疑問:素直に答えることが、正しいとは限らない?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
朝の空気は、少しだけ冷たかった。
窓の外はいつもと同じ森のはずなのに、どこか遠く感じる。
「・・・。」
服の袖を整える。
指先が、少しだけ硬い。
胸の奥が、少しだけ重くなる。
「アリスさん。」
声に振り向くと、部屋の扉を少し開いて和さんが顔を出していた。
「準備は、大丈夫でしょうか?」
「・・・はい。」
うなずく。
それだけなのに、少しだけ間が空いた。
「無理はしないでください。同席はできないですが、部屋の近くで待機します。何かあれば、すぐに出てきても大丈夫ですから。」
「・・・はい。」
和さんは、それ以上は何も言わない。
私にとっても今は、それで十分。
そんな私の顔を見て、和さんは部屋を出ていった。
部屋が、静かになる。
「・・・」
息を一つ吐く。
大丈夫。
そう思おうとして、やめた。
全然大丈夫じゃない。
そんなの、分かってる。
「私・・・。」
小さく呟く。
「行くんだよね。」
当たり前のこと。
それは“呼ばれた”からだけど・・・
少しだけ、違う。
「・・・」
前の会議を思い出す。
私は、話す側じゃない。
“話される側”だ。
何を聞かれるのか。
何を決められるのか。
分からない。
それでも、やれるだけのことをやる。
「・・・勝手に決められるんじゃなくて。」
指先を、軽く握る。
「ちゃんと自分で選ぶ。」
その言葉が、一番近いと思う。
これが正解かは、分からない。
「・・・イザベル。」
「…なに?」
小さく、イザベルに言う。
強い決意じゃないけれど。
ただの意思表示だけど。
逃げたくない、でもない。
逃げられない、でもない。
「ちゃんと聞きに行こう。」
それだけ。
「分かったわ。」
ドアノブに手をかける。
少しだけ、冷たい。
扉を開ける。
外の空気が、少しだけ変わった気がした。
日向と秀人とウーノ達は、お留守番。
前と同じく、圭さんと和さんの二人。
そしてフィフさんは、フィフさんの家の扉の前に立っていた。
「どーぞ。」
いつもの軽い言い方。
だけど、真剣な表情で扉を開く。
精霊の世界に来る時に通った通路。
水の中を歩くような景色。
誰も喋らなかった。
静かに通路の中を、進む。
静かすぎて、逆に落ち着かない。
フィフさんが目的の扉を開くと、精霊の世界と違う湿度を含んだ風が入ってきた。
何度か来た空の上にある街のような場所。
この空から落ちると地獄に行くと聞いた時には、それだけで足が震えたのに、今は気にならなかった。
「あ。スズー。」
歩いていく先にスズの姿が見え、駆け寄った。
「行こうか。」
良かった。
顔の腫れは、すっかり引いてる。
洋服はいつも通り長袖長ズボンだから、火傷は分からないけれど、大丈夫かな?
4人と1匹で、見覚えのある道を進む。
縦長で上が見えないほど高い建物。
入口の前には、前と同じようにガルシアさんが立っていた。
「待たせたね。」
「いえ、行きましょう。」
フロアの中も前と同じく、赤や紫、緑や黄色と色とりどりのスーツを着た人が行き交っている。
そして、視線が刺さる。
そんな視線の中から、誰かが近寄ってきた。
「こんにちは。私も上がるところだから、ご一緒によろしいかな?」
誰だろう?
