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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
140/201

疑問:素直に答えることが、正しいとは限らない?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

朝の空気は、少しだけ冷たかった。

窓の外はいつもと同じ森のはずなのに、どこか遠く感じる。


「・・・。」


服の袖を整える。

指先が、少しだけ硬い。

胸の奥が、少しだけ重くなる。


「アリスさん。」


声に振り向くと、部屋の扉を少し開いて和さんが顔を出していた。


「準備は、大丈夫でしょうか?」


「・・・はい。」


うなずく。

それだけなのに、少しだけ間が空いた。


「無理はしないでください。同席はできないですが、部屋の近くで待機します。何かあれば、すぐに出てきても大丈夫ですから。」


「・・・はい。」


和さんは、それ以上は何も言わない。

私にとっても今は、それで十分。


そんな私の顔を見て、和さんは部屋を出ていった。


部屋が、静かになる。


「・・・」


息を一つ吐く。


大丈夫。

そう思おうとして、やめた。


全然大丈夫じゃない。

そんなの、分かってる。


「私・・・。」


小さく呟く。


「行くんだよね。」


当たり前のこと。


それは“呼ばれた”からだけど・・・


少しだけ、違う。


「・・・」


前の会議を思い出す。

私は、話す側じゃない。


“話される側”だ。


何を聞かれるのか。

何を決められるのか。


分からない。

それでも、やれるだけのことをやる。


「・・・勝手に決められるんじゃなくて。」


指先を、軽く握る。


「ちゃんと自分で選ぶ。」


その言葉が、一番近いと思う。

これが正解かは、分からない。


「・・・イザベル。」


「…なに?」


小さく、イザベルに言う。


強い決意じゃないけれど。

ただの意思表示だけど。


逃げたくない、でもない。

逃げられない、でもない。


「ちゃんと聞きに行こう。」


それだけ。


「分かったわ。」


ドアノブに手をかける。

少しだけ、冷たい。


扉を開ける。


外の空気が、少しだけ変わった気がした。


日向と秀人とウーノ達は、お留守番。

前と同じく、圭さんと和さんの二人。

そしてフィフさんは、フィフさんの家の扉の前に立っていた。


「どーぞ。」


いつもの軽い言い方。

だけど、真剣な表情で扉を開く。


精霊の世界に来る時に通った通路。

水の中を歩くような景色。


誰も喋らなかった。


静かに通路の中を、進む。

静かすぎて、逆に落ち着かない。

フィフさんが目的の扉を開くと、精霊の世界と違う湿度を含んだ風が入ってきた。


何度か来た空の上にある街のような場所。

この空から落ちると地獄に行くと聞いた時には、それだけで足が震えたのに、今は気にならなかった。


「あ。スズー。」


歩いていく先にスズの姿が見え、駆け寄った。


「行こうか。」


良かった。

顔の腫れは、すっかり引いてる。

洋服はいつも通り長袖長ズボンだから、火傷は分からないけれど、大丈夫かな?


4人と1匹で、見覚えのある道を進む。

縦長で上が見えないほど高い建物。

入口の前には、前と同じようにガルシアさんが立っていた。


「待たせたね。」

「いえ、行きましょう。」


フロアの中も前と同じく、赤や紫、緑や黄色と色とりどりのスーツを着た人が行き交っている。

そして、視線が刺さる。


そんな視線の中から、誰かが近寄ってきた。


「こんにちは。私も上がるところだから、ご一緒によろしいかな?」


誰だろう?

