答え:取りに行くにも、時勢に順応に
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「・・・・」
起きると、頭の横でセイが寝ていた。
手のひらサイズのセイは、寝返りすると体で潰してしまいそう。
重い体を起こす。
所々で、皮膚が、引きつるように張っている。
外から入る太陽の光の位置は高そう。
昨日の夕方から半日以上、寝てしまっていたのかもしれない。
基本世界では、火曜日。
念の為、会社に有給申請を出しておいて良かった。
「キュウ・・・?」
ゆっくりとベッドの端に移動すると、振動でセイが起きた。
「起こしたね。一緒に行く?」
「キュウ」
まだ少し眠そうな雰囲気があるけれど、セイを拾って肩に乗せる。
部屋を出て階段を下りると、リビングは静まり返っている。
「出かけてるかな。何か適当に漁ろうか。」
「キュウ?」
セイを肩に乗せたまま、台所にある保冷庫を開く。
「作り置きは、無いか。」
並び方は、いつもの相談所の冷蔵庫と同じように見える。
「キュウ?」
「流石に肉をそのまま焼いても、私は食べきれないよ。」
セイは肉の塊を指したので、胃が重く感じる。
「何か麺か・・・米・・・。」
–カタン
外から何か聞こえた。
誰かいるだろうか?
和がいないかと、玄関の扉を開く。
いつもの森へと広がる風景、辺りを見渡す。
≪今は、外に出ない方が良いわ。≫
木の精霊がだろうか、声をかけてきた。
「何かあった?」
≪妖怪の子達については、ここら辺にいる精霊も分かっているのだけど・・・。最近死神が何度か入ってきたでしょう?≫
ガルシアか。
「怒ってる?」
≪少しね。死神の気配は目立ってしまうから、ちょっと敏感な子達が荒れてるのよ。≫
精霊は少し困り顔で、森の奥を見つめている。
「迷惑をかけてごめん。あんまり長居しない方が良さそうだ。」
≪私達は構わないんだけどねぇ。あら戻ってきたわね。≫
森の奥から、和とフィフが歩いてきた。
それを見て木の精霊は、静かに風の中に消えた。
「死神は、ここにはもう呼ばないと伝えたところ。」
「納得した?」
フィフが肩をすくめる。
「まぁぼちぼち。」
「死神の件が落ち着いたら、戻る予定だから。そこまでは気を付ける。」
フィフは、このままこの世界に滞在する予定だろうし、あまりトラブルを大きくはしたくない。
「スズ。体調は?」
「お腹すいた。アリスは?」
「何か作るよ。ちょっと待ってて。アリスさんは、もうすぐ帰ってくると思うよ。」
フィフも一緒に中に入るようだ。
「スー。お前が寝た後、あの女の死神が来た。」
「呼んだから。」
そういえば、ガルシアは過去にフィフとも面識があった。
リビングに入って、イラつく態度を隠さずにフィフがテーブルについた。
「あいつは、ガーディと変わらねぇだろ。」
「彼女は中間として、公平な判断ができる。」
お互いに、必要以上の情報を出すことはないけれど、代わりに侮蔑する様な態度も情報不足となることもない。
「…お前とも変わらないってか。そいつが言うには、お前の会議の参加条件に、アリスの参加を求めてきた。」
「なるほど。」
「承諾した。ついでに俺も参加する。」
「喧嘩を売りに行くわけじゃない。」
金曜日の会議に、アリスとフィフが参加となると、また荒れることが予想される。
前回の会議も散々だったのだから、アリスの前ではやめて欲しいのだけれど。
「ガーディの条件が、おかしいことはお前も分かってるだろ。」
「予想はある。あの男は、今回のトラブルで過去の出来事まで、引き戻したくない意図が一つ。」
「甘い。」
「明確な理由なしに懐疑的に見れば、どこまでも可能性が残る。」
「明らかな、逃亡者がいる事で十分だろ。」
もちろん裏切りに動いている部分が、まだ内部にもいることは確かだろう。
「それがガーディかどうかは、判断ができる情報はない。」
交渉人として動いていたリュースと同じく、疑いも信用もできない。
「つまり、フィフはガーディが、裏切者側ではないかって考えてるのか。」
和が、りんごなどが入ったサラダと一緒に話に入った。
皿を受け取る。
「それが、最悪の状況に繋がるだろ。」
「明確な動きがあれば考える。だが、今あの男と対立すれば、こちらの立場が悪くなるだけ。」
過去の議長としての立場。
そして、若い世代から功績者と評価されている立場。
それに真っ向から対立したところで、話がうまく進むとは考えづらい。
それにはフィフも多少納得してくれたようだけど、まだくすぶっている様子が見て取れる。
「スズは戻るのか?」
「そのつもり。」
「なんで、嬢ちゃんに方針案のことを伝えなかった?」
「あの当時のアリスが、どういう方向に考えるか想像がつく。」
自身のアリス・フォーラスとして不明瞭な状態。
死神の意図を、受け入れるにはまだ余裕がなかった。
死神に責任を突きつけられれば、押されるのは目に見えている。
「タイミングの問題なら良い。だがあの場に参加する以上は、そうも言ってられないだろ。」
「今の彼女には、多少整理がついているように見える。」