バレンさんとはまた違った、優しげな男性。
赤いスーツ。
「あぁ。あなたがアリス・フォーラスさんですね。初めまして、アリゲル・クラブと申します。気楽にアリーとお呼び頂いてかまいません。」
アリーさん。
アリーさん・・・どこかで聞いた名前のような気がする。
死神。
といえば、この間ガルシアさんと、私の本を見に・・・
「あ。初めまして、アリス・フォーラスと申します。本を見せて頂いて、本当にありがとうございました!」
挨拶と一緒に、自分の本を見せてくれた許可くれたお礼を続けた。
「いえいえ。少しでもあなたのお手伝いができればと、自己満足の為でしたので、お気になさらないでください。」
エレベーターに乗った。
「でも、おかげで大切な人を、助けに行くこともできました。」
少しだけ、言葉を選ぶ。
「私自身のことも、ちゃんと考えるきっかけになりましたし、本当にありがとうございます。」
「それなら、良かったです。」
アリーさんは、少し悲しそうな目をしている。
「今日の会議は、明るい会話になることは難しいと思います。
それでも僅かながら入らせて頂き、この先に繋がるように参加させて頂きますので、どうぞよろしくお願い致します。」
アリーさんは、赤いスーツ。
きっと、偉い人の一人ってこと。
「・・・はい。宜しくお願いします。」
そのまま誰も会話には入ってこず、狭い空間でエレベーターの上がる音が響く。
フロアに到着し、前と同じ会議室に入る。
和さんと圭さんは廊下に残る。
中は、静かだった。
音がないわけではない。
衣擦れや、椅子の軋み。
それでも、空気そのものが音を押し潰しているようだった。
対面に配置した長机。
その右側手前に、私とスズ、そしてフィフさんが座った。
右奥にはすでにバレンさんが座っていた。
少しだけ距離のある隣の席に座る前に、静かに会釈を交わした。
反対側からの視線が、集まっている。
その一番左に、アリーさんが座った。
「……それでは、始めましょうか。」
低く落ち着いた声。
中央に座る死神が、淡々と口を開いた。
「山本梓の魂については、回収が確認されました。」
一瞬だけ、空気が揺れる。
「これにより、従来の案――バレンの提案は、実行可能な状態となります。」
これで、終わるものだと。
そう思ってた。
「――ただし。」
その一言で、空気が止まる。
「本件は、これにて終了とはなりません。」
フィフさんが、机の上で手を組んだ。
「……何が問題だ?」
低く、抑えた声。
フィフさんが口を開く。
「回収は完了した。条件は揃ったはずだ。」
「その通りです。」
別の死神が応じる。
「しかしながら、今回の事象において、新たな問題が確認されています。」
視線が、一斉に集まる。
正確には――私に。
「アリス・フォーラス。」
名前を呼ばれた瞬間、逃げ場がなくなった気がした。
体がびくっと跳ねる。
「あなたは、今回の魂の回収において、どのような関与をしましたか。」
何を答えればいいのかじゃない。
どこまで答えていいのかが、分からなかった。
喉の奥が、砂を飲み込んだみたいに乾く。
「・・・わ、私は、その・・・。」
言葉を探す。
「通路の中で、梓さんの魂が入った瓶に触れて・・・。」
あの時の事は、どうしても曖昧な表現になる。
どう説明すればいいのか分からない。
「触れて、回収したと?」
「・・・はい。」
「物理的に?」
多分、あの時の私の状態からして、それは・・・
「・・・違うと思います。」
沈黙。
一人の死神が、ペン先で机を軽く叩く。
「魂への直接干渉。」
別の死神が、言葉を継いだ。
「通常、認められていない行為です。」
「例外だ。」
隣で短く、スズが言った。
全員の視線が、そちらに移る。
「今回の状況は、通常の私達の通路とは異なる。」
「その“例外”を、どこまで許容するかが問題だ。」
静かに、しかしはっきりと返される。
「一度認めれば、前例になる。」
「だから何だ。」
フィフさんは、少しだけ前に身を乗り出す。
「処罰の対象と見るか、例外事案として保留するか、あるいは今後の規則対象と見るか。」
「現時点では、その分類自体が定まっていません。」
フィフさんが、鼻で笑う。
「回収は成功してる。問題は解決してるだろ。」
「解決しているのは“結果”です。」
冷たい声。
「問題は“過程”です。」
空気が、また一段重くなった。
「補足してもよろしいでしょうか。」
アリーさんが、静かに口を開いた。
「今回確認されたのは、“再現可能性が不明な一事例”です。」
「現段階で本人を規則の中心に置くのは、議論としても拙速でしょう。」
反論が入る。
「だが、アリス・フォーラスは、魂を視認し、接触し、回収した。」
理解しきれない。
でも私のことを、今ここで決めている。