バレンさんとはまた違った、優しげな男性。

赤いスーツ。


「あぁ。あなたがアリス・フォーラスさんですね。初めまして、アリゲル・クラブと申します。気楽にアリーとお呼び頂いてかまいません。」


アリーさん。

アリーさん・・・どこかで聞いた名前のような気がする。

死神。


といえば、この間ガルシアさんと、私の本を見に・・・


「あ。初めまして、アリス・フォーラスと申します。本を見せて頂いて、本当にありがとうございました!」


挨拶と一緒に、自分の本を見せてくれた許可くれたお礼を続けた。


「いえいえ。少しでもあなたのお手伝いができればと、自己満足の為でしたので、お気になさらないでください。」


エレベーターに乗った。


「でも、おかげで大切な人を、助けに行くこともできました。」


少しだけ、言葉を選ぶ。


「私自身のことも、ちゃんと考えるきっかけになりましたし、本当にありがとうございます。」

「それなら、良かったです。」


アリーさんは、少し悲しそうな目をしている。


「今日の会議は、明るい会話になることは難しいと思います。

それでも僅かながら入らせて頂き、この先に繋がるように参加させて頂きますので、どうぞよろしくお願い致します。」


アリーさんは、赤いスーツ。

きっと、偉い人の一人ってこと。


「・・・はい。宜しくお願いします。」


そのまま誰も会話には入ってこず、狭い空間でエレベーターの上がる音が響く。


フロアに到着し、前と同じ会議室に入る。

和さんと圭さんは廊下に残る。


中は、静かだった。


音がないわけではない。

衣擦れや、椅子の軋み。

それでも、空気そのものが音を押し潰しているようだった。


対面に配置した長机。

その右側手前に、私とスズ、そしてフィフさんが座った。

右奥にはすでにバレンさんが座っていた。

少しだけ距離のある隣の席に座る前に、静かに会釈を交わした。


反対側からの視線が、集まっている。

その一番左に、アリーさんが座った。


「……それでは、始めましょうか。」


低く落ち着いた声。

中央に座る死神が、淡々と口を開いた。


「山本梓の魂については、回収が確認されました。」


一瞬だけ、空気が揺れる。


「これにより、従来の案――バレンの提案は、実行可能な状態となります。」


これで、終わるものだと。

そう思ってた。


「――ただし。」


その一言で、空気が止まる。


「本件は、これにて終了とはなりません。」


フィフさんが、机の上で手を組んだ。


「……何が問題だ?」


低く、抑えた声。

フィフさんが口を開く。


「回収は完了した。条件は揃ったはずだ。」

「その通りです。」


別の死神が応じる。


「しかしながら、今回の事象において、新たな問題が確認されています。」


視線が、一斉に集まる。

正確には――私に。


「アリス・フォーラス。」


名前を呼ばれた瞬間、逃げ場がなくなった気がした。

体がびくっと跳ねる。


「あなたは、今回の魂の回収において、どのような関与をしましたか。」


何を答えればいいのかじゃない。

どこまで答えていいのかが、分からなかった。


喉の奥が、砂を飲み込んだみたいに乾く。


「・・・わ、私は、その・・・。」


言葉を探す。


「通路の中で、梓さんの魂が入った瓶に触れて・・・。」


あの時の事は、どうしても曖昧な表現になる。

どう説明すればいいのか分からない。


「触れて、回収したと?」


「・・・はい。」

「物理的に?」


多分、あの時の私の状態からして、それは・・・


「・・・違うと思います。」


沈黙。


一人の死神が、ペン先で机を軽く叩く。


「魂への直接干渉。」


別の死神が、言葉を継いだ。


「通常、認められていない行為です。」

「例外だ。」


隣で短く、スズが言った。

全員の視線が、そちらに移る。


「今回の状況は、通常の私達の通路とは異なる。」

「その“例外”を、どこまで許容するかが問題だ。」


静かに、しかしはっきりと返される。


「一度認めれば、前例になる。」

「だから何だ。」


フィフさんは、少しだけ前に身を乗り出す。


「処罰の対象と見るか、例外事案として保留するか、あるいは今後の規則対象と見るか。」

「現時点では、その分類自体が定まっていません。」


フィフさんが、鼻で笑う。


「回収は成功してる。問題は解決してるだろ。」

「解決しているのは“結果”です。」


冷たい声。


「問題は“過程”です。」


空気が、また一段重くなった。


「補足してもよろしいでしょうか。」


アリーさんが、静かに口を開いた。


「今回確認されたのは、“再現可能性が不明な一事例”です。」

「現段階で本人を規則の中心に置くのは、議論としても拙速でしょう。」


反論が入る。


「だが、アリス・フォーラスは、魂を視認し、接触し、回収した。」


理解しきれない。

でも私のことを、今ここで決めている。

それだけは分かる。


「再現可能か、制御不能かは不明。」

「はっ…またお前らは、研究対象と言いたいわけか。」


