた。


「ひとまずは親子丼作ったから、お昼ご飯にしな。」

「「はーい。」」

「キュウ!」「キーキ」「キュキュー」


日向達と並んで、ダイニングテーブルについた。


「アリスさんは重そうでしたら、雑炊も作れるので無理しないでくださいね。」

「ありがとうございます。大丈夫そうです!」


温かなどんぶりから、だしのいい匂いが漂い、食欲をそそる。

和さんの雑炊ならきっと美味しいけど、今は目の前の親子丼が食べたい。


「和ー午後に台所使ってもいいー?」

「良いけど、分担しなよ。アリスさんも今日作ります?」


どうしようかな。

日向達と、作るタイミングをずらした方が良さそうな気がするけど。


「はーい。アリスの分も溶かしたりするよー。」

「そっかぁ。じゃあ横で作ろうかな?」


「手伝ウ?」

「その前に、家庭菜園を見に行コウ。」

「キニナル。」

「キュウ?」「キー」「キュ」


賑やかな声の合間に、無意識に台所の奥やリビングの方へ目が向く。

でも、やっぱりスズの姿はなかった。


目が泳いでいると、日向と目が合った。

いつもの元気な笑顔ではなく、柔らかく微笑んだ。


昼食の片付けを終えて、日向と秀人と一緒に台所に並ぶ。


「こっちがミルクチョコレート。こっちがブラック。」


丸いチョコが入った袋を並べていく。

クーベルチュールっていうんだっけ?


「日向はミルクにするでしょ?僕はブラックにしてみようかなー。」


台所といえば。

たまにレンジを使ったり、お皿を洗ったりする程度に入る場所。


だから、あんまり道具とかまでは確認したことがなかった・・・

足元や奥の開き戸を開く。


「凄いね・・・なんでも揃ってる気がする。」

「一通りあると思うよー。」

「これでもスズに捨てられた方だけどね。」


普通の料理に使うフライパンやボウルなどは当たり前としても、お菓子を作る用の量りや型もほとんど揃って見える。


これでも捨てられた方なんだ・・・


「アリスは結局何作るのよ?」

「んー・・・昔作ったことがあるからブラウニーかなぁ。」


カウンターの方にいるイザベルに返事する。

確か会社に入って日が浅かった頃に、まとめて作った気がする。


「じゃあアリスもミルクチョコにするー?」

「そうだね。ありがとう。じゃあ道具を準備しようかな。」


分担しながら、三人で進めていくと。

二人が道具の場所も分かっているし、それなりに同じ作業も多かったので、意外とスムーズに進んでいく。

溶けたチョコの甘い匂いが、部屋の空気をゆっくり満たしていく。


「お?珍しい三人が台所にいるね。」


階段から誰か上がってきたと思ったら、和さんと一緒に尚弥さんだった。


「あ!尚弥ー!」

「元気そう!良かったー。」

「お久しぶりです。尚弥さん。」


尚弥さんは、入院の時に見た頭の包帯もなく、いつもの優し気な笑顔で近づいて来た。


「久しぶりですね。何々?チョコ?」

「バレンタイン作れなかったから、今作ってるー。」


「そういえば冷蔵庫にあったね。いいね。僕の分も宜しく。」


こちらを覗きながら、和さんと一緒に並んでイザベルの横に座った。


「これはしばらくおやつはチョコになるな。」

「僕は大歓迎だね。アリスさんは発熱したって聞いたけど、元気そうだね。」


「はい。朝にはすっかり熱も引いたので大丈夫です!尚弥さんも怪我が治って良かったです。」

「それなら良かった。僕の方も深い傷じゃなかったからね。すっかり元気だよ。」


いつもの尚弥さんだ。良かった。

料理の温かい空気に馴染むように、気になっていた気持ちも落ち着いた。


「和は作らないの?」

「余った材料見ながら、何か作るよ。いつも通り無難にチョコレートケーキになると思うけど。」


「いいねぇ。スポンジ?」

「生クリームを沢山用意してるし、あと確かゼラチンがあったから、ムースでもいいかもしれない。」


ゼラチンもあるんだ・・・


材料も大体揃ってるのかもしれない。

尚弥さんと和さんの会話を聞きながら、卵と砂糖の入ったボウルを混ぜる。


「去年は確かスポンジだったよね。チョコが全体にかかってたやつ。」

「あー。確か去年は誰かがリクエストしてきたから、ザッハトルテ作ったな。」


「ザッハトルテ?ケーキの名前なの?」


お菓子のことだから、イザベルも気になったみたい。


「そうそう。チョコレートのスポンジにアプリコットジャムを挟んで、上からチョコをかけたホールケーキですよ。」

「スポンジもムースも、どっちも気になるわ。」


和さんが悩む声を上げる。


「まぁ余るなら後日考えるよ。そんな連日チョコも大変でしょ?」

「私は、気にならないわね。」

「僕もー。」

「「気にならないよー。」」


「いやいや。」


誰の反論もなく、和さんが引いてる。

こうしてみても、甘いの好きな人の方が多いのかも?


