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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
141/201

答え:地を易(か)うれば、皆然り相応に

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

会議を終えると、バレンが声をかけて来た。


「完全な結果とは言い難いが、待たせている正式な文書は、明日には送らせる。」

「頼む。」


「…そして、観察担当についても、それと合わせて連絡をすることになる。」

「分かった。」


アリスの特異性について、そのまま見逃すとは到底思っていなかった。

ひとまずは、制限がないことは助かる。

それでも、無期限でなくどこかで期間を設けてもらう必要はある。


「少し時間はあるかい?」

「何か?」


「場所を変えよう。」

「分か――」


「失礼する。」


ガーディの声と共に、後ろから服を引っ張られた。


「ひとまずは、ここで線を引けるだろう。」


アリスはガーディの方に視線を寄せながらも、私の背中に体を小さくして張り付く。


「そうだろうね。」

「引き続き、頼んだよ。」


そう言って、ガーディは会議室を出て行った。


見送りながら、フィフが舌打ちをする。

今は喧嘩を売らないで欲しい。


「スズ。本当に…。」


バレンが何か言おうとする前に、睨むような視線を送った。


「…とにかく、ここでは静かに話ができない。移動しよう。」

「エルがいるなら、研究室も静かに話すのは難しいと思うけれど。」


会議室を出た。


「ガルシアと一緒にフロアへ送ろう。エレベーターの中で問題ない。」


「スズ。」


和の声。


「どうだった?」

「概ね、想定通り。」


短く答える。


「ただし、少し緩い。」

「緩い?」


圭も後ろから静かについてきた。


「観察対象ということになったけれど、制限はない。」

「制限なし?」


和が眉をひそめた。


「中途半端。」


それはある意味、扱いづらい。

明確に敵対するわけでもなく、味方となるわけでもない。


「確かに、対応しづらい感じはするな。」


エレベーターに乗った。


「それで?」

「君がガルシアに頼んだ調査についてだよ。」


バレンとガルシアが目を合わせて、ガルシアがうなづいた。


「はい。山本梓とアリス・フォーラスと、ほぼ同時刻に死亡したとされる基本世界の魂について。」


ガルシアが言いよどむ。


「…スズの予想される魂ですが、残念ながらこちらでは何も追えませんでした。」


既に消えている以上、死神でも今から過去の履歴を追いかけるのは、難しいか。


「分かった。ありがとう。」

「スズ?」


アリスが心配の文字を顔に貼り付けて、覗いてきた。


「念の為、確認しているだけだから、気にしなくていい。」


「死亡時の履歴すら追えない以上は、以前と同様に消失した魂ということにはなるだろう。」

「そうだな。」


バレンに同意の返事をする。


座標のある世界から消えた魂。


それなら…


考えが進みかけたところで、背中に触れるアリスの体温に意識が引き戻された。


「アリス。体温が高い。」