それだけは分かる。
「再現可能か、制御不能かは不明。」
「はっ…またお前らは、研究対象と言いたいわけか。」
フィフさんの声が、わずかに低くなる。
「その通りです。」
即答だった。
「ふざけんなよ。」
机の上に、指が強く当たる。
「魂でもなんでも、人を“対象”扱いすんな。」
「感情論は不要です。」
ぴたりと返される。
その瞬間。
――空気が、変わった。
「…やめておけ。」
静かな声。
それだけで、場の圧が一段落ちた。
視線が、一点に集まる。
反対側の奥の席。
他の死神の後ろから、全体を眺めるような席。
そこに座る男の人。
「ガーディさん・・・。」
誰かが、小さく名前を口にした。
彼は、こちらを見ていない。
ただ、机の上に軽く手を組んでいる。
何度か聞いた名前。
この人が、前にイヴさんの時に議長をしていた人。
ガーディさん。
「話を単純にした方が良いだろう。」
ゆっくりとした口調。
「問題は三つだ。」
指が、一つ動く。
「一つ。山本梓の魂は回収された。」
もう一つ。
「二つ。アリス・フォーラスは、通常外の方法でそれに関与した。」
そして。
「三つ。」
一瞬、間が空く。
「それを“例外”で完結するか、“新たな規則”にするべきか。」
私は、その意味を全部は分からない。
多分今、私のことを“今だけの話”で終わらせるかどうかを決めている。
それだけは、なんとなく分かった。
誰も、口を挟めない。
「結論は?」
誰かが問う。
ガーディは、少しだけ視線を上げた。
「これに関して、結果を急ぐ必要はない。」
空気が、わずかにざわついた。
「…は?」
フィフさんが、思わず声を漏らす。
「回収は完了している。よって一度区切る。」
「しかし――」
「だが。」
遮る。
「この“例外”は、放置するには大きすぎる。」
静かに、しかし確実に。
全員の動きを止める声。
「よって。」
わずかに、ガーディさんの視線が私に向く。
緊張で、体が固まる。
「アリス・フォーラスは、ひとまずの観察対象とする。」
胸の奥が、少しだけ冷える。
「行動の制限は設けない。」
一拍。
「……はぁ?」
フィフさんが、完全に呆れた声を出す。
「それ、自由じゃねぇだろ。」
「完全な拘束をするわけでもない。」
淡々と返される。
「中途半端。」
スズが、短く言う。
ガーディは、わずかにだけ口元を動かした。
「その通りだ。」
「だからこそ、機能する。」
意味が、分からない。
誰も、すぐには否定する様子はない。
「異論は?」
沈黙。
長い、沈黙。
「・・・あの、一つだけよろしいでしょうか?」
別の死神が、口を開く。
「アリス・フォーラス本人の意思は、どのように扱うのでしょうか?」
視線が、再びこちらに集まる。
心臓が、少しだけ強く鳴る。
「・・・えと、それは・・・。」
何を言えばいいのか、分からない。
「こちらは部外者。ちゃんと分かりやすく言葉にしてもらいたい。」
スズが間に入る。
「失礼しました。では、アリス・フォーラス。伺います。
あなたは自分を、生者だと思いますか?」
あ。
この質問にも聞き覚えがあった。
リュースさんに案内された部屋の先で、死神の人がしてきた質問。
あの時は、答えが曖昧だった。
でも、今は違う。
今、私はここにいる。
守ってくれた人達のことを知っている。
帰りたい場所も、分かる。
「はい。私は、自分を生者だと思います。」
手に力が入る。
死神の人が、眉をひそめた。
「そ、それでは、思い出せない期間や、他人の記憶のように感じるものはありますか?」
思い出せない期間?
他人の記憶のように感じる?
そんなの――あるに決まってる。
ここで素直に全部を並べれば、きっとまた、私のことを私以外が決める。
「あります。」
一瞬、空気が動いた。
「でも、今ここで答える私が誰かと聞かれたら、私はアリス・フォーラスです。」
空気がざわついた。
そんなことは関係ない。
「他に質問はありますか?」
質問してきた死神を見つめる。
「い、いえ。以上で問題ありません。」
「そうか。」
ガーディさんの短い返答。
それ以上、追及はなかった。
「では、本件は以上とする。」
ガーディが、手を軽く動かす。
たったそれだけで。
会議が終わった。
立ち上がる音。
ざわめき。
それでもどこか、完全には解けていない空気。
フィフさんが小さく舌打ちする。
「……はぁあ。気に入らねぇ。」
スズは、何も言わない。
ちらっと隣に視線を向ける。
その一瞬、少し微笑んだ気がした。
それだけで少しだけ息ができた。
けれど、胸の奥に落ちた重さだけが、まだ動かないまま残っていた。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