そんなこんなで出来上がったブラウニーは、四角い型から外してカウンターの上で粗熱をとる。

そして日向と秀人のチョコパイは、先に焼いて冷ましたので冷蔵庫に入れる。

一通り作り終えて片付けをしていると、日向達と入れ違いに和さんが台所に入ってきた。


「三人のは明日からのおやつにするとして、早速今日からのおやつもチョコだよ。」


おやつ。

チョコ作ってたからだけど、もうそんな時間なんだ。


「えぇ!?すでにあった?」

「先に和作ってたのー?」


和さんがすでに出来上がってる丸いチョコをお皿に移し、電子レンジで温める。

その間にお湯を沸かし、コーヒーを入れるみたいなのでマグカップを並べる。

そして同時に、魔法の方では生クリーム?


「…俺じゃなくて、勘右エ門さんと…スズが作ったんだって。」


和さん、少しだけ言い淀んだ?


「えぇ!?え?何でっ。」

「は?何?その組み合わせ・・・。」


私が言い留まったことを、イザベルが突っ込んでいった。

そして、何故かそれ以外のメンバーが一瞬固まった気がした。


「ええと。と、とにかく勘右エ門・・・お菓子作れるの!?」

「待って。日向!しかもこれ、フォンダンショコラ!?」


日向と秀人が、よく分からない驚きの声を上げる。


「ふははははは!本当に作ったんだ。そうそうー。そんな話してたよ。」


尚弥さんは知ってたみたい。

すごい笑ってる。何故?


入れたコーヒーをテーブルに並べていくと、ウーノ達も上がってきた。

生クリームを添えたフォンダンショコラが、それぞれの席に並んでいく。


「イザベルは、ちょっと熱いと思うから気を付けて。」

「チョコなのに温めるのね・・・。」


不思議そうな顔で、イザベルは置かれたお皿の上を眺めている。


「中にも、溶けてるチョコが入っててちょっと熱いよー。」


まさかのスズが作った。

フォンダンショコラ・・・


「見た目は普通・・・?」


日向が、つぶやく。


「匂いもチョコ・・・?」


秀人もつぶやく。

ちょっとわくわくしたけど、何か様子が変・・・


あれ?

スズって料理下手とかって言ってたっけ?


ちょっとだけドキドキしながらフォークを入れる。

フォークを入れた瞬間、中から熱を持った甘さが溢れ出した。


口に入れる。

丁度良い食感、甘さも甘すぎない。


「わ。美味しい!」

「!?ね!!和、これっておかわりあるの?」

「!?なななな甘ーい。美味しいー!?」


「チョコ美味しイ。」

「甘イ。溶けテル。」

「不思議。」

「キュウ!」「キーキ!」「キュキュ」


それぞれの感想がリビングにあふれる。


「いや、丁度人数分だけだったよ。」


和さんも尚弥さんも、何故か慎重にチョコを口にした。


「・・・すごい・・・普通に美味しい・・・?」


尚弥さんが、不思議そうな顔をする。


「勘右エ門さんがいたから・・・?」


和さんも不思議な顔をする。


どういう反応?


「不思議なチョコね。でも美味しかったわ。」


イザベルも食べ終えて、足元に戻ってきた。


「これはどういう現象だと思われますか?秀人さん。」

「えぇ・・・そうですね。スズがそもそも、チョコを湯煎で溶かすという作業をするとは非常に考えにくく、恐らくは勘右エ門がいたからこそ成り立った可能性がありますね。」

「キュウ?」「キーキ?」「キュ?」


二人はテーブルの上で両手を組んで顔を乗せ、意味深な顔をしている。

この様子から察するに・・・


「つまりサーズは基本的に、こういうものを作らないのね。」


イザベルが答える。


「すぐに食べきるには、もったいなかったかもしれない・・・!」

「は!確かに!写真を撮っておけば・・・くぅぅ。」


「あはは。勘右エ門さん凄いね。作るところ見たかったー。」

「もしかして、ほとんどあの人が作ったんじゃないのか?」


みんなの反応からもイザベルの答えが正しそう。

どうやら、スズがこういうものを作ること自体が珍しいらしい。

貴重なチョコを食べたみたい。

でも美味しかった。


その当人達は、夕飯には来るのかな?


それが気になりながらも、リュックの荷物を片付けたり、お風呂に入ったりして、のんびり過ごす。

気づけば夕飯の時間になっていた。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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