「へ?」


「…アリスさん。ちょっと失礼しますね。」


和がアリスの額に、手を当てる。


「熱がありそうですね。急いで帰りましょう。」


「緊張で疲れさせてしまったのだろうね。申し訳ない。スズ、改めて連絡させる。」

「分かった。」


和が抱き上げようとするのを、アリスが恥ずかしそうに断った。

エレベーターを降りた後は、無理が無い程度の急ぎ足でビルを出る。


背中越しに、その足取りを確認する。


――ひとまず、終わった。


山本梓の魂は回収された。

イヴの復元も、止まった。


少なくとも、この件はここで一区切り。


今すぐ追わなければならない話ではなくなった。

それだけで、肩の力が少しだけ抜けた。


そうしてアリス達と合流した場所で、その姿を見送ろうと立ち止まると、フィフに睨まれた。

フィフに無言で先を促され、その後を追う。


フィフの扉は、住宅街に入る手前のビルの入口のようだ。

その扉へそれぞれが入っていき、最後にくぐろうとした時。

横を走り抜けた子供と、一瞬だけ目が合った。


それは、ほんの一瞬だった。


その視線を外して、扉に入った。


「おかしいだろ。」


音を立てながら、フィフがテーブルに着く。

アリスとイザベルは寝室に上がっていき、氷水などを持って和とヒナがついていった。


「都合が良すぎる。」


死神側の結果に対して、フィフがつぶやく。

一区切りとは、思っていない表情。


「今回の異例について、対応方法を決めかねているんだろう。」

「キュウ!」


テーブルに着くと、セイが肩に乗ってきた。


「つまり良い結果とはいえない。」

「それは同意する。」


観察対象。

制限なし。

それは、つまり何も決まっていないことと同じ。


アリスの特異性が、そのまま見逃されるはずもない。

何かしらの扱いが付くことは、最初から分かっていた。


「それでも、現時点では問題ない。」


「…は?」


拘束が無い以上、こちらは自由に動ける。


「出方によって、動きを変えることはできる。」

「それはただの受け身だろ。」


今の死神の動きで、完全な結果を求めることが、そもそも難しい。

その中で一番の懸念材料は、アリスの回収。

それが、山本梓の魂の回収によって、バレン案が通っただけでも十分に感じる。


それが、生者としての観察対象に収まったのは、楽観視はできないとはいえ、無難な結果だと思う。


「あちらも次の動きまでに、時間が生まれる。放置はできないとはいえ、こっちとしても好都合。」

「…あっそ。」


アリスの立ち位置が、不安定なままだということに変わりはない。

それなら、彼女にも時間が必要。


フィフは呆れた顔で、ヒデからマグカップを受け取る。


「一段落。ってことではないってこと?」


珍しくヒデが、口を挟む。

ヒナもヒデもアリスの事を心配して、気になって待っていたのだろう。


「一番気になっていた問題については、一段落した。でも、問題は残ってる。」

「このまま相談所に戻っても大丈夫?」


魔法での対処が難しい、死神とアディール・クラーレン。


「アディール・クラーレンについては、アリスの魂回収に対応できないことや先日話した印象からも、イヴの回収ができない今となっては明確な行動になる可能性が低いので、こちらも様子見になる。