フィフさんの声が、わずかに低くなる。


「その通りです。」


即答だった。


「ふざけんなよ。」


机の上に、指が強く当たる。


「魂でもなんでも、人を“対象”扱いすんな。」

「感情論は不要です。」


ぴたりと返される。


その瞬間。


――空気が、変わった。


「…やめておけ。」


静かな声。


それだけで、場の圧が一段落ちた。


視線が、一点に集まる。


反対側の奥の席。


他の死神の後ろから、全体を眺めるような席。


そこに座る男の人。


「ガーディさん・・・。」


誰かが、小さく名前を口にした。

彼は、こちらを見ていない。

ただ、机の上に軽く手を組んでいる。


何度か聞いた名前。

この人が、前にイヴさんの時に議長をしていた人。

ガーディさん。


「話を単純にした方が良いだろう。」


ゆっくりとした口調。


「問題は三つだ。」


指が、一つ動く。


「一つ。山本梓の魂は回収された。」


もう一つ。


「二つ。アリス・フォーラスは、通常外の方法でそれに関与した。」


そして。


「三つ。」


一瞬、間が空く。


「それを“例外”で完結するか、“新たな規則”にするべきか。」


私は、その意味を全部は分からない。

多分今、私のことを“今だけの話”で終わらせるかどうかを決めている。

それだけは、なんとなく分かった。


誰も、口を挟めない。


「結論は?」


誰かが問う。

ガーディは、少しだけ視線を上げた。


「これに関して、結果を急ぐ必要はない。」


空気が、わずかにざわついた。


「…は?」


フィフさんが、思わず声を漏らす。


「回収は完了している。よって一度区切る。」


「しかし――」

「だが。」


遮る。


「この“例外”は、放置するには大きすぎる。」


静かに、しかし確実に。

全員の動きを止める声。


「よって。」


わずかに、ガーディさんの視線が私に向く。

緊張で、体が固まる。


「アリス・フォーラスは、ひとまずの観察対象とする。」


胸の奥が、少しだけ冷える。


「行動の制限は設けない。」


一拍。


「……はぁ?」


フィフさんが、完全に呆れた声を出す。


「それ、自由じゃねぇだろ。」

「完全な拘束をするわけでもない。」


淡々と返される。


「中途半端。」


スズが、短く言う。

ガーディは、わずかにだけ口元を動かした。


「その通りだ。」

「だからこそ、機能する。」


意味が、分からない。

誰も、すぐには否定する様子はない。


「異論は?」


沈黙。


長い、沈黙。


「・・・あの、一つだけよろしいでしょうか?」


別の死神が、口を開く。


「アリス・フォーラス本人の意思は、どのように扱うのでしょうか?」


視線が、再びこちらに集まる。

心臓が、少しだけ強く鳴る。


「・・・えと、それは・・・。」


何を言えばいいのか、分からない。


「こちらは部外者。ちゃんと分かりやすく言葉にしてもらいたい。」


スズが間に入る。


「失礼しました。では、アリス・フォーラス。伺います。

あなたは自分を、生者だと思いますか?」


あ。


この質問にも聞き覚えがあった。

リュースさんに案内された部屋の先で、死神の人がしてきた質問。


あの時は、答えが曖昧だった。


でも、今は違う。


今、私はここにいる。

守ってくれた人達のことを知っている。

帰りたい場所も、分かる。


「はい。私は、自分を生者だと思います。」


手に力が入る。


死神の人が、眉をひそめた。


「そ、それでは、思い出せない期間や、他人の記憶のように感じるものはありますか?」


思い出せない期間?

他人の記憶のように感じる?


そんなの――あるに決まってる。


ここで素直に全部を並べれば、きっとまた、私のことを私以外が決める。


「あります。」


一瞬、空気が動いた。


「でも、今ここで答える私が誰かと聞かれたら、私はアリス・フォーラスです。」


空気がざわついた。

そんなことは関係ない。


「他に質問はありますか?」


質問してきた死神を見つめる。


「い、いえ。以上で問題ありません。」


「そうか。」


ガーディさんの短い返答。

それ以上、追及はなかった。


「では、本件は以上とする。」


ガーディが、手を軽く動かす。


たったそれだけで。


会議が終わった。


立ち上がる音。

ざわめき。


それでもどこか、完全には解けていない空気。

フィフさんが小さく舌打ちする。


「……はぁあ。気に入らねぇ。」


スズは、何も言わない。

ちらっと隣に視線を向ける。


その一瞬、少し微笑んだ気がした。


それだけで少しだけ息ができた。

けれど、胸の奥に落ちた重さだけが、まだ動かないまま残っていた。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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