自身の状況。
山本梓に対しての感情。
「それならそれで、自分の状況を整理しろってせめて伝えろよ。」
「それを投げても、彼女自身に受け取る余裕がなければ意味がない。場合によっては孤立する。」
一人で考え込むのは目に見える。
「だから、黙ってる方が好きに動くだろうってか?」
「和達がいるから、心配をする必要が無かった。想定外があったけれど。」
確かに和やフィフなら、適切な言葉をもっていたのかもしれない。
「はいはい。分かったよ。上手くやってるようで。」
「ガーディのことも、というよりアリスのことになるけれど。」
そして、想定外が重なる。
会議にも出てくると予想される、彼女の今回のこと。
「魂に接触できる彼女を…死神が、どう判断するかが気になる。そしてクラーレンも。」
「分かった。」
イヴの時。
イヴが死神側に唱えた異論は、アディール・クラーレンの魂の対応について。
嫌な予感はしている。
フィフはそのまま玄関を出て、自分の家に戻っていった。
「それぞれやり方が違うのは分かるけれど、意外とフィフって短気?」
「短気だよ。だから普段は、こういった話に入ってくることはないから、珍しい。」
それなりに、フィフも和やアリス達を気に入ってくれているように見える。
「和。金曜日状況次第だけれど、死神がひとまず手を引く様子なら、相談所に戻った方が良い。」
「まぁさっきの死神の件も考えると、そうか。」
「キュウ!」
精霊の加護下として、安全性が見込める場所だけれど、こういったトラブルが重なるなら、落ち着くまで一度出直すぐらいに考えた方がいい。
「会議前に、一度クラーレンにも接触するけれど、あの男は今回の行動をみても、明確にアリスに対して攻撃的な動きをするとは考えづらい。
それでも、条件次第では話を付ける必要がある。」
「大丈夫なのか?」
今回、クラーレンの動きには、観察行動以外の動きが見られなかった。
「さっきも言った通り、アリス単体に対しての関心の方に寄っている気がする。
それはそれで歓迎できることでは、ないからこの場所は、このまま残しておいて良いと思う。」
「…分かった。伝えとく。」
「セイも宜しく。」
「キュウ」
アリス達はまだ出掛けているけれど、ミーティングや仕事も含めて相談所に戻った。
死神の意向は、シンプルに考えるなら、保守・変革側の意見をそれぞれ尊重する形で、最後の会議という名目を打ったのだろう。
山本梓の魂が回収できたことで、保守としてのバレンの意見が通る条件は、ひとまず満たしたはず。
だが、追加案を出した変革側としては、それだけでは収まりきれない。
今回の参加指名は、アリスへのヒアリングを行う最後の機会として、押し込んできた可能性が高い。
ヒアリング。
今回は、それでもいい。
彼女はもう、選べる立場として扱うべきだろう。
もちろん、全てを理解しているかと言われれば、まだ時間は足りないかもしれない。
それでも、これ以上引き延ばすのは状況的にも難しい。
山本梓の魂を、下手に保留材料として残してしまえば、再び危険な状況に戻るだけだ。
完全な条件を求めるのは、もう無理だろう。
問題は、これで終わらないことだと分かっている。
死神、フォーラス、クラーレン――見るべき点は並行している。
だが、その中でも優先順位はある。
会議そのものは、金曜日にぶつかればいい。
今すぐ考えるべきなのは、その後に残るものだ。
まず、フォーラス。
彼らが最近の何度かでアリスではなく、私達walker側に着目していたのは、接触のしやすさと、疑似通路の製造が優先だったからだろう。
今回、アディール・クラーレンの通路から何かを得た可能性はある。
問題は――それが“どこまで進んでいるか”が分からないことだ。
一度でも再現に成功していれば、止める手段は限られる。
加えて、今回ブライアンとブルースと一緒に来た、あのエルフ。
中身は、フォーラス家の長女シャロン・フォーラスと考えていいだろう。
エルフとしての攻撃魔法の操作は、魔法使いだった時に比べれば落ちている可能性がある。
だが、それ以上に厄介なのは、解析能力の方かもしれない。
むしろ危険なのは、シャロンの方だろう。
戦闘力よりも、構造を理解してしまう方が危険なのは明白だ。
疑似通路の複製が達成された後、再びアリスに視点が戻るのか。
原理を今こちらが明確に知る手段はない。
けれど、アディール・クラーレンが既に作り上げている以上、到達する方法そのものは存在する。
通路の制限が扉の条件に依存していることだけが、こちらにとっての救いだ。
その反面、誰にも追跡できない行動を可能にする。
アディール・クラーレンは、あまり攻撃的な行動を取らない。
だが、フォーラスは違う。
だから、今の最優先は、フォーラス側が疑似通路の複製にどこまで近づいているかだ。
その次に、クラーレン。
あの男を、このまま放置していいのかは分からない。
ただ、今のところ誰も明確に止める判断を出していない。
薫も、神の声を聞くあの男もだ。