死神も同じく観察対象。

今後の担当者とのやりとり次第にもなるけれど、死神を頻繁にこの世界に迎えるのは控えたい。

ひとまずはアリスが治ってから、戻っておいで。」

「キュウ」「キーキ」「キュキュ」


「分かったー。アリスの熱が下がったら、片付けするよ。」


どちらも中途半端となってしまったけれど、精霊とトラブルを続けていては、ここが安全な場所ではなくなる。


「ガーディには気をつけろよ。」

「分かった。」


フィフは最後にそう言って、玄関を出て行った。


室内の音が、ふっと途切れる。


そして、それとは別に増えた問題。


会議前、あの小屋でクラーレンと交わした話を思い出す。


「フォーラスは、独自の移動方法を持ったのだろう。」

「それは、お前の疑似通路と同じもの?」

「恐らくな。」


つまり、クラーレン自身も確認したわけではない。


「移動時の時間停止空間を挟むことによって、座標の位置を安定させる。

それが最後の問題だったことは、私にも覚えがあるからな。

あの日以来、彼らからの接触も途絶えた。」

「フォーラスの目的は?」


ある程度自由な移動が可能となった今、どう動くのか。


「私も明確には知らん。だが、移動方法を確立させることに、固執していた面が気になる。

私と類似する考えを持つ者もいるようだが、全員がそうではないだろう。

あいつらが今後私の手を借りない以上、注意するように。」


目的の為に、移動方法を持つことは必要条件なのだろう。


そして、長男のブルースと次男のブライアン以外にも、長女シャロン。

シャロンがエルフとして生まれ変わり、記憶を引き継いだのだとして。

以前エルフの世界に行った時に聞いた話となる、攫われたエルフと関係するのだろうか。


アーシャに、もう少し話を聞いてみるべきか。


現時点で最も大きい問題は、フォーラスの移動手段だ。

他の話は、それを追いながら並行して片付けるしかない。


「キュウ?」


肩からセイが、顔を覗く。

和が階段から降りてきたようだ。


「熱はそこまで高くないから、日向がつく。一晩様子を見るよ。」

「分かった。よろしく頼む。」


「良かっタ。」

「キーキ」「キュ」


この精霊の世界にいれば、病気は長引かないだろう。


「和達もありがとう。多少は落ち着いたし、戻るタイミングは任せるよ。」


これ以上、ここで考え込んでいては、不安を煽ってしまうだろう。

相談所に戻る為に、玄関を出た。


すると地下に戻っていると思っていた圭が、玄関前の階段脇からこちらを見上げてきた。

目が合う。


「何かあった?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カル達と・・・先に戻る。」


最近の精霊とのトラブルが、気になっていたのだろう。


「分かった。」


それを見た圭は、入れ替わりに部屋に入って行きカル達を連れてきた。

人間姿の狐のカルとイェ。

そして圭と4人で相談所の地下へ戻った。


「やっぱこっちの地下の方が落ち着く気がする。」

「そうかな?」


制約がなくなったからか、狐の二人か少し軽い空気に変わっている。


「他の三人を探すとすれば、候補はある?」


そのまま階段を降りようとする三人を、引き留めるように声をかける。


「あーそうね。まずは基本世界を一通り探し直そうかと思っているけれど、もう一つ気になるのは前言った通りお前が言っていた地獄の話。」

「あぁ。」


だいぶ前に、地獄で聞いた私のことを調べる女の話。

かなり前ということとフォーラスやクラーレンとの接点が見えなかったので、すっかり放置していた。


「地獄なら私達怪異でも行って良いと思うけれど、どう思う?」

「確かに、そこまで問題ではない。でも探すとなるともう少し、情報がないと困るだろう。」


怪異の世界と地獄は繋がっている部分もある。

そして、地獄には怪異は普通にいるのだから、生者の私よりも遥かに異質に見られることはない。


「前話していた、知り合いに話を聞けないかな?」

「あそこは他の世界とは違う。あまり用が無いのに、私が頻繁に行くのも怒られる。

一応、連絡は入れてみるよ。」


神の領域である以上、あまり踏み込みたい場所ではない。


「助かる。他にも気になる事が、あればこいつにも相談してみるから、その時は頼む。」

「よろしく。」


彼らには、帰る場所はある。

クラーレンが直接教えてくれる気はしないが、何か条件があれば交渉にも応じるだろう。

あの狐達も、少しでも早く帰れるようできれば良いけれど。


「お。帰ってきたのか。」


勘右エ門が地上の扉から、こちらを覗いて来た。


「何かありましたか?」

「いやいや。誰もいないのに、何か起こるわけないでしょ。」


階段をトントンと降りてくる。


「その引き出しに入ってるやつな。早めに行った方がいいぞー。」

「分かりました。忙しかったのとこれといって私には用が無かったので、来週あたりにでも。」


巫女の男から貰った、知らない通貨が入っている引き出し。


「まぁお前次第だけどな。悪いことはねぇよ。向こうさんも待ってると思うしな。」


待ってる?

神と呼ばれるモノ達は、どうにも言葉が曖昧な言い方が多すぎて、要点が分からないことが多い。

この神は、まだこうして言ってくるだけマシなのかもしれないけれど…


「分かりました。」


勘右エ門もそれが言いたかっただけのようで、階段に戻り始めた。

デスクに座り、パソコンを立ち上げた。


まずはスケジュールを確認して、詰め込めそうな場所に予定を入力する。

『商店街・夜行く』

2時間ぐらい確保しておけばいいだろう。


3月か。

流石に正月の帰省をうやむやにした実家にも、一度帰らないといけない。

相談所に戻ってきてから、アリス達にも休息を兼ねて聞いてみようか。


なんせ、今の私の肉体の生誕地は、日本の亜熱帯の島なのだし。


終わったわけではない。

だからこそ、休める間に整えておくべきだろう。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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