つまり今は、まだ“世界単位の問題”として処理されている段階なのだろう。
そこを越えた時に何が起きるのかは、分からない。
ただし――
あの男が“動かない理由”を、私はまだ知らない。
それが分からないままなのも、気持ちが悪い。
死神の会議は、まだ対処できる。
だが、フォーラスとクラーレンは、進んでしまった後では遅い。
全部が並行しているからこそ、順番だけは間違えたくなかった。
そういえば、あの男から夜の商店街の話があったな。
何か明確な用がある訳でもなかったから、貰った通貨は引き出しの中。
あれも一応意図もって渡してきている以上は、タイミングを見て行ってみた方がいいだろう…
「・・・」
今回の動きが行き当たりばったりだった自覚は、ある。
その分、余計な心配をかけたことも。
昔の自分なら、別のやり方を選んだかもしれない。
けれど今は、昔と条件が違う。
守るものも、巻き込まれる相手も、見られ方も違う。
なら、優先順位も動き方も、その都度見直すしかない。
–ピンポーン
尚弥だろう。
地上へ上がり、今度は尚弥の説教を受ける事にするしかない。
玄関の扉を開けると同時に、尚弥が呆れた顔に変化した。
「うわぁ・・・。何があったらそうなんのさ?」
「色々あった。」
一階の真ん中にある応接室へ移動した。
「まぁそこに座んな。また和と喧嘩したんじゃないの?」
「今回はフィフとアリスが怒ってたから、和はそこまでじゃない。」
尚弥がカバンを開いて、包帯などをテーブルに並べていく。
「他に怒る人がいたのね。ちなみに明らかに火傷とは違う、その頬の腫れかな?」
「殴られた。」
消毒の匂いが、やけに強く感じる。
「なるほどね。ひとまず服を脱ごうか。」
「ん。」
言われた通りに服を脱いで、脇に寄せた。
「お。でも全体的ではなさそうだね。肩の火傷が気になるけれど、他に気になる部分は?」
すぐに冷たい布が当てられる。
一瞬だけ、痛みが走る。
「っ……。」
「これは染みそうだねぇ。」
「怪我の中でも、火傷が困る。」
「そうだろうね。和も魔法では治しにくいって言うしね。」
それ以上は、何も言わない。
しばらく、無言のまま手当てが続く。
――その沈黙が、一番重い。
「あのさ。」
ぽつりと、尚弥が口を開いた。
「価値観は、人それぞれなのは分かるよ。」
少しだけ、手が止まる。
「でも、今回は少しだけ急ぎ過ぎだったんじゃないかな?」
「……。」
答えない。
というより、それが答えでもある。
「急ぐ必要があった。」
「そうみたいだね。でもさ、珍しくただの結果オーライじゃない?」
「そうだね。」
その瞬間、尚弥の手が止まった。
「・・・分かってて、行動したの?」
低い声。
「した。」
「ふーん?じゃあさ。」
少しだけ、語気が強くなった。
「上手くいかなかった場合、残った側はどうなってたんだろうね?」
「……。」
それぞれの顔が、一瞬だけ浮かぶ。
それでも。
「それでも、私は行くよ。」
「はぁ・・・。」
深いため息。
「それが、スズってことなのかねぇ。」
呆れたように言って、また手を動かし始める。
「今と同じ状況が起きたとしても、同じ行動をする。」
間。
尚弥が少しだけ、視線を上げる。
「それは、周りが折れるしかなくなるね。」
言葉が、刺さる。
でも。
「それでも、止まるつもりはない。」
「そうかぁ。」
包帯を巻く手が、少しだけ強くなる。
「それを話し合いたいってのが、みんなの意見だろうけど。」
「他の案があれば、もちろん考える。」
「まぁスズの言いたいことも分かる。」
こういう時の尚弥はかなり淡々としてる。
手当てが終わる。
「はい、終わり。」
雑に言って、道具を片付ける。
「もしもスズが生まれ変わりという形でも死んでしまった場合、僕にとっては空く約10年はかなり大きいよ。」
最後に、ちらっとだけこちらを見る。
返す言葉が、すぐには出てこなかった。
「そうだね。」
場合によっては、二度と会えないかもしれない。
「いや、“そうだね”じゃないんだよ?」
こういう時の言葉が、見つからない。
「…こういう時、よく返される質問があるけれど。」
カバンの中を整理しながら、続ける。
「なら、あなたならどうしますか?って。」
「同じ状況下で質問対象にするなら、フィフだけ。」
尚弥は少し笑う。
「全てに対してあまりに平等すぎる。」
でも、目が笑ってない。
「だから、自分がいなくなった時の“不平等”を軽く見てる。」
最後にカバンを閉じた。
「フィフさんが怒るのも、和が黙るのも、アリスさんが不安定になるのも、そこだと思うよ。」
言われていることは分かる。
「みんな、結果そのものだけじゃなくて、スズが一人で決めて先に行くことに困ってる。」
止まるつもりはない。
それでも、今までと同じやり方で押し通せる状況でもない。
取りに行くべきものがあるとしても、
それをどう取りに行くかは、もう少し考えなければならないだろう。
同じやり方のままでは――足りない。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




